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藤井先輩と私。  作者: 寿音
XIII:初恋と藤井先輩。
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3 ~side 藤井悠太~

走っていく陽依の後ろ姿を俺は茫然とみつめていた。

なにがおこったんか。

頭の中がごちゃごちゃ…いや、まっ白で何も考えられへん。

今この状況が、理解不能。

よし、まずは頭の中整理せな。

『藤井先輩っ』

陽依が俺の名前を呼んで、俺は振り向いた。

夕焼けに照らされた陽依の姿。

一歩二歩と近づくと、陽依が目を閉じてこちらを向いている。

夕陽のせいかも知らんけど、頬が赤くて、いつも以上に陽依が可愛く見えた。

そんでなんで…目ぇ閉じてんねん!

ってまさか、これってアレか?アレなんか?

もしかして陽依も俺のこと…その…えっと…す…す…。

いや、言えへん。本人の口からそういうこと聞いてへんし。

だけど、この体勢は絶対アレやんな。

き…き…きすっちゅーやつか…。

これは、これは俺に、キ…キスをしてくださいっていうポーズなんか?

いや、何考えてんねん!陽依は純粋でかわいくてかわいくてかわいいんや、そんな俺の妄想が現実になるわけ………なってる。

どないしよどないしよ!!据え膳食わぬは男の恥って誰か漫画で言うてたしな、男藤井悠太、決めます。決めさせてもらいます!

俺でいいんか?陽依?

俺はそっと、陽依の顔に近づく。

綺麗にとおった鼻筋、ほんのりピンクに色づいたほっぺ。つぶらな瞳は、閉じられて見えへんけど、何もかもが可愛い。

おでことおでこがくっついて、陽依の目が薄っすらと開いたけれど、俺の顔をみてまた目を閉じた。

それって俺のことが好きっていうことか?

キスしてもええってこと?

艶やかな唇に誘われるように、俺は優しく触れるだけのキスを落とした。

柔らかな唇の感触は、想像以上に心地よくて、たまらんやった。

何度も啄むようにキスをする。陽依は俺の胸に縋りつくように、シャツを握ってキスに応えてくれた。

そ、そや。

それで、いきなり陽依が俺の胸を突き飛ばして、走って帰ってしもたんやった。


どうして逃げたんやろ。

もしかして、あの目を閉じたのは、キスじゃなくて…別の意味があったんか!?

そしたら、俺とんだ勘違いヤローの変態男やないか!

うわぁ…ほんまにへこむわ。

陽依とのキス、ほんまは嬉しいはずなのに、嬉しくもなんともない。

あんな泣きそうで悲しい顔をした陽依の顔をみたからや。

俺がキスなんてせーへんかったら、陽依は泣かずに済んだ。

胸がこうチクチクと痛む。

「俺、やらかしてしもたー」

謝るべきなんかな。

それとも…。それともって謝る以外の選択肢思いつかへん。

あーもー、ぐちぐち悩んで俺ってどこまでもヘタレやな。

頭を抱えてしゃがみ込む。

次、陽依に会った時どうすればいいんやろ。

ていうか、次会えるかどうかさえも危ういな。

…帰ろう。

帰って、頭冷やして、もう少し考えよう。

俺は、よたよたと帰路についた。

後悔先に立たず、このことわざが今日の俺にぴったりや。


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