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藤井先輩と私。  作者: 寿音
Ⅲ:白いベンチと梶瀬くん。
7/83

チュンチュン……

今日は昨日と打って変わって快晴。

雲一つない青空。

昨日は、あのあと傘を買ってベルまで行ったけど、お店が臨時休業で結局目的のケーキは食べられなかった。

今度は絶対食べる!

あのいちごショートは絶対食べなきゃ。

そんなことを考えながら、学校までの道を歩く。


遠くに藤井先輩らしき後ろ姿を発見した。

遠くからでも、先輩の綺麗な茶髪が目立つからすぐに分かった。

身長も高いしね。


抜き足、差し足、忍び足で近づいて、先輩に声をかけた。

「先輩!おはようございます!」

「あぎゃあっ」

案の定、先輩は奇声をあげて飛び退いた。

本当藤井先輩って面白い。


「ななななんやねん!陽依かいな!めっちゃ驚いた」

先輩の顔が真っ青だったのが、徐々に赤くなり、リンゴ色になった。

先輩の顔ってよく変わるから面白い。


綺麗な顔立ちをしてるのに、顔をくしゃくしゃにして笑ったり、時には寂しい顔になったり。

ほかにはどんな先輩がいるんだろう…。


「先輩朝早いですね」

ただいま、7時10分。

普通の登校時間が8時半だ。

「俺はいつもこの時間に登校してる」

「そうなんですか」

「朝のなんや涼しい空気が好きでなぁ。夏はこの時間に登校してんねん」

なんか先輩らしい。

私は、涼しく朝の澄みきった空気をゆっくり吸った。

何も話さずに、私と先輩は校舎を目指す。

でもその沈黙は、嫌な静さじゃなくて、どこか温かい静けさだった。


「俺さ!!」

先輩は突然私の前に回ってこっちをじっと見た。

「なんですか?」

「おれ…陽依のこと!す…」

「陽依、日直はいいの?」

背後からユカの声がして、私は振り返った。

そこにはユカがしてやったり顔でたっている。


「ユカ?」

「陽依今日、日直だから朝早く来たんじゃないの?」

あっそうだった!

だから私早く学校行こうとしてたんだ!

「先輩失礼しますっ」

私は先輩に挨拶すると、遠くに見える学校を目指して走った。



「藤井先輩、言っときますが、あの子相当鈍いですよ」

風になびく赤茶色の髪をかきあげてユカは言った。

「………知ってる」

いじけたように、藤井は答える。


「あー、先輩。告白流されたんですもんね」

先に言っておくが、この涼しげな顔をしているユカと、拗ねた顔で突っ立っている藤井は、今日が初対面である。

「なにをっ!」

「好きなら好きって言わないと、一生あの子には伝わらないですよ」

「はっきり言おうとしたら、お前が邪魔したんやろ」

「あ~ら、ごめんなさーい」

全然悪びれてない声で藤井を嘲笑うユカ。

ユカは、完全に藤井をなめている。

「おちょくんな」

藤井のテンションは下がる一方である。


「先輩、陽依の親友の、私しかしらない陽依のこと教えてあげましょうか」

「………」

タタタタッ。

早歩きでユカから離れる藤井。

タタタタッ。

早歩きで追いかけるユカ。


「聞きたくないんですか?」

「聞きたない!」

どうやら、今までの会話でユカの悪魔のような性格を理解したようで、藤井はユカから逃げようとした。


「陽依の元彼の話~」

小さな声で、でも藤井の耳には届く声で囁いた。

すると藤井はピトっと止まる。

本当に単純なやつである。



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