第1話 光の勇者マルス、魔王軍四天王黒炎のガロンに挑む!!
「いよいよ、ガロン討伐だな」
「ああ、ガロン城が目の前だ。あの城も、今はあんな禍々しい姿になっているが、元々は平和な城だったらしいぜ」
「そうだな。もう200年くらい前になるらしい。もはや人間たちが暮らしていたころの城の様子が想像できない」
「ああ、そうだな。おれたちは、200年ぶりに、あの城を解放する。絶対に負けられないぜ」
「マルス、そういえばお前、ガロンとは因縁があったよな」
「ああ……それも含めて、今回の一戦で決着を付けるぜ。頼りにしているぜ!ガイオン!」
金髪のイケメンと、いかにも力自慢と思われるラグビー選手のような体躯を誇る赤い鎧を身にまとった大男が、禍々しい城の前に広がる平原を歩きながら会話をしている。平原には、所々溶岩が固まったような黒い岩石が散らばっている。
ガイオンと呼ばれた人物は、おそらく戦士だ。金髪のイケメンは、マルスというのか。身にまとった鎧は、神々しく、眩いばかりの光を常に放っている。彼はおそらく……光の勇者と呼ばれる人物だ。なぜだかどこかで見たことがあるし、会ったこともあるような気がする。
「そうね。私たちも、ついに魔王軍四天王と相対するところまで来たのね」
「ああ、いつも通り、攻撃魔法での援護、期待しているぜ!エナ!」
エナと呼ばれた女性は、紫色のキャミソールに黒いミニスカートにブーツを履いている。一昔前の平成の時代にいたギャルのようなちょっとセクシーな恰好だ。ただ、黒いマントを羽織っていて、セクシーさを減じているのが少々残念(?)。会話の内容からして、魔法使いなのだろう。
「もしお怪我をなさったら、決してご無理はなさらないように。回復はお任せ下さい」
「ああ、頼りにしているぜ!ミリア!」
ミリアと呼ばれた女性は、白い法衣に水色のマントを羽織っている。エナとは対照的で、肌の露出は少ない。回復魔法と言えば、僧侶になるのかな。
「我々もお供しますので、勇者様御一行は、真っすぐにガロンの城へお向かい下さい」
「ああ、みんな、すまない。頼りにしているぜ」
後ろを振り返ると、鎧を纏い、槍や剣や弓を携えた兵士たち。それに黒や白の法衣を纏った援護部隊と思われる人たちが数千人はいるだろうか。いや、いつぞやサッカー観戦に行った際、スタジアムの観客数が1万人ということだった記憶がある。あのときの人の数と比べても遜色ないから、1万人以上はいるのだろうか。隊列を組んで行進している。
ふと疑問が湧く。
「おれは何でこんなところにいて、こんなものを見ているんだ???」
自分が何者で、何をしていたのか思い出そうとしていると……
「来たぜ!!」
「おお!」
「ええ!」
「はい!」
目の前に大軍が現れる。先ほど見た兵士たちの隊列の3~4倍はあろうかという大軍勢だ。敵の種族はバラバラで、ゴブリンやオーク、猛獣みたいなやつもいれば、炎のようにゆらゆらしているやつもいるし、羽が生えて空中に飛んでいるやつもいる。
「いくぜ!みんな!」
光の勇者が号令をかける。
その仲間たちと兵士たちは一斉に突撃をかける。
「おおおおおおおーーーーーーー!!!!!」
それに反応するかのように、敵の大軍勢も不気味な笑い声や奇声とも思えるけたたましい声を上げ、突撃を開始する。
「きぃぃぃいやあ」
「はははははぁぁぁあああああ!!」
「ふぇぇぇええええ」
「へっへっへっへぇええ!!!」
あっという間に乱戦状態だ!
襲い掛かる敵を光り輝く剣で斬って斬って斬りまくる勇者。時折、敵から炎や弓のようなものが飛んでくるが、それらは勇者に当たる瞬間、不思議な光の壁のようなものにかき消されている。バリアみたいなものか。
「そんな攻撃では、おれの光の鎧は貫けないぜ!!」
なるほど。光の鎧とやらの効力で、攻撃は防がれているらしい。
「むぅぅううううん!!」
勇者から少し離れたところで、戦士が大きな斧を振り回している。敵のオークや猛獣たちは一撃のもと、葬り去られている。
「空の敵は、私に任せて!」
魔法使いは、羽もないのに、不思議なほうきに乗って空を飛び回り、空中から勇者と戦士を狙う悪魔族に火炎放射器のように炎を浴びせかけている。炎を浴びた敵は、一瞬のうちに黒焦げだ。
「攻撃は苦手だけれど……私も!!」
僧侶は大地に立って、手に持った杖を天にかざし、竜巻のようなものを発生させている。巻き込まれたゴブリンは、切り刻まれてズタボロだ。
そんな圧倒的な戦闘を見せる勇者たちに続いて、兵士たちも戦っている。人間の兵士たちの方に、すでに犠牲者は出ているようだが、怯む様子はない。
「勇者様たちは、早くガロン城へ!敵将の四天王ガロンさえ討てば、数的劣勢も覆せましょう!!」
「わかったぜ!すまない!!」
兵士たち十数名が、勇者たちの前に立ち、突撃を仕掛ける。突破口を開こうというのだろう。
しかし……
「うわぁ!!」
突撃を仕掛けた兵士たちが吹き飛ばされる。
目の前に、不気味な骸骨の一団が姿を現す。
「アンデッド族か!」
先頭に立ってその一団を指揮していると思われるアンデッドが1体いる。おそらくその一団の長なのだろう。戦国時代の武将がかぶっているような日本兜に西洋風の騎士のような鎧を纏っている。兜が東洋風で鎧が西洋風……何だかちょっと不釣り合いだ。目の奥が怪しく赤く光っている。
「勇者よ!ここは通さヌ!」
「クソッ!アンデッド族は手強い!一度下がれ!おれたちが相手になってやるぜ!!」
勇者の号令に従い、兵士たちは一時、勇者の背後に退避する。
「ガイオン!頼む!少し時間を稼いでくれ!」
「おお!任せろ!」
戦士がアンデッドの一団の前に立ちふさがる。
「おおおおおお!!」
「……」
勇者は、何やら目をつぶり集中力を高めている。
握った剣が僅かに光を増し始める。
「私たちも!」
魔法使いが空中から戦士を援護する。
僧侶はアンデッドの攻撃で傷ついた兵士たちをすかさず回復魔法で手当する。
3人の見事な連携で、アンデッドたちを食い止めていると……
「よし!もういいぞ!」
声がかかる。
その瞬間、3人は勇者の前を開ける。
「お前たちの弱点が『光』ってことはわかっているぜ!!閃光龍烈斬!!!」
勇者が手に持った光り輝く剣を一閃すると、龍のようにうねり、蛇行する光が現れ、アンデッド族の一団を飲み込んだ。
「ボギュァアアア……」
「ほでぃあえええあああああ……」
「うわぁああああ……ボ、ボネ……り……」
アンデッド族たちの断末魔が聞こえる。
あっと言う間に蒸発するように消えていった。
どうやら、今の一閃で、手強いと言われたアンデッド族は全滅したようだ。
勇者の力……圧倒的じゃん!
「大丈夫か!マルス!その技は、身体への負担が大きいし、魔法力も相当使うだろうに」
「はあ、はあ。いや、あいつらは手ごわかったぜ」
「確かにそうだが」
「ふぅ。それに、もたもたしていると他のみんながやられてしまう。やつらの弱点の光属性攻撃で、一気にケリを付ける必要があったぜ」
「大丈夫ですか。マルスさん。回復は?」
「いや、大丈夫だ。怪我はないぜ」
「今の一撃で綺麗に道ができた。よし!ガロン城に乗り込むぞ!!」
「おう!!」
勇者一行が、閃光龍烈斬で出来た敵軍団のほころびに向かって走り出した。すると……
「はーーーっはっはっはっは!!見事な一撃だったな!!光の勇者よ!!!」
「そ、その声は!!」
ドーーーーーーンッ!!!!!
遥か天空から何か、いや、何者かが降り立った。
黒い炎をマントのように身にまとい、身の丈3メートルはあろうかという筋骨隆々の大男。
顔は少し青白く、目つきは鋭い。
そして、頭にはツノが……5本生えている!!
この風格と大物感!こいつはまさか……
「ガロン!!」
やっぱりそうだ!
こいつがガロン!
魔王軍四天王のひとり!
ついにお目見えだ!!
おれが何でこんなところにいるのかはさておき、ここからは熱いボス戦か!?
「面白い余興を見せてもらったんでな!それに、城で貴様らがやって来るまで待つなど、性に合わん。この俺自ら貴様らを葬ってくれるわ!」
「わざわざ出てきてくれるとは!手間が省けたぜ!相手になってやる!!」
「フッフッフ……あの時の小僧が随分と成長したものだな。倒し甲斐のある男に育って嬉しいぞ!」
「もうあの時のようにはいかないぜ!」
「フッ。面白い!キサマの力、見せてもらうぞ!」
「言われなくとも!覚悟しろ!ガロン!」
「それにしても勇者よ。今日は『もうひとり』はいないが、いいのか?」
「ああ……あの時とは違う!『あいつ』がいなくても、お前と闘えるぜ!」
「ほう。舐められたものだな」
「ああ!マルス!お前の言うとおりだ!」
勇者の前に戦士、魔法使い、僧侶が立つ。
戦士が斧の切っ先をガロンに向ける。
魔法使いが氷を宿した杖の先端をガロンに向ける。
僧侶は身構え、攻撃に備える構えを見せる。
「『おれたち』で、お前を倒す!!」
勇者一行がガロンに向かっていく!
「受けて立とう!!!地獄の黒炎を味わうがいい!!!」
勇者の光る剣の剣先とガロンの持つ黒い炎を纏った刀がぶつかり合おうとした瞬間、目の前が真っ白になった。
まるで背中の後ろから誰かに引っ張られているみたいに、おれの意識はどこかへ吸い寄せられていった。




