2-4、同じ色
ネロは戻ってきたロッリーアに気づく。
彼女の手は相変わらずペーガソスの首筋に置かれたままだが、その視線はふくらんだ袋へ向けられる。
「買い終わったか?」
「ええ」ロッリーアは袋を地面に下ろす。「パンと塩、それから干し葡萄と干し無花果、あと水」
「……水?」
「うん」
「水って、買う必要がある?」
「水は汲んできたから、払ってない」
ロッリーアは金袋をネロへ手渡す。
ネロは何も聞かない。
それどころか、中身を確かめようとすらしない。
「街の中、大変騒がしい」
ロッリーアはため息混じりに愚痴をこぼす。
「うん」
「それに、地面があっちこっち……」ロッリーアはそこで言葉を飲み込む。「……いや、もういい」
ネロは振り返らない。
だが、手元の動きだけがわずかに鈍くなる。「……ご苦労だった」
ロッリーアはネロの横顔を見る。
だが、その表情には何の揺らぎもない。
「……うん」と、ロッリーアは再び視線を落とす。「まぁぁ、まだマシだけど」
ネロは金袋を大きな袋ごと鞍袋へ押し込み、それからようやく身体を向け直す。「……では、出るか?」
ロッリーアはもう一度、小さく応じる。
ネロはそれ以上何も言わず、ペーガソスを近くの岩場まで引いていき、その石を踏み台にして馬に乗る。
ロッリーアも後に続き、鞍の上へ身体を落ち着かせる。
ペーガソスは低く干上がった溝に沿って、ゆっくりと歩き始める。
遠くのストリウムが、二人の視界の中でゆっくりと流れていく。
先ほどまでの喧騒は、遠い別世界へ置き去りにされたかのようだ。
周囲に残るのは、一定の速さで響く蹄の音と、風が梢を撫でる音だけ。
「……そういえば」静寂を破ったのはロッリーア。
「うん」
「セステルティウスって……何でできてるんだ?」
「……黄銅」ネロは少し間を置く。「知らなかったか?」
「知らない」
二人はそれ以上、しばらく口を開かない。
辺りには、ペーガソスの蹄の音だけが響いている。
「……アスは銅貨、デナリウスは銀貨、アウレウスは金貨」
それでも、結局ネロの方から口を開く。
「アス?」
「うん」
「……セステルティウスより小さいのか?」
「……うん」
ロッリーアは先ほど、あの女から渡された小さな硬貨を思い出した。
「……換算は?」
ネロは少し黙り込んでから答える。「……デナリウス一枚でセステルティウス四枚、セステルティウス一枚でアス四枚だ。」
ロッリーアは何も言わない。
……やっぱり、さっき考えた通り。
それにしても……
ローマの貨幣、なんで四進法なん?
絶対おかしいやろ?
「……じゃあ普通の売り物って、大体どれくらいするの?」ロッリーアはさらに尋ねる。「例えば、パンとか」
「普通のぅ……パン?」ネロは少し考え込む。「一つか二つほどだな。アスで」
「……は?」
ロッリーアの表情が固まる。
「どうした?」ネロは横目でロッリーアを一瞥する。
「……一アス?」
「ふむ。何か問題ある?」
「……いや」
「そう」
ネロはもう一度だけロッリーアを横目で見てから、再び前へ視線を戻す。
「……」
パン六つで……六アスか。
つまり、セステルティウス一枚半。
……
……待てや。
うちはデナリウスを二枚払うてる。
返ってきたのは、セステルティウス二枚だけ。
……
ペーガソスは相変わらず、のんびりと歩いている。
だが、その蹄の音はまるで太鼓のように、一つ一つ頭へ響き、脳を鈍く揺らす。
「……っ、他妈的!」
ロッリーアはぎり、と奥歯を噛み締め、心の中であの男の家族を片っ端から丁寧に罵倒する。
死ぬような沈黙。
「……いくつ買ったの?」
たとえロッリーアの言葉の意味までは分からないにしても、その口調だけでネロは何となく察する。
「……六つ」
「いくらだった?」
ロッリーアは気まずそうに口を割る。「……デナリウス二枚払って、セステルティウス二枚返ってきた」
「……値切らなかったか?」
「……してない」
「……」
ネロの肩が、ほんのわずかに傾く。
「……」
「汝、ぼったくられたぞ」
「……うん」
ロッリーアは目を閉じる。
「その店主――」
「分かってる……」ロッリーアはため息を漏らす。「ちゃんと分かってるから……」
ネロはロッリーアを一瞥するが、それ以上は言わない。
ストリウムの灰色の輪郭は、いつの間にか二人の視界から消えていた。
「次はやっぱり――」しばらくしてから、ネロが口を開く。「一緒に町へ入るべきだろう」
「それは駄目」ロッリーアは反射的に言い返す。「町には手配書が貼られてる。金貨五百枚だ」
「……」ネロは少し黙り込む。「つまり汝は、四倍ふっかけられる方を選ぶのか」
ロッリーアは口を開きかける。
「……それとこれとは違う」
「どう?」
「……金なら、なくなってもまた何とかできるけど」ロッリーアはネロを見た。「首が落ちたら、また生えてくるの?」
ネロは何も言わない。
ロッリーアもまた、何も言わない。
ペーガソスは相変わらず、果樹園と林の間をゆっくりと進んでゆく。
「……次に買い物へ行く時は、余が相場を教えてやろう」
「今でもいいわ」ロッリーアは額を押さえる。「移動中だし、時間潰しにはうってつけだから」
ネロはしばらく黙り込み、何かを整理するように考え込む。
「普通の黒パンなら、大体一アスほどだ」ネロはようやく口を開く。「白パンは、その三倍くらいになる」
「……」
うちが払った金やったら……
白パンでも八つは買えたんか……
ロッリーアは何も言わない。
ただ、静かにうなだれるだけ。
「塩は質によるな。小さな壺一つなら、大体三アスから八アスくらいだ」
「……」
「葡萄酒も同じ。一セクスタリウスの安いワインなら、平時は一から三アスほど。一般的な酒なら、およそ三から十アスくらい。ペロポネソス産の熟成酒なら、大体十五から三十アス」ネロは淡々と続ける。「ファレルヌムのような上等酒ともなれば……六十から百セステルティウスはする」
「……」
ロッリーアは思わず、自分の記憶にある葡萄酒の値段と思い比べる。
「……果物なら、干し葡萄は一掴みで一から二アスくらいだ。干し無花果は少し高いが、それでも三アスを超えることはあまりない」
「……一セステルティウス払った」
「何にだ?」
ネロが問い返す。
「干し葡萄と、干し無花果」ロッリーアは少し考えてから付け加える。「それぞれ、大盛りの一掴みずつ」
「……なら、そんなものだろう」
その言葉を聞いて、ロッリーアは少しだけ肩の力を抜く。
そして、今日の出費を頭の中でもう一度計算し直す。
……損したのはパン。
全部、パンでぼったくられている。
「……あのクソ野郎」
ロッリーアは奥歯を噛み締める。
「次にストリウムを通る時は、絶対あいつにツケを払わせる!」
「またストリウムへ立ち寄るつもりなの?」
「……」
「それに、我らは同じ道を戻ることもない」
道端の草が、風に揺れている。
「……絶対、戻ってくる」
ロッリーアは顔を上げる。
ネロは振り返り、ロッリーアを横目で一瞥したが、何も言わない。
蹄の音だけが、鈍く単調に地面を叩く。
「戻ってくる」
返事がないまま、ロッリーアはもう一度繰り返す。
「私たち、二人で」
再び沈黙が落ちる。
「……なぜ?」
ようやくネロが口を開く。
「……私は、騙されてもいい。笑われてもいい。見下されてもいい」ロッリーアはそこで言葉を切る。「だが、それは貴女のお金」
ネロの瞳が、その瞬間わずかに揺れる。
だが彼女は何も言わず、再び前へ向き直る。
風が、真正面から吹き抜けてゆく。
道端の草は一度深く伏せ、そしてまた静かに起き上がる。
「……うん」
ネロは小さく呟く。
道端の果樹園や畑は、いつの間にか再び林地へと変わる。
地形の起伏が、先ほどまでより大きくなったように見える。
生い茂る木々も、前よりずっと密度を増していく。
「……そうだ」先に口を開いたのはロッリーア。「道中でちょうどいい獲物を見つけたら、何匹か狩ってもいい?」
ネロはロッリーアに横目で一瞥をくれる。
「何の話?」
「……肉を買わなかったから、途中で何か獲れないかと思って。節約できるなら、その方がいい」
「……狩りは運もいるし、解体にも手間がかかる」
ネロは手綱を軽く引き締める。
「じゃあ、できるってことでしょ?」
「……余は、本格的に狩りをしたことはない」
林の隙間から差し込むまだらな陽射しが、ネロの短い髪を金と銀の入り混じった色に染めている。
「でも、あの猪は一剣だけで斬ったじゃないの?」
ロッリーアは引き下がらない。
「……あれは違う」
「何が違うんだ?」
「あれは……」
ネロは少し言葉を探す。
「向こうから勝手に突っ込んできた」
「向こうから来たとしても、斬らなきゃダメでしょう」ロッリーアはネロの服の裾を軽くつまむ。「しかも、一撃よ」
ネロは答えない。
ロッリーアはもう一度、小さくその服をきゅっと引っ張る。「……ねえ、いいの?」
「……じゃあ、やってみるか」
結局、最後に折れたのはネロだった。
ロッリーアの表情が、ほんの少し柔らかくなる。
林の奥で、不意に何かが動く。
ネロの視線が即座にそちらへ向く。
草むらの端に、一羽の野兎がいる。
耳を立て、目を光らせたまま、じっとそこに佇んでいる――
そして次の瞬間には消え去る。
茂みがわずかに揺れ、すぐに静けさへ戻る。
二人はしばらく黙り込む。
「……」
「……」
「さっきのは、兎……だよね?」
「ふむ」
「逃げた?」
「うん」
ネロの手が手綱の上でわずかに動き、そして止まる。
ロッリーアは何も言わない。
ペーガソスがブルルと鼻を鳴らす。
「……昔、お父様と一緒に砂漠を旅したことがある」
ネロは何も言わないが、わずかに首を傾ける。
「その時も、野兎を見た」
ロッリーアの視線は、先ほど兎が消えた場所へ向けられている。
「ほんの一瞬で茂みに潜って、そのまま消えた……ちょうど今みたいに」
「……砂漠にも、兎はいる?」
「いるよ」ロッリーアは即座に答える。「耳が長くて、毛は砂みたいな土色で、走るのがごっつう速い」
道端では、虞美人草やエニシダ、それに野生のタイムが、風に吹かれて気の向くままに揺れていた。
「それで?」ネロが尋ねる。
「それで終わり」ロッリーアは言う。「ただ通りすがりに見かけて、それで一瞬で逃げていった……さっきと同じ」
ネロはそれ以上、問いかけない。
だが、その視線の端だけがロッリーアへ向けられた。
ロッリーアは、まだあの草むらを見つめている。
ネロは静かに視線を前へ戻す。
覚えた。
うさぎのこと。
ネロの口元が、わずかに緩んだ。
彼女は両脚で馬腹を軽く挟む。
ペーガソスはいななきを上げたかと思うと、次の瞬間には勢いよく地を蹴り、駆け出した。
「……うわっ!」
ロッリーアは慌ててネロの腰へしがみつく。
ペーガソスは林の中を駆け抜けていく。
「な、なんで急に……」
疾走する馬の上で、ロッリーアはネロに強く抱きついている。
「……少しでも先へ進むぞ」
そう言いながらも、ネロの唇にかすかな笑みをこぼす。
どのくらい走ったのだろうか。
おそらく、ペーガソス自身でさえ覚えてはいまい。
だが、ロッリーアはひとつの木に気がつく。
背は高くなく、葉は大きく濃い緑。枝にはぎっしりと実がなり、深い紫色に熟しきって、その重みでしなり気味に垂れ下がっている。
「……あれは何?」
ネロが横目で見る。「何だ?」
「向こう、紫色の野いちごみたいな実」
ロッリーアは指差す。
ネロはその指先の方向に目をやる。「……桑の実」
「桑の実?」ロッリーアは瞬きをする。「これがそうなのね」
「セリスにはないのか?」
「あるけど、木になってるのが全然」
ネロは何も言わず、ただペーガソスを止めさせる。「……食べてみるか?降りて少し摘んでみてもいいぞ」
「いえ、この方が早い――」
ロッリーアは手を伸ばして枝をつかみ、二粒摘んで口に入れる。
枝は『シュッ』と弾けるように戻り、上下に小さく揺れながら、自分の平穏を乱す無礼者にぎゃあぎゃあと文句を言っているようだ。
だが、ロッリーアはただ実を口に放り込む。
甘い。
しかし、ほんのりと心地よい酸味もある。
「どう?」ネロの視線が彼女の顔に落ちる。「食べられるか?」
「うん、甘いわあ」ロッリーアはさらに二粒摘む。「食べへん?」
ネロは横に体をずらして一粒つまみ、口に入れる。
ロッリーアは自分の手を見る。
指先はもう、貝紫色に染まっていた。
そしてネロの手を見る。
同じ色だ。
「……」
「見るな。汝も同じだ」
ネロは自分の手を見て、再びロッリーアに視線を交わす。
ペーガソスが首をかしげ、枝の中に顔を突っ込む。
「えっ――」
ロッリーアは思わず声を上げる。
だが、もう手遅れだった。
ペーガソスは実のついた一節の枝ごと引きちぎり、口の周りをすでに貝紫色に染めながら、落ち着き払った様子で咀嚼している。
ロッリーアが見つめると、ペーガソスも彼女を見返す。
「……」
ロッリーアはネロの横顔に目をやる。
ネロもペーガソスを見ている。
しかし、表情は読み取れない。
ロッリーアは口を開かない。
しばらくして、ネロは手を伸ばし、ペーガソスの届かない高い枝を少し押し下げる。
そこには、完熟した実がより多くなっている。
ペーガソスは首筋を伸ばし、大きな口を開けてそれに食らいつく。
「……口のまわりが……」
ロッリーアは言葉を選ぶ。
「見ただろ」
「……ひげみたいだ」
ネロはしばらく黙る。「笑うな」
「笑ってへんわ――」
「ならよい」
ロッリーアは肩を震わせて、静かに下を向く。
ペーガソスは慌てずに葉と実を噛み続ける。
ロッリーアは鞍袋から布を取り出し、もう片方の手で枝に届こうとする。
無理や――
バランスが保てへん。
揺れが大きすぎる。
「降りて摘め」
ネロは淡々と言う。
「うん」
ロッリーアは馬の背から滑り降り、横に回り込み桑の実を摘み始める。
一つ摘む。
二つ摘む。
三つ摘む。
ペーガソスが首を伸ばして割り込んでくる。
「ブチッ」
一房の桑の実を枝ごと咥えて奪い去った。
ロッリーアはじろりと睨む。
ペーガソスはゆっくり噛みながら、彼女を完全に無視している。
「……」
ロッリーアは視線を引き戻して摘み続ける。
四つ摘む。
五つ摘む。
ペーガソスが再び近づく。
「おいお前、そっち行ってよ」ロッリーアは手で馬の鼻を押す。「向こうにもある」
ペーガソスは動かない。
「向こうや!」
首をゆっくり向けるが、ちらっと見るだけで戻る。
そしてまた目の前の実を平らげ続ける。
ロッリーアは振り返りネロを見る。
ネロは傍らに立ち、何も言わない。
しかし、口元がほんの少し動いた。
「おい、アンタの馬、どうにかして」
「腹が減ってる」ネロは答えず。「食べさせておけ」
「うちも、夕食のために摘みたいのに」
「今、腹が減っているのだ」
「……」
ロッリーアは手元に溜まったわずかな実を見て、ペーガソスをじっと見つめる。
ため息をつき、布を抱えて木の向こう側に移動する。
こちらの実は密集していないが、少しはある。
ロッリーアは再び摘み始める。
はぁぁ……
世界はようやく静かになった。
しかし、長くは続かない。あの蹄の音が再び響く。
ロッリーアが振り返ると、ペーガソスが後ろにいる。
「……」
馬は首を下げ、ロッリーアの手元の枝に顔を近づける。
「こら!」
ペーガソスは何事もなかったかのように首を傾げる。
ロッリーアは深い息を吐いている。「……ネロ!」
「うん」
「アンタの馬、うちについてきとる!」
「知ってる」
「放っとかんといてよ!」
「汝を気に入っているから」ネロは平然と。「喜ぶべきだ」
「喜ぶ……わけあるかいな!」
ロッリーアは摘んだ実がほとんど入っていない布を見る。
影のように寄り添うペーガソスも見やる。
ペーガソスはブルルと鼻を鳴らした。
ロッリーアは立ったまま、ペーガソスがゆっくりと目の前の枝を平らげるのを見つめる。
どうしようもない。
馬と張り合うわけにはいかない。
ネロに腹を立てるわけにもいかない。
行き場のない感情が、胸の奥に燻っている。
ロッリーアは布を脇に抱え、近くの石に腰を下ろす。
何も言わず、ただ座っている。
「どうした?」
ネロがちらりと見る。
「別に」
「じゃあ、なぜ座ってる?」
「座りたかっただけやわ」
ネロはもう何も聞かない。
ペーガソスがこちらの実を食べ終わり、ゆっくりと歩いて近づき、鼻をロッリーアの手元に寄せる。
ロッリーアはじっと見上げる。
馬は鼻で軽く手のひらを撫でる。
「……もうご満足、いただけましたか?」
ロッリーアは真顔。
ペーガソスは頭を下げて見つめる。
「食べたら、後でちゃんと走ってくれるんだぞ、わかったか?」
反応なし。
「聞こえとる?」
馬は鼻を鳴らし、ロッリーアの顔に温かい息を吹きかける。
ロッリーアは目を閉じ、深く息を吸う。
……落ち着け。
冷静にならな。
……動物虐待は犯罪だ。
ロッリーアは目を開ける。
彼女は立ち上がり、桑の実を包んだ布を少し整える。
「ぷっ……」
後ろから小さな声。
ロッリーアが振り返る。
ネロは背を向けたまま、遠くを見ている。
肩は少しも揺れていない。
「……何笑ってるの」
「笑っていない」
「今、笑っただろ」
「余は笑っていない」
ロッリーアはしばらくその背中を睨む。
「……ふん」
ロッリーアは顔を背ける。そして桑の木の横側へ回り、残った実をまとめて布へ放り込む。
二掴みほど。
ないよりはましだ。
「行くわよ!」ロッリーアは声を張る。「時間がない」
ネロが近づき、布包みに視線を落とす。
「摘み終わった?」
「終わった」ロッリーアは不機嫌そうに鞍袋へ押し込んだ。「お前の馬が食べ残した分だけな」
ネロの口元が、また少しだけ動いた。




