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藤井先輩と私。  作者: 寿音
Ⅳ:梶瀬くんと再会。
11/83

「陽依~帰るよ」

あっ、ユカが呼んでる!

急がなきゃ。

藤井先輩と朝バッタリ会った日の午後。

授業が終わり、私はユカと帰ろうとしていた。


「ちょっと、文房具屋寄っていい?陽依」

「うん、私もシャープペンの芯切れてたんだった」

文房具屋は、小学校、中学校、高校や大学からほとんど等距離にあって、学生はみんなそこで道具を揃えてる。

ファンシーなものからビジネス的なものまで揃ってるし、なぜかお菓子やジュースも売っているので、小さい子から大人までさまざまな層のお客さんがいる。

夕暮れが近かったので、私達は急いで向かった。

ウィーン。

「いらっしゃいませー」

若いギャル店員の声が店内に響く。

「ノートとペンとファイルとか色々ささっと選んでくるから、陽依もささっと買って、買ったらここ集合ね」

入り口でユカは早口でそういうと、ビュ~ンと走っていった。

私はシャープペンの芯買わなきゃならないんだった。

シャープペンコーナーって確か左の奥だったような。

えっと…あった!

芯を手に取ると、隣に並んでいる可愛いシャープペンが目に映った。

上のほうにクマが赤いハートを抱えたキャラクターがついていて、グリップのほうは赤いドット柄にピンクのハート模様。

それを手に取って、カチカチっとノックしていると、となりにあるシャープペンも可愛いことに気付いた。

イチゴ柄で上にはショートケーキのモチーフがくっついている。


おいしそぉ~。違った。かわいい!

私はそのシャープペンに手を伸ばした。

ごちん!

「あっ」

私の手はシャープペンではなく、


「は…し……宮?」

「梶瀬くん…」

手を握っていた。

慌てて梶瀬くんの手の甲から手を退ける。

なんでなんでなんで!?

私、まだ梶瀬くんに会いたくない!

心の準備がまだ。まだあれから半年も経ってないのに。

私は急いで店から出ようと、出口に走った。

「待ってくれ!橋宮!」

入り口辺りで梶瀬くんに追いつかれて、手を掴まれた。

「やだっ!」

離して!怖い!


「陽依?どした?」

真横からユカの声がした。

地獄に仏とはこのこと。

ユカは、大きなビニール袋を抱えて、私を凝視する。

「かっ梶瀬ぇ!?」

素っ頓狂な声をあげたかと思うと、涙目になっている私と、必死に腕を掴む梶瀬くんを交互に見つめて、ユカは梶瀬くんの方に一歩足を踏み出した。

ユカの顔がみるみるうちに、怖くなっていった。

「どけ!カス」

ユカの冗談じゃないぐらい痛い平手打ちが、梶瀬くんの左頬にクリティカルヒットした。


「あたし、言ったよね。引き際が肝心だってさ」

「俺はただ…」

やっと、梶瀬くんは、私の手を離してくれた。

お店の迷惑になるかもしれないので、私達は外にでた。

「もう陽依を混乱させないで」

ユカはもう一度、梶瀬くんに念を押した。

梶瀬くんは、ぐっと拳を握りしめ、私の手を今度は優しく握った。

ユカがその手を振り払おうと、手を伸ばすけど、梶瀬くんはユカの手を片手で抑えて、私の方をじっと見つめてくる。


「今日、ここで偶然橋宮に出会って…俺、神様がもう一度チャンスくれたんじゃないかって思う」

静かに語り始めた、梶瀬くんの目はずっと私を見ていて、私はその目から…その目から目をそらすことができなかった。

「好きだ」

梶瀬くん、それは、『告白』ですか?


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