第96話 全力全開虫。
「グヌウゥ……ギギギギ!」
ボクのビームとブレスが、正面から激突した――と、思う!
何故ならまだボクの顔面には、墨汁みたいな血がべったりなので!
一つだけいいことがあって、それは背後が壁だってこと。
なので、ビームを撃ちながらバッグから手ごろな布を取り出して……フキフキ! キュッキュ!
おお、ようやく前が見えてきた――大迫力!
ちょうどボクと大地竜の中間で、ブレスとビームが激突している。
魔力同士が反応を起こし、空中に放電と火花が縦横無尽に散らばって!
「ヌゥウウ――!」
ここはいい! 姿勢制御に気を使わなくていいからね! 壁万歳!
エンシュでやったのを思い出すネ――魔力おかわり! おかわり!!
自由に動く両手を使って、魔石をザラザラ頬張る! 固定砲台虫を甘く見るなよ~!
「――オオオリャアアアアアアアアアアアッ!!」
胸に集まる魔力! 帯電する5つの宝玉! 歪む空間……空間!?
なに!? 竜巻ビームになるんじゃないの!?
後ろの心配がないから魔力をゴンゴンぶち込んだんだけど、ボクのバストに何が起こってるの!?
『これは――むっくん! 絶対に魔力を切らさないで!』
わかってるけど、なんでトモさん!?
『私もむっくんも『過電流』を勘違いしていたようです! あの竜巻形態は、あくまでその『前段階』だったということですよ!』
えっえっ!?
『あれは、込めた魔力の『圧縮』が足りずに噴き出していたということです! つまり――』
こ、このまま魔力を込め続ければ本物の『過電流』になるってこと!?
『そうです! 幸い今のむっくんは健康体――ありったけの魔力を胸に込めるのです!』
――アイアイ、ゴッデス!
「グゥウウウウ――」
魔力! 魔力! 魔力ゥ!!
お腹の下から発生した魔力を――胸に! 集める! 注ぎ込む!
ウオリャーッ! もってけ泥棒!!
宝玉がきらめき、変化する!
胸の中心にある宝玉……そこに、周囲の宝玉から魔力の糸がつながった!
その糸は空中に魔法陣めいた円を刻んで――竜巻が、一気に放出! うぐぐ、魔力がグンと減った! 魔石おかわり!
「ゴオオオオオオアガアアアアアア!?」
今もブレスを放出している大地竜が目を見開く。
あーっ! 後頭部に雷が突き刺さってる! きっとアルデアの援護だ!
――圧力が緩んだ! 今だーッ!!
「行ケェエエエエエエエエエエエエッ!!」
竜巻がブレスを散らし、大地竜に近付いていく。
それと同時に――胸の中心にある宝玉が光り輝いた!
わかった! なんとなく、自分の体だから!
『魔素凝縮電磁投射砲』は、ビームじゃない!
ビームから竜巻に変化した『ガイドライン』で――加速させた『弾丸』を放つ技なんだ!
レールガンなんだからそりゃそうなんだけど、異世界魔法だからそんなもんかなって思ってた!
つまり……今までボクが撃ってたのは全部『前座』! 準備段階だったんだ!!
『そのようです。『ガイドライン』で殲滅できればよし。それでダメなら本番……ということですね。ふふ、やっぱりむっくんは見ていて飽きない謎虫ですよ!』
喜んでいただけて何より――あ! ビームが大地竜の顔面に激突した!
黒い岩みたいな装甲がバラバラ弾けている! ここだ! ここで決める!!
アイツに逃げられる、前に!!
「ヌゥウウウウウウウウウウウウウ!!」
渦を巻く魔力。
それが、胸の中心から空中に放出される。
無色の綺麗な魔力の、球体!
「ウゥウウオオオオオオオオオオオッ!!」
球体が、ビームの内側から迸る電流に晒されて……超高速で縦回転を始めた!
なるほど加速……レールガン!!
『推定される魔力量、充填完了。 ――撃てます!』
「――真ノ意味デ、発射ァ!!」
心の中で、トリガーを引く。
――カオン、という甲高い音。
その瞬間には、加速しきった弾丸が――大地竜の口を貫いて背後に飛び出した。
墨汁みたいな大量出血が、まるで黒い花みたいに見える!
「ゴオオ!? ガァ!? ゴガアアアアアアアアアアアアア!?!?」
大地竜は悲鳴を上げて――ずうん、と倒れ込んだ!
よし! ボクも――
「アギャーッ!?!?!?」
装甲板が! 装甲板が強制キャストオフッ!?
は、反動か、これ!
「グベーッ!?」
そして重力に引かれて地面に墜落するボク! アギー! むき出しになった皮膚的なアレが地面と接触して超痛ァい!!
「ギ、ギギギ……」
泣きそう!
『0か100しかない虫……いえ、攻撃力全振り虫ですね。おめでとうございますむっくん、今の電磁投射砲は第一等級を超える威力ですよ、ちょこっと』
あれでちょこっと……嬉しいけど普段使いは無理ですわよ……こんな悠長に準備してたら死んじゃう!
今回みたいなメタ状況ならいけるけどさ……
『ムーク! 大地竜が生きているぞ! 逃げろ!!』
は!? うわホントだ!?
倒れ込んだ大地竜がこっち見てる!? 口から喉を貫いたのに何で生きてるの!?
黒化するとディナ・ロータス級の生命力になんの!?
「お前の相手は私なのナーッ!」
アルデアが空から雷をバンバン投げてるけど、大地竜はボクしか見てない!
そんなに喉を貫かれたのがお気に障りましたかァ!?
「ちぃいッ! ムーク、すまんのナーッ!!」
慌てて飛んできたアルデアが、ボクの両肩を掴んで一気に空へ舞い上がる!
イダアアアアアアアアアアアアアアイ!! むき出しの筋肉にそらんちゅレッグが食い込んでイダアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
でも心配させられないから、何も言わない!!
「ダイジョブゥウ……!」
「強がりはいいのナ! あの傷では長くはもたんハズなのナ! このまま逃げ回るのナ!」
言ってる間に、倒れた大地竜から多数の岩ミサイルが発射された!
と、トモさん回復オネシャー! なるはやで!!
『もう始めています。それと、治っても電磁投射砲は使用禁止ですよ! 今度は生肉が吹き飛びますからね!』
ヒィイ!!
「しつっこいのナ! そのまま死んでるのナーッ!!」
襲い掛かる岩ミサイルを、超高速で躱すアルデア!
戦闘機みたいで格好いいけど、ボクというウエイトのせいでいつもよりちょっと遅い!
うわ、岩が羽を掠った! このままじゃ――
「アルデア、ボクヲ捨テ――」
「――それ以上言ったらお前の首をへし折ってやるのナ! おとなしく運ばれているのナッ!!」
もう言いません! でも、この状況――ウワーッ!? 追いミサイルが発射された!!
アカン直撃コース! 左腕のパイルは――装甲ごと吹き飛んでる!
それなら衝撃波で――
「えぇーいッ!!」
光るミサイルが飛んできて、岩ミサイルを叩き落とした――アカ!
そして、ボクの前まで飛んでくる頼れる子分!
「ヤッター! アカ大好キ!」「んへへえ! アカも! アカもお!」
なーんて素敵なんでしょ! この子は!
「私に感謝はないのナ!?」
「アルデア大好キ! 羽ガ格好イイ!!」
ぐん、と速度が上がった!
「はん――まるで子供ナ! お前は!!」
赤ちゃんですゥ!
と、そんなことをしている間にもミサイルは飛んでくる。
「うにゅにゅー!」
ほとんどをアルデアが躱し、直撃しそうなものはアカが撃ち落とす。
膠着状態だ……早く死んでくれん!? しぶとすぎませんか黒化魔物!
「ゴボォオ! グルアアアアアアアアアッ!!」
倒れたままの大地竜が吠えて――魔力が、体内に凝縮されてる!?
でも今の角度だとブレスを吐いても無駄だと思うんだけど――
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
――背中から! 背中からブレス!?
いや、細いビームがいっぱい出た!! そこは岩ミサイルだけにしといて!!
「――ぐぅッ!?!?」
その細いビームの一本が、アルデアの左腕を貫いた。
腕はくっ付いてるけど、かなりの怪我だ!
「アルデア!?」
「大丈夫、ナ! この程度――」
ぐら、と揺れて高度が下がる。
そらんちゅは翼だけで飛んでるわけじゃないけど、それでもこの傷だと――ビームがまたこっちに!?
「んにゅうう! んあっ!?」
アカの前の空間が歪んでビームは逸れた! 逸れたけど――肩の装甲が抉れた!?
ビームは、まだ来る――!
――っが、なに、急に頭、が!?
・・☆・・
燃える街。崩れた城壁。倒れた兵士。焼けた死体。
事切れた赤子を抱いて泣く母親。
焼け焦げた死体に縋って泣く子供。
こちらを見る、死んだ子供の虚ろな目。
握りしめて血の溢れる、誰かの震える拳。
・・☆・・
「――『我ガ剣ハ、牙ナキモノノタメ』!」
蒼く光る、ヴァーティガ。
「ムーク!?」「おやびん!?」
負傷して力の緩んだアルデアの足から、体を振りほどく。
「『我ガ鎧ハ、寄ル辺ナキモノノタメ』!!」
自由落下する中で、ボクに向かってビームが殺到。
そのいくつかが、体を貫通して――
「――ラグン・ヴァアアアアアアアアアアアルツッッッッッ!!!!」
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