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セブンス エッダ  作者: りん
水底で息をする
113/118

2

 謁見の間に集められたのは、ナディル、ライナ、シロガネだけだった。正面には白いドレスを纏ったウォーラが座し、いつも通り隣にはセファが控えている。


「二ダヴェリールに行ってもらおうと思う」


 ウォーラは深々と椅子に座ったまま言った。彼女が足を組むと金刺繍の美しいレースが翻る。


「セファにも同行してもらう」


 ライナはその言葉に驚く。セファが城から、いやウォーラから離れるとゆう事はライナの幼い頃の記憶にも、滅多に無かった。


「畏まりました」


 ナディルは右手を胸に当てて頭を下げた。


「あの、」


 シロガネが少し言い辛そうに声を発する。


「何じゃ」

「ガイ=オーラムは一緒では無いのですか?」


 彼の質問にウォーラは一息吐いてから答える。


「彼奴は獣人であろう。獣人が二ダヴェリールに行くとゆう事がどんな事かは其方が一番良くわかっておろう」


 確かに、シロガネもそうだった様に、妖精の獣人に対する反感の感情は大きい。彼が良い思いをしないのは火を見るより明らかだ。


「確かに、そうですが、」

「今は宝珠が最優先じゃ。他に面倒事を増やしたく無い」


 ウォーラはシロガネを一蹴するが、納得できない様子の彼に、ナディルが声を掛ける。


「シロガネは彼が居ないと不安かな?

 大丈夫、俺が面倒見るよ」


 シロガネは子供扱いされたと感じてむっとする。


「そんなんじゃない。ガイが居なくても問題は無い」

「そう、それは良かった」


 そっぽを向くシロガネにナディルは思惑通りに事が進みにっこりと微笑んだ。


 話しが終わり広間を出ると、ガイ=オーラムとエンコ、ハイメが廊下に待っていた。


「何、何?何の話??」


 目を輝かせて興味津々のエンコと彼女に連れてこられたであろうハイメ。ハイメは眠たそうに目を擦る。


「次の大陸へ行く話です。貴方方は留守番です。きちんと訓練しておく様に」


 セファの答えにエンコは口を尖らせる。


「えーまた留守番?」


 今度はセファにハイメが尋ねる。


「もしかして、セファも行くの?」

「はい」


 がっかりするエンコと小さくガッツポーズするハイメ。対照的な2人だが、何だかんだ仲は良い。きっと根が真面目なエンコがハイメをサボらせず一緒に訓練してくれるだろう。


「おい、シロガネは行くのか?オレは?」


 壁にもたれ掛かっていたガイ=オーラムが身を乗り出し、割り込む様に話しに入ってくる。


「向かう大陸は二ダヴェリールです。貴方はここに残って下さい」

「シロガネが行くならオレも行く!」


 仲が良いのか、何か約束があるのか、同じ事を言うガイ=オーラムとシロガネを少々面倒に思う。セファは駄々を捏ねる子供を嗜める様に、冷たく強い口調で言い放つ。


「貴方が思っている程、優しい場所ではありません」


 廊下の騒がしさに気が付いたウォーラが伺いながら顔を出す。ガイ=オーラムが納得せず抗議するのを見て口を開く。


「ガイ、其方は弱い」


 ウォーラの突然の言葉にガイ=オーラムはカッとなって反論する。


「オレは弱くなんか無い!」

「ほぅ、ではその胸の引っ掻き傷は治ったか?」


 胸を指差されたガイ=オーラムは顔を赤らめる。服の隙間から見える彼の胸にはまだ薄っすら紅色に腫れた傷痕が見える。ウォーラはガイ=オーラムの胸に指を指したまま顔を近づける。


「ハイメにでも相手をしてもらえ」


「…っ‼︎」

「えー何で僕??」


 突然の使命にハイメは不服そうな声を上げる。


「エンコだと黒焦げにされてしまうであろう」


 強力な精霊の力を持ちながら、上手く加減出来ない彼女の事はお見通しらしい。それとガイ=オーラムにエンコは役不足と言いたいのだろう。狼狽ながら言葉に詰まるガイ=オーラムを背に、ウォーラは楽しそうにクスクスと笑いながら歩いて行った。


「悔しかったら強くなる事じゃ」


 この大陸一の実力者に誰も何も言えないまま、その背中を見送った。


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