番外……子供のつぶやき(次男カイン)
俺の名前はカイン、二十歳。蜥蜴と呼ばれる父と、元王族の父と、平民で魔法使いの家系の母との間に生まれた。
兄弟は双子の兄アレンと、八歳年下の弟アスタ。そして十歳年下の可愛い美少女の妹メイリの四人だ。
メイリは可愛い。とにかく可愛い。愛しのプリシラと変わらないくらいに可愛いくて、人間の父は可愛がりすぎて時々うっとおしそうにされている。ああならないように俺達兄弟は気をつけている。
アスタは背中に羽が生えている。肌の所々が鱗状になっていてメイリとお揃いで羨ましい。十二歳になったアスタは空が飛べる特異な人間だから、そろそろ軍に入って鍛えられる予定だ。「兄上みたいになりたい」と言われた俺は満更でもない。
同い年のアレンは魔法が使えるのに何故か文官の道に進んだ。宰相の下で国を動かすのが楽しいらしい。血縁的に伯父にあたる国王と物怖じせず対等に会話ができる点は称賛に値する。俺は王族を守る近衛騎士になったので、伯父と甥の関係を求められてもできないので困るだけだ。残念そうな陛下の様子に胸が痛むが、無理なことは無理なのである。
文官でできる男風なアレンだが、あいつは女を取っ替え引っ替えする女の敵だ。その点だけは双子の弟としてとても恥ずかしい。俺が軍に入隊する前はまったく見分けがつかない双子だったので、時々アレンと間違われて「付き合ってください」と告白されたり、「誰にでも優しいあなたにはもううんざり!」と頬をひっぱたかれたりして、迷惑を被ることが多々あった。
俺はもともと魔法使いになるつもりだったが、プリシラが王族のパレードに同行する近衛騎士を見て、「あの制服素敵よね。きっと二人が大きくなって着たら似合うに違いないわ」と言ったのをきっかけに近衛を目指すことにした。
軍部に在籍し、誰よりも精進して騎士になった。そして陛下ではなく人間の父のコネを使って近衛になった俺は、念願の制服に身を包んだ……が、近衛の制服は仕事中のみ着用が許されるので、未だにプリシラに見せることができていない(くそっ)。
プリシラとは、俺が恋する七歳年上の幼馴染の女性だ。俺が近衛になった頃、鍛冶師の男と結婚して家を継いでいる。
俺が結婚する予定だったのに、鍛冶師というだけの男に掻っ攫われて俺は泣いた。だったら騎士なんかにならずに親父さんに弟子入りして鍛冶師になれば良かった。そしたら俺は今頃プリシラと結婚して子供にも恵まれていたかもしれないのに。
しかし俺はあきらめない。
だって人間はいつ何があるか分からないから。もしもプリシラが一人になってしまった時には、俺が彼女と結婚して幸せにすると決めている。その時には派手な近衛の儀礼服で花嫁を迎えるのだ。
そんな素晴らしい夢と将来設計がある俺を、アレンは可哀想な弟だと言う。
博愛主義だか何だか知らないが、たった一人の女性を幸せにできなくてどうするんだと俺は思っている。
俺は父達が母だけを愛して他の女に目もくれないのを、素晴らしいことだと思っている。俺は両親たちのようにたった一人を生涯愛し続けたい。




