くぎ
誤字脱字の指摘、ありがとうございます。
とは言え、ちょっと恥ずかしい...(/ω\)
今日はお茶会ではなく昼餐会当日。ガードはガイとクリス。
外出時やお茶会などで不特定多数と会う可能性があるときは2人体制だ。
おじいさまも張り切ってスタンバイしている。
今日の予定がお茶会ではなく昼餐会になったのは、これが病院建設へ協力(要するに寄付のこと)してくれた貴族を招いた皇女からの感謝の会にしたためだ。
感謝なのにお茶会では弱すぎる。ドールスタン子爵も滑り込むように寄付をしてくれた。
ユーリがガードになったため、自分の顔をたてる必要を感じたのだろう。つまりユーリがガードになるタイミングが、もう少し遅ければ寄付しなかったに違いない。
けっ。よく覚えておくからな。
昼餐会は、かなりの規模になってしまった。
病院建設に、わたしが私財を投じたのを始めとして隠居して遠くの離宮に引きこもった先代皇帝と、その夫2人以外の皇族、つまり陛下、母陛下、皇太子、兄殿下2人までが私財を寄付してくれた。
他の貴族たちは寄付しない選択肢を取りにくかっただろう。
すまん、これは想定外だった...。
だから今日の昼餐会にも皇族全員が少しだけ、とは言え、全員が出席するのだ。こんな規模になってしまったのは致し方ない。
それでもドールスタン子爵にくぎを刺す計画はしっかりやるよ!
その前に早速、顔を出してくれた兄3人に挨拶だ。
やっと解放された...。褒め殺され、なでくりまわされ、ちゅーをされ...、わたしのHPはごりごり削られた。
これも大事なことなんだ。わたしが皇族に可愛がられているのなら、何より、まず、わたしに嫌われることは避けなければならない、と周りに知らしめることになるからだ。
それは、わたしの身を守ることに繋がる。
わかってる。わかってるんだが、こんなにたくさんの人たちが見ている中で、というのは恥ずかしいったらない。
わたしが恥ずかしがっているのを見て、だから可愛い、と更に糖度を増すのは永久ループにはまりそうで本気でやめてほしい。普通の女の子は大切にされることを当たり前としているから恥ずかしがる子は少ない。ちょっとだけレアな反応かもしれないが兄様たちも、そんなわたしに慣れろよ。
わたしが慣れろって?
...無理だ。
さて、皇族が済めば貴族たちからの挨拶を受けてたつよ。
そして、計画実行だ。
エイダンは、わたしから離れられないから別の傍仕えが合図を出してくれることになっている。
ある伯爵と話していたとき、後ろからエイダンがそっと耳打ちしてきた。
作戦決行のときだ。
伯爵に軽く謝罪しエイダンに、さりげなく、だが素早くドールスタン子爵の現場へ案内してもらう。
ドールスタン子爵のうわずったような声が聞こえてくる。
「ええ、そうなのです。実はユーリは当家の末の子供でして、醜い上に何の取り柄もない子供だと思っていたのですが十傑入りを最年少で果たす程の剣の才があるとは親のわたしでも見抜けませんでした。それを見抜いた皇女様は素晴らしい目をお持ちです」
「さすがは神童と言われるだけのことはありますね。子爵も御子息を引き立てていただいているのだから感謝申し上げなければなりませんね。それにしても皇族の、それも皇女様のガードに選ばれるなど子を持つ親として羨ましい」
「まったくです。わたしの息子は2人とも剣の才はさっぱりで文官として何とか芽が出ないかと勉強させているのですが殿下方とは年も合わず出世は少し難しいと思っているのです。ユーリ殿は皇女様とも年が近く、きっと長く仕えることになるのでしょうな」
「ありがたいことにそうなるでしょう、ユーリの才を皇女様はいたくお気に入りで、わたしにも長く仕えてほしいとお言葉を賜ったときは、大変感激いたしました」
「あら、そんなこと言ったかしら?」
話していた3人は大人の影から出てきたわたしに驚きこうべを垂れる。
「お話し中失礼するわ。わたしのことが聞こえてきたから、ついね」
3人は、ゆっくり頭を上げる。
ドールスタン子爵の目だけ少し泳いでいる。嘘を言っている自覚はあるのね。
「今日は、わたしの昼餐会にいらしてくださってありがとう。楽しんでいただけているかしら?」
「大変素晴らしい会に御招待いただき感謝申し上げます。病院を初めて見せていただいたときのお衣装も素敵でしたが今日の薄桃色のドレスも大変お似合いで皇女様の可愛らしさを引き立てていますね」
「ふふ、お褒めいただきありがとう。伯爵には早くから病院建設に協力いただいて感謝しているわ」
「勿体ないお言葉です。わたしは息子を5歳熱で亡くしておりますから皇女様の病院の御提案に何か力になれることはないかと思っているのです。これからも何かありましたら是非、お声掛けください」
「ありがとう、伯爵。覚えておくわ」
そして、ドールスタン子爵へ、ちらりと視線を投げる。
「子爵とは初めてお会いするわね」
「は。御招待にあずかり光栄に存じます」
「ユーリは良くやってくれているわ。褒めてあげてね」
「は。ユーリから皇女様には可愛がってもらっていると聞いております」
「あら、変ね。ユーリは何年も家族と会っていない、と聞いているけど」
「それは...手紙です。手紙で聞きました」
「あら、それも変ね。ユーリは家族と連絡もとっていない、と聞いているけど」
周りが訝しむように見てくる。
黙って、じーっとドールスタン子爵を見つめる。
相変わらず肥え過ぎだ。額を汗が伝っているのがわかる。
「手紙...ではなく、人づてに聞いたものだったかもしれません」
「そう、誰から聞いたのかわからないけれど、あまり適当な発言は自身を貶めることになるわ。みなさん、そうは思わない?」
周りで様子を窺うようにしていた人たちに視線を流す。
子爵は気づいていなかったかもしれないが、ただ事でない様子に周囲の人たちが気づき、わたし達の様子を見ていたのだ。
5歳熱で子供を亡くしたという伯爵の目には軽蔑の色が浮かぶ。
ユーリとの間に何事かあることを察したのだろう。
「わたしも人づてに聞いたことがあるの。だから、これはお願いなんだけれど...」
わたしは一旦切って子爵を見る。
「な、なんでしょう。わたしにできることなら男でも承りましょう」
「あなたにしかできないことよ。今後、わたしとユーリについての発言を控えてほしいの」
「......何か御不快なことをしてしまったのでしょうか。わたしには皇女様に御不快な思いをさせるつもりなど毛頭ございません。きっと誤解だったのでしょうが控えることといたします」
そのまま一礼すると、その場を去っていった。
ユーリに酷いことをした償いには、ちっとも足りないけれど、まぁヨシ、と思うことにする。
本当は、少しも、まぁヨシなんて思えないけどユーリがこれまで通りを望んだんだもの。わたしが勝手に罰するのは違う。
もしかしたら死んでいたかもしれないのにユーリは優しすぎる。
イケメンな上に優しいとか、わたしみたいな人間に狙われたりしたら大変だよ。わたしが守ってあげなきゃね。
その後、現れた父陛下と母陛下と話し、つつがなく昼餐会は終了したのだが父陛下の膝の上で飲み食いされ(あーそーだよ。陛下のあーん付きだ)、そのまま陛下の膝の上で貴族たちと挨拶をしたわたしのHPは残り1だ。




