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第90話 ほほう……これは有名税じゃな???

「ムーク様、今お時間は大丈夫でしょうか」


 こんこん、とノック。

その後、女将さんの声がした。


「ア、ハーイ」


 朝ご飯を食べてからの休憩中だったから丁度いい。

メニューはオーソドックスなパンにサラダ、スープという素敵なモノです。

微妙に日本建築っぽいお宿で洋食? が出てくるとちょっと違和感があるけど。

まあ美味しいからいいけど!


 ドアを開けると……ちょっと困った顔をした女将さんが立っていた。

おや、どうしたんだろ?


「朝早くに申し訳ございません……あの、ムーク様にお客様がいらしておりまして」


「……ボクニ?」


 極めて知り合いの少ないボクに?

あ、ひょっとしてイセコさん関係?


「いえ、仲間からの連絡は別の方法でありますので。こちら関係ではありませんね」


 何も言ってないのに振り向いただけで答えてくるイセコさんである。

有能!


 っていうことは……やっぱりボクか。


「ドンナ方デス?」


「ええ、クトウの冒険者ギルド長です。衛兵から話を聞いて、是非ムーク様にお会いしたいと……」


 ギルド長!?

そんな重要人物が何を……?


「ボク、何カシタカナ……? アア、エット……会イマスヨ、ハイ」


「申し訳ございません、長旅でお疲れの所を……」


 女将さんはとっても申し訳なさそうだけど、全然疲れてないし!

昨日お風呂に入ったから全快だし!


「イエイエ、大丈夫デス」


「ムーク様、私も同席しても?」


「当然! 大事な仲間デスカラ」


「そ、そうですか……! 頑張ります!」


 なんかイセコさんがキリっとなった。

顔布でわからないけど、やる気に満ちている気がする……!


『朝からむっくんは絶好調ですね』


 そうでしょう! ボクはいつでも元気ですよトモさん!


『はああぁあぁああああああああああああああああああああああああ……』


 ……ナンデ!?



・・☆・・



「このように朝早くに押しかけてしまい、誠にもって申し訳ございません!」


 女将さんに案内された個室で、ボクに頭を下げている男のヒトがいる。

トルゴーンなのでむしんちゅなのかな~って思ったら……けもんちゅ、獣人さんだった。


「イエイエ、オ気ニナサラズ。座ッテ話シマショウ」


 そのヒトは……えっと、真っ白いライオンさんだった。

お爺さんだから白髪なんじゃなくて、元々そういう種族? なんだろうね、たぶん。

ケモ度80%くらいの、『昔は俺も名うての冒険者だったが……』って感じの、ホワイトライオンさん。

今でも超強そう……ゆったりした服を着てるけど、絶対その下は筋肉の鎧でっしゃろ?


 お互いに席に座る。

イセコさんはボクの後ろにいる……座ってと言おうとしたら、素早く首を振られた。

そ、そうですか……


「私はクトウ冒険者ギルドで長をさせていただいております、ロウガと申します」


 名前も格好いい! トルゴーン風の名前じゃないから移住者さんかな。


「ムークデス、冒険者ギルドニハイツモオ世話ニナッテイマス……ヨロシクオネガイシマス」


「イセコと申します。【影衆】の末席を汚させていただいております」


 ロウガさんは目を丸くした。


「これは……影衆の方でしたか! ゲニーチロ閣下には常日頃お世話になっております!」


 でしょうねえ。

大英雄むしんちゅですから? たぶんダース単位で街とか救ってると思う。


「――今はムーク様にご用があるのでは?」


 イセコさんがちょっと冷たい! え? なんか怒ってらっしゃいます!?


「ええ! それはもう! 申し訳ございません、ムーク様!」


 なにが? 全然謝られる覚えがないのですが???


「オ、オ気ニナサラズ……ソレデ、ボクニ何カ?」


 とにかく軌道修正せんと!


「え、ええ。ムーク様の冒険者としての腕を見込んで、お願いしたいことがあるのですが……」


 冒険者としての腕前? ないですよ?


「この街の東には谷があるのですが……そこに強力な魔物が住み着いたらしく、派遣した冒険者が帰ってこないのです」


 ほほう、初手で不穏!


「ソレハ大変デスネ……ドンナ魔物デスカ?」


「それが……続けて派遣した斥候が言うには、大地竜のようだと」


 大地竜! 未だにちゃんと勝ててないドラゴンだ!

……エンシュで倒したのはビーム狙い撃ちだし、安全な場所だったからねえ。


「クトウに対処できる冒険者はいないのですか?」


「ええ、先のディナ・ロータスの出現によって北方への偵察と魔物の駆除に行っていまして……」


 あー! これがバタフライエフェクトってやーつ!?


「現在動ける者たちには直接戦闘に長けた者が少なく……どうしようかと思案していたところ、ムーク様のことが耳に入りまして……なんとも図々しいお願いですが、どうか依頼を受けてはいただけませんでしょうか!?」

 

 ガバーッ! っと頭を下げるロウガさん。


「もちろん報酬は相場の二倍……いえ三倍お支払いいたします! できうる限りの支援をさせていただきますのでどうか! どうか~!」


 報酬三倍……はそんなに魅力を感じないけど。

でも大地竜だもんね……エンシュみたいな城壁があるところならともかく、この街の規模だとあのブレスでえらいことになりそう。


「……イセコサン、急グ旅ジャナイデスヨネ?」


「ええ、特に急かすような連絡は届いておりませんので……このお話、お受けになりますか?」


「ほ、本当ですか!?」


 身を起こすロウガさんに、ボクは頷く。


「ハイ、スグニ準備シマスノデ……ギルドデ詳シク教エテクダサイ」


「はい! ありがとうございます! ありがとうございます!! 早速準備をしてお待ちしておりますので! それでは!」


 ロウガさんは目を輝かせて立ち上がり、ボクの手をギッチギチに握ってから部屋を出て行った。

出て行きながらもむっちゃ頭を下げていた。

今の握力ならあの人が戦っても強いのではなかろうか? 手が割れるかと思ったよ。


「ムーク様、よろしいのですか?」


 イセコさんが聞いてくるけど、これはもうね……


「聞イチャッタカラ仕方ナイデスヨ。ボクガ断ッタ後ニ強イ人ガ来ル保証モナイデスシネ」


 さーて、準備するぞ~。

受けちゃったからには……ネ!


「ふふ……はい! お供いたします!」


 おおうビックリした!?

イセコさんも正義感が強いですなあ……断らなくてよかった!


『(こいつホンマ……まあ、イセコちゃんはウッキウキだから勘弁しといてやるし)』


『(それはそれとしてモヤモヤするので、この気持ちをぶつけるためにウドンを捏ねましょうか)』


『(あーしめっちゃウドン踏みたい! 手伝うよ~!)』


『(御利益がありそうですね……)』



・・☆・・



「お待ちしておりました!」


 準備して宿を出て、やってきました冒険者ギルド。

ここだけはどこの街でも変わりはない気がする。

だいたい二階建てで、一階部分に受付と依頼ボードがあるんよね。


 んで、今は二階にいるんだよ。

ここは関係者専用の部屋らしい。

だって受付の裏から奥に入って、階段を上った先だからね。


 そして、部屋に入ると先程のロウガさんがいた。


「皆様、それではお座り下さい」


 そう、皆様。

今回ボクらはフルメンバーである。

どうする? って聞いたら二つ返事で全員来てくれたんだよね。

とってもいい仲間たちで……ボクはもう嬉しくて無敵ですよ。


「こにちわ、こにちわ~!」


「おお、噂の妖精さんですね。こんにちは……少し難しいお話をしますので、これでもどうぞ。おかわりもありますよ」


 ウワーッ!? 大皿に山盛りのクッキー!

これは獣人さんの超硬いやつではないか!


『ありがとう! おいしそうだわ! おいしそうだわ~!』


「む、これはありがたい……いただこう」


 妖精たちはお礼をして……皆で固まってクッキーを楽しみ始めた。

ボクはバッグからお茶を取り出す……前に! むしんちゅの女性が数人ササ―ッとやってきてお茶を配ってくれた! 早業!


 ロウガさんは妖精たちをニッコニコの目で見ている。

笑うと目じりに皺が寄って無茶苦茶いい人っぽい!

まあ、妖精たちが逃げてないのでいい人なんですけども。


「さて……それでは、ご説明をさせていただきます」


「ハイ」


 遺憾ながらボクはこのパーティのリーダー的な立ち位置なので、正面に座っている。

器じゃないと思うんですけどね……ボク。

今言っても仕方がない。


「こちらが地図になります」


 テーブルに広げられる地図。

ふむ、街がここで……ふんふん、東ってことはこっちに……ああ、これが問題の谷ね。


「初めに狩人から『谷の方から魔物が移動している』という報告がありまして……それからゴブリン、コボルトなどが、谷を出て街の方角に出没するようになってきたのです」


 なるほど。


「こういう場合、元の生息域で災害が起こるか強力な魔物がやってきた……ということが考えられます。というわけで、依頼を出して冒険者を派遣したのですが……先程お話したお通り、未帰還となりました」


 うん、聞いたね。


「そして、決して戦闘をしないように……と言い含めて斥候を派遣して、どうやら大地竜がいるようだと報告がありました」


「確定ではないのナ?」


 アルデアの質問に、ロウガさんは頷いた。


「はい、巨大な糞と……木についている傷跡の高さと大きさから判断したようです。特に、糞に硬い鉱石が混じっていましたので……」


「ああ、確かに大地竜は土ごと獲物を食うからナ。それはほぼ確定なのナ」


 お尻切れないのかな……?

強靭な肛門をお持ちのようで……ああ、いやいやしっかり聞かないと。


「ムーク、どうしたの?」


 マーヤに心配されちゃった!

真面目虫にならなきゃ!!

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます!ムッくんそこやない、論点そこやない。獣人クッキー食べたい!
むっくんがおしりかじり虫になっちゃうw
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