7・政光との会話
今回、後見人等の事を書いていますが、ある程度の情報から書いていますが、間違っている所もあるかも知れません。
夕食を食べ終わり、片付けが始まった。零華は洗い物の手伝いをしようとしたが、理奈と理奈の母親に『ゆっくりしていて良い』と言われ、少々押し問答の末に、零華は諦めてダイニングに戻った。
ダイニングに戻ると、其処にはソファーに腰を掛けている政光の姿があった。
「おじさん、今日はご馳走様です」
零華は政光に礼を言った。
「いや。気にしないで良いよ。理奈も零華君が来てくれて、とても喜んでくれるから」
政光はそう言いながら、零華にも腰を掛ける様に促し、零華はソファーに腰を掛ける。
「…おじさんには本当に感謝しています…本当なら僕は遺産を取られた上に、その親戚の家に行く事になっていたんですから…」
零華が寂しげな表情で言った。後で聞いた話だが、零華の両親の遺産奪おうとした親戚は、政光が知った話によると、あまりいい人達ではないらしく、もし零華がその親戚に引き取られていたら、少なくとも零華の幸せは失われていたと考えられる。
しかし親戚の素性を知った政光が、零華の後見人になってくれた事により、免れる事が出来た。
「それにおじさんのおかげで、今もあの家に住む事が出来ますから」
零華が今住んでいる家は、元々両親が亡くなる前から住んでいた家であり、その家も政光が後見人になってくれた事により、今現在も住む事が出来た。
「…その事なんだが…今からでも…私達と一緒に住む事は考えていないかい? 私は当然ながら、妻や理奈も賛成してくれている」
政光はそう言った。
実際後見人になった際、政光は零華に養子の話をした。若しくは養子にならなくても、中里家に引き取られる話もした。しかし…
「お気持ちはありがたいですが…答えは昔と同じです…僕は両親と過ごした、あの家に住みたいので…それに遺産の事や後見人の事で、沢山お世話になっていますのに、家に転がり込むなんて出来ません…」
零華はそれだけは頑なに遠慮し、決して同意しようとはしなかった。
「…そうか…なら君の意見を尊重しよう…ただもし途中で考えが変わったら、何時でも言ってくれ、私達は歓迎しよう」
「ありがとうございます…あの…おじさんはお父さんの親友だから、息子の僕の事を助けてくれるんですか…?」
自分の父と政光は親友であり、それにより助けてくれているのか、零華は少し前からそう考えていた。
「確かに私と和樹は親友だよ」
和樹とは零華の無くなった父親の名前である。
「けど私が助けたいのは、君が和樹の息子だからだけじゃない…私自身が助けたいと思ったんだ…」
「ありがとうございます…でも弁護士費用は、必ず返しますから…」
零華が言った。実は零華は政光にまだ、嘗ての弁護士費用を払っていなかった。当初は遺産から払おうとした零華であったが、政光は『その遺産は、君のお父さん達が君に残した物だ』と言って、受け取ろうとしなかった。
それ処か政光は、費用を払わなくて良いとまで言い始めた。しかしそれは小学生だった零華も許容出来ずに、話は平行線を辿った末に、零華が大人になったら払うという話で落ち着いた。
その言葉を聞いた政光は、零華の布に巻かれた右目を見ながら言った。
「零華君。前にも言ったが、君のその右目は手術をすれば治るんだ。和樹達の遺産を使えば、手術を行えるんだよ?」
零華が両親が亡くなった際に、視神経を損傷し視力を失った右目、それは政光の言う様に、手術をすれば治るのであった。しかし…。
「…この右目は治す訳にはいかないんです…それが僕への戒めなんですから…」
「……」
「…すみません」
それ以降、二人の会話は途切れてしまった。
※ ※
「理奈。今日はありがとう」
玄関で理奈に見送られる零華。
「またおいでよ…さっきお父さんとの会話…聞こえてたんだけど…」
「うん…」
「ねえ零華…零華のお父さんとお母さんが死んだのは、零華の性じゃないよ…あれは対向車の飲酒運転が原因だから」
「分かってるよ…でも考えてしまうんだ…」
「…軽々しく言えないけど…気にする事は無いよ…おじさんとおばさんが死んだのは、零華の性じゃない…」
繰り返す様に零華に言う理奈。
「ありがとう理奈…じゃあ帰るね」
「うん…また明日…」
理奈は零華が見えなくなるまで、玄関で零華を見送った。
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