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非リアから追放され、可愛い四姉妹とのドキドキハラハラな共同生活。ハーレムのようで、ざまあしかないんだけど  作者: ぴこたんすたー
第4章 四つの力が一つの欠片に集まって

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第18話 誰か救急車じゃなくて、日本語が上手な通訳者を呼んでくれ

◇◆◇◆


「──先生、シキちゃんは?」


「ええ。何とか一命は取りとめました……」


 手術中の赤いランプが消え、手術室から出てきた白衣の男の医師を前にし、クッションの効いた座席で気落ちしていた、一人の女の子が立ち上がる。


「君は? 彼の妹さん?」


「いえ、シキちゃんの恋人のアキです」


 アキは切羽詰まった顔つきだったが、極めて冷静な言葉遣いだった。


「そうですか。アキさん、そのまま黙ったまま、私の話を聞いて下さい」


「……はい」


 手術を繰り返してきた戦慣れというものか、幾度の命を預かってきた場数というものか、淡々とした医師の言うことに、アキは静かに耳を傾ける。


「彼は頭を強く打った衝撃で、記憶に支障が出ていまして。それらの回復については絶望的かと」


「あなたのことは九歳の頃に出会ったと、記憶の混濁も混じっていて……。これは解離性健忘かえりせいけんぼうの疑いもあるかと……。失礼ですが、その制服の校章は高校生のものですよね?」


「はい。何で……どうしてシキちゃん……」


 華やかな高校生活を送っていたアキの人生は、シキという恋人きおくを失い、闇の中に飲まれつつあった。


 彼女は声を殺しながら、優しく接してきた医師の胸の中で泣いた。

 その涙が枯れ果てるまで、ずっと──。


****


「──久しぶりだな。志貴野しきの


「親父もね」


 一台の見慣れない、派手な赤い外車が停まった駐車スペース。


 立派な車とは正反対で、白髪混じりの長い髪を後ろ側に一つ結びし、細い顎にヒゲを伸ばした、みすぼらしい外見の親父。


 それプラス、赤を基調としたアロハTシャツに青いジーンズの短パンという、ダサいファッション。


 こんな身だしなみも服装も、変だということにも気付かない親父が、愛想を尽かされた母さんと別れたことにも納得だが、その他の理由として、お盆もお正月も仕事が忙しいの一点張りで、日本に帰省すらもしないという、コミュ力の低さも含まれていたのだろうか……。


 こうして、親父と会って話すのも、何年ぶりだろう……。


三重咲みえさき姉妹とは、うまくやってるかい?」


「まあね。初めは戸惑っていたけど、大分慣れたよ」


 親父は似合いもしない、丸いレンズのグラサンをかけ直しながらも、真っ向から色気の質問をするからして、大の女好きだということは十分に理解できる。


「それで、どの娘が好みなんだ?」


「はあ?」


「安心しろ。父さんオススメの結婚式場を紹介するからさ。アフターケアまで万全だ」


「あのさ、僕はあの姉妹に恋愛感情すらないんだけど?」


 結婚して安泰な気分にもなれなく、女性と接することも苦手な僕に、色恋の浮いた話などあるはずがない。

 モテ期だった頃の小学生とは違うんだよ?


「そうか? 普通、異性に興味のない男がネズミが出たくらいで、女の子が入ってる風呂場に急いで駆けつけるかい?」


「なっ……」


 あの事件は、あの四姉妹と、僕しか知らない出来事だったよね。

 姉妹の中に内通者がいるのかな?


 いや、女の子って大人しいように見えても、裏ではお喋りなタイプが多いからね。


 この話は秘密とか言いながらも、色々な相手に口喋っていくし、そんなトークで生きてるような感じだし。


 喋らずにはいられないという性分か。

 女の子って、分かんね。


「……こほん。それでは話を戻そうか」


「まずは三重咲姉妹の期末テストの結果についてだが、ここでその約束事は破棄しようと思っている」


「えっ、何でだよ?」


 僕は突然の発言に驚きの声を上げる。

 あのプライドの高い親父が、頑固論を否定したんだ。


 一緒に住みだした、新しい母さんの影響かな。

 男は生活を共にしたパートナーに丸め込まれ、似たような性格になるらしいから。


「うむ。シキノンとは違い、ハキハキとして、いいお父さんだねー」


「うーん、ちょっと紛らわしいから、夏希なつきはちょっと黙っておこうか?」


「分かった。秋星あきほお姉の言う通り、口は災いの元を封印しとくね」


 秋星に厳重注意されたのに、反省の色もない様子の夏希。


 それどころか、元気よくアスファルトの上を飛び跳ねながらも『昇竜アッポゥー!』と、林檎アップルのネイティブな発音で叫び、大振りなキレのあるアッパーを上空に編み出した。


 その飛翔技で、カラスは当てれそうかな。

 当てるとか、完全にガチャの思考だけどね。


「それで油性マジックを持って、今度は何を?」


「うんとね、これでお口をチャックしようと思ってね」


「マジシャンじゃあるまいし、黒マジックなんかで閉じれたら苦労はしないよ」


「そうだよね。シキノン、中々アタマイイね」


「イイね、以前の問題でしょ」


 たまに天才的なことを言うかと思いきや、日頃はマヌケなことを言って困らせる女子。 

 それがこのお馬鹿な女子高生、夏希である。


「おーい。今、父さんは大事な話をしてるんだぞ。そこでラブってる場合じゃないだろ」


「ラブというか、トラブルだけどねーw」


「いや、呑気にトラブってる場合じゃないけどね」


 今日は珍しく、英語ネタで攻めてくる夏希。

 その膨大なボケ知識を、勉強に生かせないのか。


「うむ。これは痛快。シキノンに一本取られましたな」


「だったら、その油性マジックをしまってくれよ」


「いや、勝手なことは出来ない。何も知らずに転売を行うと、著作権の侵害なのであーる」


「……本当、無駄な知識が多いよね」


 ホント、夏希の豆知識とかいう、ネット小説を書いたら、ウケるかも知れないね。


「それよりもお前さんたち、人前でいちゃつくな。恋人がいない人に対しての当てつけだぞ」


「ああ。問題ないよ。シキノンとなら、もうやったから」


「なっ? 夏希君、何を!?」


 この駐車場に来てから、夏希との絡みが多いけど、単なる偶然だからね。


「そうだなー。体と身体を密着し合ってね」


「激しくて、お互いに息も絶え絶えだったなーw」


「ふむふむ。まさかな行動派娘とカップリングか。これは興味深い……」


 親父が夏希のホラ話に誘われて、ポケットからスマホを出して、とあるボタンを押してグイと迫る。


「夏希君、そのことに関して、もっと詳しく説明してくれないか?」


 さては、録音ボタンでも押したのかな?

 今日の親父は三分でできる、カップラーメンよりも積極的だった。


「あのね、夏希もいらぬ誤解を親父に吹き込まないでよ!!」


「それはこの前、みんなで遊んだ、ツイスターゲームのことだよね!?」


 何とか弁解する僕に、無反応な夏希。

 ああ、あれか、都合のいい時だけ反応する野生児のようだな。


「そうなのか。意外にもワンパク娘と進展ありと……」


「親父も真に受けないでよ!!」


 ……と言うか、さっきから何で、他の姉妹は訂正してくれないの。

 至らぬ誤解に発展するでしょ!?


「まあ、テストで赤点回避をしないと、父さんの元を離れられない理由も、勉強を通じて、姉妹と仲良くなってもらいたかったのが本心だったが……」


「へっ?」


「そんな気遣いは無用だったな」


 ……となると、全ては親父のワガママに振り回されてたと言うわけだね。

 あんはあんこでも、悪巧みなハワイ()()親父め。


「お父さん、そのことなのですが……」


「ハルは、こんなお兄ちゃんが大好きで、結婚を前提にお付き合いをと……」


「なっ、ハル、何言ってるんだよ!?」


「いつまでも、夏希に好き勝手言われるのも()()()()と思って……」


 えっ、ハルが僕に好意があることは知らなかったな。

 そんな彼女も負けじと、スキスキアピールをしてきたよ。

 中学生なのに、人生設計もしっかりしてるし……。


 でも、もし僕が女の子の立場だったら、こんな陰キャダークホースな僕なんかとは付き合いたくないなあ。

 イケメンでもないし、特別に秀でた才能もないし、どこに好きな要素があるんだろう?


「ハルが嫉妬しても、夏希は三度の恋より旨い飯優先だからね」


「私も同感です。志貴野くんには、もっと気品に溢れた女の子とのお付き合いをですね」


「秋星、それってあなた自身のことかしら?」


「なっ? 何でもないってばー!?」


 何が気に障ったのかは不明だけど、秋星が両手を前に突き出して、乱入してきた美冬みふゆを会話の場外に押し出そうとしている。


「志貴野、恋愛に縁がなかったお前も、いい女たちをもったじゃないか」


「親父、だから違うって」


「だがな、優柔不断は嫌われるぞ。男は浮気などはせず、どれか一人に絞り、真剣に愛を育まないとな」


「あのさ、我が息子の話、ちゃんと聞いてる?」


 毎度のことだけど、僕の親父は言葉が通じないみたいだね。


 誰か救急車じゃなくて、日本語が上手な通訳者を呼んでくれ。


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