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蒼と紅  作者: 久村悠輝
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第39話

 モンスターが潜んでいた洞は奥深くキューニィ達が入っても狭く感じない程広かった。


「さっきのモンスター、再出現(リポップ)するのは1時間後だから少し休憩しましょうか」

「アレはレアモンスターか何かなのか?」

「クエスト用のアイテムをドロップするですヨ」

「ルビーちゃん、今日は狩らないからね?」

「分かってるよ、何も言ってないだろ」


 バードックの1件はルビーにとって触れられたくないらしい。そんな気配を察知したのか、ペリドットもシトリンも無言のままだ。


「ねぇ、ルビーちゃんがモンスターの場所が判るって事は私は囮しなくても良いの?」

「そうね、残念だけどサファイアさんは回復と補助に専念して貰う事になるわね」


 何がどう残念なのかは誰もツッコミを入れない。


「洗って乾かす時間が減るので回転率は上がりそうですね」

「稼ぐ」


 モンスターの潜伏場所さえ分かればサファイアを先頭の歩き丸呑みされる手間が省ける。サーチのスキルはスカウターの真骨頂と言ったところか。


「そろそろ再開しましょうか」


 パールが腰を上げる。キューニィ達も休憩が終わるのを感じたのか、方々へ駆けて行った。時折雷鳴谷から流れて来る雨雲により狩りが中断されつつも夕方まで大きな事故(サファイアの戦闘不能は除く)は無くこの日のレベリングは終了した。

 ヒルマウンテンまでの帰路は順調そのものだった。知性の高いキューニィは道を覚えるのが得意なのもあり、迷う事無く………とは行かず、キャベツとレモンは飼い主に似たのか幾度か街道を外れて迷走した。


「イザヨイ、ずいぶんスピード抑えれる様になったね」


 偉い偉いと鞍の上からイザヨイの頭を撫でるサファイア。少々危険な体勢だがイザヨイが無茶な走りをしなければ落ちる事は無いだろう。


「今日、ずっと虹の高原で放してたのが良かったのかもね」

「あ、そっか。産まれ故郷だもんね」

「その表現は少し違いますけど、キューニィ達の故郷、と言う意味では間違ってませんね」


 往路とは逆で隊列はウニとクレナイが先頭を走り真ん中に迷子を挟み、殿はイザヨイとモンメだ。速度を落とし2羽に並んで来たのがキャベツ・ペリドットだ。


「体力も付いたみたいだし、明日は少し長い距離を走ってから休憩にしましょうか」

「ふっふん、私のイザヨイはもうちょっとやそっとじゃへこたれないよ?」

「あらあら、凄い自信ですね。それだけ信頼しているのでしょう」


 そしてその夜、パブにて。


「クエストのアイテムを取るの?」

「ええ、もうすぐレベル30になるからサファイアさんとルビーさんの中級職クエストを受けてから明日はレベリングしましょ」


 ルビーがサーチのスキルに慣れるのは想定より早く、今日のレベリングは大成功と言える。


「やっと中級職になれるのか」

「下級職もそうでしたけど、新しいジョブになれるのは嬉しいですよね」

「でも待って、私達が中級職になったらペリドットちゃんとシトリンちゃんはどうするの?」


 アメシストとルビーはLv30になると中級職へジョブチェンジする。しかし既に中級職のペリドットとシトリンはLv40にならなければ上級職へジョブチェンジ出来ないのだ。


「アタシ達もこのまま40まで上げるかい?」

「するのは反対しないけれどメリットは少ないけれど良いの?」


 ルビーの提案にパールが疑問で答える。質問を質問で返すなあーっ!!

 こほん、パールの言う通り下級職のスキルはLv30で全て習得してしまう。中級職にジョブチェンジしてもスキルは引き続き使えるのでメリットは少ないどころか皆無である。


「問題無い」

「シトリンも良いの?」


 シトリンさん、自分たちの都合で4人をLv40まで引っ張るつもりですか…。


「私達はレベル30になったら別のジョブでお手伝いしますよ」


 えっと、ややこしい話になってます。


 ・まず明日のレベリングで全員をLv30まで上げる。

 ・サファイアとルビーが中級職にジョブチェンジする、

 ・Lv1からやり直しなのでペリドットとシトリンもそれに付き合いLv1のジョブでレベリングに参加する。

 ・Lv30まで上がったらペリドットとシトリンはサマナーと格闘家で再びレベリングをする。

 と、言う事です。


 翌朝、中級職のクエストを受ける為に冒険者ギルドへ向かうジュエルボックスの面々。


「何だろう、競売所が人だらけだよ」

「ホントだ。何か新発売でもされたのか?」

「こんな時間に混むなんて珍しいわね」

「嫌な予感がするですヨ」

「縁起でも無い事言わないで下さいよ」

 

 黒山の人だかりを横目に、一行は目的の冒険者ギルドへ到着すると―


「あら、丁度良い所へ来て下さいましたわ」


 狭いギルドハウスの中を冒険者達が慌ただしく動き回っている。そんな中、6人を見付けたルイーダが話し掛けて来た。


「パールさん、奇襲戦(レイドバトル)が発生しました。皆さんはレベル30以下なので雷鳴谷での迎撃をお願い致しますわ」

「了解しました、早急に準備を整えて向かいます」

「このタイミングで奇襲戦ですカ、運が良いのか悪いのか…ですヨ」


 ルイーダから有無を言わせないクエストの依頼にギルドマスターのパールは受けるしか選択肢は無く、ジュエルボックスは奇襲戦に赴く事となった。


「おいおい、奇襲戦って何だよ」

「各エリアで行われるボス戦よ。ギルドのレベルに応じたエリアでレイドボスと戦うの」

「私達だけで勝てるの?」

「まさかですヨ。他にもレベル30以下のパーティが参戦するから協力し合うですヨ」

「とにかくアイテムを…買い込んで……」

「手遅れですヨ」

「さっきの人だかりはコレか…」


 今から競売所へ行っても奇襲戦に必要なアイテムは残って無いだろう。パール達はアイテムの買い込みを諦め雷鳴谷を目指す事になった。

 雷鳴谷まで残り僅かになった所でキューニィ達を休憩させる。小川の畔には先客の姿があった。


「邪魔しないようにしましょうか」


 気を遣ったパールが少し離れた場所に陣取ろうとすると声が掛かった。


「あれ、ジュピターさんじゃないかな」

「ホントだ。最近よく会うな」

「やあ、お嬢ちゃん達。奇遇…って訳じゃ無さそうだな」


 数日ぶりの再会にジュピターは驚いた様子も無く続ける。


「雷鳴谷の奇襲戦だろ? ウチも今向かってる所だよ」

「それじゃああちらに居る皆さんが?」

「そう、私のパーティメンバーだよ。と言っても急ごしらえの奇襲戦パーティだけどね」


 ジュピター側のパーティ編成はこうだ。


【ジュピター】

種族:ヒト族

ジョブ:ランパート

Lv:29


【アイリス】

種族:オートマタ族

ジョブ:ビショップ

Lv:29


【シャチョウ】

種族:コボルト族

ジョブ:魔法剣士

Lv:30


【ジュズマル】

種族:エルフ族

ジョブ:ナイト

Lv:27


【ガリウム】

種族:リリパット族

ジョブ:モンク

Lv:27


【アルミナ】

種族:ドワーフ族

ジョブ:学者

Lv:27


 急造パーティと言うだけあって守りは堅固だが火力に難有りだ。


「もしそちらさえ宜しければコーポレーションを組みませんか?」

「ウチは構わないけれど嬢ちゃん所の邪魔にならないかい?」

「問題無いと思います。見たところ上級職が3人ほど居られる様ですし、ランパートとナイトの守りはそう易々と突破されないでしょうから」

「確かにナイト系が3人も居たら守りはバッチリだな。むしろこっちが足を引っ張らないか不安だよ」


 と、ルビーはサファイアを見る。


「ぶー、ルビーちゃんひどいよ」

「日頃の行いですヨ」

「サファイアさん、こういう時は行動で見返してやりましょう」


 元気付けているのかペリドットは両手で握り拳を作る。


 そしてサファイア達の初めて体験する奇襲戦とコーポレーションが始まった。

 今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。

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