1.ランドビーの後悔
「ルイのせいで取り逃がしたじゃないか!」
燦々と降り注ぐ太陽の中、声を荒げたランドビーはルイを軽く突き飛ばした。
別に誰のせいでもないのに、貴重な食材であるうさぎを取り逃がし、そのことをルイのせいにし、9歳の少年ランドビーはお腹が空いたストレスをルイにぶつけた。
ランドビーとルイは年齢が同じで家が近く、小さい頃からよく一緒に遊んでいた。しかし、ランドビーは日頃から、ルイをなんかむかつく、お腹すいたという理由でからかっていた。
「ルイ1人でうさぎ狩ってこいよはははは」
笑いながら、言ったのはランドビーとルイの同級生であるポールトだ。ランドビーとルイの黒髪とは対照的に、透き通った白い髪だが、体格は2人と比べて、一回り大きい。
この世界は異常気象により、食糧難に陥っており、9歳という年齢ながら、数少ない食糧を一日中探し続けていた。
「分かった、狩ってくる」
弱々しい声で言ったルイは手で汗を拭いながら、乾燥した地を歩き始めた。
しばらく経った後、ランドビーとポールトはお腹減った、なんか食べたいという気持ちを抱えながらも、ルイのことが心配になってきた。
「さっきは言い過ぎたよな、お腹すいてるからってルイに強く当たってしまった。ポールト謝りに行こう」
「そうだな、お腹も減ったし、食糧見つけて、3人で食べよう」
2人はルイの向かった方向に額に汗をかきながら、少し駆け足で向かった。
「お、鳥の卵あったぞ!5つあるから、ジャン負け1個だな、はははは」
木の上を登り、笑いながら、ランドビーに伝えた。
「おめーの笑い方気持ち悪いんだよかっかっかっか」
ランドビーも少し癖のある笑い声をあげながら、ポールトをからかった。
そんな笑い声も束の間、カンキンカンと剣と剣が交わり合う音が聞こえ、2人は目を合わせ、音の聞こえる方へ走り始めた。
息をあげながら走り、どんどん甲高い音が大きくなっていく。はあはあ、なぜか嫌な予感がする。しかし、音が突然聞こえなくなった。
「おい、急ぐぞ」
ランドビーは葉っぱの少ない木の間を小柄な身のこなしで颯爽と駆け抜け、ポールトは少しぎこちない動きでランドビーを追いかける。
木の間を抜け、開けた砂漠に黒と白のボーダーの大人2人組とルイの姿が遠くにあった。2人は声を荒げる。
「おい待て!ルイ何してんだ!」
「ルイ!!」
大人2人組が乗っている馬にルイが連れ去られていく。ルイは抵抗していない。やられたのか?ランドビーは、走馬灯のようにお父さんの言葉を思い出す
『ブレークファースト食糧を探す時は必ず集団行動をしなさい、単独で行動してはいけない。単独で行動すると誘拐されたり、獣に食べられるたりするからな』
「追いかけるぞランドビー」
「ああ」
しかし、馬に追いつけるわけがなく、ルイの姿は見えなくなった。はは、俺のせいじゃない、だって、お腹減ってるし、なんかあいつが悪いし、俺は悪くない……
「はは、気にすんなポールト帰るぞはは 卵をゲットしたし、持って帰って食べようぜ」
「はは、そうだなルイのやつならまた帰ってくるし、大丈夫だなはは」
ルイのやついつも、からかった時はどっかに隠れやがる、俺が探しに行かないとどうしようもないやつだよ……… 今回ばかりはうさぎ取り逃がして、反省して帰ってくるだろ
「じゃあ、俺こっちだからまたなランドビー…」
「おう!また明日も狩りしよーぜ!腹減ったなー!!」
「お母さんただいまーーー!腹減ったーー!!」
ランドビーはいつもより大きな声でただいまと言った。
「おかえり、ブレークファースト」
「卵見つけてきたよーーー!!」
「あれ?ルイはどうしたの?」
「あールイのやつうさぎ取り逃がして、拗ねてどっか行きやがった、あいつはもう仕方ない奴だよ、どうせ帰ってくるから帰ってきたら、怒ってやらないとな」
「……何を言ってるの?」
「え?だから…」
お母さんが車椅子に乗って、血相を変えて近づいてくる、気づいたら、頬が痛くなっていた
「今から探しにいきなさい。ポールトくんのところに行って、一緒に探しにいきなさい。」
「あ…その違うくて…」
「今すぐ行きなさい」
ガシャン。扉が瞬く間に閉められ、肌寒い空気が頬をさらに痛めつけた
その時初めて涙が溢れ出てきた、事の重大さを身をもって知り、現実が襲いかかってきた
「………ごめん、ごめん…ルィ」
涙を抑えられなかったが、少し経った後もう一度家の扉を開けた
「お……お…お母さん、ル…ルイが連れ去られた」
「落ち着いて、ゆっくり話しなさい」
ゆっくり近づき、頭を撫でられながら、優しい声で言われた
涙でぐしゃぐしゃになりながら、お母さんの胸元で話した
「お…おれがルイに1人で……うさぎ狩ってこいって言って、そしたら………んん…馬に乗った大人に連れ去られた……んん」
ポールトが1人でうさぎを狩ってこいと言ったが、小さい少年の自分なりのけじめの付け方だったポールトのせいではないと
「お母さんがぁ…いつもルイに優しくしなさいって言ってたのに……ごめんな…さい」
後悔の念が、自分の愚かさが涙として溢れ出る
「ブレークファーストいつも無理をさせて、こちらこそごめんなさい、お母さん頼ってばっかりで……いつもありがとう、さっきは手を出してしまってごめんなさい」
自分は首を大きく振ったが、お母さんがぎゅっと抱きしめた
「ルイの行った方向分かる?ルイを連れ戻すわ」
「う、うん砂漠の開けた場所の北の方向に向かった」
「分かったわ、あとは任せて。今から近所のB隊の仲の良い人の家に行ってくるから、ブレークファーストは妹とうさぎのハンバーグを思う存分食べておいて、とっても美味しくできたわよ」
「お、お母さん、僕が行くよ」
「ううん、いつも頼ってばっかりだからそれぐらいさせてちょーだい」
母は笑って、木材で作られた車椅子をこいで家を出た。自分と同じくらいの高さの母がいつもより大きく見えた
次の日お母さんから聞いた話は最近、北の方の国からやってきた白と黒のボーダーを着た大人2人組の誘拐が多発していること、その追跡をB隊が行っていること、そして殺されている可能性は低いということである。




