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城塞

「レント様!城塞伯様!!いらっしゃいますか!!!」


普段から喧しい部下がより一層喧しく問いかけてくる。

職務態度は至って勤勉で細部に目が届き市民からの受けもイイ部下なのだが、喧しさだけはどうにもならないらしい。そこが無くなれば嫁の貰いどころも多数あると言うのに残念な女だ。城塞都市アベルクライン レント・サタリューヤ城塞の秘書官であると言う自覚を持ってほしいものだ。


「ムンナ、もう少し静かに問いかけることは出来ないのか?」


「申し訳ありませんレント様!火急の件故に!!」


この女がそう言うのならば城塞都市そのものの危機が迫っているに等しいことが起き始めているということだろう。喧しいが大変優秀な部下である。以前も賊が都市内に入り込んで悪事を企てていた事を伝えにきた時や魔物の大進行の兆しを一早く伝えた時と同じ顔をしていたのだからな。


「報告をしろ。何が起きた?いや何が起きようとしている?」


「レント様、決して驚かないで下さいね?!!」


「お前の悪い癖だなムンナ。いい加減その喧しく話すのともったいぶるのをどうにかしろ?でなければ嫁にも行けんぞ」


「レント様が貰ってくれれば万事解決なので問題ありません!!!」


「・・・貴様、余程大樹海視察隊に入隊したいようだな?」


「何故ですかレント様?!不肖ムンナ!秘書官を務める以前よりレント様をお慕いしておりました!!!」


「成程、そこで番をしている幼馴染はもうどうでも良いのだな?」


「・・・な、なにを仰いますかレント様?!ロロロロキソンとは幼馴染以上のか感情など持ち合わせておりません!!!」


ロキソン、そこで肩を震わせるならばそろそろ愛の告白をして嫁に貰ってやれ。不憫でならんぞお前も、この娘も。


「して、火急の件とやらを教えてくれないかな秘書官よ」


「はっ?!失礼いたしました!!!先程城門にて高身長の黒いコートを羽織った男と見た目が幼い少女を検問していました!!!」


「いいから先を言え、私の反応を待つな」


「はい!検問をしていた者が少女の様相に見覚えがあったらしく凝視していたところ」


「ロキソン、今日の城門当番が誰だったかあとで報告しろ。部下の趣味を詮索するのは好きじゃないが念のためだ!」


「フィリス嬢だったらしいのです!」


「・・・ムンナよ、もう一度言ってくれないか?」


「だからフィリス嬢だったらしいのですよ!レント様の姪っ子様です!!!」


「ふざけるな!?フィリスが!大火傷を負って失明してしまった独り身のフィリスが!!ここに来れるはずがないだろうが!!!」


「あ、いえ、その」


「ムンナ秘書官、貴様余程死にたいのか?私の前でフィリスの、私の可愛い姪っ子のフィリスの、フィリスを騙ったモノの報告をしにわざわざ来たと言うのか!!!」


「あ、あの、えと」


「ここに呼び出せ、今すぐにだ。さもなくばその首叩き落としてやる」


素っ頓狂な声をあげてムンナ秘書官は執務室を出て行った。

私の可愛い姪っ子フィリス、妹メルフィスの忘れ形見。

城塞伯などという地位がなければお前を引き取ったのだ。

薄汚い貴族や国王の兄がいなければ、お前はいつまでも可憐な姿を魅せてくれていたのに!!!


「今すぐに安否確認をすべきだな、誰か!通信士を呼べ!!!」


この数分後フンヌラー村には既にフィリスの姿がないと報告を受けたレント城塞伯だったが、更に待つこと十数分後には滝のような歓喜の涙を流すことになるとはフィリスはもとよりレント本人すらまだ知らないでいる。

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