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虚空の空を、見続けるということ  作者: 林檎蜜柑
表現の自由展編
12/13

表現の自由展を開こう(1)

「お前ってさ、やる気がなくて虚空の目してるときとキレたときの差が少しヤバいのはなぜ?」

 律がいない、浅葱と2人だけのときに聞かれた。

「じゃあお前は、男に惚れたときの心情を論理的に説明できるのか?」

「バッカじゃないの」

「わかんねえんだよ、何も。何も分かんねえ。この世の中で確かなことなんかねえ。確かなのは、命あるものはいずれ消えるということだ。そもそもこの世とは何だ?明確に答えられるやつがどれだけいるんだ。現実なんてどこにもないかもしれない」

「友達の親父が精神科医をしていて、信頼できるから紹介してやろうか?」

「もう頭がおかしくなってるんだ、もう戻る気はない。仮初の救済は本当に嫌いなんだ」

「お前の頭がおかしくなっても、それはお前の勝手だ、誰も知ったことではない。ただ私が言いたいのは律を泣かすな」

「保証はいたしたしかねる。できない約束はしたくない」

「泣かしたら殺すからな」

「お前のような雑魚に、殺される俺ではないということを断言しておくよ」



 その後、律のアドバイスで、生徒会長から鶴屋さんへ「表現の自由展を開こうとする企画ににあたって、美術の知識がまったくないため、美術の知識が豊富な、会計(鶴屋)庶務(実相寺)副庶務(浅葱、杉崎)に全面委任いたします」と拇印付きで委任状を書かせた。

 1年8組では、「表現の自由展」についてはかなり好意的に捉えられており、協力する生徒が後をたたないという。

 あれから一週間ほど立ち、校舎のどこの棟を使うのか、どの教室に絵画を置くのか、そもそも展示できる絵画は何点ほどあるのか、校舎の使用許可、開催許可と順調に生徒会担当の教師と交渉し、開催許可は貰えた段階にあった。

 そんなある日、ちょうど10時に、校内放送のスピーカーがザザッと音を立て始めた。

「臨時放送です。昼休み、監査委員室に生徒会役員は至急集合してください。繰り返します。昼休み、監査委員室に生徒会役員は至急集合してください。以上終わります」

 監査委員室が生徒会室の1個挟んだ隣にあることは知っていた。

 昼休みに監査委員室に行くと、まだ律と浅葱は来てなかったが、監査委員長の椿が生徒会長の藤永を強く叱責していた。

「お前が生徒会長なのに、なぜ1年生に任せているんだ?」

「………」

 理由を言えるはずがない。現に、2年生書記と副会長でさえまともに関わろうとしない。もはや押し問答になっていた。

 そこに律と浅葱が登場し、委任状のコピーを監査委員長の椿に見せた。

「なんだこれは!生徒会長権限を一時的とは言え、委任するなんて聞いたことがない。一体何が起こってるんだ。2年の書記、副会長は何をしとるんだ!!!」

 何をしとるんだと言っても、生徒会長を見放して傍観してるだけだ。単純に。

「監査委員長は、何が気に食わなくてわざわざ私達を呼びつけたんですか?どういうつもりなんですか?やめさせたいんですか?」

 鶴屋さんが言った。

「お前が首謀者か?まあどうでもいい。何が気に食わないって、わざわざ時間を取って表現の自由展をしなくていいだろう。日本国憲法第21条に、表現の自由ってのがあるだろ。お前らも習っただろ!憲法が保障しているわけ。こんなこと、誰が企画したかと言えば美術科か。全く………なんで進学校にくっついてるのか不思議でならない。美術科の人間は日本国憲法を知らんかね」

 監査委員長はせせら笑う。

「新生徒会になったんだから1日ぐらいしてもいいじゃないですか」

 と浅葱がいうと、監査委員長は

「こんな胡散臭い生徒会で何が新生徒会だ。委任状つけて生徒会長の権力、骨抜きにしやがるなんて聞いたことがない。生徒会運営の透明化を要求する。なんの裏があるんだ。委任状は絶対おかしい。1年生に任せるにしても、委任状まで取るか普通?」

 まあごもっともな意見ではある。

 生徒会長のとんでもない秘密が、生徒会役員全員に知れ渡った以上、もうどうしようもないことは明々白々である。透明化なんて出来るわけがない。一方的にひざまずくだけだ。

 俺はこのやり取りを虚空の耳で聞いていたが、少し思いついた

「ちょっといいですか」

「何だてめえ」

 監査委員長はお怒りのようである。

「てめえって名前の人は日本人にいないと思いますけどね」

「………用件は」

「監査委員会はこの件から手を引いてください。交換条件として、私達生徒会は、監査委員会が行った都合が悪いことをもみ消します。もちろん監査委員の個人的な件でもいいですよ。但し1件。イーブンです。交換条件としてはいいと思うのですがね」

「お前は悪魔か?」

 と監査委員長が言うので、

「人によって悪魔にでも天使にでもなるでしょう」

 と言った。

「心情的には気に食わないが、………ハハハ、アイディアとしては面白いな。ちゃんともみ消してくれるね?」

「1件だけね」

「念書を取るぞ。いいな。俺が監査委員を代表するから、お前が1年軍団を代表しろ」

「問題ありません」



かくして、監査委員の魔の手から逃れること付ができた。

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