19.信用
「俺は……」
「うっ……」
言いかけた時、サーモンは嗚咽らしき声を漏らした。
「ぶえーっくしょーい!」
「…………」
「すまんすまん、続けて」
なぜこのタイミング。この部屋の中が静まりかえったというのによく堂々と大きなくしゃみができるものだ。
俺はサーモンだから仕方ないと思考を変え、改めて気を取り直す。
「あの、俺はこの世界の人間ではないという事を始めに聞いてもらいたい」
「は?」
サーモンはすっとぼけた顔を見せる。
「カイザ、大人を舐めないでほしいな。こう見えて成人だよ私は」
フワワも呆れた表情で俺に言ってきた。成人を迎えていたなんて初耳だが。
「いや、うん。すぐに信じてもらえるとか思ってないから俺も、さすがにね」
「じゃあ何で言うんだよ?」
「そうだよ」
「だから俺はこの世界の人間じゃないから……」
「意味わっかんねー」
ふらーっとサーモンはソファへ腰掛けた。俺達はとりあえず座ることにした。
「じゃあ何人なわけ?」
「え、日本人」
「えっ?じゃあここの人間じゃない?」
「ホントだよ……何が別の世界だボケ」
「いや、今から説明するから聞いて」
聞く耳すら持ってくれない。呆れてしまうのも無理はないのだが。
「サーモンならよく知ってるはず、これが一番の根拠になるんだけど……俺の頼みで俺の実家に行ったじゃん? あの時俺の家自体がなかった、それはサーモンも見たろ?」
「うん」
「おかしいだろその時点で。まさか自分の家を間違えるなんて事あるわけないし」
「たまたま地形が似てたりとかあんだろ」
「確かに少し変わってた所あったけどさ、場所は同じだったから。別世界だから違うんだってば」
「うーん……別世界とかもう関係ねぇって」
納得してくれない様子。まだ信じ難いのだろう。俺の説明もきっと理解に苦しむ部分もあるのだろうが……。
「表札だって別の名前だったし……」
「変わったとかじゃなくて?親が離婚したりとかで」
「まさか。なら俺に連絡するだろ普通」
「そっか……」
「そもそもの親がどこにいるかわからないんだよ。ここに来た時には地元じゃなくてこの市内にいたんだから」
「つってもほぼ同じじゃ証拠も何もないだろ。お前記憶喪失なんじゃねぇの?」
「記憶喪失……いやでもさ、俺元の名前知ってるし。顔も元の生活も覚えてるし、俺こんなイケメンじゃないし」
「イケメン……」
この際ナビゲーターの話もしてしまおうか。
「俺戦士になるためにいろいろナビゲーターと一緒に決めてたんだよ。容姿から何からを。名前まで決めさせられて」
「お前、前にもナビゲーターがどうとかって泣き付いてきたよな」
「うん、本当にいたから。今日の夢にも出てきたからな、ナビゲーター。ヒントくれてもしかしたらと思って2人の目標聞いたんだけどさ」
「嘘臭ぇ」
「からかうのは止めなよ……?」
「からかってないし!」
信じてもらえないのがこんなにも苛立たしくなるのは知っていたのだが、ここまで信用してくれないのはさすがに頭に血が上る。
「……あっ、そうだよ」
俺はもっと証拠になるものを忘れていたではないか。
「日本以外の国は全て聞いたことない国名だった。青の国やら赤の国やらって、国名を覚えられないって聞いた時はびっくりした。こっちにはアメリカとか中国とかそういう国名があるんだよ。ここら辺が決定的な違い」
「アメリカ……中国……それって、架空の国じゃないの?私漫画でその名前見たことあるけど。その漫画はノンフィクションだし」
「は?」
「おまっ……架空の国を信じてんのか?」
サーモンはゲラゲラと笑い出した。
「ガチな話だから。他にもドイツ、ポーランド、ニュージーランド、バチカン、アイスランド……ってさ」
「えっ、それは聞いたことない」
「あるんだって。だから俺は別世界から来たの!」
「お前もその、フワワが見たっていう漫画見たことあるんじゃないのか?」
「なんて漫画かわからないし」
「架空世界を知り尽くせ!って漫画だけど」
「何それ……知らない」
マジで何だその名前。架空世界って言っちゃってるし。
「そもそも、日本の法律に平和主義というものがあってだね……。それにこんな銃とか持ってたら、銃砲刀剣類所持等取締法(じゅうほうとうけんるいしょじとりしまりほう)というもので捕まるよ?」
「名前長ぇ……。にしても不便な法律だな。この世の中やっていけないわ」
「モンスターだって出てこないわ、こっちの日本」
喋れば喋るほど見落としていた点が見付かってくる。
「まず俺の知る日本で有り得ないのは、今言った武器所持にモンスター、国名、これらは絶対ない」
「カイザの言うこと本当のことに思えてきた……」
「洗脳されるなフワワ!相手はまだガキだぞ!?」
「でも、具体的な法律名まで出されると……さ?」
「咄嗟に作った名前かもしれないぞ」
「ガキにそんなことできるわけないよ」
俺をガキ呼ばわりし始めたフワワ。さすがのフワワ相手でも殴りたくなるがそこはグッと我慢。
でも、フワワも信じ始めたからこの調子だろう。
「戦士はとうの昔に消え去ってるわけだから。日本は絶対戦争はしないぞ、他の国が戦争にあっても日本は手助けできない。こちらが攻撃受けたらアメリカに助けてもらってこちらは何もしない……ガチで戦争はしないんだよ!」
「嘘だろ……」
「とうの昔か……。西暦もこっちと一緒なの?」
「西暦? 今は2016年?」
「そうそう」
「同じなんだよなぁ。でも、今の説明でわかっただろ? もうここと俺のいた場所は全然違うって」
「わかった、俺もなんとなく信じられてきた。けど、どうやってここに来たの」
説得はなんとかできたのか。
……が、後者の質問は俺にもわからないのだ。ここでわからないと言えば一気に信用を失いそう。
「どうした? 答えられないのか、そうかそうか」
「そういうのじゃないし」
「じゃあさっさと答えな」
言うか言わないか。信用を無くせばまた1から説得か。
……いや待てよ、信用してもらえないなら別にそれでいいのではないか? 目標がそれぞれ違うということだけさえわかれば別に用はないのだから。
それを踏まえた上で言ってみようか。
「ここにどうやって来たかはわからない」
「嘘の説明も思い付かなかったか」
「違っ……」
当然の反応か。“信じられてきた”だけであって完全に信じてるわけでもないし。
「でもさ」
そこでフワワが割り入ってきた。
「嘘つきが正直に“わからない”なんて言葉発せられるのかな」
「言えるんじゃね? 知らんけど」
「サーモンは疑いすぎだよ。敵視しすぎ」
「だって別世界とか信じられるか? 二次元じゃあるまいし……。それに嘘つきも“わからない”言うだろ。強盗とかしたりした時に」
「今の話題は強盗と種類が違う気がする」
フワワが俺の味方に付いてくれてるよう。
「だって、この部屋にどうやって入ったんですか?って警察に言われて、わからないって答えたら一層怪しさが増すし、変だし。それなりの嘘は付くと思う……」
「いや、でもさぁ……」
「もう、とりあえず信じてみない? カイザの言うこと」
「は? それは難しいなぁ」
「もし本当だったらカイザに土下座して謝ってね」
「ちょっと、勝手に決めないでもらえるかなぁ? 俺オカルトとか信じない質なんで」
「今それが起こってるの! 異世界人は実在した!」
「いやいや、無理があるだろ」
「これで元の世界に戻ったらサーモン本当に、どうしてくれるの」
「いや……」
完全にフワワは俺を信じてくれた。今フワワだけでもすごい嬉しい。
「フワワありがとう。無理にサーモンを説得してもツンデレだから許してくれないよ」
「そっか、それもそうだね」
「いや、ツンデレじゃないんですけど?」
サーモンを除いてフワワにだけでも信じてもらえたのが今すごく幸せ。サーモンは屁理屈すぎる。
「というわけで何か依頼でも行こう」
「そうだね」
サーモンは不満そうに頬を膨らませている。気にくわないのだろう。
「フワワ絶対詐欺師に騙されるやつだわ」
「それはないよ」
サーモンの発言に即答したフワワ。
フワワは「これにしようよ」と依頼書を俺とサーモンに見せてきた。
俺もサーモンも承諾し、行くことにした。
ついでに森火事事件の任務達成報告も兼ねて準備に取り掛かる。
文字数ヤバそうと思っていろいろ省きながら書いて、書き終えた頃に文字数見てみたら別に普通だった。
なので文章変じゃね(いつものことだけど)?と思ってもスルースキルを発動させてください、お願いします。




