第51話 お久しセクシーフェアリー!
「ラーヤ! ラーヤ~!」
「はぁい、お久しぶりぃ。 元気そうでよかったわぁ、アカちゃん」
アカが飛んでいって、妖精……ラーヤルーラに抱き着いた。
結構な勢いで突撃していったのに、それを受け止めたラーヤはビクともしていない。
……スケールは同じくらいなんだけど、何かの秘訣があるのだろうか。
「ムークちゃんも、お久しぶりぃ。あらぁ、しばらく見ない間にとぉっても格好よくなったわよぉ」
「エヘヘ、鍛エテマスカラ」
そりゃあ、まあ苦労したからねえ……
「ロロンちゃんも元気そうねぇ。ムークちゃんと仲良くしてるぅ?」
「にゃか、にゃかよく……し、しておりやんす! ムーク様とは、ななな仲良しでやんすッ!」
……ムッチャ力いっぱい言うじゃん、ロロン。
ふへへ、なーんかくすぐったいよ!
『そう思うなら口に出すことです、むっくん。むっくんは色々と迂闊で粗忽でボケボケですが……性質は善良。さあ、恐れずに口に出しなさい!』
なんかボコボコに言われたけど……ま、まあいいか。
「ウン、仲良シダヨ~? ロロンニハトッテモトッテモオ世話ニナッテルヨ! カワイクッテ最高ノ子分! アルマードデ一番ノ素敵ナ子!」
まあ、他にアルマードの女の子知らないけど……それでも、ロロンが間違いなくトップ層なのは確信している虫です。
だってとってもとってもいい子だもの。
「……は、へぇ、はわ、はわわ……! おお、お、おおおおしょすいごと~‼‼」
「メギャーッ!?!? ナンデ!?!?」
突然完熟トマトくらい真っ赤になったロロンは、ダッシュで廊下へ消えていった。
途中にいたボクをボウリングのピンくらい撥ね飛ばして。
なんて衝撃力だ! 中型トラックに撥ねられた気分!!
「モフン」
ボクは空中で三回転しつつ、柔らかベッドに突っ込むのだった。
……いやあ、鍛えていたからなんとかなった。
貧弱虫だったら異世界に転生する羽目になる所だった……!
「おやびん! アカは~? アカは~???」
ほっぺを膨らませて顔面に突撃してきたアカを、とりあえずくすぐるすることにした。
「最強デ最高ノ子分ガドウシタッテ~? コチョコチョ~?」
「きゃーははは! あははぁ!」
一瞬で機嫌の直る子分の可愛さよ。
アカかわい、岩にしみいるセミシャウト……!
ムムム、ボクってばハイクの才能もあるのかも……?
『(……妄言は置いておいてムロシャフト様、先程の判定を!)』
『(ようやった……感動したし‼ 100点満点中の2億点!! ポインヨ付与! ポインヨ付与!!)』
『(一挙手一投足が愛おしく、素晴らしい虫たちよ……ヴェルママポイントを合計10億点……何故です! 皆何故止めるのです!! ええい離しなさい!)』
・・☆・・
ボクらメッセンジャーのピーちゃんも一緒に、宿に戻った。
言われたとおり、ボクらの部屋には前に別れた時のまんまのラーヤがいた。
まあ、ボクやアカじゃないからそうそう進化とかせんよね……そもそも進化するかもシランケド。
んでんで、今に至る。
結局ロロンはあれから戻ってきておりません。
どこへ行ったのやら……あんまり遅いようなら探しに行こうかな。
「死ぬまでに近くで1度見れれば幸福だと言われている妖精が3人もいるのナ。つまり! 私の人生は他人の3倍恵まれているということなのナ~♪」
『ポジティブで素敵よ! 素敵だわ~!』
今現在、お部屋にいるのはボクにアカ、アルデアとピーちゃん。
そしてラーヤとイセコさん!
アルデアとラーヤはすぐに仲良くなったみたいで、お酒を飲みながらお話しつつボクらを待っていたんだって。
コミュ力高いなあ、そらんちゅさん。
「まぁまぁ、貴方ってチロちゃんの部下さんなのねぇ。あの子、元気にしてるぅ?」
「ええ、今も国中を飛び回っておられます。それにしても……まさか、『まほろばの蝶』様にお目にかかれるとは……お噂はかねがね……」
どうやらラーヤはゲニーチロさんとも顔見知りらしいっていうか!
チロちゃん!? ゲニーチロさんがチロちゃん!?
それになんか格好いい名前で呼ばれてる! ラーヤが!!
情報が渋滞を起こしている!!
「……『マホロバノ蝶』ッテナンジャロ。アルデア、知ッテル? 有名ナン?」
とりあえずアルデアに聞いてみる。
……水みたいにお酒飲むのやめな~?
「むしろ知らんお前に驚きなのナ……? 子供でも名前を知っているような妖精なのナ。こうして見ることができて驚きなのナ。妖精の中でも、上位だと目されているのナ」
アルデアはお酒をグビグビ飲みつつ教えてくれた。
そんなに有名なんじゃ……ボクはこの世界に来て1年経ってないから知らなくて当然なのよ?
対外的には大森林独りぼっちの孤児設定で行くけども。
っていうかラーヤってやっぱりお偉いさんだったんじゃん。
「もう、アルデアちゃんやめてよぉ。私はね、ちょおっと長生きしてるから色々知られているだけなのよぉ? チロちゃんみたいに何度も国の危機を救ったりしてないんだからぁ」
「いや、さすがにお頭と比べるのは……」
イセコさんがワタワタしている。
ゲニーチロさんは救国の英雄ですからなあ……何度も???
やだこの世界怖すぎ……国の危機がポンポコあるなんて怖すぎ……
「アノ、今更ナンダケド……ラーヤハナンデココニ来タン? ナンカノ用事?」
今の今まで和やかすぎて忘れてた。
いや、ただフラっと遊びに来てくれたのでも嬉しいけどさ。
「あらぁ、そういえば言ってなかったわねぇ」
ラーヤはそう言って、ボクの肩に飛んできた。
「何かの神に見えてきたのナ。御利益ありそうナ」
笑いながら手を合わせるアルデアである。
現在ボクの左肩にはアカ、右肩にはラーヤ、そして頭にはピーちゃんが乗っている。
……変則型のトーテムポールか何かかしら、ボクは。
「まずねぇ、私はおチビちゃんたちを逃がすためにここへ来たのぉ」
おチビちゃん?
逃がすって……ひょっとして妖精のことかしら?
「ムークちゃんが今日戦った黒い魔物いるでしょぉ? アレから弱いおチビちゃんたちを守ってあげないといけないのぉ」
「エ、ナンデ知ッテルノ?」
黒い魔物のことはともかく、ボクがアレと戦ったのは知らないハズなのに……
「ムークちゃんたちが戦っていた森から、おチビちゃんが逃げて来たから聞いてたのぉ。とぉっても強い虫人さんが、黒いオオムシクイドリを倒しちゃったってねぇ?」
あ、そこ情報なんだ。
あの森にも妖精さんがいたんだ……全然わからんかったよ。
「あの黒い魔物はねぇ、特に妖精を好むのよぉ。だから、自衛できないおチビちゃんたちをねぇ、避難場所まで引率してるのぉ」
なるほどなるほど。
「アノ、アカトピーチャンハ大丈夫カナ?」
「大丈夫よぉ。2人はとっても速く飛べるし、特にアカちゃんは強くなったからぁ……それに、ムークちゃんがいるからねぇ」
……おおう、それは信頼されたものだ。
確かに、2人ともすっごく速く飛べるもんね、ボクよりも。
逃げるだけなら大丈夫か……
「しかし、大変な仕事なのナ。 どれくらいの妖精を保護するのナ?」
「まあ少なくはないけど、みんなの位置って大体わかるしぃ……それに、私1人でやってるわけじゃないのよぉ?」
「ア、ソウナン?」
てっきりラーヤが1人でやってるのかと……
「そうよぉ、いくら珍しいって言っても、私1人じゃ無理よぉ。うふふ……♪」
ラーヤは壺に嵌まったみたいで、ボクのほっぺにもたれかかって笑い出した。
こしょばい、こしょばい!
『むっくん、むっくん』
お、なんですかトモさんや。
『ドアの外にロロンさんがいますよ。飛び出したのが恥ずかしくて戻り辛いようですね』
なんやて!?
子分の危機は親分の出番ですぞ~!!
いざ出撃! 最悪抱っこして連行せねば~!
『ベッドに!? やるやんアンタ! 見直したし!!』
ママ! シャフさんを手ごろな所に縛り付けてください!!
『この母に任せなさい!』
『ぐぅうえええ……!? そこ首! 首! 首しか締まってないぐううええええ~!?!?』
『あああ、柱がへし折れました……』
何も聞こえない! 聞こえない!!
・・☆・・
「はぁいムークちゃん、今大丈夫ぅ?」
「キャーッ!? 妖精サンノエッチ!? 全然大丈夫ジャナアイ!?!?」
ロロンも落ち着き、みんなでワイワイ話をして……いつもながら美味しいお夕飯をご馳走になった。
そして、宿のお姉さんに紹介してもらった個室サウナめいたお風呂屋さんに行ったんだけど……
熱した石に水をかけて、その蒸気を堪能していると……いつの間にかラーヤがボクの肩に乗っていた!
ちょっと! ここは男湯ですのよ!?
「ア、モシカシテ……ラーヤハ男性……ジャナイ!!」
ウチのアカの装甲は、皮膚と同じようなものらしくって脱げない。
だけど、ラーヤのドレスは普通の服だったみたい!
ち、ちっちゃいけど大きい母性が見えちゃった!
『まあ! むっくんのドスケベインセクト!』
ボクは無罪! 無罪ですのよ!!
むしろこの場合被害者じゃないの!?
「トリアエズ、コノタオル巻イテ……」
「はぁい、うふふ……ヒトの子の風習は面白いわねぇ♪」
……ふう、これで危機は脱した。
「ソレデ、何カ用事?」
「あらぁ、鋭い。ムークちゃんも成長したわねぇ♪」
やっぱりね。
いくらなんでも、この場に突撃してくる理由ってそれ以外ないでしょ。
ちょうどボクしかいないんだし、ここは。
『ここで絶賛反省中のムロシャフト様からのお便りです。なになに……あひっ!? も、申し訳ありませんが私にはとても口に出せません……!』
反省中ってなんでさ。
ママがやってくれたんかな? それにしてもお便りってなんですか……
何が書いてあったのさ……興味はないけど。
「フム、ソレデ……ドシタン?」
タオルを巻いたラーヤは、ボクの肩に座った。
そこに座るんだ……いいけど、いいけど落ち着かない!
なーんか柔らかい!
「ええとねぇ、近所まで来てたのも、おチビちゃんたちの保護も本当なんだけどぉ……もう1つ、理由があるのぉ」
「フムン」
なんでしょ、ボクがのぼせる前に頼みますよ。
「ムークちゃんの持ってる、棍棒さんのことなんだけどぉ――」
……ヴァーティガ?




