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蒼と紅  作者: 久村悠輝
40/140

第40話

 紆余曲折、何とか40話到達です。

 ここまで読んでくださった皆さんありがとうございます。これからも温かい目で見守って下さい

 ―雷鳴谷―


 天にワイバーンの咆哮が轟く。


「ドラゴンが相手なんて聞いてねぇぞ!」

「ドラゴンじゃなくワイバーンだよ」

「どっちでもいいのでさっさと仕事しろですヨ」


 余裕が無いのか、いつもは乗っかってボケてくるアメジストが即座に修正を入れる。


「いきなり始まるなんてひどいよ~」


 ぶつぶつと文句を言いながらプロテクションをコーポレーション全体へ掛ける。パーティ毎で戦うのではなくコーポレーションを組んだ理由はここである。範囲強化(バフ)がコーポレーションのメンバー全員に拡大されるのだ。


炎の鎧(バーニングスパイク)いきます!」


 ペリドットがタンク達へカウンターファイアの魔法を付与する。


「ワイバーンのHP(ヒットポイント)が2割くらい減ってるけどどういう事だ?」

「君は奇襲戦(レイドバトル)は初めてかい?」


 コボルト族の男性・シャチョウがワイバーンへ一撃を入れつつルビーに語り掛ける。


「奇襲戦は複数のパーティ・コーポレーションが同時攻撃可能だから他のパーティが先に削っているんだよ」

「つまり、アタシらは出遅れたって事か」

「まだまだこれからだよ。活躍次第では特別報酬(ボーナス)が貰えるからね」

「それじゃ頑張らないと!」


 足元で話を聞いていたサファイアがトゥインクルロッドを構え突貫した。


―ワイバーンはフレイムブレスを吐いた―


 こんがり焼かれ倒れるサファイア。ジュエルボックスの面々には見馴れた光景でも初めて一緒に戦うジュピター達には衝撃的な光景だ。


     ◇◆◇◆◇


「メディックの戦闘不能率が1番高い?」


 立ち回りの打ち合わせをしている時、理解し難い説明をされた。


「はい、恥ずかしながらジュエル()ボックス()のサファイアさんは自由奔放でして…」


 意味が分からない。事故率が高いのは前衛、それもタンクが飛び抜けているはずだ。なのにこの子達は平然と言ってのけた。


「旦那、ホンマにコーポレーション組んでええン? 何かめちゃめちゃ不安しかあらへン」


 ガリウムの言う事は最もだ。ヒーラーの事故率が1番高いのはパーティのヘイト管理が下手な証。しかしこのパールというエルフ族の女性、話してみれば聡明な頭脳と繊細な気遣いが出来る子なのは分かる。ヘイト管理が出来ない理由が見当たらない。


「こらこら初対面の人を悪く言うもんじゃないよ」

「そうですよ、ジュズマル君の言う通り。他人を悪く言うと自分の評価を下げる事になりますからね?」


 ジュズマルとアイリスは擁護に回ってくれた。ジュエルボックスの面々は個性豊かだがアホの子は居ない。短いがこれまでの付き合いでそれは明確だ。


「大丈夫、私達も気を付けて見ているからそうそう事故なんて起こらないだろう」


 今思うと私はこの子達…いや、このリリパット族の女の子を甘く見ていた。


     ◇◆◇◆◇


 累計レベル50に迫ろうと言うのに…


 ()()()()()使()()()()()()()


 実戦では全く役に立たないネタ武器のトゥインクルロッド、それを振りかざしてワイバーンへ殴り掛かったサファイアを見てジュピターは軽い眩暈を覚えた。しかし怯んでいる場合ではない。サファイアが安全に起き上がれる様にワイバーンを挑発しながら誘導する。


「ブレスがあるなんてひどいよ!」

「ンな事はええからはよ下がれ」


 起き上がったサファイアをガリウムが慌てて下がらせる。


「そこで衰弱が治るまで座っててくださいね」


 アイリスがサファイアにヒールとプロテクトを掛ける。ヒーラーが1人欠けた状態だが上級職のランパートにナイトが2人という防御特化型コーポレーションの為易々と崩れる事は無く持ちこたえている。


「コイツめちゃくちゃ抵抗(レジスト)するですヨ」


 アメジストがパラライズやブラインドで弱体化を試みるがワイバーンの魔法耐性が高くことごとく抵抗されてしまう。


「それじゃ気持ちいいお薬、イッちゃうよ~!」


 ヤバいブツを決めそうなセリフでアルミナがフラスコをワイバーンへ投げつける。パンと弾けて紫色の霧がワイバーンに吸い込まれる。薬の効果でパラライズとブラインドがワイバーンへ決まる。


「これ、アタシらに害無いだろうね?」


 ルビーが思わず後退る。


「せやからそのマクロを使うのは身内の時だけにせいっちゅ~とるやろ」


 ガリウムがアルミナに苦言を呈する。


「むむむ、これは負けてられないですヨ」

「張り合わんで良い!」


 不穏な動きを見せたアメジストにルビーのハリセンが先制ヒット!


「なンや姉ちゃん、おもろいスキル持っとンな」


 ルビーのツッコミスキルにガリウムが興味を示す。だが―


「ガリウムに老化促進剤投与!」


 言い方はアレだがれっきとした攻撃速度アップの強化(バフ)である。が、アイテムは発動せずマクロのセリフのみがチャットを賑やかした。


「何かひどない? アルミナ怒っとるンか?」

「つーん」


 分かりやすい表現だ。リリパット族とドワーフ族のやり取りは子供のケンカみたいで微笑ましい。しかし今は奇襲戦の真っ最中な訳で、ジュピターやパール達は必死に戦っている。


侵食・深(ハイイロウジョン)行きますよ」


 中級職ビショップの侵食・深はメディックの侵食よりも強力で広範囲の鱗を爛れさせた。しかしアタッカーは範囲攻撃(フレイムブレス)を警戒して決定打を与えられて居ない。同時に戦っている他のパーティやコーポレーションも範囲攻撃を受ける度に半壊し一時撤退してるのが現状だ。


「これは持久戦になりそうだね。シャチョウ、リジェネーション(継続回復)をお願い出来るかな?」

「分かりました、リジェネーション!」


 ジュピターに連続再生が付与され断続的にHPの回復が付与された。その後自身にもリジェネーションを掛けるとワイバーンの側面から斬り掛かった。

 やがてワイバーンのHPが4割を切り押せ押せムードの中、他のパーティ達も復活してワイバーンのHPが一気に減り始めた。


 しかし奇襲戦はそんなに甘い物じゃ無い。


―ワイバーンはディスペルウィングを実行―


 ワイバーンに群がるプレイヤーの強化(バフ)を根こそぎ消したのだ。これに肝を冷やしたのはメディック系のヒーラー達である。

 慌てて自身のパーティ(コーポレーション)全員が範囲に入る位置まで前進しプロテクションを詠唱する。


―ワイバーンはドレッドシュリークを実行―


 無慈悲なワイバーンの連続スキル。強力な麻痺を受け詠唱中だったプロテクションは阻害されことごとく不発に終わる。だが本当の地獄はここからだった。

 アイリスが自身へキュアを掛け治そうとするが麻痺に阻まれそれすら叶わない。ランパートのジュピターも強化スキルを麻痺で潰されてしまいダメージを軽減出来なくなった。ターゲットを分散させダメージを減らそうとジュズマルとパールも挑発を行うがこれも不発に終わる。


「アルミナ、アイテムで何とかならンかっ?」

「こっちもまだ麻痺治らないからどうにもなんないよっ」


 学者が使うアイテムも容易に麻痺で阻害されてしまう。

 絶体絶命のピンチ。このまま一方的に嬲られコーポレーションは瓦解、奇襲戦は敗北ムードが雷鳴谷を覆い尽くす。


「キュア!」


 誰かの治療(キュア)がアイリスへ通った!


「魔法範囲化! 続けてキュア!」


 アイリスがキュアを範囲化させてコーポレーション全員の麻痺を一気に治療する。


「ジュピターへハイヒール!」


 続けて高位回復魔法を唱える。しかしその行為はワイバーンのヘイトを強烈に稼いでしまった。

 ワイバーンの鋭利な牙がアイリスを狙う!


「お前の相手は私だ!」

「僕から目を逸らすなんてイケナイね」

「私が相手をしてあげるのよ、光栄に思いなさい!」


 ジュピター、ジュズマル、パールの挑発で強引にアイリスのヘイトを引き剥がす。すかさず3人にシャチョウがリジェネーションを、ペリドットが炎の鎧を付与する。


「超絶美少女サファイアちゃんのプロテクション!」


 衰弱から復帰したサファイアが仕上げの強化を行う。他のパーティも次々に復活してくる。こうなれば後は押しきるだけだ。何度かドレッドシュリークやディスペルウィングを受けるが単発では連発(コンボ)ほどの脅威はない。


「止めを刺すと特別報酬が貰えるから頑張って!」


 アイリスの言葉にアタッカー達は色めきだつ。スキルを駆使し止めを刺したのは……他所のパーティだった。

 今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。

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