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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第三章 ギルドに加入するということ
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封印されし指輪


 ギルドへと戻ってくると、何やらランドが受付と話をしている。

 大方ベヒーモスを依頼の達成として扱うための手続きだろう。

 というか、本当に外へ放置したままだが大丈夫なのだろうか。


 受付の人が奥へ引っ込んだかと思うと、奥の方からぞろぞろと強面のおっさん集団を引き連れて戻ってきた。

 こうしてみると、受付のお姉さんがボスみたいでアレの集団を思い出す。


「では我々はもう一度外へ行く。話は通したので、君はそこの受付嬢から報酬を受け取ると良い。」

「ああ、ありがとな」

「それと、シキ君は明日から大変だろうからね。今日一日はゆっくりとすると良い。明日からは直接二階の私の部屋まで来てくれ」

「は、はい!」


 扱いが違うのにも慣れてきた。

 金さえ貰えば関わりたくもないんだ。

 俺も大人だからな。もう会わないと思えば多少の失礼は許せる。


「それでは、こちらが報酬の金貨10枚となります」

「ああ、ありがとう」


『金貨10枚の報酬だと! ……一体どんな魔物を倒したんだ』

『あいつってさっき石版を光らせた奴じゃないか?』

『いや、それは横にいる嬢ちゃんだろ』

『にしても、ただならぬオーラがビンビンするぜ』


 金貨10枚という報酬は、ただの魔物にしてはなかなか多いらしいな。

 近くにいた冒険者からは信じられないといったような視線をもらう。

 これでゴロツキどもが絡んでくれば、シキさんにお願いするんだが。


「ささ、マスターに何を買ってもらおうかな。ほらシキも早く」

「あっ、メフィストさん。待ってください!」

「ちょ! 押すなって!」


 どうやら絡まれるよりも先に、悪魔の買い物に付き合わされるらしい。

 普通にフワフワと浮いているメフィの手前、手を出してくるようなやつはさすがにいないだろう。

 というか、メフィのやつ周りを牽制していないか?




 視線は集めるも、誰に話しかけられることもなく街へと出る。

 街ではメフィにも普通に歩いてもらわないとな。


「じゃ、ボクも装飾品をお願いしようかな。まずは店を探そう」

「あまり一人で遠くまで行くなよー」


 言いつけを守り、タッタッタと小走りで移動していくメフィを見送る。

 こうして浮いていないところ見ると、ただの人にしか見えない。


「シキも何か欲しいなら買うか?」

「わたしはこの髪飾りのみで十分なので……でも、先生へのお土産は買っておきたいですね」


 今買っても荷物になるだけだろうが、これは容量空間ストレージに収納するということか? まとめ買いはするつもりだったけどさ。


「それって、やっぱり俺も先生に挨拶したほうがいいのかな……」

「い、いえ! そこまでしてもらうわけには! 用事が済んだら一人でも大丈夫なので!」

「つまり、そうするとシキとはここでお別れになるわけか。でも海の向こうってどうやって行くんだ?」

「それは……誰かの船に乗せてもらって……」


 あ、この反応は鬼の魔力酔いも、船酔いで済まそうとするみたいだな。

 本人が納得しているなら良いが、果たしてそれで辿り着けるのか?


 そうこうしているうちにも、街にある商店街の中へと入り込む。

 店の商品もそうだが、メフィの姿が見当たらないな。


「ヨーヘイさん、あそこです」

「あっ、メフィのやつあんなところに」


 シキといいメフィといい、特定の店舗で品物を探すのが好きらしい。

 他にも何店舗かアクセサリの店はあるが、今いる店舗の品物をあれでもないこれでもないと悩んでいるようだ。


「ようやく見つけたぞ」

「あっ、遅かったねマスター」

「うわぁ……ここに置いてある品物、全て丁寧に作られていますね」

「シキにもこの良さが理解るかい? ボクに相応しいのは、この店舗に並べてある品物しかありえないね」


 二人とも絶賛するのはいいが、どうして店の中へは入ろうとしないかね。

 ショーケースに並べてある品物で満足するなら、中にある品物を見たらどうなるのだろう。

 未だ店へ入ろうとしない二人を置いて、俺だけドアを開き中へと入る。


「いらっしゃいませ……男性のお客様ということは、プレゼントをお探しでしょうか?」

「ああ。いま外にいるツレのプレゼントを探している。ここの品物は丁寧に作られていて気に入ったとさ」

「まあ! それはありがとうございます! 私としてもお客様に喜んでいただけて何よりです!」


 反応からすると、この店員である女性がアクセサリの製作者なのだろう。

 しかし、あれだけの品物を手作りできるのか。

 世の中には冒険者以外でもすごい人がいるものだな。


「ところで、どういった品物をお探しでしょうか?」

「うーん、姿を消したりすり抜けたりする人用の、霊体向けのアクセサリとか……さすがにありませんよね?」

「それは……物質転移や死霊系の、ということでしょうか?」


 若干引いているみたいだが、メフィのことを考えるとそのような系統の装備が良いことは間違いない。

 そもそも、死霊用のアクセサリは存在するのか?


「すみませんが、そういったアクセサリは当店にはなく……きゃっ!」

「全く、ボクは普通の装飾品で構わないのに。驚かせてすまないね」


 可愛い悲鳴が上がった方を見ると、メフィが浮いたまま近づいてくるのが見えた。

 店員の女性は多分、壁をすり抜けてきたメフィを見て悲鳴を上げたのだろう。


「メフィストさん、急にいなくならないでくださいよーもうっ」

「……獣人?」


 メフィに続いて、扉から普通に入ってきたシキで目立つのは頭だろう。

 本来ならツノがある場所には、昨日買ったネコ耳が装着されている。

 一般人には獣人に見えるようでよかった。


「えと……中の品物も見せてもらっても良いですか?」

「あっ、はい! どうぞ。お客様は可愛らしいので、この辺りの品物などどうでしょうか?」


 少し疑問に思っていたようだが、さすがプロといったところか。

 メフィのことはなるべく目に入れないようにしているのか、後からやってきたシキにあれこれ薦めて付きっきりだ。

 あ、なんだが悪魔が寂しそうにこちらを見てくる。


「……ほら、このネックレスとかその服にも合いそうだぞ」

「……うん。有難うマスター」


 プレゼントを買うにしては暗いが、きちんと似合いそうなものを薦める。

 俺がプレゼントして良いとしても、こっちの好みに染めるのではなく、喜びそうなものを選ばないとな。


「……おや?」

「うん? この指輪がどうかしたのか?」


 しばらく商品をじっくりと見ていたが、ある一点の指輪を見たときからメフィが止まってしまった。

 見た目では、赤いルビーのような宝石がはめられた普通の指輪に思える。


「すまない。これは、なぜここに売られているんだい?」

「お客様! それが判る……のですか?」

「ああ……本来なら此処にあってはならない……というか、なぜこんな状態になっているかが不明だけどね」

「すみません! 実は私も気味が悪くて……誰か判る人がいればと店に並べてありますが、売る気はないんです」


 売る気はない?

 その言葉に値段を見ると……金貨50枚!? 500万だと!

 他のアクセサリは高くても金貨1枚とか、平均銀貨10枚ほどの値段なのに、これだけ差があるとは。

 売る気がないというのも納得だな。


「これはそんな特別な指輪なのか?」

「この赤い宝石が見えるかい? この中には……魂が封印されているみたいなんだ。しかも、自分の意志でね」

「自分の意志? なら出ようと思えばいつでも出れるんじゃないか?」

「それが、ボクにも理解らないんだ。何か条件があるはずなんだが……君は知らないかな?」

「私にも何が何だか……ただ、このようにアクセサリにしてくれと頼まれただけなので」

「それ、売り物にしていいものなのか?」

「それは……でも、何か視線を感じるんです。私としても、誰か判る人に持っていってもらいたくて……そうだ!」

「お断りします」

「そんなぁ」


 魂が封じられている指輪とか、厄介ごとの匂いしかしない。

 そんなものを受け取るほど趣味は悪くないね。


「いや、マスターにはこれを希望したい。ボクはこの指輪が気に入ったよ」

「なっ……」

「ありがとうございます! これはタダで良いので! ぜひいますぐ持っていってください!」


 メフィが受け取るといった途端、女性の喜びようが凄いな。

 魂を欲しがるとか、さすが悪魔といったところか。

 いやまあ何事もなければいいけどさ……メフィならその魂に乗っ取られるとかはなさそうだ。


 メフィ用の資金が丸々浮いたので、シキのアクセサリを一緒に選ぶ。

 髪飾りのみで十分だとは言うが、せっかく来たんだ。

 シキにならワガママくらい言われても怒らない。


「なら……先生用のアクセサリをお願いします」

「先生? 欲しがりそうなものはわかるのか?」

「そうですね……魔力に関する補助効果のついたネックレスなどでしょうか。手につけるものは作業の邪魔になりますので」


 悪魔の話では魔女ということだからな。

 釜をかき混ぜたり、調合する際に邪魔にならないならネックレス一択であろう。

 本当に魔女なのかどうか疑わしいところではあるが。


「それならこちらの品などおすすめですよ。僅かですが、魔力回復効果が付与してあります」

「うぉっ! そ、そうか」


 急に現れるものだがら驚くじゃないか。

 シキは気配で気づいていたみたいだが、売れる時に攻める姿勢といい、さすがプロだな。


「すみません。一番魔力回復効果の高いネックレスはどれでしょうか?」

「それならこちらになりますが……お値段も金貨1枚となっております」


 そう言ってチラっとこちらをみてくる女性だが、今の俺は気前がいいからな。それくらい払ってやろうじゃないか!


「わかった。じゃあ、それを頼む」

「そんな高いものを! 後で払いますから、報酬が出たら一人で来ますから!」

「いいんだ。シキには世話になってるしな」


 実際ベヒーモスとか俺だけじゃどうしようもなかったし、移動ですらシキに頼んで運んでもらったんだ。

 こういうときにこそ恩を返していかないとな。


 いくら粘っても俺が引かないと諦めたのか、シキもようやく納得してくれたようだ。

 先生へのお土産みたいだし、これはシキにも別にプレゼントを用意したいな。


 そうして購入したネックレスはシキに託し、店を後にする。

 メフィはというと、魂が封印されたという指輪を嬉しそうに眺めている。

 これが普通の指輪だったら微笑ましかったが。


 その後、俺達は旅で必要だと思ったものや、魔道具といったものもどんどんと購入していく。

 肉を焼く魔道具やら、暗闇を照らす魔道具などは俺にとって必需品だからな。

 この街は港町ということもあってか、そういった魔道具が充実しているので助かる。


 買い込むといっても、今後を視野にいれて予算は金貨2枚までだ。

 予め予算を決めておくと、慎重にモノも選べるし旅でも困らないことだろう。


 さて、次は宿か。

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