10.子作り
ダリスに連れられてお城に行った私は、決して皆に歓迎されていたわけではなかった。
多くの人間にとって、何処の誰とも分からない私より他国のお姫様を迎え入れた方が国益になる。ただのお荷物だと私を邪険に扱う者もそれなりにいた。
そして問題は起こる。
世継ぎが生まれないこと。
当然と言えば当然で、ダリスは私に側にいる事以上の事は求めなかったから……私に仕事を与える事もなければ、人間のする生殖行動を私に求める事もなかった。
だから私の生活自体は森の暮らしと多くは変わらず、蛇達と戯れ、庭の植物達を愛でるだけ。初めの頃は人間の使う文字や文明を学ぶ為に時間を使ったけれど、すぐに覚える事は無くなり時間を持て余すようになった。
その他の変化といえば、人間が少し……嫌いになったくらい。自ら作り出した生命だけれど、毎日のように多くの人間に囲まれて暮らしていると聴こえてくる心の声が多すぎて理解したくもない雑音がいくつも頭に響くのだ。
人間は精霊達のように素直ではない。心と発言と行動がチグハグで取り繕わない心の中の醜さは形容し難い。
やる事もなく、城内を歩きダリスの元を目指す。
「陛下、早急に世継ぎの件を考えていただきませんと」
「他に妃をもうけるつもりはないよ。ウォルの子供を養子にしたらどうかな?」
「それでは誰も納得しません」
扉の奥から聞こえる声はダリスとウォルのもの。ナディも中にはいるようだけど声はしない。
「それでも僕は嫌なんだ。僕が誰かと子供を作ると言っても絶対にリザは止めないから」
「何故、自ら迎えにまで行った彼女との子を望まないんだ」
「何故って、リザは女神だよ? 此処にいてもらってるのも僕の我儘だ。どんなに愛していても超えてはならない線があるんだ」
「女神だって……確かにリザは美しいが……」
「僕の話を冗談だと思ってたんだね。例え話じゃないんだ。彼女は本当に女神さ。トルニテアの始まりの神の娘。蛇を束ねる本当の女神なんだ」
「……だからお前は国の象徴を蛇にすると言って聞かなかったのか」
アドレンスに多くの蛇がいる事は間違い無いけれど、多くの人間には精霊達の姿が見えていないのだから不思議がられたでしょうね。
「ダリスのいう事が事実だとして、子が望めないのは痛手でしかないわね。リザを女神として人前に立たせる事ができるのなら彼女に今のように窮屈な思いはさせなくて済むでしょうけど……」
「そんなに子が必要ならつくるわ」
「「!!!!」」
三人とも驚いて私に会話を聞かれた事を後ろめたく思っているみたい。
「リザ、でも、あのっ!!」
三人の中でダリスが一番異常をきたしているのは心を読まなくてもわかる。顔も真っ赤だし、手脚が不自然に落ち着きなく動いているから。
「ナディの子供が産まれた時くらいの大きさに作ればいいでしょう??」
「待って、リザ。作るって何をする気なの」
「何って、ダリスの子供を作るのよ。ダリスの髪の毛でも混ぜ込めば出来上がった子供にはダリスらしさが遺伝するはずよ?」
「私達となにか違う次元の話をしているわ貴女」
初めの人間だって私が作ったのだから、成長前の人間を作る事だって簡単。
「失敗はしないわ。ダリスと同じ白い髪でいいかしら?」
「いや、白は……できれば不便な思いはさせたく無いな」
「……精霊は見えないと思うけど、それで良いのなら」
今でこそ人の上に立つ存在ではあるけど、昔受けた扱いは決して忘れてしまえるものではないようね。
子供が全属性を扱えるように、土の精霊、水の精霊、火の精霊、みんなに強力してもらって形を作る。ダリスの髪をいくらか加えてそれらしく、みんな男の子がいいみたいだからそのように。
「………………」
「………………」
オンギャァアア!!!
「嘘でしょ! こんな突然!!」
ナディが頭を抱えて叫ぶ。
ダリスとウォルは唖然として固まっている。
「コレで大丈夫でしょう?」
「リザ!! そんなに雑に扱っちゃダメよ!! 誰か!! お湯と布を持って来て!!」
慌てふためき、人を呼んでバタバタと指示をだすナディをダリス達と三人で役に立たないままに眺めているしか無かった。




