第80話:帰還と再会
◆ 留学生たちの帰還準備
グリーンヘイブン。
数週間後――
ヴァルハイム王国から帰還して、落ち着いた頃。
留学生たちが、帰国の準備をしていた。
トーマス、エマ、フェリックス、リディア、レイモンド、ヴィクトリア。
6人。
ノルディア王国へ、帰る。
伯爵の館。
広間。
おっさん、セシリア、ゴードン、オスカーが集まっていた。
留学生たちも、並んでいる。
おっさんが、前に立った。
「……みんな……」
「……数ヶ月、よく学んでくれた……」
留学生たちは、涙ぐんでいる。
トーマスが、前に出た。
「康太郎伯爵」
「本当に、ありがとうございました」
「この街で、学んだことは一生の宝です」
エマも、頷いた。
「はい」
「私も、農業技術をたくさん学びました」
「国に帰って、広めます」
フェリックスが、言った。
「伯爵様の教えを、忘れません」
「身分ではなく、心が大事だと」
リディアも、涙を流している。
「私も、学びました」
「本当に、ありがとうございました」
レイモンドとヴィクトリアも、前に出た。
レイモンドが、深く頭を下げた。
「伯爵様」
「私は、最初ひどい人間でした」
「でも、伯爵様が変えてくれました」
「下水道で、学びました」
「本当に、ありがとうございました」
ヴィクトリアも、泣きながら頭を下げた。
「私も、本当にすみませんでした」
「そして、ありがとうございました」
おっさんは、微笑んだ。
「……いや……」
「……お前たちが、自分で変わったんだ……」
「……俺は、きっかけを作っただけだ……」
おっさんは、続けた。
「……国に帰って、学んだことを広めてくれ……」
「……奴隷制廃止……」
「……身分の平等……」
「……魔道具の技術……」
「……全てを、広めてくれ……」
留学生たちは、頷いた。
「はい!」
「必ず、広めます!」
◆ 別れ
数時間後――
グリーンヘイブンの門。
馬車が、待っている。
留学生たちが、乗り込む。
住民たちが、見送りに来ていた。
「さようなら!」
「また来てください!」
留学生たちは、手を振った。
「ありがとうございました!」
「また、来ます!」
馬車が、出発した。
ゆっくりと、遠ざかっていく。
おっさんは、手を振り続けた。
セシリアも、一緒。
希望と光も、抱かれている。
馬車が、見えなくなった。
おっさんは、空を見上げた。
(……良い子たちだった……)
(……きっと、国を変えてくれる……)
◆ 王女の訪問
翌日――
午後。
おっさんは、館にいた。
セシリアと、希望と光と一緒。
平和な時間。
その時――
セバスチャンが、入ってきた。
「康太郎様」
「お客様です」
おっさん「……客?……」
「……誰だ?……」
セバスチャン「王女様です」
おっさんとセシリアは、驚いた。
「……王女?……」
セバスチャン「はい」
「エドワード三世陛下のお嬢様です」
おっさんは、顔を見合わせた。
セシリア「……王女様が……?」
おっさん「……通してくれ……」
セバスチャン「かしこまりました」
数分後――
応接室。
扉が開いた。
王女が、入ってきた。
そして――
小さな男の子を、手を繋いでいた。
3歳くらい。
おっさんは、気づいた。
「……王女……」
「……そして、ホープ……」
王女は、深く頭を下げた。
「お久しぶりです、康太郎さん、セシリアさん」
セシリアも、頭を下げた。
「王女様、お久しぶりです」
おっさんは、ホープを見た。
3歳。
大きくなっている。
元気そう。
「……ホープ、大きくなったな……」
王女は、微笑んだ。
「はい」
「もう、3歳です」
ホープが、おっさんを見た。
「こんにちは」
おっさんは、しゃがんだ。
「……こんにちは、ホープ……」
「……覚えてるか?……」
ホープは、首を傾げた。
「……?」
王女が、笑った。
「まだ小さかったので、覚えていないかもしれません」
おっさんは、立ち上がった。
「……そうか……」
セシリアが、希望と光を連れてきた。
「王女様、こちらが希望と光です」
王女は、目を輝かせた。
「まあ!」
「大きくなりましたね!」
希望は、2歳。
光は、1歳。
ホープと、目が合う。
ホープ「……あかちゃん?」
王女「違うわよ、ホープ」
「お友達よ」
ホープは、希望に近づいた。
「こんにちは」
希望は、恥ずかしそうにしている。
「……こんにちは……」
光は、笑っている。
「あー、うー」
みんな、微笑んでいる。
◆ 王女の話
しばらくして――
子供たちは、メイドたちと遊んでいる。
おっさん、セシリア、王女だけになった。
お茶を、飲んでいる。
おっさんが、聞いた。
「……何の用だ?……」
王女は、少し緊張している。
「……あの……」
「……戦争が、終わったと聞きました……」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……ヴァルハイム王国との戦いだ……」
「……終わった……」
王女「……お疲れ様でした……」
「……お礼を、言いたくて……」
「……来ました……」
おっさんは、首を振った。
「……礼なんて、いらない……」
「……俺は、やるべきことをやっただけだ……」
王女は、涙を流した。
「……いえ……」
「……康太郎さんは、いつも正しいことをしています……」
「……奴隷制を、廃止して……」
「……多くの人を、救って……」
「……素晴らしいです……」
セシリアが、王女の手を握った。
「王女様……」
王女は、顔を上げた。
「……実は……」
「……お願いがあるんです……」
おっさん「……お願い?……」
王女は、真剣な顔になった。
「……私と、ホープを……」
「……ここで、住まわせてください……」
おっさんとセシリアは、驚いた。
「……え?……」
◆ 王女の決意
王女は、説明し始めた。
「……私は、母になって分かりました……」
「……子供を育てることの、大変さを……」
「……そして、責任を……」
王女は、窓の外を見た。
「……王都では、身分差別があります……」
「……ホープは、王女の子です……」
「……でも、父親は……」
「……勇者ケンジです……」
「……複雑な立場です……」
「……周囲の目も、厳しいです……」
王女は、おっさんを見た。
「……でも、ここなら……」
「……グリーンヘイブンなら……」
「……身分差別がありません……」
「……ホープに、本当の平等を学ばせたいんです……」
「……人を身分で判断しない……」
「……そんな心を、育てたいんです……」
おっさんは、黙って聞いていた。
王女は、続けた。
「……そして、私自身も……」
「……学びたいんです……」
「……あの時、私は康太郎さんを下水道に捨てました……」
「……最低なことをしました……」
「……でも、康太郎さんは許してくれました……」
「……変わるチャンスを、くれました……」
「……だから、私も変わりたいんです……」
「……本当の意味で……」
「……ここで、暮らして、学んで……」
「……人として、母として、成長したいんです……」
王女は、深く頭を下げた。
「……お願いします……」
「……私とホープを、受け入れてください……」
◆ おっさんの答え
おっさんは、しばらく考えていた。
セシリアも、黙っている。
王女は、頭を下げたまま。
静かな時間。
そして――
おっさんは、口を開いた。
「……王女……」
「……顔を上げてくれ……」
王女は、顔を上げた。
涙を流している。
おっさんは、優しく言った。
「……いいよ……」
「……ここで、暮らせ……」
王女は、目を見開いた。
「……本当ですか……!?」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……ホープも、お前も、大歓迎だ……」
「……ここで、学べ……」
「……ここで、暮らせ……」
「……そして、成長しろ……」
王女は、涙を流しながら頭を下げた。
「……ありがとうございます……!」
「……ありがとうございます……!」
セシリアも、微笑んでいる。
「王女様、一緒に頑張りましょう」
「子育ても、学びも」
王女は、セシリアを抱きしめた。
「……はい……!」
「……よろしくお願いします……!」
◆ 新しい生活
数日後――
王女とホープは、グリーンヘイブンに移り住んだ。
館の一室を、与えられた。
王女は、毎日学んでいる。
魔道具のこと。
農業のこと。
街の運営のこと。
全てを、吸収している。
ホープも、希望と光と遊んでいる。
3人とも、仲良し。
メイドたちも、可愛がっている。
「ホープ様、こっちですよ」
「希望ちゃん、光ちゃん、一緒に」
子供たちの笑い声が、響いている。
ある日――
王女が、おっさんに言った。
「康太郎さん」
「私、農業を手伝いたいです」
「畑で、働きたいです」
おっさんは、驚いた。
「……畑で?……」
「……王女が?……」
王女は、頷いた。
「はい」
「王女だからこそ、です」
「私は、今まで何もしてきませんでした」
「働くことを、知りませんでした」
「でも、ここで学びたいんです」
「汗を流して、働くことを」
おっさんは、微笑んだ。
「……分かった……」
「……明日から、畑に来い……」
王女は、嬉しそうに微笑んだ。
「はい!」
◆ 変わる王女
数週間後――
王女は、畑で働いていた。
土にまみれている。
汗をかいている。
でも――
笑顔。
「この野菜、大きくなりましたね!」
農民たちが、驚いている。
「王女様が、こんなに働くなんて……」
「信じられない……」
でも――
王女は、楽しそう。
「みなさん、教えてください」
「もっと、上手に育てたいです」
農民たちは、優しく教えた。
「こうやって、水をやるんですよ」
「土を、柔らかくして」
王女は、熱心に学んでいる。
メモを取っている。
真剣。
おっさんは、その様子を見ていた。
(……王女が、変わった……)
(……本当に、変わった……)
(……良かった……)
◆ 子供たちの成長
ホープ、希望、光。
3人は、いつも一緒。
遊んでいる。
笑っている。
身分など、関係ない。
ただの、友達。
ホープが、言った。
「のぞみ、ひかり、あそぼ!」
希望が、笑った。
「うん!」
光も、笑っている。
「あー、うー!」
3人は、庭を走り回っている。
おっさんとセシリアと王女が、見守っている。
王女が、涙を流した。
「……幸せです……」
「……こんなに、幸せでいいんでしょうか……」
セシリアが、王女の肩を抱いた。
「いいんですよ」
「幸せになってください」
「ホープも、王女様も」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「……ここで、幸せになれ……」
おっさんは、空を見上げた。
青い空。
美しい。
平和な空。
(……また、新しい仲間が増えた……)
(……王女とホープ……)
(……この街で、新しい人生を始める……)
(……良かった……)
グリーンヘイブン。
王女とホープが、新しい住人になった。
二人とも、ここで学び、暮らす。
身分など、関係ない。
ただの、住人。
ただの、仲間。
おっさんの街は、さらに温かくなった。
新しい物語が、始まる。
(次回:第81話「:登場人物一覧」に続く)




