第19話「謎」
寝た心地がしなかった……
一応寝れはしたが、緊張状態がずっと続いてたからだろうか、体がだるくて重い。
はぁ……
横にはまだ綺麗な顔で寝ているフィレア様がいる。
なんでこうも無防備なんだ……
「おはようございまー……」
部屋に入ってきたレネーは言葉を途中で止めた。
あ……
レネーは口を開けてその場に立ち尽くして、俺を睨むように見ている。
「あいや……これは、違う。大丈夫。俺なんもしてないから。ね?」
ベッドから出て近づくと遠ざかっていく。
「レネー、ほんとなんもしてない。というかフィレア様からこっちに来たんだよ……」
無口で本当にごみを見るような目で体を引いて、俺を隅々と見ながらいかにも吐き気がすると言わんばかりにベロを出している。
「分かった。分かったから、もうフィレア様から聞いて判断してくれ……」
説明しても弁解できそうにないと判断した俺は距離感を取ってくるレネーを無視して顔を洗いに向かった。
ここまで考えてなかった……寝てくれたときから床で寝ればよかったな……
溜息を吐いて顔の水気を取っていると横に何か気配がした。
目を開くと横にレネーが立っていた。
「どうした」
話しかけても喋らないが、何か言いたいですよと言わんばかりに不満そうな顔だけは向けてくる。
なんなんだよ
「何か言いたいなら言え。別に否定はしない。俺も寝かせた後に床で寝ればよかったと思ってるし」
もじもじし始めたレネーの言葉を待っていると、レネーは何も言わずに背を向けて歩いて行った。
は?
「いやいやいや、待ってたじゃん俺。ねえ」
レネーを追いかけて歩き始めるとレネーは歩く速度を早くした。
「いや、いいんだよ別に何も言わなくて。ただ、何か反応というか、何かしてくれないとさ」
次第に俺たちは食事が用意された机の周りをぐるぐると回りだした。
これって止まってれば捕まえられるパターン?
その場に止まったがレネーは冷静に、対角線上で止まった。
「来てよ」
そういうとレネーは首を振った。
「違う。俺、楽器作りたいの。こんな人間関係でごちゃごちゃしてたくないから」
そんなことは知らないと言わんばかりに無視を貫き通す。
でも不思議と機嫌が悪いわけでも、逆にいいようにも見えない。真顔だから何も伝わってこない。
だから反応の正解が分からない。
「おはよう……」
俺たちのドタバタしていた音で起きたのか、フィレア様が部屋に入ってきた。
「ん……どうした?」
俺たちが対角線上に立っているから疑問に思ったのか、フィレア様は真っ先に俺の下に歩いてきた。
今こっち来ないでよ!
ことが面倒になると思った俺は無言でレネーの方に向かって歩いた。
「ん……? なぜ避ける」
フィレア様は少し不機嫌そうに俺の方に向かってくる。
そこで俺がレネーの方に歩くとレネーは俺から遠ざかり、フィレア様の方に向かって歩く。
まるで同じ極同士の磁石みたいだな……
「あ、フィレア様。レネー捕まえてください!」
「え?」
「頼みます」
俺がレネーに近づくとレネーは慌てた様子でフィレア様に近づくが、渋々レネーの方に足を運ぶフィレア様に食い止められて、次第にその場に立ち止まった。
「ああ、もう分かりました!!」
レネーは大声を出して食卓に座った。
「食べます」
どうやらちょっとお怒りのようだ。
頬を膨らませてフィレア様にも少し睨みつけるような顔を向けた。
「フィレア様、俺と一緒のベッドに寝ていたのが嫌だったみたいです」
「ん……ああ、」
何か知っているのかフィレア様は頷いて食卓に座った。
疑問が残りつつ食卓に座るとレネーは手を合わせた。
「いただきます」
「いや、おいおい」
絶対に話しがあるタイミングでレネーは何知らぬ顔で箸を持った。
「俺と話ができるんなら食べてもいいけど、何かもやもやしてるなら話そう」
そういうとレネーはご飯をつつきはじめた。
「レネー……ごめん。何もしてないから安心して」
フィレア様が話しかけても無視して咀嚼をやめない。
うーん……
フィレア様も俺と同じ気持ちなのか、困り果てた様子で肩をしぼめた。
「いただきます……」
フィレア様も食べ始めたのを見て、俺も溜息を隠しながら食事に手を付けた。
「ごちそうさまでした。洗い物は私がやるので」
レネーはそういうとお皿を台所の方へ持っていった。
「カイト殿……すまない」
フィレア様は頭を下げた。
「いやいや……まあ」
「昔から……気に食わないことがあったら、よくああやって拗ねることがあるんだ」
「あー……」
「でも、本当に親しい人にしか見せないから……あれもレネーからの愛情だと思ってほしい」
愛情な……まあでもそれなら、
「機嫌の治し方は分かるってことですか?」
「すまない……分からん」
まじか……
「ただ、何に気に食わなかったのかを当てられたら、直るときがあるから……ちょっと試してみるよ」
「頼みました……」
フィレア様は不機嫌そうなレネーの下にお皿を持っていった。
さてと……俺は楽器でも作るか。何も出来ないしな……
軽く背伸びをして、制作スペースに移った。
シンバルと、バスドラムはある。あとはやっぱりスネアから作りたいよな……でも、楽なのはハイハットだな……でもスネアか
「レ……」
無理なんだった……
無意識にレネーを呼ぼうとしていた。
早く機嫌直してくれないかなー……まあたまには一人で素材集めにでもいくか
特に集める素材もないくせに、剣を持って外に出た。
いつも通りの森にでも行って何か狩ろう……
そして俺は何体かの敵を狩った。
んー……なんか、孤独だな
隣で俺の剣から出る音に驚く新鮮なあのレネーの反応を思い出してしまう。
いつの間にか、レネーと一緒にいるのが当たり前に感じてたな……
今頃拠点では何をしているのかと気になりはするけど、帰ってもレネーはまだ怒っているかもしれないし、そもそも素材をちゃんと回収できていない。
必要なものはないけど、それに近い何かを持っている魔物を探したいところだ。
「新しいの出て来いよー」
辺りを見渡して特に何か目新しい魔物はいない。と言うよりも、周辺の魔物は大体が倒れている。
うーん……ん?
首を振っていると、木の下に何か人影らしきものが見えた。
お……?
気になった俺は近づいて様子を見て見ることにした。
「こんにちはー……」
恐る恐る覗き込むとそこにはうずくまっている女性がいた。
こんな森の奥深くでどうしたんだ……?
「あのー、大丈夫ですか? なんか、助け必要ですか?」
剣を腰にしまってしゃがみ込むと、その女性はこっちを向いた。
「お前……」
「俺がどうかしました?」
何も答えないので疑問に感じていると膝に傷が出来ていることが確認できた。
「怪我してんじゃん。歩けます?」
「……いい」
「いやー……結構、離れてますから。いいですよ別に、肩とか貸しますよ?」
「……いい」
一点張りで断る女性をむやみに助ける訳にもいかず、頷いて立ち上がると女性はまたこっちを向いた。
「顔は覚えた……次会うときは、魔王城だ」
「え?」
そういうと女性はどこに隠していたのか、翼を広げて空中に飛んでいった。
うぇ……まさか、魔王? それとも魔族?
呆気に取られて、ただどこかに飛んでいく女性を目で追うことしかできなかった。
次はない……絶対にない。ありえん。行きたくないからな……
素材が集まる気配もなく、レネーの様子も確認したいし何より、今の魔王か魔族のことを考えると怖いし嫌になってきたため、一度拠点に帰ることにした。
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