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03話 「不気味の谷」【挿絵】

挿絵(By みてみん)

 特型ガイノイドS3-0009。



ー宇宙空母ヴィズィオネーア 自室


 薫はノインに支えられながら用意された部屋へとやって来た。


「あ、ありがとうございます。もう大丈夫なので...!そう言えばなんて呼べばいいですか?ニックネームとかは?」


 薫は顔を真っ赤にしながらノインから離れ、誤魔化す様にベッドへと腰掛ける。


「”にっくねーむ”ですか?少々お待ち下さいデータベース”地球”で確認します。

 ......我々、人造人間(ガイノイド)は識別コードで呼びますので、”ニックネーム”はありません。

 薫様が呼び易い様に呼んで頂いて構いません。」


「...では、ノインなんてどうですか?」


 薫は識別コードS3-0009の9をドイツ語読みした。


「ノインですか...良いですね。」


 するとノインは嬉しそうに微笑んだ。


「ではニックネームも頂きましたので、改めて自己紹介をさせて頂きます。

 私は薫様専属のメイド兼ボディガードの特型ガイノイドS3-0009-OR9”ノイン”です。

 戦闘能力、地球での礼儀作法、各種センサー機能に特化しております。」


「ありがとうございます。ところで僕の前にも男の人が来た事があるんですか?」


 薫は副艦長に言われた「今回は上手くいきそうね!」と言う言葉が気になっていたのだ。


「はい。過去2度御座います。しかし、どちらも繁殖は上手くいきませんでした。」


「え?それは何故なんですか?」


「1度目は性経験が豊富な節操の無い方をお招きしましたが、禁止されているOR9以上の戦闘能力特化型ガイノイドを無理やり襲おうとして殺され(・・・)ました。」


「殺さ...れ...!?襲った女の子にですか?」


「はい。戦闘能力特化型ガイノイドであれば、フレームにも依存しますが人類の男性の10~100倍程度の力がありますので。」


 人類が居ないこの宇宙船(せかい)には”ロボット三原則”などは無い。

 人造人間(ガイノイド)が基準であり、人造人間(ガイノイド)全て(ルール)なのだ。


「2人目ですが...地球の言語で言いますと...あぁ、ありました。薫様は”不気味の谷現象”をご存知でしょうか?」


 不気味の谷現象とは、人型ロボットや人形のリアリティを追求していくと、人間と寸分違わない状態の一歩手前で急激に嫌悪感を抱く様になってしまう心理現象の事だ。

 例えばデェフォルメされたペッ〇ー君などは愛らしいが、リアリティを追求したオリエ〇タル工業製のラブドールなどは不気味に思う人も居るだろう。


「知っていますが、ノインさん達は優にその谷を超えていると思いますが...?」


「ありがとうございます。しかし、これは外見だけの話では無いのです。

 2人目の方は”繁殖活動中”にこの現象に陥ってしまいました。言うなれば”不気味の膣現象”によって、対ガイノイド性EDを発症してしまったのです。」


(なるほど...”繁殖経験”を持たなければ比較するものが無い為、”不気味の膣現象”も発生しない。だから”未経験者優遇”だったのか...!)


「な、なるほど...そんな事が...それで僕が採用されたと?」


「はい。その通りです。1人目の男性の影響で人造人間(ガイノイド)達に軽度の男性恐怖症が発生してしまった為、粗暴な性格で無く、女性に近い顔立ちで、人造人間(ガイノイド)と”繁殖”するに際して壁が無く、”繁殖経験”を持たない男性の求人を出したのです。

 ですので薫様はまさに我々の理想の”繁殖相手”と言えます。」


「事情は分かりました。僕も力になれる様に頑張ります。」


「ありがとうございます。そう言って頂けると助かります。」


 そう言ってノインは薫に微笑みかけた。

 薫はまた顔に熱を感じ、誤魔化す様に話かける。


「あ、あの...この後のスケジュールってどんな感じですか?」


「この後は昼食ですが、今日はお食事をお持ちいたしますのでこのままでお待ち下さい。

 その後は専属のメディックによるメディカルチェックを受けて頂き、最後はバスケアによる湯浴みで本日のスケジュールは終了です。

 明日以降は副艦長からご説明があった通り、午前中は座学を受けて頂きます。

 では食事の方をお持ちしてよろしかったでしょうか?」


「はい、お願いします。」




 暫くすると部屋から出ていったノインが食事を持って戻って来る。


「こちらをどうぞ。」


 薫はノインからウイ〇ーinゼリーの様なパッケージに入った食事を受け取り、中央のキャップを空け口で吸う。

 中身は少し粘りっ気のある無味無臭の液体だった。


「ノインさん達もこれを?」


「はい。このレーションは1日3度摂取すると人類に必要な1日分の栄養素が摂取出来る完全栄養食品です。」


 この時薫は改めて今宇宙に居るのだと気付かされた。

 (重力が普通にあるから忘れてたけどここは宇宙なんだよね。物資も限りあるだろうし、贅沢は言ってられないよね。)




「それではそろそろ退出させて頂きますが、こちらをお渡ししておきます。」


 するとノインは薫にライター大の端末を手渡す。


「これは”クリンゲル”と言い、アクセスコードを使って人造人間(ガイノイド)に連絡する事が可能です。

 既に私のアクセスコードは入力済みですので、何かありましたらご連絡下さい。

 それではメディカルチェックの時間になりましたらまた来ます。失礼致します。」


 ノインは優雅にカーテシーを行うと薫の部屋から出ていく。

 ノインの軍服のスカートは短い為、カーテシーを行うとその白く艶やかな太股が顕になり、薫には刺激が強くまたも顔を真っ赤にしていた。

 しかし、それと同時に太腿には識別コードが印字されており、その事がノインが人造人間(ガイノイド)である事を強調していた。




 (あっ...そう言えばノインさんのアクセスコード手に入れちゃった...!)


 そして浮かぶ副艦長の言葉『脈アリ』。

 しかし、ノインはOR9であり”繁殖対象外”であり、”1人目”の事を思い出し薫は思わず身震いしてしまうのであった。


 明日も挿絵付きで投稿予定です。

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