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藤井先輩と私。  作者: 寿音
Ⅻ:動揺と初恋。
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あれから数日が経った。

お祭の最終日は、ユカと二人で回った。

ユカは私に気を利かせたのか藤井先輩の話題は不自然なほど全然出さなくって、その代わりに思いっきり一緒に遊んでくれた。

でもやっぱり、ヨーヨーはすくえなかったし、射的もうまくできなくて、少し悔しかった。

そして今は、真夏の日差しが照りつける8月の暑さの厳しい日。

残暑というか、温暖化の影響か、今年はまだ暑い日が続くらしくて、私はアイスを食べながら縁側で涼む。

「ちょっと陽依!ちゃんと宿題はおわったの?」

朝と昼のちょうど間の時間帯。

お母さんは、掃除機を陽依のおしりにわざと当てて問いかける。

「ギャッ!もうお母さん!」

「ずっとそこから動かないじゃない!もう何日そうしてるつもりなの!」

ガシガシッと掃除機がおしりをつつく。

「痛いよやめてってばぁ」

私は縁側からリビングへ戻り、アイスの棒を口に入れて逃げ回った。

「宿題は?」

しかし、鬼のような形相の母から逃げられるわけもなく、壁に追い詰められる私。

「終わってません」

「なんでのんびりしてるのかしら!もうあと3日で夏休みが終わるって言うのに」

「まだ28日じゃん…」

まだ28日じゃん、よゆーよゆー。

って、もう28日!!!!

なに!うそ!

「なんで28日ぃ!??」

「なんでって……陽依、夏休みにはね、終わりがあるのよ」

あきれたようにため息をついたお母さんは、陽依と話すために電源をきった掃除機のスイッチをまた押すと、黙々と掃除を再開した。

「そんなぁ、夏休みってこんなに早く終わるものなの!?」

いままで私は何をしていたんだろう。

朝起きるのが面倒くさくて、お昼過ぎに起きて、お昼ごはん食べてまったりして、夕方のドラマの再放送見て、眠くなってうたた寝して、起きたら夕ご飯で、またまったりしてTV見て。

眠くなって、目が覚めたらお昼過ぎ。

OH NO!

このぐうたらな生活はなに!?

去年は、ちゃんとしてたような。

あ、そっか、去年は一緒にユカがいてくれたから、宿題終わってたんだ。

今年は、ユカに私なりに気を利かせて、遊びとかにも誘わなかったし。

どうしよう。

あと3日の休みのうちに宿題って終わるかな。

ていうか、宿題ってどれくらい出てたっけ。

提出期限一緒だったっけ?

とりあえず、図書館行こう。

私は口に含んだアイスの棒をゴミ箱に捨てると、二階にあがって、図書館へ行く準備を始めた。

鞄に、宿題の詰まったファイルと筆箱、なにかと役に立つ電子辞書を詰めて、ジャージにTシャツといった色気のない格好で家を飛び出した。

今、11時だし、今から頑張れば今日で3つぐらい終わるかも。

ファイルの中にある課題は、全部で8個。

現代文、古典、数学、生物、日本史、政治経済、英語、読書感想文の8教科。

一日に3教科終わらせていけば、きっと終わる。

苦手教科の数学と英語は、最終日にしよう。

今日は比較的得意な国語系と歴史やろう。

でもやっぱり、苦手なの先にやってた方がいいかなぁ。

そんな風に悩んでいるうちに、図書館に着いた。

ウィーンと、自動ドアが開き、空調の効いた涼しい空気が頬を撫でる。

そして、図書館特有の本の香りと静けさに体が緊張した。

「図書館って、苦手なんだよね」

鉛筆の音やページをめくる音だけが響く図書館、なんだか背筋がピンとなって、変に緊張してしまう。

でも家にいてお母さんにせかされながらやるよりはマシだ。

開いている席を探しながら歩くと、窓際で奥の方の席が開いていた。

やっぱり、夏休みも終盤だけあって、小学生や中学生、学生の姿が多い。

机に鞄を置いて席に着いた。

「えーと、簡単に終わりそうな読書感想文からしようかな」

と独り言を小さく呟くと、席を離れて、感想文が書きやすそうな本を探すことにした。

分厚くなくて、文字が適度に大きくて、絵があって。

これじゃあ絵本になっちゃうか。

私一応高校生だしなぁ。

小説の棚をあ行から順に見て行く。

≪ガラスの靴≫

作者順に並べられた小説棚に、白い背表紙に銀色の文字で書かれた本を発見した。

装丁が綺麗。背表紙が特殊素材でできているようで、キラキラと光沢を放っている。

陽依は少し高い所にあるその本を取ろうと、思いっきり手を伸ばした。

むぎゅ。

あれ?この感触、本じゃない。

掴んでいたものは、角ばった男の人の手。

いったい誰のだろう。隣を見上げるとそこには、

「「あっ」」

私と、その掴んでいた人の声が重なった。

「委員長…じゃなかった小西君」

「こんなところで会うなんて珍しいね」

委員長も図書館に宿題しに来たのかな。

私と同じで、今宿題やってるんだろうか。

もしかしたら、見せてくれないかなぁ~。

数学とか数学とか数学とか。

「あの~、俺はただ読書に来ただけなんだけど…それと宿題は持ってきてないんだごめんね」

また私の心の声がだだ漏れしていたみたい。

「あ、この本読むの?じゃあ俺他の探すから」

委員長から本を受け取る。

「読むっていうか…読書感想文?」

「どっ読書感想文!?」

結構大きな声でそう言った委員長は、自分の口をばっと抑える。

「そんなに驚かなくても…」

「いや、だって今日28日だよ?終わるの?」

委員長はすごい焦った表情で私を見た。

「今から頑張る」

そういうと、私以上に委員長は焦って驚いている。

「ま、間に合うの?読書感想文で宿題は最後?」

「ううん、まだ、あるよ。ていうか全部」

その言葉に、委員長はまた驚き額の汗をぬぐって

「が…頑張れよ」

と言って去っていった。

見せてあげようか。ぐらい言ってほしかったな。

まぁ宿題しなかった私が悪いんだけどね。

私が悪いんですよ。

はぁ…。

よし、早くこの本読んで感想文書こう。

結構分厚いけど…。

委員長と別れて、自分の席に着くと、本の最後のページを開く。

「読書感想文と言ったら、まずはあとがきからでしょ!」

あとがきに書いてある本の内容とか、いい言葉とかを引用させていただきます。あと背表紙とかの文章とか。

本を真面目に最初から読んでいても終わらないからね。

多少内容にズレがあっても気にしない!

だって先生はこの本読んだことないかもしれないし。

生徒全員の読んだ本を読み返すような教師なんかいないもんね。

ちなみにこのやり方は去年ユカに教わった。


『え?今から本読む?』

『そうだよ』

『ったく、バカね。もっと要領よくやらなくちゃ、読書感想文はあとがきを読んでの感想文なのよ』

『えっ!?そうなの!?知らなかった』


それから私は、図書館が閉館するまで勉強して、読書感想文と日本史、現代文の課題を終わらせることができた。

私ってばやればできる子じゃん。

残すはあと、古典、数学、生物、英語、政治経済の5教科。

図書館を出た私は、ちょうど目の前で沈んでいく夕陽を見つめてため息を吐いた。

「夏休みあと、5日ぐらいのばして欲しいな」


その翌日。

ミーンミーンと、数の少なくなった蝉の鳴き声が飛び交う中。

私は黙々とシャーペンを課題プリントに走らせていた。

「終わる気配がしないよ…」

嫌な教科から先に終わらせようと思って数学をやり始めたけれど、全く分からない。

教科書や参考書を開いても難しい表現で説明されていて、理解しがたい。

「うーん…」

自然と唸り声がでる。

「陽依か?」

「う~ん…」

「陽依やろ?」

「う~ん……」

ん?



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