15.落ち着き
「森って戦いづらい場所だよね」
「な。しかも相手はモンスター、余計戦いづらいわ」
木がたくさん生えては自由な動きが制限されてしまう。
もしモンスターがこっちに向かって木をバキバキにして走ってきたらどうだろうか。木がこちらに倒れてきて俺達は潰されるかもしれない。
その代わりと言ってはなんだが、モンスターの速度は落ちるかもしれないだろう。
「そういやフワワってチームも組んだことないのに強いよな。単独で訓練しても強くなるもんなのか?」
「え、あ、いや……その、私は別につよくないけどお兄ちゃんが付いてくれてたから……」
「あぁー、なるほどね。兄が戦士なら納得できるかな」
俺にはいてもせいぜい妹だから逆に教える立場になってしまう。
俺にも上がいたらよかったのになぁ。ありもしない事を思う。
「兄は強いの?」
「強いよ! すっごい強いの。戦士協会本部のトップに君臨するほどで尊敬してたんだけど……私らはそこに馬鹿にされてるから信用もなくなったし、お兄ちゃんいないし」
「凄いけど、いないの?」
「うん、あの紫神竜の二番目に強い竜に食べられて……いつか私はサーモンも言ってるように強くなって最強になってその竜を倒す……のが夢」
「そっか……」
サーモンもフワワも目標があるみたいだな。だからそう強くなれるのか。
俺は何のためにここにいるかわからずただ人についていってるだけ、俺も何か目標くらい見つけた方がいいのか。
なら、俺はここから出るために頑張ったらいいのか? 出るために何を頑張ればいいのかはわからないが、それを見付けるのを頑張るのか。よくわからないが、俺は出ることを考えた方がよさそうな気がする。
「あ、あの森だよね絶対」
フワワが指指した方を見ると緑が生い茂ってる所を発見。あれに間違いないだろう。
「ペースアップといきますか」
「うん」
軽く……というかもう競歩で森まで向かう。フワワに関しては走ってしまっているが。
俺は若干息を切らしながらも森の入り口までやってきた。
「準備はできてるカイザ?」
「お、おう。いつでも行ってやる」
「レッツゴー」
小声で合図をかける。もしも近くにモンスターがいてこの掛け声で気付かれたらどうしようもないから念のためか。
「ちっちゃいかな」
「どうだろ……俺あんまり知らないし」
「私も」
俺達はあまり音を立てずに進むことに専念する。本当に気付かれたくないから。
ここは幸いさっきのように道がないっていうことはないので歩きやすい。きっと引っ掻かる事もないだろう。
下を向いて歩いていると、所々に糞が落ちているのが確認できる。これはおそらくモンスターのだと思われるのだが、普通の人間や動物の太いものとさほど変わらないようにも見える。
周りの木々が倒れてない事から小さいモンスターだということはわかるのだが、それでも怖いもんは怖い。
「うわっ……」
「何!?」
フワワが突然声を出したので俺はかなり驚いてしまった。
「卵があるよ」
「え」
まさかの卵。
モンスターのものなんだろうが、なぜこんな所に置いてあるのか。中身は死んでるのか?
「ぶん投げてやりたいね」
「いや……投げたらモンスター走ってきそうだからやめ……」
バシャッ!
「お前ぇぇー!?」
俺はでかい声で叫んでしまった。
今のは投げたのではなく落ちた。フワワが手の上で卵を上に投げてはキャッチ、投げてはキャッチを繰り返していた結果落とした。
絶望しながらもモンスターがいないか確認したがいない。それはそれでいいのだが。
「あちゃ~……」
「あちゃ~じゃないよフワワ、注意力足りなさすぎだから!」
「ごめんねカイザよ。次は注意する」
「卵はもう落ちてないけど!?」
何を注意するんだか。
俺は怖い。モンスターが卵が足りないのに気付いて探し回ってるところで俺達に気付いたらもうお仕舞いだろう。
「いでっ」
「次は何フワワ!?」
頭を擦るフワワ。
「血出てそうだぁ~。何か固いもの当たった」
「バチが当たったんでしょ」
血出てそうって言いながらも出てないが、俺はもうモンスターの仕業としか考えられなくなってしまった。
ここに野生動物がいるとは到底思えないし、木に固いものが引っ掛かるとも思えなくもないし。
「神様許して……」
「もう手遅れっしょ」
フワワは頭を押さえながら歩く。
俺は相変わらず下を向いて歩いてしまう。転びたくないので。だが、頭上も注意しないとフワワみたいな目に合ってしまうのも嫌だ。
歩みを進めること数分。まだゴールは見えなさそう……と思ったが、
「ヤバい!」
フワワは何かを見付けたのか、俺を引っ張って木の陰に隠れる。
「いるよ、あそこ」
俺はその方を見てみると、でかい足だけが視界に入った。
にしてもでかいと思われる。でかいから足しか見えないのだと思う。
「でかくない?アイツ」
「でかいね……予想外だね」
どう対処すべきなのか俺にはわからない。フワワもわからなさそうな顔をしているが。
「何でこんなピンチの時にサーモンいないのかなぁ。おかしいよカイザ」
「いや、俺に言われても……」
サーモンがいても対処できてるか曖昧ではあるが、いるといないとでかなり変わりそう。
「男だからさ、その弓で相手の心臓を射っちゃって」
「性別関係ねぇ……心臓貫通しねぇ……」
俺なんかの弓ではあのモンスターに射ったとしても当たった瞬間へし折れそう。
「あいつ倒さないとトップに物申せない……!」
「殺らないとな……」
フワワは俺の手首を引いて立ち上がる。
「何……」
「死ぬときは一緒に死のう。だから、一緒に攻めよう」
「いや……え?」
俺も接近しろって事か。
無茶を言い出すフワワちゃん。離反で無理なら接近が有効ってか?
全然足が動かない。フワワもきっと怖いのはお互い様なんだろうけど……今は目の前の敵を倒さなければいけない。足が動かないなんて言ってられない。
モンスターにばれてたらどうする? このまま立ち尽くしてる暇なんてないだろうに。
「カイザ」
うつ向いたままでいると、フワワは俺の手を握ってきた。
「お兄ちゃん言ってた、手を握れば落ち着くんだよって。落ち着く?」
フワワは俺の事を気遣ってくれたのか、男として情けなさすぎる。己の醜さが恥ずかしい。
「ありがとう……落ち着く……」
「じゃあ行こう」
気が早いんだよ。……そう思ったが、こうしてもらった以上それに答えなければいけない。
手を握られたままいざ戦場へ。
足音で相手はこっちの存在に気付き、こっちを向いた。
フワワは俺の手を離し、片手で2つの扇子を持っていたのを両手に持ち変える。
俺も弓を構える。ばれたのだから正々堂々と射つしかない。
「私囮やるからジャンジャン射って!」
そういってフワワはモンスターの方へ走り出した。
フワワが殺られない事を願いながら俺は弓を連射。3連続しかできないのだが、3連続でも効いてる気がしない。
フワワが完全に囮になったので、標的はフワワ。後ろから俺はただただ射つだけ、効いてるかわからないがひたすら射つ。
「はあぁぁぁー!」
モンスターに丁度フワワが隠れてて何が起こってるのかあまりわからないが、多分竜巻を発生させたのだろう。今までとは違う感じだったが。
今までの竜巻はただの風だけだったのだが、今発生させた竜巻は風と更に葉や石などが混じっており割りと本格的な竜巻が起こった。
っと、見とれてはいけない。俺もフワワみたいに何か技を使えたらと期待しながらモンスターのうなじ一点を射ち続ける。
みるみるうちに穴が開いていってると思われる。
次は頭を狙う。予想以上に飛距離があるためあまり近付かなくても大丈夫そう。
モンスターは動き回るフワワを必死に追って、攻撃を繰り出す暇を与えない。その代わりフワワの体力が大幅に削られてしまうのが欠点だが。
「カイザ心臓狙って!」
フワワはわざわざ俺の方にモンスターを向けてくれた。向けてくれたのはいいが、俺に気付いたらどうしてくれるんだ。飛距離があるからってそんな相手から見えないほど離れてるわけでなないのだから。
そんなリスクを想定しながらも矢を相手の胸部と思われる場所へ射ち込む。背中ほど肉が付いてない事を願いながらひたすら射つ。
「グルルル……」
「あ」
ヤバい、目が合ったかもしれない。相手は俺のことずっと見てる気がする。
相手はゆっくり片足を前に出した。フワワは潰れそうになりながらも何とか避け、動きを止めようとする。
しかしモンスターの力は馬鹿にできないほど強いので、フワワではどうすることもできない。
ヤバい、モンスターが近付いてくる……。
ペースダウンするかもしれません




