表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非リアから追放され、可愛い四姉妹とのドキドキハラハラな共同生活。ハーレムのようで、ざまあしかないんだけど  作者: ぴこたんすたー
第2章 四人の花に囲まれても得られるものは不幸せ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/48

第8話 賢司がそうしろって言ったんだよね?

◇◆◇◆


「ねえ、この占い店に寄っていこうよ」


 女の子が一軒の古びた店の前で立ち止まり、うるうるとした涙目で訴えてくる。

 紫の骨組みテントは占いの他に、いかにも不吉を生み出しそうに見てとれた。


「なに冗談言ってるの。今どき占いなんて非科学的だよ」


 僕は占いを信じない派だ。

 星座占いや血液型占い、誕生月占いなどと色々あるけど、その占いをしているのも人間であり、どうして赤の他人がそんなことが分かるんだ、エスパーなのかと思えてしまう。


 そうやって追求することで、心の奥から沸き上がる真意。

 考えるだけでも気分を害してしまう。


「もう、そんなデリカシーの無さだから、いつまでたっても彼女が出来ないんだよ」


「何の。今は君という恋人がいるじゃないか」


「ふふっ。ほんと口だけは達者だよね」


 女の子は僕の手を引いて、強情に占い店に入っていく。

 待て待て、僕にも心の準備というものがあぁぁ──。


****


「──きゃははは‼」


「おい、あんまり走ると転ぶし、危ないよ」


「大丈夫。夏希なつきは日頃から鍛えてるからー‼」


「何の筋肉自慢アピールだよ……」


 ──僕らは学校の休日を利用し、町中の映画館で夏希が好きなコメディ映画を見終えた後、息抜きも兼ねて、館内で小休止していた。


 だけど、あの赤いジャージを着た夏希が、大人しくソフトドリンクを飲むはずもなく、こうして賑やかにフロアの廊下を走っている。

 本人は食後の運動だと口喋っていたけど、どう見たって、好き勝手に楽しんでるよね。


「きゃははは‼」


『ドカッ‼』


「ぐえっ!?」


 僕の忠告を聞かず、夏希がサングラスをかけた黒スーツの男性と正面衝突し、ぶつかった男性が、数メートルほど、思いっきりはね飛ばされた。

 どういう原理か、男性のサングラスは外れなかったけど、走る人間ダンプカーとは、()()()このことだね。


「テメエなあ、どこ見て走ってんだよ。イテエじゃないか!」


「鉛玉の一発二発じゃすまねーぞ?」


 男性が黒いサングラスを外して、片目に傷がついた鋭い目つきで睨んでる。


 見た目三十代の角刈りのおじさんに、刃物で傷ついた跡といい、いかにも怖そうな人相だ。

 さっきからヤベエ予感しかしない。


「うーん、飴玉ならイチゴ飴が好きかな」


「ああん? テメエ、ふざけるのも大概にしやがれ!!」


 飴玉が気に食わなかったのか、男が長袖を捲り、巣を張った蜘蛛の刺青を見せつける。

 ヤベエ、よりによりぶつかった相手がヤーサンの格下で、たちの悪いチンピラだったなんて。


「テメエのせいで、肋骨を骨折しちまったじゃねーか。どう責任とってくれるんだ?」


「そーなん? 秋星あきほお姉の話だと、ヒビが入っただけでも、めっちゃ痛いって言ってたよ?」


「ほら、お兄さんさあ!!」


 夏希が目にも止まらぬ速さで移動し、男の背後をとった。


『バシバシ‼』


「何すんだ、テメエ!?」


 それから夏希が男の大きな背中を、豪快に叩いてみせる。

 チンピラも、突然のスキンシップに動揺してるみたいだよ。


「こうやって挨拶を交わしても平然な顔してるよね。神経抜き取ったんみたいな?」


「ああん? 歯医者じゃねーから当然だろ‼」


「ほら、そこなんだよ。何で折れてるのに平気なのかなーって?」


 確かに折れてたら少しは痛がる……じゃなく、最初からチンピラの演技だってば!


「つべこべ言うなよ。こちとら折れちまってんだ。さっさと慰謝料払えや、コラッ‼」


「いや、コーラは持ち合わせてないから、ラムネでいい?」


「誰が駄菓子が欲しいって言った‼」


 近年の男は駄菓子より、現金の方が好みらしい。

 電子マネーじゃなく、現なまが欲しい所はアナログだけどね。


「おい、兄ちゃん。いい加減にしろや‼」


賢司けんじ?」


「おう。みんなのアイドル、ウルトラ賢司ちゃんよ」


 今日も元気に駆けつけてきた、天然パーマーヒーロー見参。

 自称アイドルとか言ってて、恥ずかしくないのかな?


「夏希ちゃんが困ってるだろ。その汚れた手を離せ!」


「ああん、別に繋いでは?」


「俺の脳内イメージでは、すでに繋いじゃってんの‼」


「はあん? 意味わかんね!?」


 男が自身の両手を眺めながら、不思議そうな表情になる。

 大丈夫、おじさんは普通の反応でおかしくはないから。


「こんな危ないヤツが知り合いなんて、絶対おかしな娘だぜ!」


「娘ではない。これからはインドンの修行僧と呼びなさい!」


 夏希、誰が出家しろと言った?


「まあいい。今日の所はこれで勘弁してやろう。だが、次はないと思えよ、頭のおかしな小娘どもがー‼」


 男はサングラスをかけ直し、声を震わせながら定番の捨て台詞を吐いて、そのまま去っていった──。


****


「助かったよ、賢司。ありがとう」


「何なに、俺は無益な殺生は好きじゃないからな」


「そこで何で時代劇設定になってるのさ?」


「暴れん坊招待だからな」


「どんな相手を誘うんだよ……」


 賢司とのいつもの会話が流れる中、キラキラとした目線の親友が僕の両肩に手を添える。


ところでさ、志貴野しきの。お前さん、最近変わったな」


「へっ、何が?」


 この親友は突然、何を言い出すんだろう。

 頭の中は四次元なのか?


「別に四次元じゃねーぜ」


 僕の漏れ出た心の声に、批判する賢司。

 それじゃあ、禁断の五次元なのか……と思い込むと、親友は複雑そうに顔をしかめた。


「それよりもさ、あんだけ女性が苦手と叫んでいたお前さんが、こうやって女をとっかえひっかえして、デートしてるから驚いてさ」


「賢司がそうしろって言ったんだよね?」


「いんや、あれは別に強制じゃないさ。俺は同じシェアハウスで仲良く暮らせるよう、ただアドバイスしただけに過ぎないのさ」


 親友の意外な発言に、僕の思考がフリーズする……何だって?


「えっ、賢司、それってどういうこと?」


「言葉通りの軽いジョークの意味だが?」


「……はっ、はめやがったなー‼」


 ズバリ、何も知らずに賢司に従い、女たらしという毒牙にかかった僕は、その毒素を治療してもらうためのワンちゃんではなく、ワクチンを探す。


「ねえ、二人して何の話をしてんの? 夏希も交ぜてよー‼」


 そんなことも知らず、呑気に野郎二人の話に加わろうとする夏希。


「夏希ちゃん、こんな話を知ってるか?」


「なに? 怖い話?」


「ああ。この世の恋愛の価値観は、ネトラレで出来ている」


「ネトラレ? 何それ?」


「今は何も知らないでいい。人は本気で人を好きになって気付くのさ。奪われた時の愛しさと切なきと心弱さを……」


「何それ、とっても美味しいの?」


 ネトラレとは恋人のいる相手を強引に我が者にして、自分のものにするという、とんでもない行為である。


 くれぐれも、よい子は真似しちゃ駄目だよ。

 相手様に恋人や夫婦がいたら、潔くスパッと諦めよう。

 人を好きになるのは自由だけど、その人が大切に築き上げてきた家庭環境を壊したらダメー‼


「あのさ、夏希に変なことを吹き込まないでよ」


「変も何も、俺は恋愛指南書に基づいてだな」


「だからそれはいらないよ‼」


 夏希本人には悪気はないんだ。

 その本に書かれてるのは真実なのか、レンタルはできないのかという思いが交差する。


「ねえねえ、楽しそうだね。やっぱり夏希も話に加わっていい?」


「……いや、これ以上、話をややこしくしないでよ!!」


 賢司もだけど、夏希にも問題があるよね。

 他人に関心を持つのはいい心がけだけど、プライベートという土俵に勝手に上がって、興味本意で色々と訊いてくるのやめようよ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ