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昨日一日でそんなことが起こってたなんて。
「私、2人きりにしないほうが良かったね」
「陽依のせいじゃないわよ。私がいけないの」
ユカの元気がない姿なんて見てられないよ…。
「そうやで、陽依のせいちゃう」
「好きな人には素直に想いを伝えたらええねん」
「うんうん」
ごもっともなご意見で。…ってあれ?
「なんで藤井あんたがいるのよ!」
ユカはこっちをむいて怒っている。
私はそっと隣を見た。
いつの間に隣に座ったんだろう。
「結構最初の方からいたで。弁当食べ終わったぐらいからかな」
「そんなに前から?」
「陽依たち真剣に恋話しとるし、邪魔しちゃいかんなーと思って黙っとった」
ユカは自分の恋話を私以外の人に聞かれて怒っているらしく、私を睨みつけていた。
えっ?睨む相手藤井先輩ではなく私?
「あんたここ誰も来ないって言ってたじゃない!なんで他人がいるのよ」
「他人てひどいなーユカちゃん」
「ユカちゃん言うな」
あそっか、ユカ人がいないことを条件にここで話し始めたんだったもんね。 「ごめんユカ」
「もういいわよ。聞かれたもんは。でも次はないからね」
「はい、ごめんなさい」
委員長とユカ、うまくいくといいだけど、この状況をどうすればいいんだろう。
私恋愛経験0だし、偉そうにアドバイスなんてできない。
できたとしても漫画か小説の受け売りぐらい。
そんな安っぽいアドバイスなんてユカの役に立つわけないしなぁ。
そうだ!亀の甲より年の功だよ!
私より1年長く生きている藤井先輩なら良いアドバイスしてくれるかも。
先輩モテるみたいだし、私より恋愛の経験豊富かも。
「先輩はどうすればいいと思いますか?」
「ちょっと陽依!」
ユカの声は聞こえないふり。
「そうやなぁ…俺の経験から言うと、好きって気持ちは言葉にはっきり出さないと伝わらへんってことかな。どんなに頑張ってもどんなにアピールしても、相手に気付いてもらわれへんかったら、そんな頑張り意味ないやろ。まずは気持ちを伝えてそれからや。頑張りどころはな」
先輩ってやっぱり恋愛経験あるんだ。
そっか。 一体どんな人と付き合ってきたんだろう。
あ、今彼女いるのかなぁ。きっと美人な人なんだろうな。
「藤井先輩が言うとなんか説得力あるわね。同じような経験したからかしら?ねっ陽依」
「うへっ?」
「聞いてた?」
「うん」
なにぼーっとしてたんだろ。
今はユカの相談に乗ってあげなきゃなのに。
「ま、俺のことはさておき。まぁ、よーするに、今日の放課後ぐらいに昨日のこと謝っとき。気持ち伝えるんは、今日じゃなくてもええけど、普通にしゃべれるように戻っとらんとあかんしな」
「そうね。あんたの意見に従うのは癪だけどそうするわ」
「じゃあ、私委員長に教室に残っててって伝えとくね」
「ありがとう陽依」
いいんだよ。
私少しでも、ユカの役にたちたいから。
いままで励ましてくれた分お返ししなきゃ。
それから昼休み終了のチャイムが鳴り、私たちは教室に戻った。
そして放課後。
私はHRの前に小西くんに教室に残るように伝えたから、教室には小西くんがいる。
椅子に座って読書してるみたい。
私は教室の廊下側の窓の下に座って、小西くんからばれないように中をのぞいています。
この前のときより、はらはらする。
「ユカなにしとんねん。はよ来んとあいつ帰ってまうで」
はい。隣には藤井先輩がいます。
心配だから来たんだって。
「一人で気合い入れてるみたいです」
「そーか」
ひそひそ声ではなす私たち。
HRが終わった後の教室は大変だった。
今は教室に小西くんしかいないけれど、つい数分前までは小西くん女子軍団に囲まれていて、学年主任の先生に騒ぐなと怒られるまで、小西くんの周りを黄色い声をあげて騒いでいた。
「おまたせ」
振り返るとユカ。
心の準備ができたらしい。
「行ってくるわ」
ユカは、一度深呼吸をすると、小西くんの待つ教室へ歩いて行った。
私と藤井先輩は小さな声で「ファイト」とユカにエールを送る。
そして窓辺から教室をのぞいた。
夕日に照らされた教室は、2人の顔までも赤く染めていた。
「うまくいきますよね先輩」
「ああ、絶対うまくいく。陽依が応援してんやもん」
私たちは、ことの次第を食い入るように見守った。
そのころ、校門では――――
『あのこ可愛い~』
『中学生かな』
『なんか誰かに似てない?』
校舎から出ていく生徒たちは、校門の前に立っている少女を見ると口ぐちにこんなセリフをつぶやいていく。
「おい、お前声かけて来いよ」
「俺かよ。お前行けよ」
「お前にこの前ジュースおごってやったよな?その恩を忘れたか?」
「わーったよ。行けばいいんだろ?」
一人の無謀な若者が、その少女に近づいた。
「あのさ、君中学生?可愛いね?暇ならさ、俺たちと遊ばない。その制服この辺の学校の子じゃないよな。俺たち面白い場所いっぱい知ってるからさ!あ、一人で来るのが嫌だったらお友達とか誘って一緒にカラオケでも」
「あそばない」
即答。
「えっ?もしかして誰か待ってんの?」
「………」
「ねぇ、聞いてる?」
「ネチネチうるさいんじゃボケ。それ以上私に話しかけたらどつくぞ」
上の方で綺麗に結われたツインテールを揺らして、仁王立ちし、ナンパ学生をきりっと睨み上げる美少女。
「もう下校時間過ぎてるし、誰も出てこないんじゃないかな」
されど、ひるまないナンパ学生。その頑張りに拍手をおくりたい。
「チッ」
少女は顔に似合わない舌打ちをすると、またナンパ男を見上げて
「私は、ここに通う超イケメンの藤井悠太の彼女や。大阪から会いに来てん!待っとるんやから、ゲス共に興味ない。消えさらせ」
とコテコテの関西弁を話した。
ナンパ学生は、「わっ藤井のかよ」「あいつの女に手出すとか俺何様って感じだな。出直そう」とつぶやくと、友達と去って行く。
ナンパ学生が去ってもなお、校門前で仁王立ちする少女は、静かにこう言った。
「やっと見つけたで、藤井悠太」
少女の大きく丸い目は妖しく光っていた。
まるで、獲物をとらえる肉食獣のように。




