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第73話 友情は苦難を通して育むもの

「うっせえ、黙っとけ!」


「…」


 いまだに逃げろとか言い出すウェイブをとりあえず黙らせる。



 ああ、もう、これ使ってみるか。でもあの巨体に釘なんて通るのかよ。しかも核を自由に動かせるとか、無理じゃん。



「ま、でもできることは全部やるしかねよな」



 俺はいったんウェイブから距離を取る。そしてこれ見よがしに紫色の毒毒しい色をした釘を取り出す。



「こいつをお前のそのわがままボディにぶち込んでやるからな」



ムニョ? ムニョニョニョニョー!!



 俺が取り出した【注入釘(劇毒)】を見た巨大スライムがすっごく驚いている。全身ぶるぶるのぶるんぶるん状態だ。


 いや、そこまで驚くか? 釘一本だぞ? まあ、毒は入ってるが、お前、核に当たらなきゃ効かねえだろ?



 しかし、俺が離れたところで釘を取り出したことで、ウェイブにまとわりついていたスライムたちがウェイブから離れて全員俺のほうに接近し出した。これは狙い通り。



「で、わかったわ」


 こいつら、こんな大勢で連携取れるとか変だと思ったんだよな。どれだけ大量のAI積んでんだよって。でもわかった。これ、スライムって群れ単位でAI使ってるだろ。



 つまり、スライムは表面上一匹ごとにモンスターとして確立しているが、実際は一つの群れが一匹のモンスターとして活動しているということだ。だから、むちゃくちゃ緻密な連携をしてくるのはそら当然のこと。



 木登りする俺に気を取られたフリしてウェイブの魔法を避けるとか、俺を木から落として助けに来るウェイブを嵌めるとか、こいつ初めから遊んでやがったな。くそ、なんか本当にレイスに見えてきた。



「来い、レイスライム!」


ムニョ?


 あ、通じねえか。



「来い、スライム!」


ムニョニョーン!



 ビビってた素振りも急になくなり、俺に向かってくる巨大スライム。俺は向かってくるスライムに怯まず、真正面から【遠見】を使う。すると、巨大スライムは体の中で核をあちこちに猛スピードで動かしていた。お前、それは反則だって。せめて狙いくらいはつけさせろよ。



ピンポーン

『【狙撃Lv2】【遠見】及び特定行動により【自動照準】を習得しました』




 俺が巨大スライムの突進に真正面から構え、目まぐるしく動きまわる核を【遠見】の画面越しに【狙撃】の照準を合わせようと追いまくっていると、急に照準がピッタリ合うようになった。そしてお決まりのピンポンさん。



 え、なにこれ。自動照準? マジで? いいの、そんなの?



 ファンタジー世界に似つかわしくない【自動照準】という概念に違和感を覚えなくもないが、今はありがたく頂戴しておく。



「よし、じゃあ、狙撃… うわっ」


 狙撃しようとした俺の目の前がいきなり真っ青に染まった。思わず【遠見】を解除すると、俺の目の前にはスライムの柱。スライムがいくつも縦に重なって俺の視界を遮っていた。



 くそ、そうだった。こいつら全部で一匹だった。



 わかっていてもインパクトの強すぎる巨大スライムがいると、どうしてもその他のスライムへの注意が足りなくなる。うまく心理の隙を突かれちまった。


 驚いた俺が状況を理解しているうちに、もう巨大スライムはスライムの柱も取り込んで俺の目と鼻の先に迫る。



 はあ、こりゃどうやら何をしても死に戻りは確定事項だったらしい。


 ふと、門番さんにもっと大きな声で挨拶したらよかったという思いがよぎる。なんだこの走馬灯としょうもない後悔。あれ、なんか寒くなってきた。いや、死に戻りリアル過ぎるだろ。




『ダイヤモンドダスト』




 その声は大きくなくても心の底を貫くような清らかさがあった。冷たくただただ純粋で無機質な清さ。


 一瞬の静寂の後に荒れ狂う白い輝き。俺自身が氷の彫像になったかと思うほどの凄まじいくも美しく展開される銀色の世界。俺の視界はすべて銀色で染まった。




「はっ、え? あ、狙撃」


 我に返ると目と鼻の先に氷の壁。一歩下がるとそれが凍った巨大スライムだと理解する。それにご丁寧に核が一番手前に移動されてある。とりあえず、【注入釘(劇毒)】で狙撃しておく。あ、そうそう、今度こそこれも忘れずに。



 核がポリゴンに変わっている間に聖魔のナイフで巨大スライムをチョンと触れる。そして銀色の世界に金色のポリゴンが舞う。


 巨大スライムの体はどんどん萎んでバスケットボール程の紫紺色の球になった。で、最後にそれが二つに分かれる。



【氷青の毒心(劇)】×2

 巨大スライムの心に氷、劇毒の二属性が付加されたもの。

 用途は不明。



 加えてブルーゼラチンも二つ拾った。二つずつあるし、ウェイブと一つずつって感じかな。そっか、パーティーだとドロップ分け合うんだっけ。あ、じゃあ、聖魔のナイフで触っといてよかったな。喧嘩にならなくて済む。



「おーい、お疲れ…さ…、おお、どうした?」


 ウェイブが未だ銀色に染まった地面に倒れ込んでいる。あれ? スライムから解放されてたよな



「あ、ごめん、わたし魔法使うとこうなる…」


「おい、おーい」


「…」





「ん? あ、わたし、あれ? スプラ?」


「お、気が付いたか」


 ウェイブが気が付いたらしい。



「あれ、ここ森? あ、そっか、わたしやっちゃったんだったね」


「ああ、なんかパーティー表示見たら【気絶(MPマイナス)】って書いてあったから、MPポーション使っといたぞ」


「え、MPポーション? うわ、ごめん。大金使わしちゃった」


「大金? なんで?」


「だって、50万G以上は使ったでしょ?」


「いや、何と言うか、ただ? あ、いや100G?」



 癒楽草(無料)と聖水(100G)だけだし。



「え、でも、時間がかかって…あれ? 5分も経ってない?」


「ああ、MPポーション使ったらすぐに目が覚めたし」


「…はい?」



 こりゃ駄目だな。気絶に思考障害とかの後遺症でも設定されてるかもしれん。




「え、じゃあ、スプラが中級調合師で、その役得で素材を無料で入手できて、それを調合したから実質は聖水の100Gだけってこと? …はあああああ?」


 いや、そんなすごい顔されても、これ以上の情報は言えんから。



「あのね、わたしの『ダイヤモンドダスト』は使えばもれなく気絶がついてくる特殊スキルで消費MPが500なの。で、今のわたしの最大MPは120。それもアイスジャベリンで100持ってかれてたから20。ってことで、わたしの回復前のMPはマイナス480。いつもは中級ポーション品質6を15分ごとに使って100×4で一時間近くかけて回復するの。中級MPポーション品質6の平均相場は一本12万G。だから50万G近く使うのが当たり前なの。お分かり?」


 いや、そんな計算式を捲し立てられてもな。俺そんなに計算速くないし。



「ウェイブは計算速いな」


「違うでしょ! そこじゃなくて、なんで中級薬師になっただけで、50万Gと60分なしで一気に回復できるのよってこと!」


「いや、だからMPポーションを使っただけだって…」


「…はあ、もういいわ。ちょっと常識教えてあげる」



 それからウェイブによるFGS常識講座が俺の意向を無視して開催された。


 現状、上級ポーションはHP、MP共に市場には出回っていない。中級ポーションですらたまに出回ってたものを競争で買っている。ちなみにウェイブは、取り巻きたちが稼ぐドロップ品など売ってすべてを中級MPポーションに変換していたらしい。


 で、ドロップ品を集めて売るのも中級MPポーションを競争して買うのも取り巻きたちの仕事なんだそうだ。


 なんだ、あの取り巻きたち、あんな偉そうにしてるくせに、やってることはウェイブの金づると使いっ走りじゃん。


 で、今のところ、上級ポーションが市場に出たらおそらく攻略組が全財産使っても競って買うだろう、って事らしい。だから俺が使ったであろう上級MPポーションは今のところ価格は青天井ってことだ。


 ま、つまり、俺の作る上級ポーションは銀座の高級寿司屋の大トロ(時価)並みの扱いってことだ。



「まあ、何にしてもお互い死に戻りしないでよかったな。ネギ坊も無事だったし」


『ゆ~ら!』


「あれ、ネギちゃんも怖かったよね。でも偉かったね、我慢できたもんね」


『ゆら~ら』


「あ、あの魔法がすごかったって言ってるぞ。確かにすごかったな。あれウェイブオリジナル?」



「あ、アレはね。ちょっとキャラ作成の時に無理言いまくったのよ。騎士さんを散々困らせた挙句にデメリット付きで引き出したのがあの魔法って訳」



 …なんか、すごくわかる話だな。もう遠い過去にすら思えるけど。



「そっか、で、デメリットってのが、気絶って事か?」


「それだけな訳ないでしょ。それだったらMPポーションさえあれば無双できちゃうし。そんなのチートよ、チート」


 チートか。そっか。…俺はチートじゃないよな。メチャクチャ大きいハンディ背負ってるもんな。



「じゃあ、他にもあるのか?」


「ええ、ドロップなしよ」



❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


くっそ、この状況で生態系をすべて追うなんて無理だ。


おい、どうしちまったんだよ、スライムAIよお。




お、小僧、ここに来て【遠見】の使い方マスターしやがったか。でも、ちと遅かったなあ。



うわあ、すっげえ魔法ぶっ放したなあの仮面の嬢ちゃん。


マジかよ、コリンズの担当してる奴らってこんなすげえの?


じゃ、俺や小僧の出番ねえじゃん。


おい、小僧、マジで釘とか作ってる場合じゃねえぞ。


最近、俺たち影薄すぎるって。


――――――――――――――

◇達成したこと◇

・習得【自動照準】

・巨大スライム撃破

・獲得【氷青の毒心(劇)】【ブルーゼラチン】

・ウェイブに上級MPポーション品質8(時価価格)を使用。



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 職業:中級薬師

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1(+3)

 敏捷:1(+14)

 器用:1

 知力:1

 装備:ただのネックレス

 :聖魔のナイフ【ドロップ増加】

 :仙蜘蛛の道下服【耐久:+3、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】

 :飛蛇の道下靴【敏捷+14】

 :破れシルクハット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv2】【鍛冶Lv6】【調薬Lv4】【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【農具知識EX】【料理Lv1】【広範囲収集】【遠見】【工作Lv1】【釣りLv1】【木登り】【よく見る】【自動照準】new!

 所持金:約730万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]



◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

〇進行中クエスト:

●進行中特殊クエスト

<シークレットクエスト:万事屋の悩み事>

<エクストラ職業クエスト~マジョリカの愛弟子>



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★☆☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ






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