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ラクがしたい冒険者~誰か俺を養って~  作者: あさまえいじ
第二章
38/50

第37話

よろしくお願いします。

俺がリオンを寝かせてくると、ミレーユとキアラが笑って話をしていた。

俺が戻ってきたことに気付くと、ミレーユが嬉しそうに俺に言った。

「キッドさん。今日から二人も家族が増えました。」

二人?一人はミラだ。でも、もう一人は?俺が悩んでいるとキアラが笑いながら、

「あたしも今日からここで一緒に住むことにしたから。」

そう、宣言した。

「キアラ、帰らないのか?」

「!あんたはあたしが嫌いか!」

「いや、俺とミラを連れて帰るために来たのかと、思っていたが、違うのか?」

「そう、だね。今日ここに来たのも、お別れを言いに来たつもりだった。」

「そうか。」

「あたしさ、分かったんだ。一族にあたしだけ居場所があって、二人に居場所がない、って、だから、あんたとミラを連れていくと、きっと、また、我慢、させる、て思った。」

キアラが涙交じりの声で言った。

「さっき、みんなでご飯食べてた時、ミラを見てたら、美味しそうに食べてた。確かに美味しかったよ。でも、幸せそうに食べてた。ミラが小さい子に戸惑いながら、笑って食べてた。あんな風に柔らかく笑って食べてたの、初めて見たよ。来て、まだ、一日だよ。それでここはミラに笑顔をくれた。あたしじゃできなかった笑顔をくれた。悔しいな、て思った。でも、キッドがここに来て、変わった。ミラも変わった。悪いふうにじゃない、良いふうに、だ。だから、一緒に帰ることはあきらめた。いや、あたしの自己満足で二人を苦しめるのはやめたんだ。」

「キアラ。」

「ここに来たのは、二人をここにおいて欲しいってお願いに来たんだ。でも、ミレーユは・・・ここにあたしもおいてくれたんだ。」

俺はミレーユを見ると、笑って答えた。

「家族が離れて暮らすのはつらいですよ。」

俺とキアラは彼女の優しさに救われたんだな。

「そうか、ミレーユ、キアラ共々姉弟揃って世話になる。」

「ミレーユ、弟共々お世話になります。」

俺とキアラはミレーユに頭を下げ、お願いした。

「はい。これからよろしくお願いします。」

ミレーユは俺達姉弟を受け入れてくれた。


・・・


キアラがミラと同じ部屋になるようだ。だけど、まだ部屋の準備が出来ていないので、今日は俺の部屋にキアラが来た。ミラはカイルとリアに引っ張られていった。戸惑ったような顔をしながら、頼られて嬉しそうな顔をしていた。


「ミラ、いい顔している。ほんとに良かった。」

「キアラ、ミラはもう大丈夫だ。もう心配してやるな。」

「馬鹿だね、キッドは。いつまで経っても、弟妹は気になっちまうんだよ、姉って生き物は、さ。」

キアラは嬉しそうに笑った。


そろそろ寝ようと思い、床に就いた。キアラも眠いのか、俺に続いて部屋に続いた。

「キアラ、俺はもう寝る。」

「そうかい。あたしも寝るとしようかね。」


・・・


「キッド、もう寝た。」

「まだ、起きてる。」

「久しぶりだね。同じ部屋で寝るのは。」

「そうだな。」

「あんたが10歳くらいの頃までだったよね。」

「そうだな。一族の稼業に出始めた頃からだな。」

「・・・その頃のあんたは荒れだしてたよね。」

「そうだな。一族の稼業に疑問をもっていた。」

「それから5年、あんたはどうしていた。」

「ずっと、悩んでいた。」

「なにに。」

「このままでいいのか、そう思った。」

「そうか。」

「だから出ていった。」

「一人で。」

「一人で。」

「あたし達に何も言わずに。」

「・・・すまん。」

「もう・・・いいよ。」

「ありがとう。姉さん。」

「弟を許すのは姉の役目さ。」


・・・


久しぶりに昔の夢を見た。まだ、一族の稼業に疑問を持つ前のキアラ、姉さんよりも弱かったころの俺の夢、ミラと姉さんがいるだけの世界。そんな昔の夢を見た。でも、途中から夢が変わっていった。ミレーユがリオンがキールがルーナがカイルがリアがいる孤児院の夢に変わり、ミラとキアラが加わった、幸せな夢だった。


・・・


俺は久しぶりに寝坊をした。でも体は万全だ。全く、疲れがない。

キアラはいない。もう起きていたのか。


俺は朝食を貰おうと、部屋を出た。


「ほら、カイル、ちゃんと噛みな。あ、こら、リア、手で食べない。」

キアラがカイルとリアに振り回されている。ミラは落ち着いて食べている。キアラに世話を任せたから、ゆっくり食べられるのだろう。

俺が入ってきたことに気づいて、ミレーユが俺の朝食を持ってきた。

「おはようございます。キッドさん。はい、キッドさんの分ですよ。」

「ああ。ありがとう。ミレーユ。」

俺はキアラが振り回されているのを見ながら、朝食を頂くことにした。


・・・

「ああ、やっと食べれる。」

「お疲れ様です。キアラさん。」

キアラが朝食を食べている。今度はミラが振り回されている。でも楽しそうだ。

「俺はギルドに行く。ミラを連れてな。また、カイルとリアのことを頼む。」

俺はキアラにそう告げると、キアラを食べていたパンを口から落とした。

「あんた、姉を労わろうという気はないの!」

「ミラを冒険者にする。そのためにも、ミラは行かねばならない。何を犠牲にしても、だ」

「あんた、今、犠牲って言った、犠牲って!」

俺とキアラの掛け合いを楽しそうに見ていた。


「さぁ、行こうか。ミラ。」

「はい。キッド様。」

ミラはカイルとリアをキアラに預け、用意をした。


・・・


俺はリオンとキール、そしてミラを連れてギルドに訪れた。

「エリー、今いいか。」

「おはようございます。キッドさん。あれ、その女の子は初めてですね。」

「エリー、この子はミラだ。冒険者登録をお願いしたい。」

「え!この子・・・ですか?」

「そうだ。安心しろ。ミラは俺よりも強い。」

「ええええええええ!」

「だから、冒険者登録を頼む。」

「は、はい。分かりました。」


エリーの冒険者登録が終わり、早速クエストを受けることにした。

「いつも通り、討伐クエストを頼む。」

「はい、分かりました。こちらが対象になります。」

ウルフ、ボア、いつもの相手だな。まあいい。

「いくぞ。」

「「「はい。」」」


俺が促すと、三人が続いてきた。


・・・


いつもの草原に着いた。

まずはミラの力を二人に見せることが目的だった。これから一緒に戦うので、どれほど戦えるのか、知っておく必要がある。


「まずはミラの力を見てもらう。ミラ、あのウルフを倒してこい。」

「はい。キッド様。」

「よく見ていろ。リオン、キール。・・・見えればな。」

「え?」

リオンはクビを傾げて俺を見てきた。


ミラが腰から、ナイフを取り出ながら、ゆっくりとウルフに向かっていく。

ウルフは気付いていない。ミラがどんどん距離を詰めていく。ゆっくりと、ゆっくりと歩いて近づいていく。ミラは特に警戒する様子もなく、淡々と歩いていく。

「あれ?」

「なんで?」

「気づいたか。」

どうやら二人は気づいたようだ。ウルフがミラに気づかないことに。

ウルフは警戒心が強く、鼻と耳がいい。近づくと、匂いで、音で気づく。でも、ウルフが気づかない。

「ミラの動きに音はしない。」

「音が・・・しない?」

「足を見てみろ。」

「足?」

「分かるか?」

「なんだか、俺達と違う歩き方ですね。」

「あの歩き方の注目すべき点は二つ。一つ目は、ぬかるみから足を抜くようにそっと持ち上げる抜き足。二つ目は、爪先で床を差すようにそっと下ろす差し足、この二つで足音を消している。」

「いくら音がしなくても、ウルフは匂いで気づくんじゃないですか?」

「見ていろ。」


キールとリオンがミラを見ているが、ウルフが気づいた様子がない。ミラはそのまま、背後から、ナイフで一振りする。すると、ウルフは裂けた。


「え!なんで、ナイフじゃあ、あんな斬り方、刃が届かないはず・・・」

「見てこい。」

俺が促すと、キールとリオンはウルフの死骸に近づいた。

「やっぱり!切り口は刃物だけど、ミラさんのは小型のナイフのはず・・・こんな斬り口になるはずが・・・」

「キール、この斬り口、まるで、キッドさんの『カタナ』みたいに鋭利だ。」

二人は傷口から、想像しているが、きっと答えは出ないだろう。仕方がない。

「ミラ、教えてやれ。」

「はい。キッド様。」

ミラは二人にウルフを捌いた、ナイフを見せた。

「リオン、キール、これが最初。」

「最初?」

キールが聞き返すと、ミラが頷き、

「そして、これが最後。」

ミラのナイフから風が出ている。風がナイフを一回り大きくしたような形で纏われている。

「すごい!なんですか、これ!」

リオンが驚きながら、質問している。興味津々のようだ。

「これは私の魔法です。私は風属性を使うことができます。戦いで使うときは、体に纏って、気配の察知や匂いが風下に行くように気流を操ることができます。そして、武器に風を纏って、刃を長くしたり、鋭くしたりします。だから、私はナイフに風を纏って、長く、鋭くしました。」

「す、すごい!お、俺もできますか!」

「練習すれば、出来る、かも?」

「おおおおおお、よっしゃー!俺もやってみるぞ!ミラさん!どうすれば出来ますか?」

「風を武器に纏わせるだけです。」

「・・・風はどうやって使えば・・・」

「魔法を使えばいいです。」

「・・・・・・魔法は・・・どうやって・・・」

「魔力を使えばできます。」

「・・・・・・・・・風魔法・・・できません・・・・・」

「じゃ、無理です。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい・・・」


リオンが落ち込んでいた。それにしてもミラの教え下手の相変わらずだ。


「キッドさんが言っていた、ミラさんの方が強い、って言ってた理由は風魔法・・・ですか」

「ああ、戦えば、気づく前に風で斬られて死ぬと思っていたからだ。」


ああ、風の刃と無音無臭からの奇襲、これは俺ではどうにもならない。もうそれを気にする必要はないけどな。



ありがとうございました。

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