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第71話 ボクの虫生こんなんばっかじゃないですか???

「――ク様! ムーク様ァ!!」


「オゴゴゴ……ッハ!?」


 気が付いたら涙目のロロンに超揺すられてた。

アレ、ボクは棘を素敵に全部避けて反撃を決意したはずでは……?

一体何が……ムムー!

ボクを揺するロロンの背後から迫る、棘! まだ残ってたのか!


「デリャアアアッ!!」「はぷん!?」


 ロロンを庇いつつ、ヴァーティガを振る!

ジャストミート! 棘はバラバラになった!

あっぶない……


「アリガト、ロロン」


「じゃじゃじゃぁ……ごぶ、御無事で何よりでがんすぅ……!」


 ……ああ、なるほど。

地面に明らかにボクが激突して転がった形跡がある。

棘を全部躱して安心しちゃったんか……


 ディナ・ロータスはまだこちらを向こうとしている。

ダルトンさんはともかく、ロロンは飛べるわけじゃないのでこのままじゃ危険だ!


「ジャ、ボクハ行クネ……ダルトンサンハ?」


「反対側にまわりやんした! ムーク様、お気をつけで!」


 やる気満々なロロンを撫でて魔石を口に放り込み――噛み砕く!

狙うはボクが破壊した膝! 色々邪魔が入ったけど、渾身の一撃を今度こそ叩き込んでやる!


「――ッフ!」


 大きいストライドで踏み切る。

一歩、二歩、三歩目で――ジャンプゥ!

地面から足が離れた瞬間に、アフターバーナー全開!

さっきの失敗は繰り返さないぞ! 一瞬だけ全力で稼働させつつ――補助翼を上昇方向へ!


 地面が遠くなり、ディナ・ロータスの甲羅を越えた高さまで到達。

衝撃波で姿勢制御して――両足を、前に!

その状態で、アフターバーナー再点火!

みしり、と装甲が軋んで――突撃する! ボク!!


 ディナ・ロータスの体から、再度発射される棘!

さっきまで散々砕いてきたんだ――対処は、こうする!


「――ハァアアアアッ!!」


 下半身、特に足先に魔力を全力で集めて……装甲を、強化!

攻撃力と防御力を向上させて、さらに被弾面積を減らす!

そして……このまま、突撃!

加速しながら――横回転! 


 迎撃に飛んで来る棘という棘を砕きながら、ドリル回転で特攻する。

目が回るけど……だんだん、慣れてきた!

あっという間に棘の弾幕を潜り抜け――見えた! 損傷した膝!

ダルトンさんやイセコさんが暴れているのか、ボクへの攻撃が手薄になってるっぽいね!


 ――好機!


「――喰ゥラ、エェエエエエエエエエエエエエエエッ!!」


 魔力全開! むっくん・ドリルキィィィイイイイイイイック!!


 狙いは外さず! ダメージのある膝に足が太腿までめり込む!

ここォ! ゼロ距離パイルオンッ!!


 魔力を極限まで込めた両足パイルが、さらに肉を抉って食い込む!

その反動で、傷口から脱出!

離脱はせずに――飛び出た肉片を掴んで、ブレーキ!

すかさず――さらに大きくなった傷口にぶち込む! ヴァーティガを!!


「『我ガ剣ハ、牙ナキモノノタメ』!!」


 傷口から、鮮血と一緒に蒼い光が漏れる。

魔石を噛み砕いて――追加詠唱!


「『汝ガ怨敵ハ、眼前ニ在リ』――ッグゥウウ!?!?」


 骨シュリケンが背中に突き刺さった!? ああクソ! 甲羅の裏から飛んできたのか!

だけど、止めない!


「――『吠エヨ』!」


 魔力を! もっともっと、魔力をッ!!

視界がかすむ程、叩き込む!


「『ソノ名ノ如ク』――!!」


 瞬間、ボクに降りかかる大量の鮮血。

弾き出されそうな圧力を、隠形刃椀を展開して周囲に突き刺して――耐える!



「――ガアアアアアゴオオオァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?!?!?」



 スッゴイ悲鳴――ってことは、効いてるってことだねェ!


「グウウウウウウゥウウ……!」


 傷口からは、鮮血と一緒に頼もしい蒼い光が漏れている!

そうか、『内部』には魔法が通るんだ! それなら――最後、までッ!!


「雄ォオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」


 魔石で生成された魔力を根こそぎ、ヴァーティガに!

振動が激しくなり――視界に、変化があった!


 ――傷口の内部から、蒼い紋様が這い出してくる。

輝く幾何学模様が、ディナ・ロータスの皮膚を染めていく!


『ぬ、う……ムーク、止めよ! それ以上はお主にまで逆流する!』


 ヴァルの念話。

初めて使った時みたいに両腕の装甲が吹き飛ぶのは困る!


「グゥウ!」


 隠形刃腕のストッパーを解除ッ!

ビームを放出するヴァーティガからの圧力が強くなって――ボクは、後ろに吹き飛ばされる!


『余剰魔力が噴き出るぞ! 結界で身を守れ、ムーク!』


 了解ッ! 頑張れヴィラールさんの魔法具!!



「ギガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?!?」



 巨大な悲鳴。

ヴァーティガの全力ビームを叩き込んだ傷口は――内側から爆発。

骨片、肉片、血液、それから魔力ををばら撒く!!


「グッ! ヌッ!? ッガ!!」


 展開した結界ごと押されて、ボクはたっぷり50メートルは吹き飛ばされた。

なんとか足から着地して、倒れるのを防いだ。


「……デッカイ骨ダナア」


 巨体を震わせて叫ぶディナ・ロータス。

その膝は……巨大な関節の骨がむき出しになっている。

膝を覆っている前面の皮膚と肉を、ヴァーティガのビームが吹き飛ばした結果だ。


「オワワ……バキバキ」


 魔力があまりにも少ない、ぶっ倒れる前に追加魔石ボリボリ……

しかしトモさん、てっきり亀さんはぶっ倒れると思ったんだけど叫ぶだけで元気ねえ……


『それはそうです、足を一本吹き飛ばしたわけではないのですから。ですが、機動力は確実に低下しましたよ……先程のようにむっくんを追うことはもうできないかと』


 そっか、そうだよね!

よし、それならまた同じことを繰り返せばいいんだ!

幸いにして魔石はお店が開けるくらいあるし……同じところをぶん殴りまくって今度こそいただくぞ! 半月板を……!


『謎の半月板推し……まあ、その戦法は間違ってはいませんが。現在進行形でダルトンさんが反対側の脛を殴りまくっていますし、これを繰り返せばいいでしょう』


 脛を三節棍でボコボコにしてるんだろうなあ……弁慶さんが号泣どころか失神してそう。


『しかし、内部破壊に目を付けたのは鮮やかでしたね。むっくんのバトルスキルが向上して私はホッコリしています』


 えへへ、照れるなあ。

ドリルキックも上手く決まってよかったよ。

目が回るけど高速横回転は安定するねえ。


『ちなみにメイヴェル様は観戦に興奮しすぎて神殿の柱を握り潰しました』


 と、倒壊しないといいなあ……


『さあ、回復が終わったらもうひと踏ん張りですよ、むっくん!』


 うん! 攻撃が通用するって知ったら勇気が湧いてきたよ!

あとはクソヤバブレスにだけ注意して立ち回ろう!


『良い心がけです。キャンぺー中につき、トモさんポイントを10倍――なんですか、この魔力の脈動は!?』


 えっ急にどうしたん?


『ディナ・ロータスの放つ魔力が内部に集中! ブレスの予兆です!』


 なんやて!? このタイミングで撃つつもりなん?

足をやられて旋回速度が落ちてるのに、これじゃ誰にも当たんないでしょ?

……だけど、油断は禁物だ。

相手は物理法則ガン無視の魔物なんだから――あ、あぁ?


『なんっ――』


 ディナ・ロータスはブルリと震えて――足を、甲羅の中に引っ込めた。

いや、足だけじゃなくて他の部分も全部引っ込めたみたい。

だって一瞬胴体が宙に浮いて――地面に落ちたもん。


「ウワッ――!」


 爆風みたいな風と地震!

あれだけの質量が落っこちたんだからそうなるか……舞い上がった土煙で前が見えない!

でも、亀さんは亀さんなんだね。

アレで何をするつもりなんだろ?

まさか、特撮で有名なあの亀さんみたくジェット噴射で飛んで逃げたりするのかな?


『私の情報にもこのような行動はありませんね。何が起こってもいいように、離脱の準備をしておいてください』


 了解です!

さあ、何をしてくる――おっと、土煙が晴れそう!

なんか風が向こうから動いてるみたい――


 ――あ?


 なんで、土煙が晴れたら――殺意マシマシのタートルヘッドが、あるの?

さっきまでそこには足があったのに――


 殺意のこもった目で、ディナ・ロータスは『ボクを』睨んでいる。

車でも戦車でも丸呑みできそうな口が、ぽっかり開いて――



『――いかん! ムーク! ワレを盾にしろッ!!』



 考える前に、ヴァーティガを地面に突き刺した。

右手で柄を持ち、左腕を側面に添えて、影に隠れて――魔力を、流す。



 ――あたり一面の、茶色。



 それがブレスだと気付いたのは、ヴァーティガからはみ出た左肩が一瞬で削り取られてからだった。

痛みもなく、あまりにも一瞬で。


「ッガ、オァ、グゥウ! ウゥウウウウウウウウウウッ!!」


 激流に放り込まれたみたいだ!

一瞬でも気を抜くと、地面ごと吹き飛ばされそう、だ!

ヴァーティガは折れる気配もないけど、それより先にボクが死にそう!

防御に使っている関係か、かつてない勢いで魔力が減って、吸われていく!?


『耐えよムーク! ワレはその程度では壊れん! お主の魔力が続く限り、耐えよッ!!』


 いつになく切羽詰まったヴァルの声とほぼ当時に、ボクの左腕が根元から千切れ飛んだ。


『むっくん! 頭だけは守ってください! 耐えて!』


 ぐむぅう……任せてよ、トモさん!

こんな所でボクの虫生を終わらせてたまる、かーッ!!



・・☆・・



「グ、ウゥウ……」


 まさに土石流。

周囲の地面は残らず削り取られて、ボクの周りより一段低くなっている。


『むっくん! むっくん! 気を確かに! 大丈夫です、治りますよ!』


 右腕は、ある。

最後まで、しっかりヴァーティガを握っていた右腕は。


 ――ボクは、右腕と頭、それと胴体しか残っていなかった。 


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― 新着の感想 ―
またムックンの寿命が!
開幕何事!?と思ったら地面に激突してたのかw そして久しぶりの半身状態。 この(くっそ不味い)カメさんの魔石を喰らえば、 また進化できるかな? しかしカメさんはジャンプで防御と方向転換と煙幕を同時…
更新ありがとうございます。嗚呼嗚呼ぁーー!?マジかー!?回転したなあのガメ◯!ヴァーティガさん無かったらムッくん爆死。ムッくんが旗みたいになっちょる。でも前は頭と胸部ぐらいしか残ってなかったからセーフ…
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