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藤井先輩と私。  作者: 寿音
Ⅺ:あの日と動揺。
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「ジュディ、お前の席は橋宮の隣だ。橋宮立て」

私の隣!?

私の隣には、気付かないうちに新しい席が用意されていた。

私は先生の言う通りに立つ。

「ほれ、あそこだ。座れ」

「ハーイ!あの日本人のとこね!」

スキップで私の方へ駆け寄るジュディ。

「これからよろしくね!私橋宮陽依。ヒヨリってよんで?」

私は、そう言って右手を差し出すと、

「おぉ!!なんて可愛いサイズね!ヒヨリ名前もベリーナイスよ!」

と言って握手を返してくれた。

えぇえぇ、初対面で一番気にしてる身長のことに触れるなんて!!

どうせ私はちっちゃいですよ。

ジュディは、すこしかがんで私の頭をなでる。

近くに来ると分かるけど、ジュディはすごく身長が高い。

そして、HR終了を告げるチャイムがなり、委員長が号令をとなえて、いったん教室は休み時間になった。

するとすぐに、ジュディの席はクラスメイトに囲まれ質問攻めスタート。

「ジュディはどんなハーフなの?」

「アメリカ人と日本人よ」

「なんで登校日に留学してきたの?」

あ、それ私も聞きたかった。

誰かがそう質問してくれた。

「はやく日本人共に会いたくて!私日本人とても大好きよ。だから早く留学したね」

ジュディはカバンからおもむろにDVDを取り出した。

忍者か何かのDVDかな。

日本人が好き言ってたし、日本の文化と言ったら忍者とか侍とかだもんね。

気になって隣の席覗き込むと、クラスメイトは固まっていた。

「ん?」

パッケージには≪お笑い№1決定戦≫とか≪勝ち抜きお笑いバトル≫とかのタイトルが並んでいた。

「私ソンケーしてる!日本人共のお笑いセンスは超グレート」

「へっ…へぇ」

若干、数人の男子が引いていた。

予想と違っていたのだろう。

「こんな面白いboyfriendがいたらいいのに…」

綺麗な顔が少しだけ翳る。

「大丈夫だよ。絶対現れるよ」

私はとっさにそう言って励ました。

「ヒヨリほんまでっか?…誰か紹介してくれるの!?まぁうれしい!ジュディハッピーね」

………え?

ちょっと!私、紹介するとは一言も言ってない!

私が慌てて訂正しようとすると、教室の出入り口のあたりがざわめき始めた。

ジュディと私も会話をやめて、ドアの所を見る。

小さな人だかりの真ん中に、藤井先輩が立っていた。

どうして先輩が!?

自分のクラスの朝のHRが終わった瞬間に、走ってきたのだろうか少し額に汗をかいていた。

ドアの柱に手をかけて誰かを探している様子。

誰を探してるんだろう…と藤井先輩の視線を追ってみると、バチッと目があった。

「うへっ」

あ、変な声でた。

そして、藤井先輩は人だかりをこえて私の方に近づいてくる。

「先輩、あんたに会いに来たんじゃない?」

いつのまに隣に来たんだろうか。ユカが腕組みして私の隣に立っていた。

「なんで私に?」

「さぁ?知らないわよ」

そうこうしているうちに、目の前に藤井先輩。

「先輩どうしたんですか?」

「えーとな…陽依に用事があって。今日午前中で学校終わってまうやろ?だから朝のこの時間しか会える機会ない思て」

頭をかきながらゆっくりと話す先輩。

「私に用事って」

なんですか?と聞こうとしたその時。


「ヒヨリ…私の好みどうして知ってるデスカ」

さっきまで空気と化していたジュディが、両手を胸の所で組んで、キラキラと輝く瞳で先輩を見つめていた。

はい?

「日本人が仕事が早いていうのは、アメリカでも有名だったけど…私今それを体感してるデス」

はいい?

ジュディさんいったいどうしたの!!

私は先輩を見つめるジュディの肩を揺すった。

すると、ジュディは私の手をぎゅっとつかんで、そのきらびやかな目を私に向ける。

「ありがとうヒヨリ。私にこのベリーナイスガイを紹介してくれるんでしょ?」

あれれ~?私は、そんなこと一言も言ってないのですが。

「陽依?この外人さん誰?」

藤井先輩も私と同じくきょとんとしている。

「あ、うちのクラスにきた留学生の松田ジュディさんです」

「私、ジュディ言いますねん。あなたの名前は何デスカ?」

「なんやその似非関西弁は…。…俺は、藤井悠太。1個上や」

「ユータね!よろしく~」

「おい、俺先輩やで…呼び捨てはアカン」

「なんでデスカ?ユータはユータよ」


チクッ…


あれ…なんだろう。

心臓のあたりがチクッてした。

心臓のところに手を当ててみる。

どくんどくん。脈拍は異常なし。気のせいか。

「ユータはもう誰かとコンビ組んでまスカ?」

「コンビ…ったく…あのなぁ、大阪人が全員お笑い芸人とちゃうねん。組んでへんわ」

なかば呆れ気味に応える藤井先輩。

「ピン芸人ナノ?」

「はぁ……俺の話ちゃんと聞いとったか?俺は芸人じゃない…」

「じゃあ、私とコンビ組めばいいヨ!ぜったい上手くいく」

ジュディは、そう言って藤井先輩に詰め寄る。

「陽依がユータ私に紹介してくれる言いまシタ。付き合ってくれないデスカ?」

コ、コンビ組むってそういうことーーーーーーー!?

つっつつつつつ付き合うって!?


「ほんまなんか?陽依」

藤井先輩が助けを求めて、私を見つめる。

なんといったらいいか…。

私は隣にいるユカに助けを求める。

「ユカ!」

「あたししらな~い」

そう言って、委員長のもとに去っていくユカ。

この薄情者!!

「えっと…その…」

どうしよう。

なんて答えれば…。

ジュディを傷つけないでいいような、藤井先輩を困らせないような言葉を、ボキャブラリーの少ない脳みそから必死に探す。

「陽依?」

先輩私を追い詰めないでーーー。

キーンコーンカーンコーン。

グットタイミングで、予鈴が鳴る。

「あっ俺いかな…」

藤井先輩は、いそいで扉の方へ足ると、扉ぎりぎりの所で立ち止まり、こちらを振り向いた。

「陽依!放課後待っててくれへんか?話したいことあるから」

そして足早に教室を出て行った。

ホっ…。

チャイムさんありがとう。

「ヒヨリ。ついに私の恋が放課後実るのデスネ」

「へ?」

ジュディはいつも話が見えない。

「放課後待っててってユータ言ってマシタ。放課後の教室でコクハクされるんデス」

あの…、言いにくいんだけど…。

先輩の言葉の主語は、たしか私だったはずでは?

超ポジティブ思考なのでしょうか?ジュディって。

それからジュディは、大掃除中も、宿題点検中も、担任からの諸連絡中も、鼻歌を歌って始終笑顔だった。

「ジュディ、日本来てヨカッタ」

と掃除の時言ってた。

そりゃよかったね。

けど…なんだか胸のあたりに違和感があった。

私病気かもしれない。

ジュディと一緒にいると、なんだか胸のあたりがチクチクするんだ。

あとで、ユカに聞いてみなくちゃ。


そして、放課後になった。

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