第2章 ノイズの側にあるもの
第二章は、あの夜から三ヶ月後の二月末から始まります。
理亜瑠は答えのないまま、波形の裾を見続けています。そこへ後輩の佐倉萌が現れ、「ノイズって、全部消さないといけないんですか」と問いかけます。
根拠のない問いを持て余す理亜瑠と、それをまっすぐ受け取る萌——二人の対話が、この章の核心です。
第1節
冬が明けた。
二月の終わり、検査部の窓から見える中庭の梅が、白い花をつけ始めていた。理亜瑠はその花に気づかなかった。気づく余裕がなかったというより、窓の外を見る習慣がなくなっていた。気がつくといつも、手元の波形を見ていた。
十一月のあの夜から、三ヶ月が経っていた。
手術の結果は、翌朝に断片的に聞いた。緊急帝王切開は行われた。児の状態については詳細を知る立場になかったが、NICUへ搬送されたという話が、翌日の朝礼前に検査部に流れてきた。それ以上のことは、わからなかった。わからないまま、三ヶ月が過ぎた。
日常は続いていた。
心電図、超音波、負荷試験、ホルター解析。毎日波形が来て、毎日データを出した。仕事の量は変わらなかった。仕事の質も、外から見れば変わっていなかったはずだ。ただ、理亜瑠の目の置き場所だけが、少し変わっていた。
波形の裾を、見るようになっていた。
山の高さや間隔だけでなく、信号が消えていく場所を、以前より長く見るようになった。終末部の尾の引き方、ベースラインへの戻り方、そのわずかな個体差。一枚一枚の波形に、それぞれの消え方があった。均一に見える波形ほど、どこかで処理されている。整いすぎている波形は、何かを削られている可能性がある。あの夜から、そう考えるようになっていた。
もちろん、全ての処理が問題なのではない。
ノイズを除去することは必要だ。見やすい波形は読みやすく、読みやすい波形は診断を助ける。フィルタは正しく設計されている。佐竹の言った通りだった。それは頭でわかっていた。
それでも、裾を見ることをやめられなかった。
ある午後、理亜瑠が心電図の解析をしていると、隣の椅子に誰かが座った。
「先輩、それ、何を見てるんですか」
振り返ると、後輩の佐倉萌が首を傾けていた。今年度から生理検査部に配属された新人で、理亜瑠より一つ年下だった。文系の大学を出てから就職活動で行き詰まり、医療の道へ転じた経歴を持つと、採用面接の雑談で聞いたことがあった。検査の覚えが早く、患者への対応が丁寧で、佐竹からの評判もいい。理亜瑠とはまだそれほど話したことがなかったが、隣の席になることが多かった。
「波形の終わり方」と、理亜瑠は答えた。
「終わり方?」
「ここ」と言って、画面の終末部を指した。「この信号が消えていく場所。山じゃなくて、消え方を見てる」
萌はしばらく画面を見た。それから、「どういうことに気をつけて見るんですか」と聞いた。馬鹿にした様子はなかった。純粋に知りたがっているように見えた。
「均一すぎる波形は疑う」と、理亜瑠は言った。「きれいすぎる波形は、何かを削られてる可能性がある。ノイズを消す時に、信号の一部まで一緒に消えてることがある」
萌はまた画面を見た。少し考えてから、「それ、どうやって見分けるんですか」と言った。
「まだ、わからない」
正直に言った。わからなかった。あの夜から三ヶ月、裾を見続けているが、どこまでが処理の影響でどこからが本物の所見なのか、自分には判定できなかった。できないまま、見ていた。
萌は「そうですか」と言って、自分の仕事に戻った。
否定も肯定もしなかった。ただ聞いて、答えを受け取った。その受け取り方が、理亜瑠には少し意外だった。たいていの人間は、根拠のない話には曖昧な相槌を打つか、やんわり否定するか、どちらかだった。萌はそのどちらでもなかった。
「また教えてください」と、萌は言った。
それだけ言って、端末に向き直った。
理亜瑠は波形の画面に視線を戻した。終末部の裾が、今日も静かに、早く、消えていた。窓の外では、梅の花が風に揺れていた。理亜瑠は気づかなかった。
第2節
萌が「また教えてください」と言ったのは、三月に入って間もない火曜日の午後だった。
理亜瑠が心電図の解析を終えて端末のログを閉じようとしたとき、隣の席に萌がいた。コーヒーの紙カップを二つ持っていた。片方を理亜瑠の机に置いて、何も言わずに自分の椅子を引いた。
「先輩、ノイズって、全部消さないといけないんですか」
開口一番そう言った。挨拶でも前置きでもなかった。ただ、知りたいことを知りたいと言った。その聞き方が、理亜瑠には少し懐かしかった。自分がまだ工学部にいた頃、教授に同じような聞き方をしていた気がした。
「消さなくていいノイズもある」と、理亜瑠は答えた。「ノイズに見えて、実は信号の一部だったりする」
「それ、見分けられるんですか」
「難しい。でも、消す前と消した後を比べると、たまに気づく」
萌はコーヒーのカップを両手で包んだ。考えている顔だった。即座に次の質問が来なかったので、理亜瑠は少し待った。
「先輩が去年の冬に何かあったって、佐竹さんが言ってました」
理亜瑠は手を止めた。
「産科で、難しいケースがあったって。詳しくは教えてもらえなかったんですけど」
「うん」と、理亜瑠は言った。それ以上は続けなかった。
萌も続けなかった。
部屋の奥で、別の技師が超音波装置の電源を落とした。機器が低く唸って、静かになった。空調の音だけが残った。萌がコーヒーを一口飲んだ。理亜瑠も飲んだ。
「私、就活で医療来たんですよ」と、萌が言った。
「聞いたことがある」
「文系で、とくにやりたいことがなくて、インターンで病院に行ったら、波形見てる人が格好よかったんです」格好よかった、という言葉をとくに照れずに使った。「何かわからない信号の中から、何かを掴もうとしてる感じが。自分にそれができるかどうかはわからなかったけど、やってみたかった」
理亜瑠はその話を聞きながら、自分の就職活動を思い出した。工学部で電子回路を設計していた四年生の春、医療に転じようと決めた理由は、萌のそれとは違う。だが、何かわからないものを掴もうとする感覚への引力は、似ていた。
「先輩は、もとから医療志望だったんですか」
「違う」と言って、理亜瑠は少し考えてから続けた。「工学部を出て、それから来た。遠回りだって言われた」
「私もそう言われました。文系から三年かけて免許取るなんて、変だって」
「変じゃない」
即答だった。萌が少し目を丸くした。
「遠回りしてきた人間の方が、途中で拾ってきたものがある。そのぶん、見える場所が違う」
萌はしばらく黙っていた。それから、小さく「そうですね」と言った。コーヒーを飲んで、紙カップを机の角に置いた。「先輩の言う、消えてる裾野。私も見てみます。うまく見分けられるかわからないけど」
「ゆっくりでいい」と、理亜瑠は言った。「急いで答えを出すより、引っかかりを持ち続けることの方が大事なことがある」
萌はうなずいた。
窓の外では、梅がそろそろ散りかけていた。今度は、理亜瑠もそれを見た。白い花びらが一枚、風に持ち上げられて、視界の端を横切った。
それが、佐倉萌との最初のまともな会話だった。
第3節
三月の終わりに、電極が乾いた。
患者は七十代の男性で、心房細動の経過観察のためにホルター心電図の装着を受けていた。二十四時間装着型の記録装置を体に貼り付け、翌日に回収して解析する。理亜瑠が装着を担当し、翌朝の解析も引き受けた。
データを展開したとき、最初から違和感があった。
夜中の二時から三時にかけて、ベースラインが大きく揺れていた。体動によるアーチファクトは珍しくない。しかしこの揺れ方は、体動の特徴とは少し違った。規則的すぎた。体を動かす時の揺れは、もっと不均一になる。これは何かが継続的に干渉しているときの波形だった。
電極の浮きか、乾燥か。
理亜瑠は装着時の記録を確認した。貼り付けた部位は左胸部の三点、右鎖骨下一点。皮膚の状態は良好だったと記録されている。ゲル量も確認した。標準的な量を使っていた。
だが、乾燥は起きる。
電極に塗られた導電ゲルは、時間の経過とともに水分が蒸発する。特に高齢者は皮膚が薄く、発汗が少ないため乾燥が早い。夜間、暖房の効いた病室では、その速度が上がる。接触抵抗が上がると、微細な信号が電極を越えられなくなる。結果として、ノイズが増え、信号が埋もれる。
設計の問題だ、と理亜瑠はまた思った。
この装置は、電極の接触状態を定量的に評価する機能を持っていない。インピーダンスを常時監視し、乾燥の予兆を検出して記録するような仕組みは、標準機能には含まれていない。含まれていないから、検出されない。乾燥は静かに進み、信号は静かに劣化し、解析者は事後になって初めてそれを知る。
知ったところで、もう遅い。
理亜瑠は解析レポートの備考欄に、「夜間の一定時間帯にベースライン変動あり、電極乾燥による接触抵抗上昇の可能性」と記した。判定不能とはしなかった。信号の読み取れた時間帯のデータから、できる限りの解析を行った。心房細動の発作パターンを確認し、夜間の変動部分については補足説明を加えた。
佐竹にレポートを見せると、佐竹は備考欄を読んで少し考えた。
「乾燥対策、患者さんに伝えた?」
「装着時に、体を動かしすぎないことと、発汗した場合の対処は伝えました。でも、乾燥そのものを防ぐ手段は現状の電極では難しくて」
「そうだな」佐竹は軽くうなずいた。「こればっかりは仕様だから」
仕様だから。
その言葉が、理亜瑠の中で少し引っかかった。否定的な意味で言ったのではないことはわかった。佐竹はただ現実を言っていた。現在の医療機器の多くは、こういう制約の上で動いている。仕様の外側にある問題は、使う側が工夫で補う。それが現場というものだった。
わかっていた。
わかっていても、「仕様だから」で終わらせることへの、静かな抵抗が残った。
仕様を、変えられないのか。
電極が皮膚と接触する、その界面で何が起きているのかを、装置がリアルタイムで感知できないのか。乾燥が進むことを、信号が届く前に知ることはできないのか。工学部で基礎を叩き込まれた体が、その問いを自然に立てた。
この問いは、理亜瑠の中では新しくなかった。
波形の裾、電極の界面、信号と機械の間に生まれる摩擦。あの十一月の夜から、頭の中を繰り返し通っているのは、結局そこだった。見えない場所で何かが消えていく。消える前に、掴めないのか。
昼過ぎ、萌が「電極の乾燥って、どうやって防ぐんですか」と聞いてきた。理亜瑠のレポートを横で見ていたらしかった。
「現状は完全には防げない」と理亜瑠は言った。「ゲルの量を増やしても、時間が経てば限界がある。皮膚の保湿状態、室温、体動、全部が絡む」
「難しいですね」
「電極と皮膚の間の状態を、もっとちゃんと把握できる仕組みがあれば違う」
「それって、今の機械にはないんですか」
「標準的な機器には、ない」
萌は少し考えてから、「じゃあ、作ればいいんじゃないですか」と言った。
軽い口調だった。冗談でもなかったが、重い提案でもなかった。ただ、素直にそう思ったから言った、という言い方だった。
理亜瑠は萌を見た。
「難しい」と言った。
「でも、できないわけじゃないですよね」
答えるのに、少し間があった。
「できないわけじゃない」
その言葉を口にした後で、理亜瑠は気がついた。自分が言ったのは、慰めでも励ましでもなかった。本当のことだった。界面の状態を定量的に把握する原理は、すでに工学の中にある。それを医療電極に落とし込む設計が、まだないだけだ。あるとすれば、どういう構造になるのか。どういう材料を使えば、生体に優しく、かつ電気的な情報を精密に取れるのか。
問いが、少し具体的になった。
萌は自分の仕事に戻っていた。理亜瑠も画面に向き直った。
電極一枚が、一晩で乾いた。それだけのことだった。ただその一枚が、理亜瑠の中でまた何かを開けた気がした。
第4節
四月になった。
病院の敷地内の桜が満開になり、一週間後には雨で散った。新しい研修医が白衣で廊下を歩いた。生理検査部にも新しい依頼が増え、朝から夕方まで波形が途切れなかった。繁忙期とは少し違う、始まりの慌ただしさだった。
そのころ、病院に新しい心電計が入った。
メーカーの担当者がデモ機を持ち込み、使い方の説明会が開かれた。検査部全員が参加した。新機種の特徴は、AIによるリアルタイム波形解析だった。記録しながら同時に異常を検出し、優先度の高い所見を自動でフラグする機能がついている。処理速度が以前の機種より三倍速く、波形のノイズ除去アルゴリズムも最新のものに更新されているという説明だった。
「見やすくなっていますね」と、佐竹が言った。
確かに見やすかった。モニターに映し出されたデモ波形は、ベースラインが安定していて、余計な揺れが少なかった。QRS波の山は鮮明で、ST変化も判別しやすい。ノイズが抑えられた分、細かい所見が読みやすくなっていた。
技師たちが好意的な反応を見せる中、理亜瑠は黙って画面を見ていた。
見やすい、とは思った。
だが、見やすくなった、ということと、正確になった、ということは、同じではない。
メーカー担当者が、フィルタの仕様説明を始めた。適応フィルタリングを用いており、体動ノイズと筋電ノイズを自動識別して除去する、という内容だった。識別の精度は九十二パーセント以上、と資料には書かれていた。
九十二パーセント。
残りの八パーセントは、どうなる、と理亜瑠は思った。
識別に失敗した場合、信号とノイズの区別を誤る。信号をノイズと判断して削れば、本物の所見が消える。逆に、ノイズを信号と判断して残せば、偽の所見が現れる。どちらも困るが、前者の方が怖い。消えた所見は、見えないから気づけない。
説明会の後、萌が隣に来た。
「先輩、さっきから顔が難しいですよ」
「そう見えた?」
「質問しようかどうか迷ってる顔でした」
「した方がよかったかな」
「どんな質問するつもりだったんですか」
理亜瑠は少し考えてから言った。「フィルタが除去に失敗したとき、どこにそれが記録されるのかを聞こうと思った」
「記録されないんじゃないですか」
「多分ね」
フィルタの動作ログを取っている機器は、一般的ではない。処理の過程で何を削ったかは、通常は記録されない。結果だけが残る。きれいになった波形だけが残る。削られる前のデータがどうだったかを、後から確認する術は、多くの場合、ない。
「怖いですね、それ」と萌は言った。
「うん」
「でも先輩、それ言い出すと、今ある全部の機械がそうじゃないですか」
「そう」
「……どうするんですか、それ」
理亜瑠はしばらく黙った。どうするか、という問いには、まだ答えがなかった。
「今は、削られても残る部分を見る」と、最終的に言った。「そのうち、削られないように作る」
「作れるんですか」
「わからない。でも、誰かが作らないといけない」
萌は「先輩が作るんですか」と、少し面白そうに言った。
「まだわからない」
「でも、考えてるんですよね」
答えなかった。答えるほどの形が、まだなかった。
廊下を白衣の新人たちが通り過ぎた。始まりの季節の足音だった。理亜瑠は検査室に戻り、次の患者の波形を開いた。画面の中に、今日も裾野が並んでいた。消えかけたものと、残ったものが、混在していた。
第5節
冬が見え始めた十一月の終わり、理亜瑠は佐竹に呼ばれた。
「進学を考えてるって、本当か」
主任室ではなく、休憩室での話だった。佐竹が湯飲みを両手に持ち、向かいの椅子に座った。問い方は穏やかだったが、確認したいことがある顔だった。
「考えています」と、理亜瑠は答えた。「臨床工学技士の専攻科に行こうと思っています」
佐竹は少し間を置いた。
「また学校か」
否定ではなかった。ただ、確かめるような間だった。
「工学部を出てから養成校に来た時も、同じこと思ったか?」
「思いました」
「今度は何を取りに行く」
「機械の中を見に行きます」と、理亜瑠は言った。「今は波形の外側から見てるけど、装置の中から見たい。どこで何が削られるのかを、設計のレベルで知りたい」
佐竹はしばらく黙った。湯飲みを一口飲んで、テーブルに戻した。
「去年の産科の件が引きずってるのか」
「引きずってるというより、そこから始まったという感じです」
「きれいな嘘、か」
佐竹が静かにそう言った。去年の夜、理亜瑠が口に出したことを、佐竹は覚えていた。理亜瑠は少し驚いた。佐竹はそのまま続けた。
「お前の感覚は、間違ってなかったと思う。あの夜、何かがあそこにあったのは、お前が一番わかってるだろう」
「はい」
「ただ、検査技師の仕事では、それ以上は届かない。お前はそれがわかって、次を探してる」佐竹は湯飲みをまた持ち上げたが、飲まずに置いた。「悪くない判断だ」
理亜瑠は少し息を吐いた。反論も同意も必要なかった。佐竹がそれを理解してくれている、ということだけで十分だった。
「萌に引き継いでから行くか」
「春に入学できれば、そのつもりです」
佐竹が小さくうなずいた。
「あいつは飲み込みが早い。お前が見てきたものを、少し渡してから行け。波形の裾を見る目の話でいい。それだけで、あいつには十分伝わる」
「そうします」
休憩室の窓の外は、もう暗くなっていた。廊下から、当直の引き継ぎの声が聞こえた。理亜瑠は湯飲みを持った。
翌週、萌に話した。
「先輩、行くんですね」と、萌は言った。驚いた様子はなかった。薄々知っていたような顔だった。
「春から専攻科に入る」
「臨床工学技士」
「そう」
萌はしばらく黙っていた。それから、「先輩が言ってた、削られないように作る、っていうやつ」と言った。「そのために行くんですか」
「そのために行く」
「……何年かかるんですか」
「わからない」と理亜瑠は答えた。「でも、行かないと始まらない」
萌が静かにうなずいた。
それ以上は言わなかった。言わなくてよかった。
外は冬の始まりの冷たさだった。検査部の窓から見える中庭には、もう何も咲いていなかった。十一月の梅はまだ遠く、桜はさらに遠い。それでも何かが、土の下でゆっくりと準備していた。理亜瑠にはそれが、なぜかわかる気がした。
「嘘をつかない機械が、先輩の手でできたら、私に教えてください」と、萌が言った。
「教える」と、理亜瑠は答えた。
約束するつもりで言ったのではなかった。ただ、そうなる気がした。この先が何年かかっても、いつかその日は来る。あの夜の波形の裾を、誰かが拾う機械が、いつかできる。そのための一歩を、これから踏み出す。
それだけが、今の理亜瑠にある確かなことだった。
読んでくださってありがとうございます。
「削られないように作る」「作れるんですか」「わからない。でも、誰かが作らないといけない」——この対話が、この物語の設計図だと思っています。
理亜瑠はまだ答えを持っていません。でも問いの輪郭が、萌との会話の中で少しずつはっきりしてきました。フィルタが九十二パーセントの精度で削る、残りの八パーセントの話を、ぜひ覚えていてください。
第三章へ続きます。




