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第41話 街ブラ虫、出会う。

「コンニチハー!!」


「ひいやああああ!? 凄くいい男!?」


 座って果物を齧っていたら、まさかの味噌の匂いがした。

ボクに搭載された五感をフル活用して特定したのは、市場でも端っこの方にあるお店。

そこには木の樽がいっぱい積まれていて、若い虫人の女性が店番をしていた。

ダッシュで近付いたボクにとてもビックリしている。

ごめんなさい! 訴えないでください!!


「スイマセン! 味噌ニ我ヲ忘レテ……!」


 そう言うと、ワタワタしていた……たぶん甲殻系のむしんちゅさんはニッコリ笑った。


「まあ! お客さん食通ですねえ! 味噌は好きな人は好きですけど苦手な人はとことん苦手なので……虫人でも好みが分かれるんですよ~」


 おねえさんが小さな樽を見せてくれた。

その中にあるのは……茶色い塊! まぎれもない味噌! 味噌!

ちょっと赤味噌っぽい!

ていうか今気付いたけどこの世界でも味噌って言うんだ!

さっちゃんさんが作ったのかな?


『いえ、味噌自体はもっと昔から細々とあるようですね……ただ、500年前から若干ポピュラーになっているので、おそらくさっちゃんさんやゴーサクさんが大きく広めたのかと』


 ふむん……じゃあもっと昔に日本人さんがやってきてたってことか……この世界、地球からの転生者さんちょこちょこいたっぽいし。


「おやびん、それなに、なーに?」


 アカが追い付いてきた。

いかんいかん、我を忘れてダッシュしてしまった。反省虫。


「まあまあ! かわいらしい妖精さん! これは味噌っていう調味料よ、親分さんが喜んでるようにとっても美味しい――」


『お味噌! お味噌だわ! お味噌だわ~!!』


「まあまあまあ!? 新しい妖精さんだわ!?」


 ジェット機みたいな勢いで突っ込んできたピーちゃんに、おねえさんは目を丸くしている。

やっぱりキミも味噌と聞いたら元気になるねえ! ボクもだけど!


「味噌ですか。トルゴーン北部ではよく流通していますが、外からいらしたムーク様はよくご存じでしたね?」


 いつの間にか後ろにいたイセコさんが、首をかしげている。

こ、困った時の~! 


「……エルフサンカラ聞イタ【融和王】ノオ話ニ出テキテ。トッテモ美味シイッテ聞イテ、イツカ食ベタイナアッテ……」


「なるほど、【融和王】様のお膝元であるロストラッドでは今でも大人気ですからね」


 困った時にのエルフさん&ヤマダさん!

すいません……訴えないでください! 特に融和王様!!


「じゃじゃじゃ、これが話に聞く【ミソ】でやんすか! んん~……なんとも芳醇な匂いがしやんす!」


 買った調味料を抱えたロロンモやって来た。

よしよし、拒否反応は出てないみたいだね!


「ロロン、ソノ……」


「いぐらでも! ムーク様はもっともっとお金ば使ってもええのす! 遠慮なぐ、お買い上げなっせ!」


 ぱあ、とロロンが笑う。

はあ……なにこの、なにこの全肯定超絶優しい子分!

足を向けて眠れない! 眠れない~!

……とりあえず二拍一礼しとこ。


「じゃじゃじゃ!? お、おおおおやめくなっせ!」


 ロロンはとっても慌ててるけど……これで我がむっくんパーティに味噌が追加されたわけだ。

無敵……無敵……無敵パーティだよもう!


「オネエサン! ソノ中クライノ樽ヲクダサイナ!!」


「はーい! まいどあり~! 冷暗所なら半年はもつわよ、なるべく空気を入れないで使ってあげてね!」


 結構長持ちするのね……知らんかった!


「それと……おにいさんたちは旅人さんよね? この後首都に行く? 行くなら【スズキ味噌店】を探してみてね、そこならいつでも買えるから」


「アリガトウゴザイマス~!!」


 やったあ! 首都に行ったら絶対探してみよう、そうしよう!!

……名前からして日本人が絡んでそうなお店ですけど!


 お金を払って、樽を受け取る。

おお……この素敵な香り! うっひょ~!

ボクってば記憶ないけど、この気持ちは体に刻まれてるのに違いないや!


『味噌樽を抱えて踊り狂う虫……日本だと新種の妖怪認定不可避ですね、【妖怪味噌担ぎ】的な』


 トモさんのツッコミも気にせず、ボクはしばし妖精たちと謎ダンスに興じるのだった。

あ、ちなみにお値段は100ガル! 食品としては結構な高級品!



・・☆・・



「イイ買イ物ヲシタ……!」


『彩よ! 毎日の食卓に彩が加わったわ! 加わったわ~!』


 味噌樽をバッグに収納し、ホクホクで街を歩く。

味噌の味を知ってるピーちゃんは、ボクの肩、頭、肩を高速でジャンプ移動しながら喜んでいる。

素晴らしいバランス感覚だ。

味噌を知らないアカも、なにやら美味しいものだって理解しているのかニコニコして嬉しそう。


「ムーク様があのようにお喜びに……ふふ、少し子供のようでかわいらしいと思いませんか?」


「んだなっす、ムーク様が嬉しいとワダスも嬉しいのす!」


 なんかロロンたちもキャッキャしとる!

ふふふ、味噌は世界を平和にするってことか……!


『ともちん、コイツ次の進化で聴覚3000倍にしたろ』


『魅力的な提案ですが進化への介入は我々では不可能ですので……涙を呑みつつ熱燗も吞みましょうか。今日のオツマミは鴨のソテーです、ワサビ醤油が合いますよ』


『むほほ、たまらんし~! 青ネギ! 青ネギも頂戴!』


『はい、こちらに』


 こんな明るいうちからお酒を!

それにそんなに耳が良くなったら爆発して死んじゃうでしょ!

前にヴェルママのシャウトで気絶したのに!


『美味しいものの気配がしますね、女神トモ!』


『いらっしゃいませ、炙った厚揚げをどうぞ』


『むむむ……この香ばしさがまた……! 美味です!』


 噂をすればシャドウママ!

まあ、女神様たちはアル中とかにはなんないんだろうからいいけどさ……


『どうやって食べよっか、ピーちゃん』


『出汁があれば味噌汁がいいわ! なければキュウリに塗って齧ってもいいし、お酒で溶いてお肉に塗って焼いてもいいわ~!』


 おいしそう!

あ、そういえばバッグの中にヴィラールさんと一緒に釣ったあの海藻の魔物が入ってるんだった!

干し魚もあるし……これは味噌汁が飲める! 飲めるゾ~!

豆腐はまだ見つけてないけど、お芋とかを入れれば絶対に美味しい!

今度の野営の時に作ろう! 夢が広がってきたなあ!


「おやびん、おなかすいた、すいたぁ」


 ムムム! そういえばそろそろいい時間な気がする……!

市場でだいぶ過ごしたからねえ!


「ゴハンニシヨッカ、何食ベタイ?」


「なんでも、なんでも~!」『お肉か野菜かお魚が食べたいわ!』


 ピーちゃんもなんでもいいってことね……


「イセコサン、コノ近クニ――オワワ」


 振り向いたらそこにいた!


「このまま南に向かって歩き、浴場の隣にある食堂がよろしいかと。メニューも豊富でいいと、宿の方に教わっております」


 有能さがとどまることを知らないな、この人は……


「ロロンモ、イイ?」


「はい! お供いたしやんす!」


 素敵な全肯定子分よ……

それではご飯! ご飯だ~!



・・☆・・



「オイシイ!」「おいし、おいし~!」『こんなのいっくらでも食べられるわ! 食べられるわ~!』


 イセコさんに案内された食堂。

獣人のご夫婦が営むそこで、アレだアレ。

地球にもあった、アレ!


『ケバブですね』


 そうそれ! そんな感じの名物料理を食べてる!

薄いパンみたいなもので、細切りのお肉と野菜をくるんで……酸味のあるスパイシーなソースで食べるやーつ!

後を引く美味しさだ!


「これはいいですね……仕事をしながらでも食べられます」


「里の方にも似たような料理がありやんした! 帝国の郷土料理らしいのす! ……んめめな~!」


 イセコさんもロロンも気に入ったみたい。

妖精たちは言わずもがなです!

付け合わせのあっさりスープがまた食欲を増加させて……お代わり注文しよっと!

そしてアルデアたちにお土産も買って帰ろっと!


 たまにはボクも働かないとね……ロロンたちは食べてる途中だし、注文をしなきゃ。


「スイマセー……オオウ!?」


 立ち上がって店員さんの方へ向くと、目の前に壁があった。

いや、壁じゃなくって……でっかいヒト!


「――これは、失礼をばいたしやんした」


 ボクより頭2つ分くらい背の高いその人は、聞き馴れた訛りで喋った。

ムキムキで、体の各所には硬質化した皮膚がまるで鎧みたいになっていて……なにより!

チラッと見える背中には、見慣れた装甲板、いや甲羅が!


「こったら場所で同族を見かけて、ついつい声をばかけようと……」


 穏やかな低音ボイスで喋るその人は……アルマード!

ロロンと同じ種族の、男の人だ!

ふわー! 初めて見た! トモさんが前に言ってたようにスキンヘッドだけど、装甲がヘルメットみたいになってる!

でっかくてとっても強そう! これがアルマードの男性か~!


「じゃじゃじゃ! これは……!」


 ロロンも気付いたようで、耳をピンっとさせてる。


「アア、空イテルノデ横ヘドウゾ」


 妖精たちは逃げてない……ってことはいい人!

それなら、座ってお話してもらおう!


「おもさげなござんす」


 ロロンと同じような訛りで話してる……ボクは異世界東北弁に聞こえるけど、みんなにはどうなんだろうか?

なんとことを考えていると、男性は椅子に腰かけた。

縦にも横にも大きいなあ……!


「オラぁ【連ね谷】のダルトンってモンだなっす。あねちゃはどごのお身内で?」


「【跳ね橋】のロロンと申しやんす! なんとはあ、【連ね谷】のあにちゃでやんすか!」


 ダルトンさんは、腰の後ろに折り畳み式の槍を装備している。

ロロンの使うのよりもゴツい……しかも、なんか2本あるっぽい。

こんなに大きな槍を二刀流で使うのか……見た目通りに、力が強いんだなあ。


「【跳ね橋】! そったら……その若さだど、【渡世流し】の最中が?」


「んだなっす! こちらのムーク様に【帰らずの森】で危ういとごろば助けられで、それからはずうっと腕を磨いで旅の身空でやんす!」


「じゃじゃじゃ、それはえがんす。最近のわげものにしちゃ、性根ば座っておるな」


「なんのなんの、ワダスなんぞムーク様に比べたらまんだまだ……背の青い若造でやんす!」


 お、おお……なんか、いつもよりもロロンの訛りが強いような気がする!

同郷の人に会ったら方言が強くなるって、なんか概念でも知ってるような気がしないでもない!


「ダルトンさは、なしてここに?」


「少し前まで傭兵ばして、じぇんこ稼いでたんだども……頭が国さ帰るごどになっての」


「はあ、そいで――」


 正直何言ってるか半分くらいしかわかんないけど、ロロンが楽しそうで何よりですなあ。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございますwよwうwかwい!妖怪味噌担ぎwww!鼻水でたw味噌タル担いで踊ってたらそら妖怪認定されますはwトモさん流石!後、ムッくんは聴覚何千倍にしても、頭の中がお子様だから無駄スキル。…
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