93・市街奇襲
書く暇なくて、少しかかってもうた…。
エグ・マリン王国の街の建物の屋根から、一人の人間を見ている三人の姿があった。
「さっきまで他のガキ共と一緒だったけど、どうやら今は一人になったみたいだな」
そう言ったのは、六番隊隊長のアストル。共に居るのはサストとレーウィンの二人の隊長である。
「…アストル。本当にやる気か? 陛下やユリアンからの許可を取らなくて良いのか?」
サストが不安に感じていた事を述べた。自分達の眼下に居る人物…その人物の管理を行っているのはユリアンであり、それはエグ・マリン王国の王であるエルド・アブソルトからの指示でもあった。
「少しくらいなら問題無いだろ? まあ一種の特別訓練みたいなもんだ」
「少し…で済めば良いがな…」
鳥人であるレーウィンが、嘴から溜息を吐いて言った。
「ユリアンや暮羽だって戦っているだろ。兎に角行ってくるぜ、俺は」
そう二人に告げると、アストルは屋根から降りて、小さめの広場のベンチに腰を掛けて本を読んでいる、右目に布を巻いた子の所へと向かった。
「…あの二人とは、違う気がするが…」
サストが呆れる様に呟いた。サストの言う様に、ユリアンは相手の方から、自分と仲間達の身の安全を賭けて挑み、暮羽の方は合同訓練として戦っている。故にアストルのやろうとしている事は、完全に個人的な事情である。
※ ※
理奈達と別れた零華達は、様々な店を回った。その途中零華は書店に寄りたいと言い、修兵達は別の店に行くと言うので、一旦別れる事にした。その際に待ち合わせ場所を決めて別れた。
そして零華は書店を見た後、約束の場所に着いたが、修兵達はまだ来ていなかった。零華は約束の場所にあるベンチに座り、購入した本を見ていた。購入した本はこの街のガイドブックであり、観光スポットや飲食店が記載されていた。
「あっ、『水の都の安らぎ(パーチェ)』も載ってる」
ガイドブックには、零華が偶にアルバイトをする事になった、水の都の安らぎ(パーチェ)も載っており、店長のレストの事も紹介されていた。尚零華は軍の人の指導のおかげで、この国の文字がある程度読める様になっていた。
「そういえば、最近は訓練で行けてないな…そろそろ行かないと…」
レストには偶にしか働けないと伝えているが、流石にずっと行っていないのは悪いと考えて、近々訪れようと考える零華。その時…
「!」
背後に人の気配を感じた。零華は修平だと考えて振り返った。
「!!!!!」
其処に居たのは剣を持った、ユリアンに近い年齢の男性であり、男性はその剣を零華に対して横に振ってきた。
「ッッ!!!」
零華は咄嗟に前屈みになる様に伏せた。そして剣は零華の頭部があった場所を通過した。
零華は前に飛び出す様に移動し、男性と対峙する態勢をとった。
「へっ! なかなかの反射神経だな!」
剣を肩に担ぎながら、男性は零華に言った。
「…誰ですか貴方は? いきなり攻撃を仕掛けてきて」
警戒をしながら零華は尋ねた。それと同時に自分の警戒心が薄かった事に、内心反省をしていた。
「俺はアストル。エグ・マリン王国の六番隊隊長だ!」
そう男性‐アストル‐は自己紹介した。
「ユリアンさんや暮羽隊長と同じ隊長さんですか…いきなり攻撃してくるなんて、流石に問題じゃないですか?」
零華がそう言うと、アストルは鼻で笑って言った。
「お前はユリアンや暮羽と戦える程、戦闘力があるんだろ? なら俺が攻撃しても問題無く回避出来ると思ったんだよ」
「……」
アストルにそう言われて、実際に自分が反応出来ていた為、何も言い返せなかった。
「母から気配の察知を学んでいたので…それより貴方は僕と戦いたいんですよね? 僕は今は丸腰なので、訓練場に行くまで待ってもらえませんか?」
そうアストルに交渉する零華だが…。
「そうはいかねぇな! 兵士なら常時剣を帯びておくのも常識だ! 剣を持たないで街中を歩いていた、お前の失態だ!」
と、アストルは待つ事を認めてくれなかった。
「いや、僕達はまだ訓練生で…」
「問答無用だ!!!」
アストルは再び剣を構えて、零華に向かって突っ込んできた。
「くっ…」
流石の零華も丸腰では勝てないと考えて、この場から逃げる事にした。
「逃がすかよぉ!!!」
逃げ出した零華を、アストルは執拗に追跡した。
零華、三人目の隊長との戦い。
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