第48話
よろしくお願いします。
「ボス、ユーグ村が見えてきました。」
御者をしているブランド―商会の男の声が聞こえてきた。
「よし。ここで降りる。キッド、ミラここからは歩いて向かう。準備しろ。」
「ああ、俺とミラは何時でも降りれるように準備は出来ている。すぐに降りるか」
俺が問いかけるとブランド―は御者の男に声を掛けた。
「おい、今空を飛んでいるのは見えるか。」
「いえ、見えません。」
「よし、すぐに降りるぞ。ここで後続の馬車も待機させろ。村人が来たら、後ろの馬車がいっぱいになり次第すぐにケルヴィオンに送れ。いいな。」
「はい。」
ブランド―が降りていく、上を見て、左右を確認している。
どこから来るかわからないデスファルコンに警戒している。
「いいぞ。急げ」
俺とミラはブランド―の指示で降りる。
「行くぞ。」
ブランド―の指示でユーグ村を目指し駆けていく。
ユーグ村にたどり着くまで、デスファルコンを見なかった。こちら側には来ていないようだ。
安堵したが、村を見るとそんな気持ちが吹き飛んだ。
これは・・・ヒドイ、それ以外何も言えない。
薙ぎ払われた家と倒れている人、そして上空を駆ける黒い影、あれが、
『デスファルコン』
俺は初めてみたのに、すぐにわかった。
死を告げる翼、異名そのままの姿だ。
「おい、キッド。ここでは戦いにくい。どこか開けた場所でないと作戦が使えない。」
ブランド―の作戦がここでは使えない?俺は意味が分からず、首を傾げた。
「・・・周りを見ろ。あいつの羽ばたきで薙ぎ払われた家だ。ここでやり合えば俺達があれの巻き添えを食らう。あいつの体はあの羽根で覆われている、さして、痛みはないだろう。俺達だけが一方的に食らうだけだ。」
「なるほど、そうだなでは、どこか広いところで戦うか。・・・まて、誰だ。」
俺が気配を感じ、振り返ると二人の男が立っていた。
「あんた達は何者だ!」
俺達に弓を引き絞り、威嚇してくる。もう一人は大剣を構え、隙を見せれば斬りかかる、という雰囲気を出している。
「俺達は冒険者だ、ケルヴィオンから来た。ここの村長の息子ユーノから事情を聞いた。ゲイル、という人はは今どこにいる?」
「ケルヴィオンの冒険者!ユーノさんが呼んできてくれたんだ。やったぞ、スターク。」
「ああ、やったぞ。クレイ。」
二人が喜びを表現している。だが、まだ何も始まっていない。
「すまない。喜ぶのは後だ。ゲイルという人の居場所と状況を教えてくれ。」
俺の声に二人は気づき、俺達に向き直り、頭を下げた。
「申し訳ありませんでした。ケルヴィオンからの冒険者とは知らずご無礼致しました。こちらに来てください。状況は道中で説明いたします。」
大剣を構えた男は武器を下ろし、俺達を案内をかって出た。
「よろしく頼む。」
俺達は彼の後に続き、村の奥に向かった。
「申し遅れました。私はクレイと言います。まず、来ていただきたいのは村の奥にある剣術道場です。そこに私の父、ゲイルが居ります。」
「いきなり本命に会えるか。」
ブランド―がクレイと話しているが、俺には聞こえてきているが、頭に入らない。
目に入る光景が衝撃的だからだ。
村の中を走り抜けていく道中、所々に村人が倒れている。
みんな胸に大きな穴が開いている。もう動かない。そんな光景だ。
ユーノから村人は300人くらいと聞いている、だが倒れている人数は100を超えている。
「クレイ、剣術道場に何人いる。」
「・・・・150人程です。」
「そうか。」
クレイにこれ以上聞くことを止めた。見えている以外に家の下敷きになっている村人もいるんだろう。
早くデスファルコンを倒さないとな。
俺が考えていると、大きな建物にたどり着いた。どうやらここが剣術道場のようだ。
side クレイ
「クレイです。父さん、どこですか。」
早く教えないと、冒険者が来てくれた。これで村が助かる。
「どうした、クレイ。」
「父さん。」
奥から金髪の男の人、父さんが出てきた。
「父さん、冒険者の人が来てくれたんだ。これで・・・あいつを倒せる。みんなで力を合わせて。」
「落ち着け。一度合わせてくれ。」
「はい、すいません。父さん。」
あまりにも興奮していて、父さんに窘められてしまった。
「お初にお目にかかります。私はゲイルと申します。」
「俺はブランド―だ。A級冒険者だ。」
ブランド―さん、三人の中で一番年上な人だ。おそらくリーダーなんだろう。
冒険者というよりもどこかの王様と言われた方が納得しそうな雰囲気の人だ。
「ミラです。」
ミラさんは寡黙な印象の人だ。女性で冒険者、という偏見ではないけど、この人の小さな体つきで荒事が出来るとは思えない。
「キッドだ。」
キッドさんは、最初に見た時はあまりの恐怖で大剣が震えていた。
強さ、ただそれを体現したような人だ。
デスファルコンを見たとき、死を感じた。
キッドさんを見たときは、強さを感じた。
この人だったら、きっと・・・
思わず期待してしまうような人だ。
「単刀直入に申します。今すぐ村人を連れて、逃げてください。殿は私がつとめます。よろしくお願いします。」
「と、父さんいきなり何を言い出すんだ!」
父さんが言い出したことは俺には理解できなかった。
「クレイ、静かにしていろ。」
「う!」
父さんの睨みに口を閉じざるを得なかった。
「もちろんだ。こちらは村の近くに馬車を用意している。300人を想定して用意しておいた。ここにいる人間を全員乗せて余るほどだ。」
「ありがとうございます。」
ブランド―さんが馬車を用意してきてくれたことは本当にありがたい。でも、この村を捨てるだなんて・・・
「だが、俺達はデスファルコンを倒しに来たんだ。俺達にも戦わせろ。それが条件だ。」
ブランド―さんの意見に耳を疑った。
ブランド―さんはデスファルコンと戦いに来た、と、馬車に乗せる条件だと。これなら父さんも断れない。
「ブランド―・・・スカーレットに聞いたことがありましたな。確か、魔法の才能はないのに頭がキレるから強く見せるのが上手かった、と聞いたことがありましたな。」
「へ、へぇー。スカーレットがねぇ。」
「いまの物言いから、デスファルコンと戦うことは本当でしょうが、戦わせなければ馬車に乗せない、というのは嘘ですね。」
「ああ、別に戦わせなければ馬車に乗せないなんて、あり得ない。ハッキリ言うとさっさと全員乗って移動してほしいくらいだ。俺達、いや俺はデスファルコンを殺したいんだよ。」
ブランド―さんの表情に怒りが浮かんでいる。
「・・・スカーレットの兄の仇ですか・・・以前聞いたことがあります。A級冒険者3人で挑んで、負けた、と・・・ならば分かるでしょう。今の状況でデスファルコンに挑んでもそれは勇気ではなく、無謀だ。私はスカーレットの思い人を死地に送るわけには行かない。」
「・・・ん、今、スカーレットの思い人、て・・・」
「ん?違うのか、彼女がしている首飾りは君からの贈り物だと聞いたが。」
「いや、あいつ、王都に行くのに田舎者丸出しだったから、なんかアクセサリーでもしていかせるために、首飾りをやったんだが。」
「・・・彼女に言わない方がいいぞ。たまにその首飾りを見て、ニヤニヤしてたぞ。今でも好きなんだろう、君のこと。」
「・・・俺、結婚して、子供いるんだが・・・」
「・・・・・・・この話は終わりにしよう。」
「・・・・・・・ああ・・・」
微妙な空気になって、話を仕切りなおそうとすると、キッドさんが立ち上がった。
「悲鳴が聞こえた。」
え、何も聞こえなかったけど・・・
「ブランドー、ミラ行くぞ。」
キッドさん達が外に出ていく。
「と、父さん。」
「私も行く。クレイ、剣を。」
「はい!」
俺は急いで父さんの件と取りに行き、
「はい、父さん!」
「ああ、行ってくる。」
父さんが青い大剣を片手で振り回し、外に向かっていった。
俺も急いで行かないと。
side out
ありがとうございました。




