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その魔獣使い、人類の敵につき。  作者: 有澤准
第二章 魔族領編
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第六十七話 はじめてのお買い物

 俺たちが6人旅を始めて3日が経った。


「もう少しで小さい町に着く。そこでオーガを金に換えて買い物をするぜ」

「お~」

「その町って私たちは入れるの?」


 ニナが訝し気に言う。

 別に俺たちは外でお留守番でもいいのだが、オーガの骨はニナの魔袋の中に入っている。

 魔袋は所有者の魔力によって中の大きさが変わるし、他人は中身を取り出せない。

 ニナが町に入れないと20体分の頭蓋骨と骨盤(オーガはケツがでかいので骨盤もでかい)を峰村たちは頑張って運ばなくちゃならなくなるが……。


「大丈夫だ。お前らと最初に会った町ほど大きくない。だいたいの街には鑑定士なんていないから平気だ。フードを被って……尻尾は……うーん、どうするか」

「ニナ、なんか腰巻みたいにできないか?」

「こう?」


 ニナが立ち上がって4本の尻尾を腰に巻く。もっこもこである。


「尻尾が多すぎて逆に尻尾にはみえないかもな……」

「なんかセレブっぽいな!」


 峰村が顎に手をやりながら首を傾げ、鏑木はガハハとでかい声で笑った。


「ま、獣人の奴隷ぐらいはいる町だ。バレても押し通せるだろう」

「奴隷か……」


 この世界、なんか人種(?)差別がすごいよなあ……。


「ところで何かほかに売りたいものはあるか? 狩人ギルドに行けば買い取ってもらえるぜ」

「あっドラゴンの素材ある」

「そんなもん売れるかドアホ!!!」


 えっだめなのか……? せっかくあの砂漠の階層で頑張って解体してきたのに……。


「ドラゴンってそんな微妙な素材なのか!? どうして俺はスキルといいゴミばっか手に入れちまうんだ……」

「違う違う違う、ドラゴンの素材なんてそう出回らないんだよ! 突然出したら怪しまれるし足がつく! 少なくともこの国にいる間はどうにもできないだろうな……」

「じゃあこの緑の熊の毛皮と手で……」

「普通のやつもあるじゃねえか。それを先に出せよ」


 サンキューフォレストシェルベアー。ドラゴンより役に立ってるよ。


**


 町についた。

 最初の町と違って外壁は木製だったし、門番も適当だった。

 田舎はこんなもんなのかなあ。

 

 今は峰村と鏑木が素材を換金しに狩人ギルドに行っており、俺、ニナ、八雲と立花はぶらぶら町を歩いている。

 

 石造りの家が立ち並び、路面も石で舗装されている。

 コンクリートはないらしい。だが、街灯らしきものは並んでいる。光源はやっぱり魔法なのかな?


「白井ィ。お前彼女とかいなかったの?」

「町の中で名前呼ぶなよ……神殿の連中いるかもしれないんだろ?」

「わりいわりい、()()


 俺は町の中では「山田」と呼ばれることにしていた。

 「白井」だと万が一教会の人間に聞かれたときに「そんな勇者いたっけ?」となってリストと照合され俺の存在がバレる可能性がある。


 「山田」なら、消息不明なこともあって都合がいい。別の町にいるはずなのに!? みたいなことは起きない。


「で、彼女とかいなかったのか?」


 ニナがジト目でこっちを見ている……。八雲ちゃんはにやにやしている……。


「いなかったけど……」

「なーんだ。つまんね。俺はいたぜ~。元の世界に置いてきちまった」

「あぁ……そりゃなんというか、残念だな」 

「だよな~~。男ばっかじゃなくて彼女と旅したかったぜ~。彼女もバイク好きでさ~」


 なんか、会話の内容はすごい俗世的なのに周りが中世風だから違和感あるな……。

 

「妾たちがいるじゃん」

「そうだそうだ!」


 ニナと八雲ちゃん、立花に猛抗議。


「小学生どもは黙ってな! 俺の彼女はバインバインだったの!」

「なにぃ~! しょうがくせいの意味は分からないけどバカにされてることは分かる! おばあちゃんはバインバインでした!」

「ばばあにも興味ないですぅ~」

「おばあちゃん見た目は美少女だよ」

「えっ!?」


 こいつらも仲良くなってきたよなあ……とほのぼのしているとちょうど正面の建物から峰村と鏑木が出てきた。


「おう、換金終わったぜ。これがお前らの分だ」


 じゃら、と重みのある布の袋を渡される。

 

「お~、ありがとう……これ、いくらぐらいなんだ?」

「銀貨30枚……まあざっと日本円に換算すると3万円ぐらいだな」

「結構あるな!?」


 おまえらが倒したオーガの分も入ってるからな、と峰村は言った。


「熊の素材が銀貨10枚だった。毛皮の採り方がよかったってよ。ほとんど傷がなかったからな」

「あ~。口に刀突っ込んで爆発させて倒したからなあ」

「えぐ」

「しかしそうなるとオーガってあんなに倒したのに銀貨30枚なのか……?」

「一体につき銀貨2枚だな」

 

 つまり一体二千円かよ。元の世界のイノシシのほうが遥かに高いじゃねーか。


「まあ食うところないし。使える素材もないし。防具もなんか臭いし。あとこの世界、それなりに魔物狩りがメジャーな職業だからな。あの程度の獲物じゃそんなもんだよ。それでもこのへんは物価が安いから食料とか道具ははこれぐらいでもそれなりに買えるぜ。ま、魔族領にいくんならこの国の金もっててもしょうがないんだし買い物でもしてくれば?」

「買い物かあ」


 そういえば北上するにつれて寒くなってきているし、コートは欲しいかもしれない……。あと、こないだ熊を捌くのに刀を使ったけどすごいやりづらかったな。薪を割ったりするのにも不便だしナイフと斧……あと自分用のリュックもほしいかも……。ニナにいちいち魔袋出してもらうのも申し訳ないんだよなあ。

 結構ほしいものあるな!?

 いや、でも節約はした方がッ……!


「買い物ってしたことないな……」


 ニナがちっちゃい声で呟いた。

 八雲ちゃんはすでにあちらこちらの露店に目が行っている。


「……。ニナ、八雲ちゃん、手だして」

「「?」」


 きょとんとしながら出された小さい手のひら二つに銀貨を10枚ずつ置いた。


「これから俺たちが手に入れたお金はこうやって平等に分けるから、このなかから好きなもの買っていいよ」

「えっ、でも……」


 ニナが銀貨を握りしめながらおろおろする。一方八雲は颯爽と駆け出して行った。はえーよ。


「でも、私買い物ってどうやったらいいかわからない……」

「一緒に行こう。欲しいものがあったら買えばいいし、なかったら何か買いたくなるまで貯めとけばいい」

「……うん!」


 にぱ、と笑顔になるニナ。早速俺の手を握って市場のほうに駆け出していく。

 

 市場ではいろいろ迷って、ニナは「おばあちゃんがつけてたのに似てる」と言って銀貨2枚の小さな金属細工のネックレスを買った。大事そうに手に握りしめながらニコニコしていたのが印象的だった。


 一方八雲ちゃんは買い食いしすぎてあっという間にすっからかんになり、へらへらしながら戻ってきた。


 俺は鉈代わりにもできそうな大きめのナイフと布のカバンと毛布にできそうな毛皮の外套を買ったぜ。精算の時お金足りなくてニナに借りた。ニナと峰村にすごいジト目で見られた。見ないで!


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