インキュバス 一 (12)
鹿は真っ直ぐに俺の目を見つめていた。
そこから発せられる気配はあまりにも強力で、足の指一本動かすことも、まばたきすることさえできなかった。
鹿はゆっくりと俺の方へ歩き始めた。石の床を蹄が打つ音が、大聖堂のように静まり返った競技場全体に響き渡った。
その気配の圧力は、近づくにつれて指数関数的に増大していった。
体が重くなっていくのを感じた。俺がまだ立っていられたのは、空間と時間そのものが鹿の体から発せられるエーテルに影響されているかのようだったからだ。
近づいてくると、その角は赤く染まり始め、体が変化した。角は大きな冠状に伸び、やがて巨大な赤い梟が俺の方へ歩いてきた。
それから梟は猿になった。
それから獅子になった。
最後に、変化する影は人の形を取った。
見た目からして、その男は二十五歳を超えているようには見えなかった。
髪は乳白色で、青緑色の瞳と対照的だった。
細身の体格にもかかわらず、その体躯は堂々としていた。
長いまつ毛と広い肩が、その姿に一目でそれと分かる外見を与えていた。
彼はゆっくりと歩き続け、俺から一メートルほどの距離まで来ると止まった。
「こんにちは、グー・ルオ」
心臓が跳ねた。
どうして……
後ろと左右を見たが、すべてが普通に見えた。
手のひらは汗ばみ、俺はひどく汗をかいていた。
これは第四の壁を破るために個人情報を探る類のプログラムなのだろうか。
俺の動揺に気づいたかのように彼の視線がぴくりと動き、それが俺の状態をさらに悪化させた。
「ええと、ルオ……ルオと呼んでもいいかい?」
彼は少しの間止まり、答えを待っているようだった。
「ああ、そうだった、君はまだ答えられないんだった。何を考えているんだか……」
彼は片手を横に伸ばし、それはまるで現実そのものを通り抜けるかのように周囲の空間へ消えていった。
「このゼロと一の数々……世界の見方としてはなかなか特異だと思わないか?」
俺には認識できない数学記号や英単語が、彼が開けた裂け目から溢れ出ているようだった。
「これでよし、と」彼は手を引っ込めた。
「それで、ルオと呼ばせてもらっていいよね? 堅苦しい話し方は苦手でね」
「どうして俺の名前を知っているんだ?」
彼はばつが悪そうにしてため息をついた。
「まさか、もう覚えていないなんて言わないよね?」彼は片手を顎に当て、考えるふりをして虚空を見つめた。「日付にはいつも苦労してきたんだ……」
彼の視線が再び俺へ戻った。
「君が俺を知らないなら、その質問には答えられないと思うよ」
「……」
短い沈黙の後、男は再び早口で話し始めた。
「ほら、俺は本当に堅苦しい話し方が苦手だから、自分の名前を教えるよ。それでおあいこにしよう、いいかい?」
俺は交渉できる立場ではなかったし、この男は信じられないほど不安定に見えた。
「それでいい」
「完璧! はは!」男は満面の笑みを浮かべた。「俺の名前はマーリン・エムリス、よろしく!」彼は俺に向かって手を差し出した。
マーリン! あの伝説の人物? 童話に出てくる登場人物? あのマーリン?
俺が動かないのを見て、彼は数歩近づき、右手で俺の右手を取り、それを左手に置き、それから上下に激しく振った。
「これで正式だ」
彼は俺の手を離し、わずかに後退してから両手を腰に当て、大きなため息をついた。
「ああああ! どれだけ安心したか分からないよ、ルオ。この方がずっといいだろ?」
この人物は確かに狂っていた。
「……」
彼の表情は突然真剣になった。
「ほら、俺は君がトーナメント決勝までに負けると本当に思っていたんだが、君を過小評価していた。認めよう、君には驚かされた。いや、感心したよ! もし君を殺す任務がなければ、ぜひ弟子にしてくれと頼んでいただろう。つまり、あれほど短い時間でエーテルを使いこなすとは、まさに天才としか言いようがない」
彼が何を言おうとしているのか、俺は恐れた。
「死ぬ?」
彼の笑みは消えた。
「言わなかったっけ? 俺の仕事は君を殺すことだ。残念だよ、せっかく仲良くなれたのに、それなのに……」
「死にたくない!」
「……」
俺は首を左右に振った。
「いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ。まだやらなければならないことがたくさんある。今死ぬわけにはいかない!」
マーリンの顔が驚きで輝いた。
「おや、見てごらん、動けるじゃないか? 君は本当に大したものだ。俺のアイオーンに抵抗したのは君が初めてだ」
激しい痛みを感じ、視界がぼやけた。
「ゴホッ! ゴホッ、ゴホッ!」
血を吐き始め、地面を鮮やかな赤に染めた。
「おっと、大丈夫か、少年?」マーリンは俺に駆け寄り、肩を抱えて立たせようとした。
「まあ、動けるようになったが、無理はするな。死ぬかもしれないぞ」
彼は少しの間考えているようだった。
「実際、それなら俺の仕事は楽になるが、まあ、特定の方法で殺すように頼まれていてね……」
彼は片手を前に伸ばし、太陽のように輝く白っぽい球体が手のひらに現れた。
俺のいる場所からでも、この球体にこれ以上近づけば消滅させられると感じた。
マーリンは球体を持つ手を俺の胸に近づけた。
「ちょっとだけ痛むだけだ。ほとんど何も感じないよ」
激しい恐怖が俺を襲った。
「いやだ、お願いだ、それだけはやめてくれ。何でもする! 何をしてほしいか言ってくれ、そうすればやる!」
彼は俺を離した。俺は地面に重く膝をついた。
目を上げた。
マーリンはかすかな笑みを浮かべて俺を見ていた。
「なぜそんなに気にする? どうせ現実じゃないんだから」
彼はしゃがみ込み、手を俺の胸に置くと、光の球は俺の肉体を通過した。
わずかなくすぐったさを感じ、すべての生命が体から去っていくのを感じながら、遠くでマーリンがささやくのが聞こえた。
「大丈夫だよ、坊や」
死の画面がノートパソコンの画面の前でかすかにちらついた。
疲労感とともに、『demonic monarch.exe』と題されたソフトウェアのウィンドウを閉じた。
長いため息をつき、ノートパソコンを閉じ、それからベッドへ向かった。
こんにちは!これでプロローグは終了です。これからは、一人称から三人称の視点に切り替わります。
翻訳作業を三日間お休みするので、明日の章が三日間の最後の更新になります。三日後からは、通常通りの更新に戻ります!
いつも読んでくださって本当にありがとうございます!




