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ユーリの過去

お読みいただきありがとうございます。

少しユーリが可哀相な描写(虐待など)が入ります。苦手な方はスルーしてください。

下の方だけ少し読めば次回に繋がります。


よろしくお願いします。



ドールスタン子爵の謁見申請はスケジュールが合わない、という理由で延期した。

練武会は終わったが、それに伴う処理はまだあるし病院の開院が間近なため多忙は本当だ。

なのにドールスタン子爵め。面倒な予感しかない登場にイラッとする。


ユーリを保護することにしたときにドールスタン子爵のことは調査済みだが、エイダンに最近のドールスタン子爵のことを調べてもらう、と並行してエドワルド団長に相談だ。

エドワルド団長にユーリに関わることだからユーリ本人もいた方がいい、というのでエドワルド団長とユーリに、わたしの執務室まで来てもらって話を聞くことにした。

ドールスタン子爵はユーリが、わたしのガードになった途端、アレは、わたしの息子だ、と言い始めたのだとか。

あんなに醜いが剣の才能だけはあったようで、その才を皇女様に早くから認められ引き立ててもらっていた、とか、醜くても努力する者を皇女様は見捨てない、そんな皇女様に努力で一番認めてもらっているのが息子のユーリだ、とか。

まぁ、要するに、わたしの息子は皇女様のガードで、更に一番のお気に入りだから、その父であるわたしのことも皇女様は気にかけてくださる...的な。


...ねーよっ!

腹立つな、あのブサイクめっ!ドールスタン子爵はぽっちゃりを少し、いやだいぶ超えたデブだ。この世界ではぽっちゃりはモテ要素だが、それも過ぎるとモテ要素とは言えなくなる。

約4年前、ドールスタン子爵のことを調べたとき殴り込みに行こうかと思った。

ドールスタン子爵の妻は某子爵家の令嬢だった。ドールスタン子爵との間には3人の息子がいた。ユーリの醜さは生まれてすぐから際立っていたそうだ。(つまり生まれたときから可愛すぎたということね)

ドールスタン子爵の妻は、がっかりはしたが「まぁ1人くらい醜いのがいてもいっか」みたいな大らかというか頓着しない人だったようで、放任主義だが、ちゃんとドールスタン子爵家の子供として育てられたようだ。

ところがドールスタン子爵の妻は、もう一人の夫と旅行中に事故にあって亡くなってしまう。ユーリが5歳の頃だった。

そこからドールスタン子爵のユーリへの虐待は始まったようだ。

元々、醜く生まれたユーリを疎んでいたドールスタン子爵は食事の席を家族とは別にさせた。ユーリの兄2人だけを自分の子供として扱った。

ドールスタン子爵がそんなだから使用人たちも次第にユーリに対するお世話をサボるようになった。

そのうち、ユーリの部屋がなくなり、ユーリの食事が用意されなくなり、庭師の小屋のような家に庭師と一緒に住むようになるまでに、そう時間はかからなかった。

時折、ドールスタン子爵にテストをされ、成績が悪いと暴力を受けた。

家庭教師から何も教えてもらえていないのだから当然だ。テストの度に暴力を受けることになる。


ユーリが庭で倒れ、月光騎士団に保護されたのは、そんな暴力を受けた数日後のことだった。

ケガをしても治療を受けることはできず、口の中のケガのせいで飲めるものしか口にできず、力が出せない状態だった。元々、栄養状態も良くなかった。庭に倒れこむように横になっていたところを騎士たちに見つけてもらったのだ。

ドールスタン子爵の妻が亡くなったのが5歳熱を済ませた後で良かったと思う。もし、こんな環境で5歳熱を発症したら助かるものも助からない。


エイダンは隠すことなく報告をあげてくれた。確認はされたが、わたしが全部知りたい、と言ったのだ。

ね?殴り込みに行こうかと思うよね。今からでも家に火、つけにいく?

...もちろん冗談だよ。



さて、どーすっか?



わたしの執務室にエドワルド団長とユーリが来た。

2人に席を勧めて、わたしも座る。

「さてと、ここに暇な人なんていないし、サクッと本題に入るけれど、最近のドールスタン子爵についてどう思うか2人の気持ちや意見を教えてくれる?」

ユーリは俯いたままだがエドワルド団長が話し出す。

「わたしの方で少し調べたのですが目に余るものがあります。あたかも自分には皇女様というバックがついていると言わんばかりの、いえ、言っているような言動。できる範囲で、否定しておきましたが皇女様がドールスタン子爵を庇護下に置いていると本気で信じているものもおりました。どこかで強く否定しておかないと皇女様がトラブルに巻き込まれかねません。わたしは早めに否定する場を設けて皇女様がドールスタン子爵を特別視していないということを周知させた方がいいと思います」

うんうん、そうだね。でもユーリの気持ち次第ではどうするかな。

ユーリは父親の話、辛いかな?少なくとも話したいことではないよね。

「ユーリは?ユーリの気持ちを一番尊重したいからユーリの考えも教えてほしいんだけど」

ユーリはゆっくり顔を上げると謝罪から入った。

「皇女様、申し訳ありません。家族の問題ですし、わたしが何とかしないといけないことなのに」

「ううん、それは違うわ。ユーリの問題ではなくてドールスタン子爵の人間性の問題よ。ユーリはどうしたい?ドールスタン子爵と仲良くしたい?それとも別の考えを持っている?」

「わたしは、別にどうも...。大人しくしていてほしいです。正直、今更、父親と言われてもどう接すればいいか...、向こうが、わたしと会いたいと思っているとも思えませんし...。これまでのように、わたしのことはいないものだと思ってもらうのが一番いいです」

わたしのガードになって元気に仕事してくれているユーリと違って、小さくなって俯きがち、声も小さくボソボソと話し、目を合わせない。

おのれ、わたしのユーリ(違う)に、こんな思いをさせやがって、どうしてくれようか。

この世から抹消してやりたい。

が、ダメだ。ユーリは大人しくしていてほしい、と言っている。

それならドールスタン子爵を潰す計画はナシだ。(物騒なことも視野に入れて考えていた)


エドワルド団長の言うようなドールスタン子爵にくぎを刺す方法でいこう。

エドワルド団長とユーリが部屋を出た後、エイダンたちと作戦を練る。

エイダンを始めとした、わたしの傍仕えの男性は現在5人いる。

この国では皇族の傍仕えの女性の仕事は身の回りのお世話を主としているが、男性は身の回りのお世話もまぁあるのだが皇族の成長と共に執務のサポートに比重が傾く。

わたしは早々に仕事に手を出す(練武会の発案)ことになってしまったためエイダンたちは予定よりも、かなり早く公務の業務内容へとシフトチェンジした。

元々、わたしは皇女だったからエイダンたちがサポートすることが多いと思われ、優秀な人間が、わたしの傍仕えとしてあてがわれた。

これは、どういうことか説明するとお兄様たちは男性だから、ちゃんと仕事するだろう、というか仕事しないとか皇子としてあり得ない、でも、わたしは女性だから、それは期待できないかもしれない、ということなのだ。これを知った時、なんだとー!?皇女として最低限くらいするわいっ!と思ったが、前に少し話に出てきた我儘だった叔母は、まさにこのタイプだったらしく、叔母の傍仕えの男性たちは大変だったらしい。叔母は本当に我儘放題だったため、女性の傍仕えも大変だったらしいが...。


まぁ叔母のことはいいとして、そんなわけで、わたしの傍仕えのエイダンたちは本当に優秀だった。小さい頃、ぽやっとした印象だったエイダンはフリだったのだろうか。

それとも子供だったわたしに合わせていたのだろうか。それも何かイラッとする。


エイダンたちと話して決めたことをざっくり話すと、わたしがお茶会を開く。(子供のわたしが主催できるものなんて相変わらず昼間のお茶会がせいぜいだ)

そこで誰かにドールスタン子爵に、わたしをかさに着た言動をとらせるように促してもらう。

そこに、わたし登場

わたしが自ら子爵のことを特別扱いはしない、と公言し、このような言動を慎むように言う。


...うん、大丈夫かな?

だが、エイダンは子爵は、わたしに招待されただけで言動を促すようなことをせずとも勝手に、わたしをかさに着るだろう、と言う。

煽る役を用意するのは念のためらしい。

ドールスタン子爵が、わたしの庇護下にない、ということを周知させる、という程度で済ますのなら、この程度で十分だから、わたしも、この案にのることにした。

そして、その煽り役なのだが、わたしは祖父にお願いしようと思っている。

祖父というのは亡くなった母の父、オーフレイ伯爵だ。

この人は、時々しか会わないが、やはり、わたしに甘い。

きっちり仕事してくれるだろう。


てなわけで、ユーリが、わたしのガードになったら嬉し楽し恥ずかしな日々を...と妄想していたことを実現させるために頑張るよっ!

ユーリの憂いを取り去ってやるのだ!

...え!?やだなっ。何を想像してるわけ!?

わたし、まだ9歳だよ。

手をつないだり(きゃー)

抱っこしてもらったり(レスター兄様に9歳なんだから、もう抱っこは...と言ったな、あれはここに適用されない)

恰好良く守ってもらったり(もちろんケガするようなヤバいやつはナシだ)

わたしがお仕事しているところを見つめられたり(いや、もう仕事にならねーわ)

正式な場で正装に身を包んだユーリを堪能したり(写真はないから絵に残したい)


よし、妄、じゃなくてユーリの明るい笑顔のために、わたしのやる気はバッチリよっ!




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