表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/15

みまもり-巫女舞(律)

挿絵(By みてみん)

土曜の午後、まほろの神社に向かった。

檀家さんに、まほろが好きな栗きんとんをいただいたから。


社務所を覗くと、巫女服のまほろが、不思議な動きをしていた。


手を上げたり、下げたり。

何だか、カクカクしてる。

回線遅延してるのか、fps低いのか。


俺に気付いたまほろが、振り返り、真っ赤になって飛び上がった。


「律くん、見てたの!?」


「うん……」


栗きんとんを差し出す。

まほろは赤い顔のまま、受け取ってお礼を言った。


「何やってんだ?」


「縁故で、浦安の舞奉納させて貰うことになったんだけど、見ての通り……。先生に怒られてばっかりだし、人前だと緊張してもう……」


まほろは、すでに気が遠くなっている。


「このままだと、ご迷惑お掛けすると思うから、お断りしようかなあ……」


ショボショボしているまほろに、俺は尋ねた。


「舞って、何のためにするんだ?」


まほろは首を傾げて考える。


「神様に、皆さまの幸いをお願いして…」


「いつもやってるだろ」


「え? あ……」


「人のために願うのに上手いも下手もないだろ? やるだけやってみろよ。

祖父さんもきっと応援してくれる」


「そっ……そうかな?」


まほろの顔が緩む。


「祖父さん、最後に俺に頼むくらいまほろのこと気にしてた」


「え? 本当? いつ?」


「亡くなる数日前だったかな」


「そうだったんだ……倒れてすぐだったから、私話せなくて。おじいちゃん、わかってたのかな…」


まほろが、空を見上げた。


「そうかもな」


柔らかい空気が流れた。


まほろが、しばらく考えて言った。


「それで、律くん、いつも私に優しいの?」


ドキッとする。


「……べ、別に頼まれたからじゃ……」


「まあ、律くんは昔から優しいもんね」


まほろが、しばらくして覚悟を決めたように握りこぶしを作る。


「そうだよね…頑張ってみようかな。律くんの幸せも気合い入れて神様にお願いするからね」


まほろが笑顔をつくる。

窓から差し込む光が、ふわりと揺れた。鳥の声も聴こえる。


(……俺は、このままでも……十分、幸せだ……)


ダダダ、忙しい足音がした。

まほろの飼い犬二匹。サクラとタチバナ。

あ、と思った瞬間、二匹とも俺に飛びついてくる。

懐いていてくれて可愛いんだけれど、心の準備をしていなかった俺は、前に勢いよくつんのめった。


「うわっ」


次の瞬間、俺は、転倒にまほろを巻き込んでいたことに気付く。

両手をついた俺の下に、まほろの身体。

顔が至近距離にある。

俺は膝で、まほろの袴に乗っていた。


「ごめん……」


まほろは、俺をじっと見上げてるだけ。

ドキン、ドキン、ドキン…。

自分の心臓の音が大きく聞こえる。

甘い、香りがする……。


あと数センチ動いたら……。


頭を過ったけど、必死で振り払う。


起き上がろうと腕に力を込めた途端、まほろが言った。


「……これは、床ドンってやつ?」


「!!!」


……勘弁してくれ。


「漫画で見たなあ~」なんて、俺の下で、のんきに呟いてる。


子どもの頃と違う。

身長差20㎝を超えた俺が、本気出したらどうなるか、なんて考えないんだろうか?いや、一応、男として認識してると喜ぶべきなのか?



……ないんだろうな……。


犬を両手に、まほろの舞の練習を見守る。


それが、今のところ、俺の定位置なんだろう。


白い衣が、ヒラヒラと上下し、赤い袴が、ふわりと揺れる。


社務所の奥で誰かの気配がしたような気がした。



みまもり(完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ