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「ようこそ!デスティニーランドへ!楽しくて幸せな運命がキミを待ってるよ!」
園内に入ると、たくさんのデスティン君が来場者を出迎えてくれた。
「すっごい…」
四方八方アトラクションのオンパレード。
メリーゴーランドに空中ブランコ、絶叫マシーンが所狭しと並んでいる。
「陽依!あれ!乗ろう!」
先輩が私の手を引っ張って、ジェットコースターを指差した。
天に届く高さから急降下して、一回転。
その後、またそらまで伸びるレール。
これは、ムリー!
「私…」
私がおどおどしていると、
「先輩、陽依と私は2人で、向こうで遊んでるので、梶瀬と2人でたのしんでくださいね!」
そう言ってユカは私の手を取って、比較的優しめなアトラクションへ走った。
「俺も橋宮たちの方へ行こっと!野郎二人で絶叫マシーンとか想像するだけでも気持ち悪い」
梶瀬は走り去った2人を追いかけようと、走り出そうとしたが、動かない。
「……おっさん。肩つかまないでくれる?」
「逃げるんか?梶瀬お前、ジェットコースター苦手そうやもんなぁ~」
バチバチと火花を散らせる2人。
「誰が苦手って言った?あんなもん余裕だ余裕」
「ほぉ、じゃあ勝負や!ここにある絶叫系のアトラクション全部乗ってフラフラになった方が負けやぞ!ええな!」
「分かった」
「絶対負けへんからな!」
「おっさんにだけは負ける気がしない!」
男たちのバカらしく熱き闘いの幕が切っておとされた。
「デスティニーランドが12時をお知らせしまーす!」
園内放送が流れ、人が動きだす。
「いいのかな?藤井先輩たちほっといたままだけど…」
あれから2時間ぐらい経った。
私とユカはミラーハウスとかお化け屋敷みたいなアトラクションを楽しんだあと、デスティニーランドのグッズショップでお買い物をしている。
「いーの、いーの」
ユカは満足気に両手に持っているグッズ入りの袋を眺めている。
「そろそろ心の準備できた?」
「えっ」
ユカもしかして私のために時間作ってくれたの?
「さっお昼よ!食べに行くわよ」
ユカと私は店を出て、すぐそばの大通りに出た。
「あ、そうだ。ねぇ、藤井先輩と梶瀬くんどこにいるのかなー」
「あそこー」
ユカが眉間にしわをよせて、指を指した。
その先には、ベンチでぐったり座っている2人がいた。
見るからにやつれてる。
何があったんだろう。
「お店の中から見つけてたわ。あんな目立つ所にいるんだもの」
大通りの中央のベンチに座っている2人はとても目立つ。
そっと近づくと、2人は私に気がついた。
「ひ…陽依…俺かった…勝ったでぇ…」
「何言って…る…勝ったのは俺だ…」
2人は何やら勝負をしていたみたいです。
「おなかすいたわ。お昼ご飯たべましょ」
ユカの言葉に、藤井先輩と梶瀬君は顔を横にぶんぶん振って、口を抑えてより一層顔を青くした。
「俺…お昼ええわ…」
「俺も…」
先輩たち2人は、絶叫系のアトラクションに乗りすぎて、相当酔っているらしい。
「なぁに言ってんの!藤井先輩、あんたは私とハンバーガー買いに行くのよ」
ユカはそう言って藤井先輩の首根っこをつかむと、無理やり立たせてハンバーガーを売っている店へ引きずっていった。
その途中、ユカがこちらをちらっと向いて、ウインクしたから、ユカがチャンスを作ってくれたんだと分かった。
何から何までありがとうユカ様!
ご期待に応えられるように、が、がんばらねば。
とりあえず、梶瀬君がうなだれて座っているベンチに腰掛ける。
「あのおっさんなかなかやるよ」
「えっ?」
「ここの絶叫系のアトラクション全部乗ったんだ」
「すごいね!あ、それで気持ち悪くなっちゃったんだ」
梶瀬君は、まだ少し気分が悪そうだけど、こっちを向いてニコっと笑う。
『私、梶瀬君とはお付き合いできません。ごめんなさい』
ユカと練習した言葉を、頭の中で何回も唱える。
今言わなくちゃ。言わなきゃ、言わなきゃ。
口に出そうとするんだけど、梶瀬君が目の前にいることで緊張してしまって、うまく言えない。
「どうした?橋宮。深刻な顔しちゃって。眉間に皺よってるぞ」
「あ、…うん」
梶瀬君に心配されてどうするの私。
ちゃんと言うって決めたじゃない。
陽依!深呼吸よ深呼吸!
よし、言える。大丈夫な気がする。
「あっ…あのさ!」
やっと3文字言えた。
「なに?」
梶瀬君が私に向きなおる。
屈託のない柔らかい笑顔がそこにはあって、すこし罪悪感で胸がチクリとした。




