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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第三章 ギルドに加入するということ
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鐘の音

 

 その声に、俺は転がったまま話しかける。


「シキ、無事だったのか!」

「わたしにも何が何だか……メフィストさんに起こされたと思うと、外がいきなり真っ暗になって驚いて出てきたのですが」


 おそらく残りの銀貨を対価に、シキにだけ目覚めの魔法を使ったのだろう。

 近くにいたメフィをみるとドヤ顔をしていた。

 あいつ、ファインプレーだが、後で本に戻したまま放置してやろう。


「何にせよ助かった。ありがとう」

「どういたしまして……さて、この攻撃。この力といい……あなたは?」


 そこでようやく、頭上で止められていた金棒がフッと消えた。


「おお……おお! 素晴らしい、いや素晴らしいぞ!」

「何ですかこの人。ヨーヘイさん、早く逃げましょう」


 そういってクイクイと袖を引っ張ってくるが、俺が引き摺られないところをみると本気ではないらしい。

 しかし、シキの顔からすると本気で嫌悪しているような気がする。

 同時に、同じようにこちらを見つめていたリアンが何かに気づいたようだ。


「あなたは……もしや、貴方様も、私達の村の守り神だったのですか!」

「おいリアン? 何ポンコツになっているんだ」


 冷静かはさておき、ここではまともな戦力のはずのリアンが壊れてしまったようだ。

 実際、リアンが召喚した守り神とやらはどこへいったんだ?


「ヨ、ヨーヘイさん! 早く逃げましょう! この人達やばいです!」

「落ち着け。気持ちはわかるが落ち着け」


 もし俺が当事者なら確実に逃げ出している。

 一触即発だった二人から同時に狙われるとは、シキも人気者だな。


「まず、そっちの鬼だ。シキは渡さない」

「悪いがこちとら引き返せないのでね。ましてや彼女のその力、俺の攻撃を平然と防いだ事といい、あいつの血が混ざっているのかもしれない」

「あいつ? わたしは鬼だとしても、心はまだ人間です!」

「人の世で暮らせるのか? 俺らと来い。いや、来なくとも連れていく!」


 その巨体のまま、鬼はだんだんとこちらへ近づいてくる。

 なんだこの威圧感は……これが、本物の鬼というオーラなのか?


「ヒィッ!」

「……っ! 目の前で仲間を誘拐とは、いい度胸しているじゃないか!」


 膝がガクガクと震えながらも、俺は気力だけでシキの前に立ちはだかる。

 まるで変態に襲われるかのような仲間に、傍で見ているだけの何もできない人間なんかになってたまるか。


「邪魔だ、どけ」

「ぐふ……き、効かねぇな……」


 目の前に現れた俺をはたいてきたが、そこは安心の自動防御オートガードだ。

 勝手に奴の攻撃を受けとめ……そして、勢いよく俺の顔にぶつかってきた。

 ただ、直接はたかれるよりはダメージが落ちているようで、踏みとどまることができた。


「……効いていないのか?」

「……ああ、効かねぇな」

「そうか、なら死ね」

「ちょ! 何するんですか!」


 奴が武器を取り出したところで、シキがその武器を遠くへと蹴り飛ばしてくれた。

 チラッとしか見えなかったが、あの鞘といい、さっきの武器は日本刀だろうか?

 ちくしょう、俺も欲しいぞ。


「っく、俺の武器が」

「もっとちゃんと握っておくべきでしたね」

「だが脇差が――」

「それはこれかな?」


 見ると、いつの間にか傍にいたメフィが一振りの刀を掲げている。

 見た目的にも、あの刀が鬼が使おうとした脇差なのだろう。


「よし、でかした!」

「お礼は言葉ではなく行動で示して欲しいね」


 メフィの言葉はスルーして、目の前の奴をにらみつける。

 これで丸腰になったはずだが、あいつにはさっきの攻撃がある。まだまだ油断できない。




「……お前たちはなんだ?」

「むしろお前がなんだよ。こんな騒動を起こしたり、シキを狙ったり」

「まあいい、力ずくで連れ去るのみだ」

「!! 離れてください!」


 そう叫んだのと同時に、シキによって吹き飛ばされる。

 そしてさっきまで俺がいた真上……シキのいる場所の上空から、勢い良く何かが落ちてきた。


 重い衝撃によって発生した轟音に耳を塞いだが、辺りも砂埃でどうなっているのかわからない。

 それでも、何が起きたかだけは把握できた。

 ……シキが俺だけを助け、代わりに何かの下敷きになった。


 だんだんと砂埃が晴れて見えてきたのは、巨大な鐘のようなものが鎮座している姿だった。

 あれの中が空洞ならまだ助かるだろう。


「シキ!」

「まだ仕上げが残っているぞ」

「……え?」


 衝撃に動けない俺を放置し、奴はそのままシキを閉じ込めた鐘に対して魔法を唱える。


「このまま無力化するには、そうだな――バーニング!」


 鉛色だった鐘が、だんだんと赤く変色していくのが俺の位置からでもわかる。

 あいつ、シキを蒸し焼きにするつもりか!


「おい、やめろ!」

「なあに、彼女が狙った通りの人物なら死にはしないさ。ただ、いくつか障害は残るかもしれないな」

「……めぇ……よくも!」


 身体はまだ痛みによって動けないが、それでも目の前で仲間が虐げられる姿は精神的にも大ダメージだ。


「くそ! 動け! 何もできなくてもいい! だから、動いてくれ!」

「無駄だ。例え動けるにしても、お前に俺は倒せない」


 わかっていた。

 俺は無力だ。こいつもそのことに気づいたようだ。

 しかし、しかしだ。この場は俺一人ではない。


「覚悟なさい! サンダースト……ぐっ!」

「叫ぶなんて、隙が多いな」


 後ろから攻撃しようとしていたリアンも、奴の投げた石ころによって魔法を中断された。

 ……いや、今のは不意打ちにもなっていないからリアンが悪いか。

 バルドは……どうやら気絶しているようだ。こいつは無視しよう。


「哀れだな。何も出来ない勇者よ」

「あ、俺は勇者じゃないんで」

「ん? しかしこの召喚士は勇者の…………どうやら終わったようだ」


 俺たちの会話中にも、奴の放った魔法は鐘を熱することをやめなかった。

 しかし、どうやらその効果も今、切れたらしい。


「ちくしょう! よくもシキを!」

「さて、仕上がりを見るとするか…………ん?」


 さすがに純正の鬼とやらも熱さには弱いのか、先ほどリアンに投げつけたときと同じように石を放っていた。

 鐘の上部にあたったそれは、中身を開けるように大きな鐘を横倒しにする。


 ……あんな石ころで鐘を倒すとは、それを食らったリアンは大丈夫だろうか?

 そしてその中身は、何も存在しなかった。




「どういうことだ?」

「よ、よかった……」


 例えシキでも、あれに閉じ込められては無事ではいられなかっただろう。逃げてくれたようで安心した。


「あの位置からは逃げられないはず……何故。まさか……お前か?」

「っ! し、しらないぜ!」


 一瞬、物凄い殺気を向けられたが、奴にも俺にそんな力はないということはわかっていたみたいだ。

 すぐに俺から興味を外し、周りを見渡すと、何かに気づいたらしい。


「そうか。そういうことか。どうやら時間切れのようだ」

「おい、どういうことだよ」

「俺の名はゴウキ……覚えておけ。今回は見逃してやる」


 勝手に納得されても、俺にはわけがわからない。

 しかし、ゴウキか。攻略本に何か情報は載っているだろうか?


「あと、俺も手ぶらでは帰れないからな。こいつを連れて行くぞ」


 ゴウキは近くに倒れていたリアンを抱えると、そのまま去っていく。


「待て! 人質を取るのか!」

「お前らは勇者か? なら、また会うことがあるだろう」

「だからって、リアンを連れて行くなよ!」

「中々面白そうな嬢ちゃんだからな。それに、俺の用は済んだ……というか、邪魔が入ったからな。あと」


 その時、遠くのほうからゴーン、ゴーンという鐘の音が響いてきた。

 それと同時に、空から光を受けてキラキラと光る粉が降ってくる。


「気付け薬……なのか? ただの粉に見えるけど」


 もっとこう、パシン! となるような効果を期待していたが、散布できるようなものとしては粉状の薬が一番適しているのだろう。

 建物の中にいる人には効果がないような気もしたが、そこは眠らされた時と同じで空間に作用するようにできているらしい。


「俺にとっては時間切れだ。こいつを取り戻したいなら、ゲーテ島に来い」


 それだけ言い残し、ゴウキは気絶したリアンを抱え去っていく。

 奴はゴウキと名乗ったが、また会うことはあるのだろうか?


 いや、目の前で恩人が連れ去られた以上、見捨てるという選択肢はない。

 ゲーテ島といったが、それはどこにあるのだろう。


 身体の痛みもようやく引き、動けるようになって辺りを見渡す。

 近くにいるのは役立たずのバルド。そして、ゴウキが出現させた鐘もいつの間にか消えていた。


「シキ! 無事なのか! 返事をしてくれ!」


 近くを見渡しても、俺とバルド以外に人は見えない。

 俺の叫びによって、気付け薬で目覚めたであろう人たちが何事かと様子を見に来るが、そこにもシキの姿はない。


 逃げたなら近くにいるはず。まさか、返事ができない状態?

 そうか。それなら。


「メフィ! いるんだろ、返事をしてくれ!」

「……全く、マスターもシキではなくボクの名前を呼んでくれたなら、すぐに返事をしたのにね」


 声のしたほうへ顔を向けると、宿屋の二階、俺とシキが泊まっていた部屋からメフィが飛んでくるところだった。


「……あそこで何をしていたんだ?」

「いやー、マスターの慌てようは可愛かったよ。あれは後でシキと共有しないとね」

「優雅に観戦かよ。悪魔が……いやそれよりも!」

「安心しなよ。今はベッドで寝ているよ。おかげで所持金はゼロに戻ったけどね」


 どうやら、シキが閉じ込められる瞬間にメフィが飛び込み、シキと部屋まで瞬間移動したらしい。

 瞬間移動と言う割には対価も安く、発動条件は満たしていたらしい。


「ちなみに条件は?」

「一夜を明かした場所だね。わかりやすく言うとセーブポイントさ」

「俺にとってはこれ以上無いくらいわかりやすいな!」


 メフィが何故そんなことを知っているかはともかく、今はシキが助かったことを喜ぶべきだろう。

 正午に散布された気付け薬によって、街中の人もだんだんと起きてきているようだ。

 戦いの後ということもあり、ボロボロになった道にいつまでもいたくない。


 野次馬も集まってきたので、俺とメフィはシキのいる部屋まで戻ることにした。

 バルド? あんな奴は外に放置だ。


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