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藤井先輩と私。  作者: 寿音
Ⅷ:委員長と妹。
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それから何事もなく授業や昼休みやHRが過ぎていき、放課後になった。

「陽依ごっめーん」

私の目の前で、頭をさげて両手を合わせるユカ様。

「ん?どうしたのユカ」

「実は今日、貴光と2人で…その図書館に…」

「ははーん。図書館デートですかな?ユカ」

「ただ2人で本を借りに行くだけよ。だから今日一緒に帰れないのよ。ごめんね」

そう無理矢理な言いわけをしたユカ様は、委員長のもとに走っていきました。

もう別に私にいちいち断り入れなくてもいいのに。

2人は付き合ってるんだから一緒に帰ったりしていいんだよ?

私は一人で帰ることそんなに苦じゃないしね。

ユカと委員長が図書館へ向かうのを確認すると、私も机の中の教科書たちをカバンにしまい、廊下に出た。

下校する子たちの群れが廊下に散在している。

女の子たちの顔はどれも深刻そう…。

一体どうしたんだろう。

いつものギャル集団も、小さな声でぶつぶつと何かつぶやいているくらいで、全然騒音被害を出していない。

不思議に思いながら歩いていると、目の前を楠木さんが通りかかった。

ちょっと怖いけど聞いてみようかな。何か事情を知っているかもしれない。


「くっ…楠木さん!」

私が呼ぶと、ギロッと目をこちらに向けた。

えっ…?楠木さんってこんな目が鋭かったっけ?

ていうかこの人、本当に楠木さん?

よし!もう一度呼んでみよう。

「楠木さん?」

もう一度読んでみると、今まで楠木さんについていた悪霊が祓われたかのように、どす黒いオーラが消えた。

「あら?橋宮さんじゃなくって?私になにかようかしら?」

あ、いつもの楠木さんだ。

「あの~女の子たちがすごく暗いんですけどなにかあったんですか?」

「橋宮さん。聞いていないの?」

「なにをですか?」

「私の情報網も抜け穴があったようね」

そうつぶやくと、私は屋上に連れていかれた。

「この話は、もうあんまり女の子たちに聞かれたくないの。ファンクラブの子が涙を流す姿は…もう見たくないわ」

楠木さんはそう言って、少し涙ぐんでいるようだった。

「私は藤井ファンクラブ代表取締役会長として、ファンクラブ全員のメールアドレスの管理、藤井先輩のあらゆる情報を流してきたの」

へぇ…。楠木さんの携帯のメモリ数はすごいんだろうなぁ。

「私が秘密裏に結成させた情報収集組織から昼休みに情報が入ったの」

秘密裏に結成させた情報収集組織!?

藤井ファンクラブってそんな組織があるの?

なんかなにもかもがファンクラブの域越えてるような…。

「じょ、情報って?」

「藤井先輩が一人暮らししてるってのは知ってるわよね」

一人暮らししてるんだ。知らなかった。

「一人暮らしのはずなのに、昨日藤井先輩がマンションに女の子と一緒に入って行ったの」

女の子って…もしかしてこの前の“アンナちゃん”?

「そして、翌朝。つまり今日、マンションから2人で仲良く手をつないで出てきたらしいわ」

それって、泊まったってこと?

「えっだって今日、藤井先輩風邪でお休みって」

「どうやら彼女とデートするために嘘をついたらしいわ」

そんな。

やっぱり彼女だったんだ。

お似合いだったもんね。なんか2人。

なんでだろう。胸がズキズキ痛い。苦しい。

「藤井先輩が彼女に本気だとしたら…ファンクラブも解散しなくちゃいけないわ」

えっ?

「邪魔とかしないんですか?」

「先輩が本気なら、私たちは邪魔しない。できるわけないじゃない?好きな人が幸せならばそれでいい。それが私のお姉様が決めた最大の守り事」

「下心アリアリで近づく女だったら地獄の底まで追い払うけれど…」

そう付け加えて楠木さんは黙ってしまった。

「藤井先輩に確かめたんですか?その人が彼女だってこと…」

私がそう尋ねると、

「直接聞けるわけないでしょ?本人に直接なんて聞けるわけないわ!もし本当にそうなら、聞いた人が一番傷つくじゃない!私もファンクラブのみんなもそんなことできないわ」

と言って、自嘲的にわらった。

「弱虫でしょ?ファンクラブ会長ともあろう私が、こんなことで怖じ気づいてるなんて」

「私が聞いてきましょうか?」

ついポロっと口からこぼれた言葉。

本当につい言葉にしてしまった。

私だって、直接聞くのなんだか怖い。

けれど、もしかしたら本当じゃないかもしれない。

「いいの?橋宮さん」

「はい」

でも、誰かが確かめなければ、ファンクラブのみんなも楠木さんも前に進めないと思う。

ファンクラブの存在自体怖かったけれど、楠木さんの会員に対する想いとか聞いて、なくなってほしくないっていう自分もいた。

楠木さんの役に立ちたい、それに…藤井先輩の真実が知りたい。

「これ、藤井先輩のマンションの住所」

私は楠木さんから、住所の書かれた紙を受け取ると、急いで階段を駆け降りた。

ここからそう遠くない。

靴を履いて、大地を蹴って先輩のマンションを目指す。

教えてください。先輩。

あの子は、先輩の彼女なんですか?


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