3・2‐Aの日常のバカ騒ぎ
零華のクラスの風景ですわ。
零華と理奈が通っている学校、桜花学園中学校は名前は私立の様だが、実際には公立の学校であった。変わっている所といえば、本来一学年上がる毎に、クラス替えが行われるが、桜花学園ではクラス替えが行われず、一年生から三年生まで同じクラスメイトと過ごすという校風があった。
零華と理奈は偶然にも同じクラスの二年生であり、それ以外のクラスメイトも、一年生の頃からのメンバーである。
零華達が自身達の教室‐2‐A‐に入ると、既に殆どのクラスメイトが登校しており、何やら集まっている。
「修兵。皆は何やっているの?」
教室には行った零華は、一番近くに居た新垣 修兵に話しかけた。
「おお零華と理奈。今、明司が千鶴に告白するんだってよ!」
楽しそうに修兵が話すので、零華と理奈は集まっているクラスメイトの方へと足を進める。
「ほらほら、明司早く告白しろよ」
「千鶴が待っているよ!」
「行け行け!」
クラスメイト達は、半幅お祭り騒ぎみたいに騒ぎ立てる。
「お前らさ…俺滅茶苦茶恥ずかしいだけど…」
当事者の安永 明司が気まずそうに言う。
「千鶴だって…ホラぁ…」
明司が告白する相手、倉本 千鶴も恥ずかしそうに俯いている。
「良いから早く告白しろよ!」
「カップル誕生を見せて、見せて♪」
更にヒートアップするクラスメイト達。零華は冷めた様な眼でクラスメイト達を見ており、理奈は何時の間にか、騒ぎに関わっていない女子生徒に話しかけている。
「ああぁもう! 分かったよ!」
自棄になったのか、明司は大声を出して、千鶴に向き合う。
「千鶴! 前から好きだった! 付き合ってくれ!」
「ごめんなさい!」
一世一代の告白は、一瞬にして終わった。
「ギャハハ!!! ダッサ!!!」
「振られてやんの!!!」
明司が玉砕した事に、大笑いするクラスメイト達。振られた明司はというと、すごすごとその場を去っていく。
一方振った千鶴はというと、女子生徒達から半幅からかいの様な質問責めを受けていた。
「あ~あ…またバカな事をして…明司もこんな状況じゃなきゃ、千鶴からОK貰えたかも知れないのに…」
憐れむ様に目を明司に向けながら、零華が呟いた。
「何だよ零華~。そういうお前は、誰か好きな奴は居ないのかよ~? どんな娘が好みなんだよ」
馴れ馴れしく肩を組んでくる修兵に、零華は鬱陶しそうな表情を浮かべて振り払う。
「今は居ないよ…強いて言えば、好みは居るさ…年上で落ち着いた感じの人…」
「へぇ~意外だな…お前はてっきり、理奈とデキていると思っていたが…ってかタメだけど、落ち着いた人って言うなら、シエラが居るじゃん!」
そう言って、教室の端の席で本を見ている、四方田 シエラを見る。
「シエラは落ち着いているというより、古風な人だろ…ってか理奈とは幼馴染なだけで、そういう関係じゃないし!」
「何だよ無理してさ…ってか零華の場合、『落ち着いた人』って、『女の人』って限定されないよな」
笑みを浮かべながら言う修兵に、零華が左目でジト目を向ける。
「…それって、どういう意味…?」
「いやいや…美少女にしか見えない零華ちゃんなら、『男の人』でもイケるんじゃないかって話ですよ!」
「何でそういう話になるんだよ! ってか何で敬語? そして『ちゃん』付けで呼ぶなよ! 僕は男だぞ!」
幾ら名前や見た目が女の子とはいえ、女の子扱いされる事に零華は我慢出来なかった。
「まあお前が女で、巨乳美少女なら、俺はОKなんだけどな…」
「…そういうのは、後ろを見てから、言った方が良いよ」
「えっ…?」
零華に言われて修兵が振り返ると、其処には…。
「ふ~ん…巨乳じゃなくて、悪かったわね」
「あ、灯里…」
其処に居たのは、南原 灯里。修兵の彼女である。
「どうせ私は貧乳ですよ。そんなに巨乳が良いなら、そういう娘と付き合えば?」
「いやいやいや! 冗談だって、冗談! 零華のおふざけに付き合っただけだ。なあ零華?」
そう言って振り返るが、零華は既に理奈と話しており、修兵の隣には居なかった。
「零華ちゃ~ん!!!」
教室に修兵の零華の名を呼ぶ声が響き渡り、それによって教室は再び大爆笑の嵐に見舞われた。
やがて担任が来て、朝のホームルームが始まった。
零華は美少女の様なナリでも、女の子扱いは嫌いなんですわ。
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