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ようこそ、トランプの国へ

もう一つの不思議な国をお楽しみください!

 俺は漫画を買うために近所の古い本屋に来ていた。

(なんだこれ?)

 目当ての漫画を見つけて取ろうとすると、それを見つける。

 漫画の隣に一冊の本があった。

 その本は装丁がしっかりされた辞典のようだ。表紙は古びているようで新しい。大きさは文庫本ほど。

 小説なのだろうか? でも漫画コーナーにあるのだから実は漫画なのかもしれない。今は文庫本ぐらいの漫画もある。

 俺の手は目当ての漫画ではなく、そちらに伸びた。手に持ってみるとハードカバーのせいか見た目よりも重く感じる。試しにページを開くと、無数の活字が俺の目に映った。

(……)

 俺は本を静かに戻した。

 小説は専門外であるからだ。

 そうだ! このままここに置いたら誰かが自分のように間違えてしまうかもしれない。

 俺は自己満足の親切心で小説コーナーに向かう。

「あれどこにもない……?」

 同じ本があるだろうと思い探したが見つからない。どうやらこの一冊だけらしい。

 まあいい。小説コーナーに置いておけば店員が気付いて直してくれるだろう。

 俺は立ち去ろうとして一つ気になった。

「そういえば、題名」

 置いた本の表紙をそのとき初めてじっくりと見た。

「『トランプの国のアリス   著 JOKER』」


 一軒家である自宅に戻る。

「ただいま……誰もいないのか?」

 リビングを覗くが誰の姿も見えない。

そういえば両親は旅行だったことを思い出す。出かけるときは居たのですれ違ったらしい。

テーブルの上に紙片があった。

『友達の家で泊まってくるよん(* ̄∇ ̄*) by妹』

  どうやら今日は俺一人らしい。飯はコンビニで済ませよう。

 さて、せっかくの休日は何しようか。さっそく買ってきた漫画でも読もうか。それとも昼ドラでも見るか。

 俺はなんとなくテレビを点けた。

 番組は特番で手品ショーが流れていた。面白そうだからチャンネルは変えずにいよう。

  内容は若い男がゲストに向かってテーブルマジックを披露していた。その中でも、やはりと言っていいほどカード当てはやる。トランプからゲストに一枚引いてもらい、それを当てるというやつだ。

  手品だから種がある。だが種を知っても俺には出来そうにない。

 そう思っていると、ふと、あることを思い出す。

「そういえば今日見た本もトランプだったな」

名前は確か『トランプの国のアリス』

 きっと『不思議の国のアリス』から考えたんだろう。似たような名前の本やゲームが色々出ている作品だから。

  でも原作にもトランプが出ていた気がする。うろ覚えだが。

 テレビを見終え、今日買ってきた本が入った紙袋の封を破る。

「さて最新刊は主人公はどうなるかな……ん?」

 意気揚々と紙袋に手を突っ込んだときに違和感を感じた。

 手に触れたモノは布のような革のような微妙な肌触りがして持つと少し重たい。

 俺は最近、いや今さっき持ったことがある。

 恐る恐る紙袋から取り出す。

「何で……ここに」

 俺の手にはハードカバーの本

『トランプの国のアリス』

 おかしい。会計のときは確かに漫画だった。この本は小説コーナーに置いてきたはず。

「――!?」

 突然、頭がグワングワンと響きだす。

 何だ……これ? 頭痛なの……か?

 痛みが徐々に増していく。

「……」

 今度は痛みが退いていく。いや判らなくなる。身体の末端から感覚がなくなっていき四肢が動かなくなる。視界が狭まって音が遠くなり――心臓の鼓動が……止まる。



「―丈夫・・か?」

 はじめは聴覚が戻る。そしてドクンと心臓が打つ。

「がッ!? はあッ!?」

 肺が空気を求め貪る。

 全身に感覚が戻り、電気が奔る。

「おわあッと!」

 ガバっと勢いよく起き上がる。

 全身に熱が帯び、視界が開ける。

「何だったんだ、今の?」

 まだ頭が痛い気がする。

「あの~大丈夫ですか?」

 俯いていた俺のつむじに声がかかる。

 顔をあげる。

「……モミジ、お前なにやってんだ?」

 モミジっていうのは俺の妹だが……なぜか目の前にいる。友達の家に遊びに行っていたはずだ。というか黒髪が桃色――ウィッグか? になっているし、やけにひらひらした服を着ている。

「モミジ……ですか? それは誰かの名前でしょうか?」

「誰って、おまえだろ?」

 何言ってんだ? てかコイツこんな口調だったけ。

「あの~わたしはモミジさんではないんですが……」

 相手の少女は困ったように笑う。

「……は?」

 おいおい嘘だろ。目の前の少女は嘘を言っているようには見えない。じゃあ妹似のこの子は……誰?

「あの~」

 考えていると再び声をかけられる。

「お身体に不自由がないのでしたら退いていただけると助かるんですが……」

「え?」

 そう言われて初めて自分の身の周りを確かめた。

 知らない場所だった。近所ではなさそうだ。町並みはレンガ造りの建物ばかりで道行く人は全員がピンク系統の髪だ。なんだ今日はピンクデーなのか?

 そして俺が座り込んでいるのは一軒の建物の玄関前だった。どうやら俺が居るせいで中に入れないらしい。

「すまん。すぐに退く」

 俺が立ち上がると相手の少女は礼を述べて扉を開く。

「入りますか?」

 少女は振り返る。

「俺が?」

 困惑した。出会ったばっかの奴を家に入れるのか? ふつう。

「朝ごはんはまだですよね? これも縁の一つです。ごちそうしますよ」

 立ち止まっていた俺に少女は嬉しそうに微笑んだ。

「そういえば自己紹介がまだでしたね」

 少女はスカートの裾をつまみ一礼する。

「わたしはチヤといいます。モミジさんではありませんよ?」

「俺はアオバ。まあよろしく」


 俺は妹似のチヤに朝食を――シチューとパンをご馳走してもらい一息ついていた。

「それでどうして玄関前で寝ていたんですか?」

 食後のコーヒーを出してチヤは問う。

「俺にも分からん。目が覚めたらここに」

「わたしが朝市で居ない間に玄関でぐっすりですか。酔っぱらいじゃないですよね。お酒の臭いがしませんし」

「俺はまだ十八だ。二十歳になるまでに酒なんか飲んだら捕まっちまう」

 俺はこれでも模範生として高校生活をそれなりに楽しんできたのだ。

 俺の言葉にチヤは不思議そうな顔をする。

「二十歳にならないと飲んじゃダメなんですか、お酒?」

 当たり前のことにチヤは小首を傾げる。

「はあ? お前な。法律があるだろ?」

 チヤは小首を反対に傾げる。

「ホウリツ? なんですか、それ?」

 おい、おいおいおい。まさか無法地帯に居るのか、俺?

「守らなくちゃいけないルールがあるだろ?」

「ああ、戒律のことですね」

 チヤは納得したように頷く。

(良かった。無法地帯ではなさそうだ)

 俺は心の底から安心した。

「でもお酒は飲んでいいんですよ? ハートの国は娯楽がないので少しだけなら許されているんですよ」

 微笑んで説明してくれているチヤの言っていることが頭に入ってこない。だが一つだけ確かなことはーーここは日本じゃない。

「なあチヤ、ここはどこだ?」

 恐る恐る苦笑いで訊く俺にチヤは三度小首を傾げた。

「ここは四国公認都市――通称トランプの国。そのハート地区ですよ」

「……は?」

 おい、それはどこだよ? 地球のどこかにはそんな国があるのか?

「それで……あの~アオバさんは、何処の方なんですか?」

 チヤは不安げに俺を見つめてくる。なぜだろう?

「日本だよ」

 俺の言葉にチヤの顔からは不安は消えて四度小首を傾げる。

「どこですか、二ホン? ハートの国にはありませんよね?」

 もうわけが判らん。今の状況に混乱するばかりだ。俺はどうなってしまったんだ?

「あああッ!?」

 チヤが声を上げる。

「どうしたんだ?」

「お祈りの時間なんです。急がないと!」

 テーブルに置いていた懐中時計の時刻を知ると、チヤはそう言い残して家を飛び出した。

 俺は初めは呆けていたが気になったので後を追う。

 外に出るとチヤはすでに姿が見えず、通りの人々が仕事や雑談を止めて一方向を見て手を絡ませている。それは神に祈りを捧げているようだった。向こうに何かあるのだろうか? そちらに向かう。

「すげー数の人だな」

 そこは広場であり地面の石敷きが見えないほど数えきれない数のピンク系統の髪の老若男女が黙々と祈りを捧げている。彼らが祈る先には大きな教会があった。

(いた)

 人垣の中に周りと同じように一心に祈りを捧げるチヤを見つけた。

「チヤ――」

「アオバさん、今はお静かに」

 俺が話しかけるとチヤに遮られる。

 なんだ、これはそんなに大事なのか?

 周りを見ても誰も動かない。

 沈黙の空気に耐えられなくなった俺は周りをマネして両手を合わせた――普通祈りは絡ませるのではなく合わせるものだろう?

 どのぐらいたったのだろう。俺が痺れを切らしそうになったとき教会から身体を震わせるほどの鐘が鳴り響く。

(すごい音だな)

 耳を塞ぎたかったが教会の鐘にそれは失礼だ。我慢するしかない。

 周りの人々は大丈夫なのかと確認すると、

「おおお!」

 めちゃくちゃ感動していた。まるで本当に神に祈りが届いたように。

 鐘が鳴り終わると広場に集まっていた人々は解散を始めた。

「いやー、今日も綺麗な鐘でした」

 隣でチヤが満足そうに微笑む。

「じゃあ戻りましょうか」

 パン、と手を叩くと通りを踵返す。俺はチヤを追いかける。

(ん?)

 チヤの家に向かう途中、人々の視線が気になる。

「なんか皆、俺を見ていないか?」

 こそこそとチヤに訊く。

 チヤは苦笑する。

「だってアオバさん髪も服装も変です。それに――」

 チヤは自分の頭の少し上を指す。

「ここにJOKERってあります。皆が不思議がるのは当たり前です」

「ここ?」

 頭の上に手をやるが空を切るだけだ。

「何もないけど……?」

 そこで気づいた。チヤの頭上に何かある。

「ハートの三?」

 チヤの頭の数センチ上、桃色でハートマークと3が浮いている。さっきまであっただろうか?

「なあ、頭の上のなんだ?」

 俺が訊くとチヤは自分の頭の上を見るように目線を向ける。

「何を言っているんですか? わたしたちの階級じゃないですか」

 当たり前のように言われる。いや、知らないから訊いたんだが……

「でも大丈夫です。ハートの国の皆さんは優しいので差別などいたしません!」

 うん。力説されても何が大丈夫か分からないんだが……

「チヤ」

「はい!」

 チヤは何でも訊いてくれと言わんばかりに自らの胸をドンと叩く。

「俺、階級もハートの国も知らないんだけど」

 チヤの笑顔が凍った。

「アオバさん、嘘ですよね? 田舎の子供でも知っていることですよ?」

「だから俺は日本だから知らないんだって」

「でも二ホンだってどこかの国に……」

「いや、日本は国の名前であって都市ではないが」

「!?」

 チヤに衝撃の雷が奔ったのが見えた気がした。

「ええええええぇぇッ!? 四国以外に国ってあるんですか!?」

 いや、まああるだろうな。なにせ世界には百九十カ国以上あるんだから。

「広いんですね、世界って」

 なんかしみじみと呟きはじめた。

「じゃあ二ホンには階級がないんですね?」

「まあ、そうなるな」

 ぽん、とチヤは拳を手のひらに打つ。

「ではアオバさんにトランプの国を案内しないといけないですね」

 良いことでも思いついたようにチヤは笑った。



「では初めに四国について説明しますね」

 一度チヤの家に戻ってきた。

「四国――ハート、スペード、ダイヤ、クローバーの国があり、大陸を四等分しています」

・ハートの国。北西にあり女神教の発祥の地であり宗教を重んじる国。教皇の下、教会組織が厳格な戒律ーーこれは日本で言うところの法律で国を治めている。信者は他国にも存在していて影響力は強い。旗は桃色の地にシンボルである女神が描かれている。

・スペードの国。北東の四国最大の戦力を誇る帝政国家。何度も他国の侵略を行い、十年ほど前からは四カ国条約で主だった武力行為はないが他三国に恐れられている。現在は『串刺し女帝』とスペードの国の内外で畏怖されている皇帝が治めている。旗は青色の地に剣と騎馬の横顔。

・ダイヤの国。南西に位置する複数の商業組合と武力組織で構成された統合国家。国家内で常に利権争いをしている。元は商人の者が多いので経済や貿易など金の巡りに関して右に出る国はない。旗は橙色の地に麻袋から溢れる金貨。

・クローバーの国。南東にあり存命者をトップにしない唯一の国。歴史は浅いが文化が他国より進んでいる。貴族はおらず、平民の代表が議員となり国の行動を決める。旗は緑の地に鳩のつがい。

「次に四国公認都市――トランプの国について」

 十年以上も前まで、四国は戦争をしていた。しかし長い戦争は互いに国を疲弊させて滅ぼしかねなかった。そこで四国の代表は平和を目指して停戦。和平へとつなげるために四国が接する地域に新たな都市を作り、四国で協力して治めて、成功すれば後に大陸四国を一つの国にするという。トランプの国はいわば実験都市であった。

「では外に参りましょう」

 チヤと共に通りを歩く。

 通りの人々は仕事や雑談を止めて笑顔で挨拶してくれる。俺は彼らに会釈を返していく。

「アオバさん人気者ですね」

「そうなのか?」

「はい! いつもより活気がある気がします」

「俺、関係あるのか?」

「あると思いますよ。ハート以外の国の方が来るなんて珍しいですから」

 なるほど俺は外国から来たから珍しく感じるのか。

「他の三国の奴は居ないのか?」

 先程から挨拶している人の頭上にはハートマークしか見当たらない。

「来ないわけではないんですが、ハートの国は宗教や病院に関係ある建物が多くて他国の人が集まりたいと思う名産や名所が無くて……寂しいんです」

 苦笑するチヤは悲しげに言う。

 俺は世話になった礼に何かをしたくなったが思いつかなかった。

「着きました」

 彼女が止まったのは高々と水を吹き出す噴水が存在感を放つ広場だった。

 今まで見ていたピンク系統の髪の人々のほかにブルー、オレンジ、グリーン系統の髪の人々が噴水広場で賑わいをみせている。

「さっきと雰囲気が違うな」

「噴水広場は都市の中央にあって四国の人々が仲良く過ごしているんですよ」

 嬉しそうにチヤは話す。

 チヤの言う通り、先程までの寂れていた様子はなく人や初めて見た馬車でひしめき合っている。商人が声を張り上げながら物を売り、市民が知り合いとそれを冷やかし、子供たちが木剣のオモチャを手に駆け回り、軽快な蹄の音を立てながら馬車が過ぎる。

「説明していきますね。あちらの青や水色の髪の人たちはスペードの国の方です」

 チヤの指差した方に甲冑を身に着けた一団が居た。腰には帯剣までしている。

「物騒だな」

「わたしも初めて見たときは怖かったですけど、気高いスペードの兵士さんたちのおかげでトランプの国は治安が良くて助かります」

 たしかに彼らが目を光らせていたら犯罪などをする気が失せるだろう。

「商売をしている橙や朱の髪の人たちはダイヤの国の方です」

 広場で露店を出したり直接馬車で商いしている人たちのことだ。

「とても気さくな人たちで多種多様な物を売ってくださるので生産性の弱いハートの国では助かります。おすすめは帽子屋さんのかわいい帽子です」

 ふむ。チヤは帽子が好きなのだろうか? 今度、礼に買っておこう……そういえばこの国の金ってどんなだ?

「最後は緑や黄緑の髪の人たちですね。クローバーの国です」

 手紙を市民に渡したり廃材を回収している。郵便局やゴミ収集の人みたいだ。

「まじめな方々で都市の機能を支えてくれています。クローバーの方たちと仲良くなってから生活は日々豊かになっています」

 公務員のようなことをしているのだろうか?

「そしてハートの国のわたしたちです!」

 誇らしげにチヤは胸を叩く。

「優しさと奉仕の心をモットーに生活しています。大きな教会の他に病院が多く、医療が充実しています」

 医療が充実しているのは意外だった。中世の雰囲気を醸し出している都市なので、もっとこう祈りを捧げながら麻酔無しで外科手術をするもんだと思っていた……それが充実した医療じゃないよな? 俺とこの都市の人の感覚が同じことを祈ろう。

「ざっとは説明しましたが、どこか行きたいところがありますか?」

 フム。

 行きたいところか。そもそも何があるのか知らないから行きたいところが思いつかない。

 なら、今しなくちゃいけないことを考えよう。

 今一番に考えなくちゃいけないこと、それは

「俺でも働ける場所ってあるか?」

 何を始めるにも元手となる金が必要だ。無いなら稼ぐしかない。

「お仕事ですか?」

 チヤは腕を組み、う~んと考え込む。

「何か、お得意のことってありますか?」

 得意なことか

「特にないな」

「……そうですか」

 なんだよ。別にいいじゃん。得意なことがなくても普通のことを普通にできれば。

「では読み書きは?」

「読み書きぐらい――」

 俺は口をつぐんだ。

「? どうしましたか?」

「いや……」

 読み書きぐらいできる。この国の言語が日本語ならな!?

 俺は普通にチヤと話しているけど、お約束として会話ができても文字は読めない現象が起こるはずだ。なんだ? チヤに文字を教わるイベントが始まるのか?

 俺はチヤにばれないように辺りに視線を飛ばす。どこかにこの世界の言語があるはずだ。

 結果――うん、読めない。

「大丈夫ですか?」

 黙りこけている俺を心配してチヤが俺の表情をうかがう。

「チヤ、実はこの国と俺の居た日本という国と言語が違うみたいだ」

 俺の言葉にチヤは苦笑する。

「そうですね。国が違うので読み書きができないのは仕方ないですよね」

 あはは、と乾いた笑いのチヤ。もしかして憐れみられてないよな。         

「それだと力仕事くらいでしょうか? 荷物運びとか」

 チヤは考え込んでいると、視線が一点を向いた。

「あの方なら助けでくださいます」

 駆け出したチヤを追う。

「アイリスさん!」

 チヤが呼びかけたのは周りの兵士たちと同じく軽甲冑姿で指示を出していた水色長髪の女性だ。

「? ああ、どうしたんだ?」

 チヤと並ぶと長身に感じられてつり目がクールさを感じたが、チヤに向ける微笑みは優しげだった。

「アイリスさん、ご相談があるのですが」

「かまわないよ」

 アイリスと呼ばれた女性は部下に仕事を託すと近くで停めていた馬にまたがった。

「彼は?」

 チヤに向けられた微笑みが険しくなって俺に向けられた。

「俺は……アオバです」

 まるで蔑まれているような視線に俺は気圧された。

「どうやら異国から来たみたいで困っているそうなんですよ」

「そうか。では行こうか」

 馬が歩みを進める。

「行きましょうか」

 チヤが馬の隣を歩く。その隣を俺は歩く。

「なあ、この人は誰なの?」

 俺は馬上の女性に聞こえないように小声でチヤに問いかける。

「アイリスさんはスペードの国の騎士様です!」

 自分のことのようにチヤは話し出す。

 階級……

 俺はチラリと馬上の女性騎士の頭上を見た。

 スペードのマークとA。スペードのエースということか。でもエースって1ってことだよな?

「エースってどんぐらい偉いんだ?」

「それはもう偉いですよ! キング、クイーン、ジャックに続く役ありですから」

「役あり?」

「その国で名誉ある方々のことですよ」

「チヤは違うのか?」

「3の私なんて全然及びませんよ」

「着いたぞ」

 チヤと話していると目的地についたらしい。

 俺たちが来た場所は周りのレンガ造りとは違い、灰色や黒い石で建てられた建物だった。

 アイリスは馬から降りると入り口の扉に向かう。

 扉の横には軽甲冑の兵士が敬礼で彼女を迎える。

「ああ、チヤは仕事があるだろう? この人は私が預かるよ」

「え、でも……」

 チヤは懐中時計を取り出す。

「あと十分なら」

「それでいつも遅刻しているんだろう」

 痛いところを突かれたのか黙りこくってしまう。

「大丈夫だ。この人の世話になるよ」

「……そうですか」

 ため息を吐いて別れを惜しむように微笑むチヤと別れた。



 どうしてこうなった。

「そこに座れ」

 建物の中に入った瞬間、屈強な軽甲冑の兵士に連行された俺は鉄扉の部屋に連れてこられた。部屋の中には机と向かい合うように椅子が二つだけあった。

 俺は奥の椅子に座る。もう片方に男の兵士が座る。

「ここに名前と年齢と出身国を書け」

 男の兵士が不機嫌そうに俺にボロ布のようなものと羽とインクを渡す。

「これに書くのか?」

 俺はヒラヒラとボロヌ布を示す。

 男の兵士は当たり前だというように鼻を鳴らす。

(書けと言われてもな)

 俺はこの国の文字を知らないんだが……どうしよう。

 仕方ないので、日本語そのまま書いていく。漢字は……いちおうカタカナにしておこう。

「『ナカムラ アオバ

  17サイ   ニホン』とこれでいいのかな?」

「書けたのか?」

 男の兵士はボロ布をひったくると睨み付けるように視線を文字に奔らせる。

「ふざけるな!?」

 男の兵士はボロ布を机に叩きつけた。

「なんだ、この虫が這ったような字は!?」

 いや、だから。

「俺はこの国の文字を知らないんだが」

「お前はどこの出身なんだ? 今の時代、孤児でも教会で読み書きを教わっているぞ!」

「俺は――」

 男の兵士の背後の鉄扉が開く。

「ご苦労様。交代しよう」

 アイリスが部屋に入ると男の兵士は敬礼して部屋を辞した。

「では話を聞こうじゃないかJOKER 」

 アイリスが机に大量の紙束をドスンと音を発てて置いた。

「それで、俺は何で取調室に入れられてんだ?」

「決まっている。取り調べするためだ」

 アイリスはボロ布に目を通しながら答える。

 なんだこいつは何が目的なんだ?

「これはカタカナか?」

 アイリスは文字を指差し、目を向けてくる。

 え?

「カタカナを知っているのか?」

「子供の頃に少しかじっていてな」

 アイリスは紙束を探り、目当てのものを引っ張り出す。彼女が引っ張り出したのは俺の慣れ親しんだ文字列。

 カタカナの五十音早見表だった。

「カタカナってこの国にもあるのか?」

 俺は机に身を乗り出して聞く。アイリスは首を振った。

「そんなことはない。君たち日本人の言語を知っているのは数少ない一部の者たちだ。この資料だって普段は厳重に保管されている」

 俺が書いた内容を紙束に指をはしらせて探しながら解読していく。

「ふむ、ナカムラ アオバか。珍しいな。ニホンジンは漢字の名前だけだと思っていたが」

「ああ、どうせ読めないと思ったからカタカナで書いた。読めるんなら漢字で書こうか?」

「読めれば十分だ。漢字は数えきれない数があるから混乱してしまう」

 アイリスは紙束を端に寄せて俺を見つめてきた。

 何だ? まさか告白ではないよな?

 アイリスは小さく息をはくと話を切り出す。

「君にはこれから我らスペードの国の人間として生きてもらいたい」

「…………」

 は?

「どういうことだ? 何で俺がスペードの人間になるんだ?」

 話せば長くなるんだが、とアイリスが話始める。

「チヤから聞いているかもしれないが、この大陸には四つの国が存在している。そこで人々は必ずどこかの国に属している。これが証拠だ」

 アイリスは自分の頭上を指差す。そこには相変わらずスペードのエースが存在感を放っている。

「だが例外がある。それが君のようなJOKER だ」

「俺が?」

「そうだ。どこにも属していない唯一の存在。異邦人、旅人、先駆者、先生、余所者。呼び方は人それぞれだが大陸には何度も現れた存在だ。そんな彼らは同じ特徴があった」

 アイリスは右の人差し指を伸ばす。

「彼らは自らを日本人と名乗った。この資料を作ったのも彼ら日本人だ」

「俺以外にも日本人が居たのか!?」

 俺は驚きに身を乗り出す。

「まあ落ち着きたまえ。確かに居たが残念ながら現在生存が確認されているのは君だけだ」

 アイリスの言葉に俺の興奮は一気に冷めてしまった。

 もし、同じ日本人が居たなら協力しあって元の世界に戻れると思ったのに。

 俺は肩を落として椅子に座る。

「で、何で俺が欲しいんだ?」

 嘆息する俺にアイリスは話を続ける。

「彼ら日本人が遺したのは紙資料だけではない。文化や技術も多くある。まあほとんどの遺産は我らでは持て余しているがな。それでも君たち日本人の存在は万金に値する。だからスペードの国に来てほしい」

 俺は迷った。今すぐにでも自分の家に帰りたい、だが方法が分からない。帰れる目星がつくまでの働き口を探していたのにスペードの国に招待されてしまった。これはチャンスと捉えて良いのだろうか?

「分かった。よろしく」

 俺は悩んで末に答えた。彼女と共にいたら今までにこの世界に来た日本人について知ることができるかもと思ったからだ。

「そうか、承知した。すぐに部屋を用意させよう」

 話は終わりとアイリスが椅子から立ち上がったときだ。鉄扉が開け放たれる。

「隊長! 居ますか!?」

「どうした?」

 焦った兵士がアイリスを認めると、報告する。

(やく)の売り子が現れました! 急いで現場に」

「了解した。すぐに向かう」

 アイリスは報告を聴いて兵士を従える。

「おい! 何処に行くんだ?」

 俺もアイリスに従って廊下を歩く。

「麻薬の売人が見つかった。そいつを捕らえて芋づる式に親玉に辿り着く」

 俺は知った。この世界でも麻薬による犯罪が横行していたのだ。

「俺も協力する」

 それは好奇心や正義感だったかもしれない。だけど自分も何かをしなければと思った。

「ダメ」

 アイリスは顔を険しくして切って捨てた。

「この仕事は危険すぎる。ニホンジンは争いを好まないのだろう? ここで待っていてくれ」

 アイリスに諭されて俺は足を止めた。

だけど、こっそりと後を追った。



 アイリスたちの後をつけると、彼女たちは一度、南のクローバー地区に入り、すぐに西に向かってダイヤ地区に入った。噴水広場を通らずに迂回したのは目立たないためだろうか?

 ダイヤ地区に入ったアイリスたちは黒いローブを纏い、フードを目深に被った。

「……戻るなら今だぞ?」

  溜め息混じりの声がアイリスから発せられた。こちらを見ていないが、明らかに俺に言っている。

 俺は降参して姿を見せる。

「気になったんだが。やっぱりダメか?」

 スペードの兵士たちが動揺しながら俺とアイリスを交互に見る。その中でアイリスは深く溜め息を吐く。

「君は理解していないのか? この任務は死人が出るのかもしれない。大事なJOKER に死なれるわけにはいかないんだ。帰りなさい」

 アイリスは怒るわけでも苛立ちを露にすることもなく。ただ淡々と説得してくる。だけど俺も退き下がらない。

「JOKER は、この世界にとっては特別なんだろ? なら俺にだって何か出来るはずだ!」

 決意を込めた瞳でアイリスを見る。彼女もこちらを見据えていた。

「アイリス様、お急ぎにならないと」

 部下の言葉にアイリスは折れた。

「そうだな。JOKER ついてきなさい」

 アイリスは背を向けるとスペードの兵士を率いて先を急いだ。俺も彼女の背を追った。

 路地裏の道を進んでいると黒いローブの男が待っていた。アイリスは男と何かを話している。それが終わると、俺たちに振り返った。

「諸君、聞いてくれ。標的はまだ店の中に居ることが確認された。これより私とーー」

 アイリスが俺に目を向ける。

「我らに協力を申し出てくれたニホンジンが店内に入り売買の現場を押さえる。諸君は出入口に陣取って売人の逃亡を防いでほしい。以上だ」

 何か質問は? とアイリスが俺らに訊く。

「スペードの兵士ってバレるんじゃないのか?」

 スペードの階級が低い一般人と違って、ここに居る兵士たちは階級が6以上あって売人に正体が気づかれるのではないかと思った。

「そうか。君には説明していなかったな。JOKER 彼の階級は分かるか?」

 俺はアイリスが示した兵士の少し頭上を見る。

「スペードの7」

「では一度振り返ってほしい」

 俺は言われるままに背を向けてアイリスの許可で向き直る。

「もう一度訊くぞ。彼の階級は?」

 俺はこちらに背を向けるローブの男の階級を確認しようと顔を上げる。

「何も……ない?」

 俺は階級を見つけることが出来なかった。振り返ったローブの男は同じ人物だったのに。

「今のように見知った人物でも顔を認識できないと階級は見えないんだ。それを利用して正体を隠している。まあ普通なら怪しまれる格好だがダイヤの国の住人は詮索してこない。裏で悪い商売をしているから必要以上に相手を探るのは暗黙のルールで禁止になっているのだ。私たちにとっては幸いだな」

 他には? とアイリスが俺に訊いてきたので、もう一つ訊いた。

「俺は変装しなくて良いのか?」

「JOKER は能力があるんだ。あの男をよーく見てみろ」

 俺はアイリスが指し示した方向を目で追った。視線は露店で商売する男で止まる。

「階級を見たら自分の頭の上に想像して」

 俺はアイリスに言われた通りに頭上に意識した。だが何も起こらない。

「何か変わったか?」

 俺の疑問にアイリスは近づき何と髪を引っこ抜いた!

「痛て! 何するんだ!?」

 俺が叫ぶと、アイリスは俺の唇に指を当てて静かにするように言って引っこ抜いた俺の髪を見せてきた。

「嘘だろ!?」

 再び唇に指を当てられる。今度は強めだった。

 俺が驚いたのは何本も髪を抜かれたからじゃない。抜かれた髪が朱色だったんだ!

「これがJOKER だけの能力だ。見た者の階級を真似する。実際見るのは私も初めてだが驚きだな、これは」

 アイリスは一人感心している。どうやら俺はダイヤの国の人間になったらしい。

「階級はダイヤの4。まあ妥当だな。それじゃ行くぞ」

 俺はアイリスと共に路地裏を出て正面の店に向かった。

「良いか、店に入ったら私たちは赤の他人だ。そこは合わせてくれ」

 俺が頷くとアイリスは店に入る。俺は他人を装うため数秒、間をおいて入った。

「いらっしゃい。席はご自由に」

 店に入ると俺は息を呑んだ。

 店の広さはファミレスほどで同じようにテーブル席が有ったが、それは店の隅っこに有るだけで店内のスペースを牛耳っていたのはカジノだった。

(入りにくいな)

 よく行くゲーセンとは違ってカジノは大人の居る場所だと思っている俺は雰囲気に圧倒されていた。落ち着かず、すぐにアイリスを探すが黒いローブの客は何人も居て判別できなかった。

 扉の前で手持ち無沙汰でいると逆に店員たちから訝しげに見られた。何処かに座らなければ。

「お客様、ポーカーはどうでしょうか?」

 テーブル席に座ろうとしたら近くに居たバニースーツの女性に呼び止められた。俺は断ろうとしたが、ここで断ったら周り逆に怪しまれると思い、勧められた席に座った。……決してバニーさんの胸が大きかったからではない。

 四つあるポーカーテーブルの席には俺の他にバニーさんーーではなく長く暗いオレンジの髪で茶色と白の卯耳バンダナの少女がニコニコ笑って座っていた。頭上にはダイヤの7。

(え!?)

 俺が驚いたのは彼女が白シャツに赤ネクタイ、そして濃紺のブレザーだったことだ。これでは日本の学生と同じじゃないか!

 俺は少し動揺したが日本人が文化も遺したとアイリスが言っていたので、こういう服を着る人もいるんだなと一人納得した。

「お待たせ!」

 卯耳少女に声をかけたのは同じ服装の少女ーー彼女は立っていたのでスカートが灰色と白のチェックだと分かった。彼女はダイヤのJで卯耳少女とは反対に明るいオレンジでカールした短髪で七色の羽飾りが付いた黒いシルクハットを被っていた。この世界の生徒は俺の世界以上にオシャレなのかもしれない。そして同い年に見える二人はとても可愛かった。

「お兄さん、連れは居ないの?」

 シルクハット少女に俺はお兄さんと呼ばれたことに遅れて気づいた。

「生憎お一人様なんだよ」

 俺が苦笑するとシルクハット少女は興味なさげにふ~んと言った。

「じゃあ誰か誘おうか……誰が良いかな?」

 シルクハット少女は店内で暇そうな人を品定めする。だが客たちは少女の視線に気づくと明からさまに目を逸らす。

「遊んでくれそうな人いないな」

 シルクハット少女が残念がるとテーブル席に座っていた黒いローブの人が最後の席に付いた。

 俺は階級が分からなくても気配で誰だか分かった。隣に座ったのはアイリスだ。

「揃ったね。ディーラー始めて」

 シルクハット少女の指示にディーラーの男が一礼して真新しいトランプを用意した。

 シルクハット少女が場慣れしているように感じたのは俺だけか? 

 アイリスに色々と訊こうと思ったが他人のフリをしなければならないので成り行きを見守ろうとしているとバニーさんに話しかけられた。

「お手紙が来ていますよ」

 可愛く言われてデレデレしながら受け取ると羊皮紙と呼ばれる紙に文字がカタカナで書かれていた。きっとアイリスだろう。

『イチバン、オクノ、テーブルセキ、テーブル、ユビデタタク』

 俺はテーブル席を窺って目当ての人物を見つけた。薄汚れたローブで正体を隠して苛立たしげにテーブルを人差し指で何度も叩いている奴だ。

 手紙はもう一枚あった。

『シルクハット、キケン、ゲーム、イッカイダケ』

(シルクハットの少女が危険?)

 俺には理由が分からなかったがアイリスを見ずに一度頷いた。

「二人ともチップは持ってる? 無いなら替えられるよ」

 俺は失念していた。カジノだから金が必要なのだ。だが俺はこの世界に来てから金を見ていない。ポケットにある財布から日本の金を出してもダメだよな。

 俺が俊巡していると再びバニーさんに話しかけられた。

「こちら、ご友人の方からのプレゼントです」

 麻袋を受け取ると俺は重さで取り落としそうになった。中を覗くと金色の硬貨がジャラジャラと入っていた。五百円玉以外で金色硬貨を見るのは初めてだった。しかもこれは銅ではなく本物の金が使われている……感覚的に。

 麻袋の中には手紙があった。

『グンシキン、キンカ、ヒャクマイ』

「これで頼む」

 俺が麻袋をディーラーに渡すと彼はすぐに金貨の枚数を確認する。

「百枚ですね。どうぞ」

 俺の前に二十五点緑チップ一枚、五点赤チップ十枚、一点白チップ二十五枚が送られる。

「君は?」

 シルクハット少女の視線がアイリスを向く。

「やるよね?」

 シルクハット少女は冷笑する。

 アイリスは黙っていたが溜め息を吐いてローブの中に手を入れて銀行のカードのような銀色のカードをテーブルに置いた。

「おいくらでしょうか?」

 カードを提示されたディーラーの目の色が変わった。彼は揉み手をしている。

「今日は百で構わない」

 ディーラーが分かりやすく落ち込む。まさかアイリスは店の常連なのだろうか? それもかなりの強さ。彼女の前にも俺と同じチップが送られる。

「なら私たちも百で良いよね?」

「うん!」

 シルクハット少女の提案に卯耳少女は元気よく頷く。彼女たちにもチップが送られる。

「アンティ!」

 ディーラーの左隣の卯耳少女が一点チップを出す。これはポーカーを始めるときの参加料だ。俺を含む三人も同じく一点チップを出す。ディーラーが一枚ずつカードを配り、全員に五枚配られるとゲーム開始だ。俺の手は5のワンペア。

「ベット!」

 卯耳少女は掛け金として一点チップを出す。始めだから妥当だと俺は思った。

「レイズ」

 レイズーー掛け金の上乗せをシルクハット少女は口元をカードで隠しながら言った。出したのは一点チップと五点チップで計六点。これも妥当。

俺はコールして六点出す。

「レイズ」

 十三点につり上げたのはアイリスだった。そんなにも良い手が彼女に来ているのだろうか?

「ダウン!」

 降りるときも卯耳少女は元気だった。

「コール」

 アイリスに勝負を挑んだのはシルクハット少女。俺は勝負を降りる。残った二人だけがカードを捨ててディーラーから捨てた枚数の数をもらう。

「ベット」

 シルクハット少女が五点チップを出す。アイリスは応える。

「ショーダウン」

 ディーラーの声に二人はカードを見せる。

「キングのスリーカード」

「エースのスリーカードだ」

 勝ったのはアイリスだった。彼女はゲームは終わりと立ち上がる。

「待ってよ」

 引き留めたのはシルクハット少女。

「まだ一回だよ。もっとやろうよ」

「すまない。今日は忙しいんだ」

「そうなんだ。なら仕方ないね」

 シルクハット少女が納得する。俺も言い訳して立とうとしたときーー

「でも不思議だよね。エースがキングに勝つなんて」

 卯耳少女が言った。彼女の言葉にアイリスの動きが止まる。

「そうだよね。国だとキングの方が格上なのに。これじゃまるで反ぎゃーー」

 バンと音を立ててテーブルが叩かれる。

「もう一度するぐらい時間が残っていた」

 苛立ちを窺わせるアイリスが席に戻る。

「そう来なくちゃ」

 シルクハット少女は悪戯が成功した子供のように笑った。

 その後、五戦もしたが俺は一度も勝てずにゲームは終了した。換金されたのは金貨十枚。散々な結果だ。

「いや~楽しかったよ。チップはゼロになったけど」

 実に爽快と笑ったのはシルクハット少女。彼女はアイリスと互角の勝負を繰り広げて最後の勝負で掛け金を全て上乗せして応えたアイリスに負けた。

「あなた強いね。さすが銀」

「皮肉はそこまでにしてもらおう。私を利用した料金は高いぞ」

 アイリスの苛立った声にシルクハット少女は微笑むだけ。その彼女にバニーが耳打ちするーー俺もしてほしいとは断じて思っていない。

「他のゲームでもう一勝負と思ったけど急用が出来ちゃった」

 シルクハット少女は苦笑する。彼女は最後までニコニコ笑顔だった卯耳少女を引き連れて席を立った。俺はそこで一息。

(ん?)

 アイリスに足を蹴られて彼女を見るが彼女は別の方向を見ていた。俺はアイリスの視線を追う。

(アイツか)

 俺が見たのは売人だ。そして彼の向かいの席にローブを着た人物が座っている。そいつが薬物を買いに来た客だろう。

「売買されたところを押さえる。君は客を良いな?」

 アイリスの囁きに俺は頷く。

 そして周りを窺っていた売人が小さな袋を客に手渡し金を受け取った。今だーー

 アイリスが椅子を蹴り倒して売人たちのテーブル席に駆ける。俺も続く。

「スペードの騎士団だ! 大人しく縄につけ!」

 フードを外して正体を現したアイリスに売人と客は瞠目した。突然現れたスペードのエースは犯罪者にとっては畏怖の対象なのだろう。二人は抵抗することもなく逮捕される。そこで一段落。

「お疲れ様」

 その声に俺は振り返ってーー息を呑んだ。

「悪いんだけど、ソイツの身柄を預けてくれないかな」

 シルクハット少女はリボルバー拳銃をアイリスの背中に向けていた。

「ダイヤの犯罪者をダイヤにか?」

 アイリスは振り返らない。

「勘違いしないでよ。ソイツはうちのファミリーのじゃないから。うちが薬や売春をしないのは分かってるでしょ」

 俺は呆けてしまった。今、ファミリーって。

 この状況でファミリーと言われて暖かい家庭を想像する者はいないだろう。つまり彼女の言うファミリーとはーー

「マフィア……なのか」

 俺の呟きにシルクハット少女は横目で俺を見る。

「そういえばお兄さん。この人と協力してたよね? それは良くないな。私たちの情報をしゃべってほしくないな」

 カシャンとスライド音が聞こえて俺の背中は硬い物に突かれる。

「動いちゃダメだよ、お兄さん。動いたら穴が開いちゃうかも?」

 卯耳少女が可愛く耳打ちしてくれたが何一つ嬉しくなかった。

「早く渡してくれないかな? 私たち急いでるんだ」

「そういうわけにはいかない。この都市ではクローバーの法に従い、我らスペードが裁くのが理。忘れたわけではあるまい」

「それは君たちのルールだろ? 私たちの掟は違うんだよ」

「都市の住人なら都市のルールに従ってもらおう」

「時間がない。五秒前、五、四」

 シルクハット少女が引き金に指をかけ、アイリスが腰の柄に手をかける。

「二、一」

 その時、店の扉が蹴破られた。

「帽子屋は何処だ!」

 侵入してきたのはスーツーーまさにマフィア姿の男だった。男は天井に向けて拳銃を発砲した。

 銃声に驚いた客たちが我先にへと店の出口から逃げて入れ違いになるように敵マフィアたちがゾロゾロと入ってくる。

「チッ!? 予想より早かったか」

 シルクハット少女は向けていた銃口を敵マフィアに向けて発砲した。

「ミカズキ逃げるよ!」

「アイアイサー!」

 卯耳少女も敵マフィアに発砲して相手を吹き飛ばした。

 店内は銃撃戦に突入した。俺は倒されたテーブルに隠れて銃撃を凌ぐしかない。

「お客様お逃げにならないと死んじゃいますよ」

 同じテーブルでバニーさんがショットガンで応戦している。隣のテーブルではディーラーが拳銃で同じく戦っている。

 そういえばアイリスを見失った。彼女は無事だろうか?

「うおッ!?」

 隠れていたテーブルから木片が飛んだ。このテーブルはそろそろヤバイかも。

「大丈夫です、お客様。店の家具は全部鉄板入りです」

 ディーラーが苦笑する。こういうのは慣れっこらしいが俺の不安は一つも取り除かれない。

「ああ、もう最悪。裏口は騎士団配置済みだし、正面は時計屋とか。最悪だ~」

「時計屋のヒットマンに殺られるのかな? 騎士団に一斉検挙かな?」

「不吉なことを言うな!?」

 カウンターの方から声が漏れ聞こえてくる。先ほどのシルクハットと卯耳のコンビだ。

 カウンター内から顔を出したシルクハット少女がリボルバー拳銃で応戦したとき俺と目が合った。彼女はカウンターから飛び出すと一度敵に発砲してスライディングで俺の隣に来た。

「お兄さん、騎士団と仲が良いんでしょ! 騎士団は一斉検挙するの? 何人で店を囲んでるの?」

「何で言わなきゃなんないんだ」

「このままじゃ、お兄さんも騎士の友達も死ぬよ!?」

 シルクハット少女が指差した方を見るとアイリスもテーブルを倒して銃撃を凌いでいた。騎士である彼女は銃を持っていないらしい。このまま敵マフィアに攻められたら彼女も危ないかもしれない。

「俺たちの狙いは薬物の売人だ。一緒に来たのは十人だけだ」

「それなら客のフリをして逃げられるか。ミカズキ、裏口の鍵を開けて。銃は捨てておくんだよ」

「アイアイサー!」

 カウンター内から顔を出した卯耳少女が敵にショットガンを喰らわせて奥に消えた。

「お兄さんにも来てもらうよ」

「何で俺も?」

 シルクハット少女は俺を睨み付ける。

「人質に決まってるでしょ。スペードに通じてるヤツを信じれるわけないじゃん!」

「でもアイリスが危ない!」

「彼女なら騎士団が来たら助かるよ。ほら早く!」

 シルクハット少女に腕を引っ張られる。

「そこまでだ! 我らスペードの騎士団が処断してくれる!」

 裏口から突撃してきた騎士団が剣を手にして敵マフィアに斬りかかる。バニーさんやディーラーたちは武器をすでに手放して被害者面している。

 俺はシルクハット少女と裏口から逃げた。

「ふう。上手くいったね。ミカズキ出てきていいよ」

「アイアイサー!」

 路地裏まで逃げた俺たちは先に逃げていた卯耳少女と合流した。

「じゃあ俺はこれでーー」

「待ちなよ」

 離れようとした俺は肩をがっしりと掴まれる。

「君は何処のファミリー? さっきの様子じゃ時計屋でもないよね」

「いや俺はマフィアじゃないんだが」

 俺は冷や汗を流す。

「何を言っているのさ。商人でも何処かのマフィアと繋がってるよ。そうじゃないとダイヤの住人が商売できるはずがない」

 俺は詰め寄られて壁際に追い詰められた。どうすれば信じてもらえるか。

「私が帽子屋の幹部と知って黙ってるんなら良い度胸だね」

 凄みの利いたシルクハット少女の声。だが俺は

「ごめん君のことは今日初めて知った」

 と言った。仕方ない本当のことだから。ここで嘘をついたら殺されるかもしれない。

「私を知らない? 嘘でしょ?」

 俺の言葉にシルクハット少女は驚き呆けた。俺は素直に頷く。

「シルクハットのカミラを知らないって。お兄さん、よくダイヤ地区で生きてこられたね」

 一人感心するシルクハット少女のカミラ。

「先輩、お兄さんの髪が変わってるよ!?」

 卯耳少女ーーミカズキの言葉に俺とカミラが目を見開いた。

「お兄さん、それ」

 俺は髪を一本抜く。

「戻ってる!?」

 髪の色が本来の黒になっていた。じゃあ今の階級はーー

「JOKER って。まさか噂のニホンジン!?」

 俺はカミラからすり抜けて路地を全速力で駆けた。

「待ちなさいニホンジン!」

「待て待て!」

 何度も角を折れて撒こうとするが二人は追いかけてくる。

(やはり彼女たちは道を知っている。このままじゃ俺が行き止まりに行ってしまうかも)

「ねえねえ何で走ってるの?」

 声に隣を向くと濃緑髪でストリートパフォーマーのような格好の女の子が俺と一緒に走っていた。

「君は誰?」

 俺の質問に少女は走りながら器用に小首を傾げる。

「私? 私はミーシャだよ。お兄さんは?」

 ん~。これは走りながら会話しなければならないのだろうか?

「俺はアオバ」

「アオバは何で走ってるの?」

「追われてるからだよ!」

「何で追われてるの?」

「後ろの二人に訊いて!?」

 俺が叫ぶとミーシャは後ろを振り返る。

「にゃはは。アオバ、帽子屋に追われてる。面白~い!」

「笑ってないで助けてよ!?」

 ミーシャは再び小首を傾げる。

「にゃ? アオバは助けてほしいの?」

 俺が何度も頷く。ミーシャが頷き返す。

「ならクローバーにおいでよ。案内してあげる」

 ミーシャは足を早める。

「ついてきて」

 先行するミーシャに俺は必死に追いかける。後ろからは未だに二人が追いかけてくる。

 ミーシャが角を曲がる。俺も続いた。

「って。ダメじゃんか!?」

 曲がった先は行き止まりだった。

「アオバ、止まらずに走って!」

 ミーシャは行き止まりの壁に向かって走り続けている。

「ああもう。どうにでもなれ!」

 俺は再び走った。壁に向かって50m走など堪ったもんじゃないが追いかけてくる二人には捕まりたくなかった。

「さあアオバ、手を伸ばして」

 身軽に壁の天に飛び乗ったミーシャが俺に手を伸ばす。

 俺は踏み込んで跳んだ。右手は壁の縁に届き、左腕をミーシャに掴んでもらって引っ張りあげてーー!?

「うお!?」

 俺はすごい力で引っ張りあげられて壁向こうに飛び降りた。

「あの!? 泥棒猫!」

「連れてかれちゃったね!」

 壁の向こうから悔しそうな二人の声が聞こえる。何とか逃げ切れたようだ。

「ようこそ! クローバー地区へ」

 ミーシャがニッコリ笑う。

「助かったよ」

 俺はぐったりと尻餅をつく。

「ここまでくれば帽子屋も来れないよ」

 ミーシャは八重歯を出して悪戯っぽく笑う。

「それでアオバは二人に何をしたのかな?」

「別になにもしていないが……な?」

「じゃあ頭の?」

 ミーシャは俺の頭上を指差す。階級はJOKERだろう。

「まあ、そうだな」

「ふふ。大変だね」

「ミーシャは俺がJOKERでも平気なのか?」

「ん? 別に不都合はないよ」

(ミーシャはチヤみたいにJOKERを外国人が旅行に来たような感覚なのか?)

 なら良いか、と俺は立ち上がる。

「助けてくれて、ありがとうな」

「なら、何か奢ってよ」

 ミーシャが俺の腕に自分の腕を絡ませてくる。

「そうしたいんだが、金が……あッ!」

 俺は思い出して上着のポケットに手を突っ込む。

「あった!」

 取り出した麻袋がジャラリと鳴る。中には十枚の金貨がちゃんとある。

「お兄さん、景気が良いね」

 金貨を覗いたミーシャが俺の腕を引っ張る。

「私の知り合いが働いてる飲食店があるんだよね~。そこに行こうよ!」

 ミーシャに引っ張られるがままに辿り着いたのは煙突から灰色の煙をあげる一軒の店だった。

「いらっしゃいませ!」

 扉を開けると来店を報せる鈴と共に応える元気の良い声。

「やっほー! 久しぶり、チヤ」

「昨日も来ましたよね、ミーシャさん……あれ?」

 チヤがミーシャと腕を組んでいる俺を認める。

「アオバさん、こんなところで何をしているんですか? それにミーシャさんと」

 チヤに半眼で疑われる。まるで妹に詰問されているみたいで俺には堪えた。

「いろいろあってミーシャに助けて貰ったんだ。その礼にと」

「そうなんですか! では席にどうぞ」

 テーブル席に俺とミーシャは座る。

「じゃあ頼んじゃうね」

 小さな黒板に書かれたメニュー表から次々とデザートを注文していく。

「おい。食い過ぎじゃないか?」

「大丈夫だよ。金貨一枚で収めるから」

 これも、これも、あとこれも、とミーシャは止まらない。

「それで、アオバはチヤと知り合いなの?」

 注文を終えたミーシャが俺に顔を向ける。

「今日の朝にな。この国に迷ったところを助けて貰ったんだ」

「にゃはは。アオバは助けてもらってばっかだね」

(……確かに)

 チヤに助けられ、アイリスに助けられ、追われたけどカミラに助けられ、こうしてミーシャに助けられている。

 俺は自分の不甲斐なさに溜め息を吐く。

「今日出会ったばかりなら恋仲じゃないか」

 残念そうに頭の後ろで腕を組むミーシャ。

「バカッ!? 俺とチヤはそういうのじゃないんだ。なんかこう、そう! 兄妹だ!」

「お、落ち着いて!?」

 ミーシャは身を乗り出した俺を馬を相手にするように静ませる。

「初日に兄貴宣言するのも、どうかと思うけど別に変に思ってないから」

「……そうか」

 俺は椅子に座る。

「何を話してるんですか?」

 チヤがデザートをテーブルに並べる。

「ううん。何でもないよ」

 ミーシャははぶらかす。そしてテーブルいっぱい並べられたデザートを食べ始める。

「凄い食べっぷりだな」

 ケーキにパフェ、プリンにホットケーキその他、最後にホールのケーキを腹に納める。

「あの~アオバさん?」

 注文表のバインダーで口許を隠して不安そうに俺を見つめてくる。

「どうした?」

「アオバさん、お金あるんですか?」

 食い逃げをするつもりはないので、俺はチラリとミーシャを見て確認すると麻袋から金貨を一枚テーブルに置く。

「まさか!?」

 チヤはバインダーで顔を押さえるとしくしくと泣き出す。

「盗みを働いてしまうなんて。お金に困っているなら、お小遣い渡しましたのに」

「だから帽子屋に追われてたんだね」

 ミーシャの言葉にチヤの悲しみが助長される。

「いやいや! 違うから!? ちゃんとアイリスに貰ったんだからな!?」

 誤解を解くためーーカジノの軍資金というのは内緒で説明する。

「本当ですか?」

 目端に涙を溜めながら半眼で睨んでくるチヤ。

「本当だって」

「分かりました。信じてますからね」

 涙を拭い、柔らかく微笑むチヤ。やっぱり俺は妹に弱い。

「ごちそうさま!」

 ミーシャは満足そうに膨れた腹を叩く。俺は金貨一枚支払うと銅貨が二枚返ってくる。

「それでアオバはどうするの?」

「どうするって?」

「住む場所だよ。当てはあるの?」

 そういえばアイリスに泊まる場所を用意してもらったのだが彼女と連絡を取る手段がない?

「それなら今日は私の家に泊まってはどうでしょう?」

 食器を片していたチヤが提案する。

「良いのか?」

「はい。今日は陽が沈みますし、アイリスさんには私から連絡を入れておきます」

「にゃはは。アイリスとも知り合いなんて、お兄さん凄いね」

 でも、とチヤは溜め息を吐く。

「私はまだ仕事がありますので……道、分かりますか?」

「私が送っていくよ」

 ミーシャが固まった身体をほぐす。

「そうですね。ではアオバさん」

 チヤは俺に鍵をくれる。

「家の鍵です。十時には帰りますが、眠かったら私のベットで寝てください。そのときは戸締まりを確認してくださいね」

 俺はチヤと別れてミーシャと共に家に向かった。

「アオバはトランプの国で暮らしていくの?」

 帰り道でミーシャに訊かれた。

「まあな。帰れるまでは仕事して飯を食って寝なくちゃならないからな」

「帰るって、どこに?」

 言って良いか迷ったがチヤには言ってしまったから良いか。

「日本だよ。俺の居た国」

「帰れないの?」

「帰り方が分からないから。探しながら暮らすことになるな」

 にゃはは、とミーシャは笑う。

「それならアイリスを頼ると良いよ。彼女ならスペードの国が集めた機密を全て閲覧できる」

 俺は改めてアイリスの凄さを知った。

「そうそう」

 チヤの家に着き、中に入ろうとした俺にミーシャは声をかける。

「チヤは私のものだからね。可愛いからって狙っちゃダメだよ♪」

「だから俺は別にーー」

 振り返るとミーシャは、にゃはは、と笑い声を残して姿を消していた。

 このとき俺は彼女の言葉の本当の意味が分からなかった。そしてーー

「階級が……一度も見えなかった」


今回は寸説でいつも通り短編にしようと思ったけど色々書きたくて連載にしちゃいました! すみません!


今回の話はキャラが多いので後書きに紹介します。

・チヤーーモデルは白うさぎ。忙しいのに時間にはルーズなキャラです。イメージとしてはヒラヒラの服を着た町娘です。世話焼きで、これからも主人公を支えていく妹的存在。

・アイリスーーモデルは白の騎士。白の騎士は鏡の国で登場します。よくハートの騎士としてハートの女王の隣にいますが本当は白の女王の騎士です。彼女は騎士の中の騎士ということで女性にモテるタイプです。それが実が悩みで本当は乙女だったり。

・カミラーーモデルは帽子屋。シルクハットを被ってる一番分かりやすいキャラです。原作では、お茶会メンバーの一人なので今作では危ない仕事をしています。ですが一番人間らしく仲間思いのキャラです。

・ミカヅキーーモデルは三月うさぎ。卯耳を生やすかどうか悩んだキャラです。いつも元気で幹部であるカミラを慕い、付き従っています。

・ミーシャーーモデルはチェシャ猫。一番謎めいたキャラ(予定)です。なのでこれからチェシャ猫らしくしていきます。今のところは猫笑い。

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