61・見せられない魅惑
休むかも知れないと書いていて、やっぱり書いてしもうたなぁ…。
今回のシーンは、ずっと前からやりたかったシーンなんですわぁ。ラストのシーンだけやで! 中盤は極最近考えたシーンや!
暫くして零華が名簿を作成し終えると、修兵達男子が戻ってきた。
「どしたの? 捕まえたの?」
日本から持ってきていたシャーペンを置いて、零華が尋ねた。
「何とかな…流石の軍団長も、十四人で攻められたら、謎の威圧を感じたらしく、あっさりと黙っていてくれる事を約束してくれたよ」
修兵が説明する。
「そういえば何か女子も誰かを探していたみたいだけど…」
太一がそう言うが、零華を含めてその理由は分からない。まさか女子の方も同じとは想像出来なかった様だ。
零華は名簿を皆に見せる。
「とりあえず男子の名前は、出席番号順に書いたよ…ただ日本語だけどね…」
零華はそう説明する。この世界は異世界の為、当然日本の文字は分からないだろうが、そもそも零華達も、この国の文字は知らない為、やむを得ない事であった。
すると来季と直樹が前に出てくる。
「なあ零華。俺と直樹が考えたんだけど、俺達この世界で生活必需品が必要だって」
「生活必需品…? そういえば確かに…」
来季に言われて零華も気付いた。正直今は国の庇護下に置かれているが、それも何時迄か分からない。とりあえず其処は今は置いといて良いが、流石に今の生活に必要な物がいっぱいあるだろと思った。
「でもよぉ来季…俺らこの世界の金ねぇぞ?」
「あっ…」
修兵に言われて、来季は気付いた。日本のお金なら全員合わせれば少しはあるだろうが、異世界であるこの世界は、例え一万円札が百枚有っても、それはただの紙の束であった。要するに全員無一文である。
「…国から出して貰えないかな?」
大輔が提案するが…。
「住む所と飯まで食わせてもらった上に、金もくれってお前言えるか?」
明司にそう言われ、大輔は黙り込んだ。他の皆も代案は浮かばず、室内に沈黙が広がる。
「……仕方ない…」
すると零華が立ち上がって、部屋の出入り口に向かった。
「おい零華。何処に行くんだよ!」
修兵が声をかける。
「歯磨き! さっきドタバタして行ってなかったから」
そう言うと零華は、今度こそ部屋を出て行った。
「…アイツ、何か急に考えが読めなくなったな…」
今まで意識していなかったが、先程のユリアンとの戦いから、零華の考えが読めない事に、修兵は何となく気付いたのであった。
※ ※
零華は廊下を歩いていた。誰かを探しながら…
「!」
すると道の先に、見張りらしき兵士が一人立っているのを見つけた。零華はその兵士を見て、ある決心をする。
「…仕方ない…やりたくないけど…」
と、何やら呟いて兵士の方へと歩いた。
「ねえ…兵士さん…?」
「!?」
兵士に近づくと零華は、突然甘ったるい声を出しながら、兵士に擦り寄った。その表情は赤らんだ恍惚とした顔をしており、甘い吐息を吐いている。
「な、何かな…」
零華の妖艶な雰囲気に、兵士は戸惑いながら応じる。
「僕達…いきなりこの世界に飛ばされて、無一文なんです…」
潤んだ左目で兵士を見上げながら、甘い声で甘える様に言う零華。
「…ゴクッ…」
兵士は喉を鳴らした。零華は意識しているのか、着ている寝間着の胸元は少しはだけており、鎖骨の辺りが少しだけ兵士からは見えた。もう少ししたらその先も…。
「それでぇ…兵士さんから軍団長さんに、相談してくれませんかぁ…」
首元に息を吹きかけながら、兵士に懇願する零華。兵士は零華が男の子である事を、同僚から聞いていたが、妖艶な零華の雰囲気に迷いが生じる。
『本当に…この子は…男の子なのか…』
あまりにも妖艶で魅惑的な零華に、兵士は戸惑う。
「ねぇ…お・ね・が・い♡」
ニッコリと笑う零華。
「あ…ああ分かった! ユリアン軍団長に話してみよう!」
「あは♪ ありがとうお兄さん♪ あ、この事は僕が言ったって言わないでね。僕、怒られちゃうから…」
零華が嬉しそうに声を上げ、最後にそう照れた様に笑みを浮かべて伝えると、兵士はその場から走り出した。それはただ単純にユリアンに話をしに行く為か、それともこのまま此処に居たら、零華に何かしてしまう恐れがあったからか不明だが、兵士は零華を置いて行ってしまった。
「……これで良しと…」
笑顔を見せていた零華は、安堵の表情を浮かべる。
「出来ればこの手は使いたくなかったし…何より修兵達に見られたら、何を言われるか…母さんも何でこんな事を教えてくれたのか分からないな…」
そうブツブツ言いながら、零華は水飲み場に向かった。
水飲み場に着くと、零華は備えられていた新品の歯ブラシを使って歯を磨いた。
そしてコップで水を口に含んで、濯いで吐き出そうとした時…
「零華!」
後ろから急に声をかけられ、盛大に噴き出した。
「ゲホッゴホォ!? り、理奈!?」
其処に居たのは、理奈であった。
「な、何やってるのこんな所で!?」
まさかさっきのを見られていたのではないかと思い、焦る零華。
「何って零華と同じ歯磨きだよ? 私もしようと来たら、零華が居たから声をかけたんだ…何でそんなに焦るの?」
「あ、いや…急に声をかけられたからだよ…『見られてバレたかと思った…』」
尤もな回答をしながら、内心安心する零華。どうやら先程の兵士対しての場面は、理奈には見られていない様であった。
「ふ~ん…まあ、ごめんね」
何か怪しい所を感じている様だが、理奈は驚かせた事を謝るだけで、追及はしてこなかった。
「まあ僕も少し驚き過ぎたから良いよ…じゃあ僕は部屋に戻るね」
そう言って行こうとする零華。
「待って零華! 少し話をしようよ」
「? 良いよ…」
理奈の提案に零華は『何を?』と思いながらも、零華はそれに応じる事にした。
女の子扱いされるのを嫌う零華ちゃんやけど、まさか本人はやろうとすれば出来るとは…。
理奈とは何を話すんやろな…?
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