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第72話 進撃のスライム

「え、ちょっと、なにあれ? なんなの?」


 攻略組のウェイブが目を見開いて驚いている。ってことは、あれはそれほど強敵ってことか。まあ、そうだよな。大きいし。



 ネギ坊が危険を知らせてくれた先にあったのは魔物を呼び寄せるアイテム【魔好香】の未使用品。しかもそれがゴロゴロと転がっていた。


 そして次に木をなぎ倒す音と共に現れたのは…スライムだ。


 しかし、ただのスライムではない。超巨大スライム。森の木をなぎ倒すほどの大きさ。高さだけでも優に俺の三倍はある。



 ウェイブはすっごく驚いているようだが、実のところ俺はそれほど驚いてもいない。こういうのがいるかもしれないことはスライムに消化されていた時に考えていた。


 だって、スライムが連携したあげくに、くっついて融合したんだから。手と足と二組にそれができたってことは、他のスライムたちもできる可能性は十分にあるし、もっと大量にいれば全員で連携して融合するすることだってできるかもしれない。



 だから、目の前の見上げるほどの大きさのスライムがいても俺としては「やっぱりいたのか」程度だ。


 だが、それとこの状況をどう打開するかはまた別の問題だ。



ムニョムニョムニョムニョムニョ ボキッ バキッ



 ムニョムニョ動いては木をなぎ倒して体内で消化している。森を食ってるのか?



ムニョムニョ ムニョムニョ ム…ムニョ?



 あ、こっちに気づいた。


 目も何にもないスライムだが、スライムと濃密な時間を過ごしたからか、スライムの視線とか、考えてることがなんとなくわかるようになってる自分がいる。変な感じだ。



「す、スプラ、逃げるわよ」


「あ、ウェイブ、ストップ!」


「きゃあっ」



 ウェイブが足をもつれさせて転ぶ。そのウェイブの足元には青い物体が絡みついている。俺もやられたんだよな、これ。



 ここのスライムは連携する。しかも高度な連携だ。


 まず、俺たちの視線を水平より上に誘導する。俺の時は頭上のカサカサ音。今は目の前の巨大スライム。そして、視線が上に誘導されているうちにその足元に別動隊がしれっと移動する。


 別動隊を踏んでバランスを崩すプレイヤーには、そう、こんな感じに次々とスライムたちが絡みついて雁字搦めにしていく。



「ちょ、なに、このスライム。動きが早いし、剥がれない。ちょっと」



 俺の時は手足合わせて4匹だったが、ウェイブには…うん、16匹。俺の時の4倍の数で拘束しようとしている。で、今の俺の足元には…やっぱ4匹か。こいつら、プレイヤーのステータスに合わせた数を用意してきてるな。マジか。少し賢いどころじゃねえぞ、これ。



「ウェイブ、慌てないで、一匹ずつ千切って」


「あ、うん」



 そう、慌てることで、スライム同士を触れさせてしまうんだ。触れたスライム同士はくっついて融合してプレイヤーの体を拘束していく。ここは慌てないで、一匹ずつ対処しないといけない。



「あー、びっくりした。足元にスライムがいるなんて」


「俺も同じ方法でやられたからな」


「あ、そうだったんだ…。ごめん、弱いとか言って」



 えらく素直になったウェイブにマウント取りたくなる気持ちを抑えて、今は目の前のスライムに意識を向ける。


 スライムが高度な連携をするとなると,おそらく逃げればこいつらの術中にはまるはず。ここまで無駄に大きくなって威圧感を放っているということは、逃げる相手への対策もしていると見たほうが無難だろう。



 ここは目の前のデカいのを倒す方向で考える。スライムの弱点は核。たとえ大きくなってもこれは変わらないはず。じゃあ、その核を破壊すればいい。


 だが、今の俺は持ち武器をほとんど使ってしまった。あるのは虎の子の【注入釘(劇毒)】が1本だけ。さて、どうする…。



ピンポーン

『プレイヤー「ウェイブ」よりパーティー加入申請が届きました。受諾しますか?』



「え、パーティー?」


「今度は断る理由はないわよね?」


「あ、はい」



ピンポーン

『プレイヤー「ウェイブ」がパーティーに加わりました』



 ウェイブからのパーティー申請を承諾してしまった。FGSを始めて5日目にして初めてのパーティーだ。数日前まではあの銀仮面と初パーティーを組むなんて1ミリ、いや、1ミクロンも考えられなかったのに… 世の中ってほんと不思議なものだ。



「じゃあ、スライムの先輩スプラ君どうする?」


「…?」


 スライムの先輩ってなんだ。弱そうな響きだな。



「ま、まずはスライムなんだから核を探さないと」


「探せる?」


「ん、やってみる」



 【遠見】を使って巨大スライムの核を探る。すると、青く濃い体内にかろうじて人の頭ほどの核が見えた。



「あった。あ、なくなった」


「なくなった?」


「見つけたと思ったら、どこかに移動した…、あ、見つけた。あ、また移動した」


「どういうこと? 核が移動しているの?」


「うん、どうも自分で移動させてるみたいだな」



 巨大になったらその分賢さも上昇するって、ヤバいな、スライムって。



「それじゃあ狙えないわよね。一撃でやんなんとあんなのに捕まったらアウトだし」


「そうだな。どうするか…、あ、そうだ。ウェイブ、俺が巨大スライムの注意を引き付けるからその間に核を攻撃できるか?」


「そうね、アイスジャベリンなら核まで届くと思うわ」


「んじゃ、それで頼む」



 俺は木の陰になるようにして巨大スライムに接近すると、一番近い木に登る。【木登り】が発動した俺は、木にするすると登り、枝から枝へと巨大スライムの周りをこれ見よがしに移動する。


 【木登り】補正で強化された今、隣り合う木を飛び移るくらいはどうってこともない。



 巨大スライムはこちらの思惑通りに俺に視線を集中させているようだ。さ、ここからは俺たちの作戦で、お前たちがやられる番だ。



 巨大スライムの視線が枝を飛びまわる俺に集中する中、下の地面ではウェイブが魔法の発動準備完了。前に伸ばす手のひらの中央に1mほどの氷の槍が現れる。


『アイスジャベリン』



 巨大スライムの核に向けて氷の槍が勢いよく放たれる。



ムニョ?


 巨大スライムもそれに気が付くがもう遅い。ほら、すでに身体に穴が開く寸前だ。さあ、核をポリゴンにしてしまえ。



ムニョ!



 あ、槍が当たる寸前で核をずらしやがった。てか、今、核の移動速度やばくなかったか?



「ごめん、外した~」


「いや、違う、核が高速移動したんだ」


「え、マジ?」



 こいつやっべえな。なんちゅう動きすんだよ。あれか、体内なら速度関係なく自由に動かせちゃうってか?



ムニョニョーン! ドッシーン!


「うわっ」


 マジか、この巨体で飛び上がるとか。



 巨大スライムの飛び上がりの振動で、枝の上で様子を見ていた俺は枝から投げ出される。やばい、落下する。



ドサッ


「あ、すまん」



 俺が投げ出されたのを見て、ウェイブが走ってきて受け止めてくれた。なんかお姉さんに抱っこされてる小学生みたいで恥ずい。



「きゃっ」


 そのウェイブが俺を抱えたまま尻もちをつく。見ればウェイブの足には何匹ものミニスライムたちが取り付いている。こいつら、これも計算してここで待ってたとか? うそ?



「もう、こいつら、数が多すぎて…」


 足に絡み付くスライムを必死にちぎるウェイブだが、どこからともなくわらわらと湧いてくるスライムたちに千切るスピードが足りないみたい。



「くっそ、こいつら」


 俺もスライムを引きちぎろうとするがまったくもってむ無理だった。くそ、こんな時も筋力1に負けるのかよ、俺は。



ムニョニョニョニョーーン


 なんか巨大スライムが嬉しそうな鳴き声を上げている。俺たちの様子を見て喜んでやがるな。ちっ、こいつ腹立つな。レイスかよ。



ムニョッ ムニョッ ムニョッ ムニョッ


 巨大スライムがじわじわと距離を詰めてくる。このまま俺たちを体内に取り込むつもりのようだ。



「スプラ、もういいから逃げて。スキルあるんでしょ? パッと消えるやつ。それ使っちゃって」


「いや、なに言ってんだよ、お前」


「だって死に戻ったらネギちゃんいなくなるんでしょ? そんなの嫌だし」


 あ、そっか。こいつは死に戻ってもペナルティそんなないはずだもんな。俺は死んだらまずいし… って、いやいや、俺は何考えてんだよ。



 そんなゲーム上の仕様の問題じゃない。こいつは俺を助けたからこんなことになったんだから。こいつを置いて逃げるなんてできる訳ねえだろ。



「くっそ、何かねえのかよ」


 何かないのかとストレージを探す。しかし、あるのは大量の聖水と野菜。簡易テントくらいだ。あ、そうだ、何か作れねえかな。簡易鍛冶セットと聖魔のナイフで…



ブーン

『モンスターとの戦闘中のため使用できません』



 だよな。くっそ。



「スプラ、もういいから、そんな熱くならないで。ゲームなんだからちゃっちゃっと逃げていいんだから」


「うっせえ、黙っとけ!」




❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


いやいやいやいや、なんでこんなもんが発生してんだよ。


スライムAIってこんな狂暴じゃなかっただろ。


くそ、何がどうなってやがる。


生態系なんていちいち調べてらんねえしな。


こりゃ流石にこれまでか。


小僧、こんなところで死なせて悪いが、これの調査はしっかりやっとくからな。



――――――――――――――

◇達成したこと◇

・巨大スライムと対峙する。



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 職業:中級薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+3)

 敏捷:1(+14)

 器用:1

 知力:1

 装備:ただのネックレス

 :聖魔のナイフ【ドロップ増加】

 :仙蜘蛛の道下服【耐久:+3、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】

 :飛蛇の道下靴【敏捷+14】

 :破れシルクハット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv2】【鍛冶Lv6】【調薬Lv4】【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【農具知識EX】【料理Lv1】【広範囲収集】【遠見】【工作Lv1】【釣りLv1】【木登り】【よく見る】

 所持金:約730万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]



◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

〇進行中クエスト:

●進行中特殊クエスト

<シークレットクエスト:万事屋の悩み事>

<エクストラ職業クエスト~マジョリカの愛弟子>



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★☆☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ




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