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第106話 三の街、通過虫!!

「まち~? みち~?」


「難シイ問題ダ……」


 衛兵さんに見送られ、一般むしんちゅの皆様からガン見されつつ……ボクらは【三の街】に入った。

入った、だけど……えっと……


「じゃじゃじゃ~! なんど大きい畑でやんす~!」


「あっちには牧場もあるね、すっご」


「見渡す限り畑と牧場、それにため池なのナ」


 そうなのだ。

門をくぐった先は、また街道だった。

物凄ーく分厚い壁がとっても異物感あるけど……それ以外は農村って感じ?


「ええ、三の街は基本的にこのような立地です。二の街からは普通の街並みになりますよ」


 イセコさんはそう言ってクスリと笑った。

はー……なんとまあ、スケールの大きい話だ……


『大きな街ね! 大きな街だわ! じゃああと門を2つ通ればいいのね!』


 首都に来てからピーちゃんのテンションがとってもお高い。

久しぶりのっていうか、何百年ぶりかの第二の故郷だもんねえ。


「ピーちゃんには申し訳ありませんが……首都はとても広いので、今日中にたどり着けるのは二の街まででしょう。今晩はそこで宿泊することになります」


 今の時刻は、たぶんおやつの時間くらいだしねえ。

規模としては都道府県の県庁所在地くらいなのかな、首都。

この光景を見る限り、人口密度は日本よりもだいぶ低そうではある。


『いいのよ! 全然構わないわ! こうしてゆっくり近付くのも素敵よ! 素敵だわ~!』


 ピーちゃんは嬉しそうに、イセコさんの周囲をギュンギュン旋回するのだった。

じゃ、ピーちゃんのためにも歩きますか~。



「ノドカ、ノドカ」


「のどか~!」


「平和、平和」


「へいわぁ~!」


 肩に乗ったアカが左右に揺れている。

街の中だっていうのに、土と草の匂いがする。

視界の隅ではデッカイ牛っぽい動物たちが、モッシャモシャ草を食んでいる。

なんとも心休まる光景ですなあ。


「魔物モイナクッテ、イイネ~」


「当たり前なのナ。ここはもう街の中ナ~?」


 肩をぽんつく叩くアルデアはジト目。

そうだけど……この光景を見ちゃうとねえ。

バグる、感覚が。


「でも、ムークの気持ちもわかる。なんか変な感じ」


「んだなっす。今まで気を張り通しでやんしたから……気ば、抜けるのす~」


 戦いの連続だったからね。

しかも直近の2つがね……地獄だったからね……


 っていうかロロンちょっとフラフラしてない?

明らかに様子が……危ない! キャッチ!!


「はわわ……おもさげにゃがんす……」


 顔が赤いね? これひょっとして……

失礼しまーす、ペタタっと……


「アッツ!?」


 額が熱い!?


「ロロン熱アルジャン!?」


「しょ、しょげなこつ……ワダスは大丈夫でがんす!」


 大丈夫な人はこんなに目が泳ぎません!

ああ、この子ってば今までむっちゃ頑張って働いて疲れてたんだね……


『ふむ、概ねその通りですね。過労による発熱でしょう……目的地に到着したので気を抜いてしまったのでしょうね』


 女神様のお墨付きが出た!


「ヌンッ!」


 バッグから出でよ毛布!

すかさずロロンに巻き付けておくるみモードに!!


「ひゃわ」


 固定したらそのまま……お姫様抱っこの刑じゃ!!


「む、むむむムークしゃま……! ワダスは本当に……!」


「問答無用ノ助デ御座ル!! 大人シク運バレテオキンシャイ!!」


 うわ、体温たっか……!


「だ、だども……!」


「子分ノ健康維持ハ親分ノ義務ナノデ! ナノデ……気付イテアゲラレナクテゴメンネ、ロロン」


 ううう、我が身が情けなや……!


「しょんな! ムーク様は何も悪く……」


「ナノデ! コノママ宿マデ運ビマスカラ寝ンシャイ! 寝ンシャイ~!!」


「はわわわ」


 マーヤがロロンを覗き込んで、額に手を当てる。


「うわあっつ。ロロン、無理しちゃ駄目」


『まーっ! 無理は駄目よ! 駄目なのよ!! ロロンちゃんは今までうんと頑張ったんだもの! ムークさんに甘えてもいいのよ! いいのよ!!』


「だめ! だーめぇ! ねんね、ねんね~!!」


「そうだぞ、周囲は安全だ。大人しくムークに抱かれておればいい」


 妖精たちからもこんこんと言われて、ロロンは体の力を抜いた。


「お、おもさげながんす、ムーク様……」

 

 そして、ちょっと泣きそうな顔でボクを見上げてきた。


「何言ッテルノ。カワイイカワイイ子分ノ世話ヲ焼クノナンテ、ボクニトッタラゴ褒美ヨ、ゴ褒美」


 その頭をガシガシ撫でて、背中から展開した隠形刃腕で更にロロンを固定。


「滋養に良いから飲むのナ」


「むぐぐぐ……はひゃ、こりは……むにゃあ……」


 アルデアが小瓶の液体を飲ませると、ロロンは即寝た。

ま、まさか……!


「オ酒ヲ!?!?!?」


 なんてことすんのこのそらんちゅ!!


「これは少しの酒精を果実水と蜜、それから薬草と香辛料で割った飲み物ナ。ウチの里では熱を出した子供に飲ませるのナ」


「ゴメンナサイ! ボクノ馬鹿! アリガトウ! アルデア大好キ!!」


 ボクの無知虫野郎ォ!!


「んふふ、まあ受け取ってやるのナ。ささ、ロロンが寝ている間に宿へ急ぐのナ~♪ 折角首都まで来て野宿とは笑えんのナ!」


 そう言って、アルデアはボクの肩をポンポコ叩いた。

確かにそうだね!


「二の街にある宿にはあたりを付けています。同僚が予約を入れてくれているはずなので……行きましょう」


 イセコさんったら超有能!


「いこ! おやびん~!」


「ハイハーイ!」


 先頭に立つイセコさんを追って、ボクらは速足で歩き出した。

すやすや眠るロロンを起こさないように気を付けながらね!

安定インセクトウォーキングを唸らせるぞ~!



・・☆・・



 それからボクらは歩いた。

のどかな田園風景を横目に、それなりに急ぎ足で。

マントに包まれたロロンはその間、くうくうと可愛らしい寝息をこぼしていた。


 そして、夕暮れが夜に変わり始めたころ……二の街への門へ到達した。

そこでも兵士専用の入口を使い、入場。

あ、今回ばかりは『フーラー!』を封印していただきました。

ロロンが起きちゃうからね!!


 そして、足を踏み入れた『二の街』

そこは――街だった。


 さっきまでとは違い、足元は綺麗に整地された石畳。

綺麗な太い道が真っ直ぐ奥……うっすら遠くに見える壁に向かっている。

で、その左右に枝分かれした細い道がある。

アレだね、京都っぽい? しっかりした碁盤の目みたいな感じ。


「この道は『三番道』と言われています。宿は『三番道三十五辻左六十七』にありますから、このまま真っ直ぐ進みましょう」


 わー、直観的にわかりやすい住所!

これなら住所だけ知ってればボクも迷わなさそう!


「あ、ピーちゃん。『ミライ飯店本店』は『三番道四十二辻右』にありますから、ロロンさんが元気になったら行きませんか?」


『まーっ!? ご近所さんだわ! ご近所さんだわ! 行きたいわ~! 絶対行くわ~!』


 ピーちゃんはものすごい速度で肩の上でドリュンドリュン……否、ドリュリュリュリュリュンしている。

残像が見える……! 大喜びだ! よかったね!!

じゃあ……まずは宿だ! 宿に行くぞ~!!



「ようこそいらっしゃいました! ささ、どうぞ!」


 死道に沿って歩き続けること、小一時間。

辻々に看板が立っているから、とってもわかりやすかった。

すんごいしっかりしてる街だね……さすが、トルゴーン。


 それで、たどり着いた宿『ソゥア亭』

そこは、辻に入ってしばらく歩いた所にある落ち着いた二階建てのお宿でした。


「お部屋は一階の角部屋になります! 夕食の時間になればお呼びしますので、それまでごゆるりと!」


 若い虫人のお嬢さんは、テキパキとそう言ってササっと去って行った。

お礼を言う暇もない上に、ボクの顔全然見てくれんかった……


「ふふ、今の子すっごい照れてた。ムークったら罪作り」


 マーヤがニヤニヤしている……真にござるか~?


「見た目だけは雄々しいものナ~?」


 えぇ~……?

ま、まあ今はいいか。

ロロンを柔らかいベッドに寝かさんと~!


 案内されたお部屋は、落ち着いた色合いのとっても清潔な一室でした。

おお~……すごい、塵一つ落ちてなさそう!


「ロロン、オ疲レ様」


「ふにゅあ……えへ、えへへ……」


 ベッドに、そっとロロンを寝かせる。

彼女はなにかムニャムニャ言いながら……ボクのマントをがっちり抱きしめて丸くなった。

おおん……掛布団の方がいいだろうに……これは回収するの無理だな。


「ねえムーク、私が倒れても同じように運んでくれる?」


 マーヤが背中をリズミカルにつついてきた。

こしょばい!


「モチロン、当タリ前デショ~? 何言ッテルノ?」


 大事な大事なお友達で、仲間だもん。


「にゃ、にゃ~♪」


 めっちゃ嬉しそう……あ! 流れるようにアルデアとお酒を飲み始めた!

じゃあ、ボクも寛ぐぞ~!

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます!ロロンちゃん獅子奮迅の大活躍でしたからねぇ。アルデアさんやアカちゃんもそうだけど。皆立派だ。ピーちゃん良かったね!ドリュリュリュリュリュンだね!
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