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藤井先輩と私。  作者: 寿音
XIV:藤井先輩と夕陽の私。
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「おはよう!」

「おはよう、陽依。なんかスッキリした顔してるわね」

自分の気持ちに気付いた昨日。

それからなぜだか胸の中のモヤモヤが消えて、気分がスッキリした。

そうだ!このことユカに報告しなきゃ。

ユカが梶瀬君にお願いしてくれたおかげで、私やっと藤井先輩への気持ちに気付くことができたんだし。

「あ、うん!あのね!!」

「ヒヨリおはよでーす」

どよどよとした空気と共に、やつれたお顔のジュディが教室に入ってきた。

会話を中断してしまったけれど、私の報告よりも、なんだかジュディの方が心配だ。

「どうしたの?ジュディ」

「……追いかけてきたデス…」

「へ?」

うつむいたまま小さな声でそう言ったジュディは、私とユカの間を通り抜けて席に着いた。

「どうしたのかしら?いつもなら朝からテンションMAXでうざいくらいなのに」

うざいってひどい…けど本当に元気がないみたい。

“追いかけてきた”ってどういう意味だろう。

そう考えていると、キーンコーン…と朝のHRを知らせるチャイムが響き、教室に担任が入ってきた。

「おーい、お前ら席つけー」

教室中でおしゃべりしていたクラスメイトが次々と席に着く。

みんなが席に着いたのを確認した委員長は、「起立…してください」と語尾を小さめに言う。

「礼」

「「おはようございます」」

委員長がイメチェンしてから、クラスのみんなは委員長の言う事にしたがうようになった。

すごい進歩。

担任が出席を確認し終えると、今日は連絡事項があるようで、出席簿を持ったまま教卓の前に立っている。

「今日は一つ連絡事項があるぞー。隣のクラスにも留学生が来たらしいー。お前ら絶対に隣のクラスに見に行くんじゃねぇぞ」

「なんでですか?先生」

クラスの男子が手を挙げて聞く。

「あー、男子は問題ねぇ。女子はいくなよ。うっさいから」

クラスの女子が騒ぎ始める。

「えー!もしかして留学生って男!?」

「留学生って事は外国人のイケメン!!?」

「ほいじゃ、委員長号令」

委員長の号令は、女子のキャピキャピ声でかき消されて聞こえなくて、いつのまにか担任は教室を出ていた。

心なしか、ジュディを取り巻く空気がより一層ドヨドヨしてる気がする。

朝のHR終わりのチャイムが鳴ると、女子の一部は隣のクラスに走って行った。

数秒後に、キャーという黄色い声が響いていたから、やっぱりイケメンだったらしい。

「陽依、あんたは見に行かなくていいの?」

「私、あんまり興味ないし、ユカは?」

ユカは委員長を指差し、「貴光いるから間に合ってる」と笑った。

「あはは、そうだね」

「でもジュディといい、今日来た留学生といい、妙な時期に留学してくるもんね。留学生ってこういうもんなのかしら」

それもそうだ。

来るなら、4月とかじゃないかな。

まぁ、いままで留学生が来たこと無いからわかんないけどね。

「よし、気になるから、ジュディ本人に聞くわよ」

「え?いまから?」

「おバカね。昼休みよ。今からじゃもう授業始まるでしょ」

「あ、そうだね」

ユカは授業の準備があるからと、自分の席についた。

「あ、ユカに言いそびれちゃった」

昼休みもいえそうにないなぁ。

まぁいっか。

それからあっという間に、午前の授業が終わり、お昼休みになった。

あれからジュディのテンションは上がる事はなく、終始自分の席でじっとしてた。

いつもはジュディの周りに集まる男子たちも、今日は近づきにくいみたい。

私とユカは、お弁当と水筒と自分の椅子を持ってジュディの席へ向かった。

「ジューディ。一緒にランチ食べよ」

「机一つに3人って狭いけどいいよね!?」

できるだけテンションを上げて声をかけてみたけれど、ジュディは弱々しげな笑顔をむけただけだった。

黙々と弁当のおかずを食べる3人。

ジュディはサンドイッチを一口食べるごとに、深いため息を吐く。

先に食べ終わった私とユカは、目を見合わせる。

“あんた聞きなさいよ”

“いやだよ。ユカきいてよ”

アイコンタクト。

“いいだしっぺはユカでしょ!!”

私がそうおもって見つめ返すと、ユカは「……わかったわ」と小さく呟いて、ジュディの方に向き直った。

「ねぇ、ジュディ?」

「なんデスか?」

「なんか悩んでるら、相談にのるわよ」

ユカは優しく笑うと、ジュディは目に大粒の涙を溜めた。

「どっどうしたの!?ジュディ!」

「ふたりとも、とても優しいネ、感動して泣いているのデス」

ジュディは鞄から、ネズミのキャラクターが書かれたタオルを取り出すと、ごしごしと顔を拭いた。

「そんなに強く拭くと赤くなっちゃうよ」

「わたし、敏感肌じゃないからダイジョブデス」

そういう問題だろうか。

そして涙がおさまると、ジュディはため息を吐いて「私の話聞いてくだサイ」と頭を下げた。

「あの…隣に来た留学の男…あれ知り合いデス」

留学の男…留学生か。

えっ知り合い!?

「アメリカで同じ学校だったの?」

「同じところ行ってまシタ」

「へぇ、その人と何かあったわけね」

ユカが探るようにそう言うと、ジュディは頷き、ゆっくりと口を開いた。

「……あいつ、わたしのボーイフレンド……デス」

ぼーいふれんど?

「男友達?」

一応聞いてみる。

「NO、コイビトデス」

「ジュディ彼氏いるの!?」

いつも冷静なユカも動揺してる。

私の頭も混乱中。

「ハイ。付き合って…3年ネ」

さっ3年も!?

意外に長いし、恋人って…こいびと…って。

「なんで彼氏いるのに藤井に好意よせてんのよ」

やっぱり、海外とこっちじゃ、恋愛観もちがうのかな。

ジュディは、首を横に振った。

「わたし…ユータ好きになろうと思ったデス。理想の人そのもので、おもしろくて、おもしろくて」

おもしろい2回言ってる。

「…でも…好きになる努力いっぱいしたけど…胸ドキドキしなかったノヨ」

胸に手を当ててジュディは目を閉じた。

それじゃあ、ジュディは藤井先輩の事…最初から好きじゃなかったんだ。

…ホッ。って、何で安心してんだろう私。

「話しを戻すけど、そのなんで留学生が来た事でそんなに落ち込んでるわけ?普通恋人が来たら喜ぶんじゃない?」

そりゃそうだ。

「わたし、本当にニッポンが好きで、お笑いが好きで、ずっと小さいころから留学したいって思ってタ。そして、今年の春に両親から許しが出て留学きめた。そしたら…」

「彼氏に反対されたわけだ」

「ハイ。そのとおりヨ」

ジュディって本当に日本が好きなんだ。

でも、彼女が突然日本に留学するってなったら、彼氏さんが反対するのも分かるかも。

「留学の話したら、反対されて、どうしてもって言うならレオが俺も着いて行くって言ったデス。それからケンカになって…」

レオってのが彼氏さんのお名前でしょうか。

「彼氏の名前ってレオっていうんだ。かっこいいじゃない」

私が思ってた疑問を、ユカがさらっと口にする。

やっぱり私達以心伝心!

…うーん。私恋愛話に疎いのかな。

いまいち発言できない。

「レオはニックネーム。名前はレオナルド」

「ダヴィンチ!?」

「陽依のおバカ」

あっ、つい「レオナルド」ってくると「ダヴィンチ」か「ディカプリオ」って思っちゃう。

頭悪いのがばれちゃう。

「もうバレてるから」

また私の声漏れてた!?

慌てて口を押さえた。

「わたし、友達や両親にこの留学のことを口止めしてから、逃げるように留学してきたネ」

ということは、レオさんにだけ隠していきなり留学しちゃったってこと!?

「昨日、休んだデショ?わたし」

「うん」

「昨日の朝…学校行く前に、わたしが住んでるアパートに彼が訪ねてきたから家から出れなかったデス」

「家でれなかったって?」

「ドア越しに押し問答してたでス」

押し問答ってすごい単語しってるなぁ…っと感心してる場合じゃない。

「朝からずっと!?」

「そう。追っ払うのたいへんデシタ」

話を聞いていると、レオさんが少し可哀相に思えてきた。

彼女が突然消えて、追いかけたら邪魔だと追い払われ……。

「今日もいつもより早く家を出てきたのに…まさかあいつも留学してくるなんて…」

そしてジュディは頭を抱えた。

私とユカも考えるポーズをとって良い解決策がないか考える。


  


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