第45話 新しいお料理!
「ホムホム、修行デスカ」
暖かいお湯につかっている。
うーん、お花の匂いが素敵だ~。
「はい、名付け親からの指示で……でも強制じゃないですよ? 僕の意志ですから!」
「ホホウ、ソレハソレハ……」
ロロンと組んだ依頼の帰りに一緒になった、ポチくん。
世間話をしながら街に帰って、ギルドで完了手続き。
それが終わってお風呂に行こうと思ったら、ポチくんも一緒に来た。
というわけで、裸の付き合いなう。
『エロい意味で?』
まだいたの、シャフさん……違うよう!
男同士! 男同士!
ボクは未だに性別不詳ですけども!!
ンモ~……
「ムークさんたちは、どこまで行くんですか?」
お湯につかったポチくん。
モフモフの毛が濡れて、なんか……ガリガリに見える。
シャンプー中のワンちゃんだ。
「首都デス。ソコガ当面ノ目的地デスネ~……」
ぱしゃぱしゃ顔を洗う虫。
はー、それにしても生き返る。
ついでに寿命も増えないもんかな~?
『そこにないならないですね』
残念無念……
「ラグレスはいい所ですよ! 僕も一度行きましたけど、大きいし、色んな人がいっぱいいるし、道場も沢山! とってもいい勉強になりました!」
道場、道場か……まあ、ロロンは喜びそうね。
「ホホウ……! ゴ飯モサゾ美味シインデショウネ!」
でもボクの興味はそっち!
首都だもんね! 楽しみだなあ……!
「はい! 色んな国の料理が食べられますよ! 美味しかったなあ……あれもこれも!」
いかん、お風呂中なのにお腹空いてきた!
話をそらそう!
「ソ、ソイウエバ『名付ケ親サン』ッテ一緒ニイルンデスカ?」
前からちょくちょく話してたもんね。
どんな人なんかな。
「いえ、名付け親……『師匠』は今どこにいるかわかりません。『2、3年一人で修業しておけ』と言われまして……ヴィクセンさんたちは師匠の知り合いなので、その縁で面倒を見ていただいています」
「ナルホド」
師匠! 師匠ですって!
絶対強い人なんだろうなあ……
「ムークさんもとってもお強いですけど、師匠も凄く強いんですよ!」
「ボクハソコソコデスノデ……」
「はっはっは、御謙遜ですね!」
うおう……なんて綺麗で真っ直ぐな目なんだ……
これは平常時のロロンに匹敵する……!
「ハハハ……アハハ……」
うん、この問題は片付かないし、のぼせそうだからそろそろ上がろうかな……
・・☆・・
「ほこほこ、おやびん、ほこほこ~!」
「コショバイ」
お風呂を出て、お外のベンチでちょっと涼んでいるとアカが飛んできた。
トモさんナビが冴えわたってるねえ。
熱を持った肩で楽しそうにキャッキャしている。
「本当に仲がいいですねえ……妖精ってだけで珍しいのに、こんなに人に懐いてるなんて」
「ムーク様の人徳のなせる業でやんす」
ポチくんとロロンがニコニコしている。
……人徳ってボクにあるんだろうか?
「アカハ冷タイネエ、マントニドウゾドウゾ~?」
「ここしゅき! しゅき~!」
アカは即座に移動した定位置で、ボクを見上げてニコニコしている。
はーかわえ、なんじゃこの妖精。
「今日ハ夕飯頼ンデナイシ、ポチクンモ一緒ニゴ飯行カナイ?」
「いいんですか? 是非ご一緒したいです! 旅の話をもっと聞きたいですし!」
ポチくんは勉強熱心だなあ……
「ハハハ……ロロン、コノ前ノオ店デイイカナ?」
「んだなっす! 問題ねがんす!」
ダルトンさんと会ったお店に行こう。
異世界ケバブ以外にも美味しそうなメニューあったしね!
何食べようかな~?
「マサカ……マサカノ、盲点!」
ボクの目の前には……湯気を立てる、料理がある。
赤いソースから覗く、艶やかな……麺!!
ノウ! パスタ! パスタです!
ミートソーススパゲティ! です!!
やって来たお店で、何頼もうかな……って思ってると。
隣のお客さんが食べてたのは、まさかのパスタでした。
『隣のお客さんと同じのくーださい!!』って即座に注文したんだよね。
「珍しい料理だなっす……だども、ポモッドのソースがいい匂いでやんす~!」
ロロンもワクワクしている。
いやー、異世界なんだから『パスタ』って名前じゃなかっただけで、普通に料理としては存在してたんだねえ、パスタ!
ちなみにお名前は『ジマリッカ』って言うんだって。
麦から作った麺がその名前で、後は上のソースで変わるんだとか。
なのでボクの前にあるこれは『ポモッドソースのジマリッカ』です。
「乾燥したジマリッカは場所を取らないから、冒険者にも結構便利だよ! 北の方ではよく食べられてるけど……トルゴーンで出してるとこはそんなにないねえ」
ここの店主である熊さんっぽい獣人さんが、そう説明してくれる。
見た目は迫力あるけど、アカに手を振られてニッコニコだから絶対にいい人ですね。
渡る世間は基本いい人。
たまにバグでクソヒューマンが湧くけど。
ま、気を取り直して……木のフォークでくるくる巻いて……パクリ。
「ン~! オイシイ!」
トマトソースのスパゲッティ! 不味いわけがないよネ!
トマトが新鮮なのかどうなのか知らないけど、とにかく美味しい! 美味しい!
「まうまう……おいし! おいし!」
アカもボクのお手製フォークで頬張っている。
気に入ったみたいでよかった! この子が気に入らない料理は未だかつてないけども!
「巻いて巻いて……んぐ、美味しいですね!」
「んめめなっす~!」
ポチくんもロロンモ問題なく食べられてるみたい。
まあ、ラーメンよりはすすらないぶん簡単だよねえ。
「水さえあれば……ふもも、これはえがんすな、ももも……是非仕入れておきてえのす! もももも」
食べながらもロロンが有能だ。
でも美味しく食べるのを優先してほしい虫。
「おお、気に入ったかい? ウチは卸もやってるから買って行っておくれよ。その代わりと言っちゃなんだが、『妖精お墨付き』の看板を出したいねえ、がはは!」
「おいし、おいし! これしゅき!」
「ダ、ソウデス。ドウゾドウゾ」
前にも思ったけど、街々の料理屋さんに設置されることになると思うの。
この子、好き嫌いどころかたぶん万物をおいしくいただけるし。
「さっそく発注しないとな! それじゃ、かわいい妖精さんにはオマケをどうぞ!」
「わはーい!」
オマケというには大きすぎるお皿が置かれた。
中身はトマトサラダ! アカは大喜びである。
「ア、スイマセン……」
「いいってことよ! 妖精は大地の守り神だからな、優しくしてもし過ぎるってことはないんだぜ、気にしなさんな~」
そう言って、熊さんは厨房へ引っ込んでいく。
厨房にいた奥さんっぽい獣人さんも、アカに向かって嬉しそうに手を振っていた。
いい人しかおらんなあ、ここ……
「おやびん、いい? たべてい~い?」
「モリモリオ食ベ~?」
「きゃーはは! んぅ、あはは~!」
キラキラした目でこっちを見るアカを、とりあえず撫でることにした。
撫でちゃろ! 静電気が目視できるくらい撫でちゃろ~!
『パスタだわ! 食べたいわ、食べたいわ~!』
「ミギャーッ!?!?」
唐突に突っ込んできたピーちゃんが! 的確にボクの頬に!
グエーッ!? 追加注文しますゥ!!
『オチも付いてよかったですね』
『むっくんの人生イズ喜劇だし~? ……お隣ちゃん、呼吸困難になるくらい面白かったん?』
よくないやい! よくないやい!!
・・☆・・
「ムーク殿、少しよろしいか?」
「ファイ?」
夕食を終え、宿に戻った。
それで、みんな思い思いに休憩している。
お風呂にも入ったし、後は寝るだけかな~……なんて思ってたら、ダルトンさんが部屋に訪ねて来た。
「ナンデショ? ア、トリアエズ入ッテクダサイ」
お茶でもいれましょうかね~。
「じゃじゃじゃ、そげな長話ではねがんす。こごで事足りやんす」
「ソウナンデスカ?」
ダルトンさんはボクから一瞬目線を外して、部屋の中を見た。
ベッドの上では丸まったロロンと、同じように丸まったアカとピーちゃんが眠っている。
アルデアはウッキウキで飲みに行きました。
「子供らぁが寝とりやんす。起こすのは不憫でがんす」
優しい! そんならボクが外に出るか。
廊下に出て、ドアを閉める。
「たいしたこどではね。明日あたり討伐依頼ば受けねが?」
「オー、イイデスヨ。何カ目当テノ魔物デモ?」
トーラスさんたちはまだ出発できそうにないし、大丈夫でしょ。
ここで急いで国境を越える時に倒れられても大変だもんね。
「いんや、そうではね。お互いの力量ば、見ておきてえのす」
あ、そういうことね。
「了解デス!」
こちらとしても文句はないネ!
「えがんした! 実は街の北でリククジラモドキば出たと聞きやんして」
……なんか強そうなモドキの名前!!




